勇者も魔法使いも要らない! 俺は軍師として軍隊を創り指揮して、総ての魔族を攻め滅ぼす!

トーマス・ライカー

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魔法使いなんて、要らないよ!

…見廻りと準備と…

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 シエナの後ろに若者を乗せて駆ける。

 若者の名は『デンガ』と言う。

 街道を走り、間道への折れ口には必ず入って獣道に入るまで観て戻る。

 俺とジングは50ミルト程の距離を保って走ったり歩いたり止まったりしていたが、歩いている時に空を見上げてヒーピーやケイピーが飛んでいるのを見付けると馬を止め、弓に矢をつがえて射落としていく。

「……2人とも弓矢が上手いね……」

「……ああ…デンガ……これを鍛練してきたって事が……今まで生き延びて来られた…コツのひとつだな……」

「……シエン……あそこの岩肌の切れ目が観えるか? 」

 ジングがキエラを横歩きさせて俺のシエナの右隣に並ばせ、左手で1点を指差して訊いた。

「……ああ……切れ目自体は自然のものだが、下に観える穴は掘り抜かれたものだな……」

「……怪しいな……」

「……そうだな……ちょっとゆっくり近付いて観よう……だから、ヒーピーやケイピーが飛んでいたのか……」

 俺達はその岩肌から800ミルトまで馬で近付き、茂みに愛馬を隠してからは歩いて近付く……穴の全体を視界に入れる前からでも分かる……鼻が曲がって裏返りそうな臭いだ。

「……シエン……もういいだろう……臭過ぎる……ここで間違い無い……」

「……ああ、そうだな……戻ろう…ここで間違い無い……おそらく……魔物共を飼ってる魔族もいる……」

 馬まで戻り、乗って間道まで戻る。

「……ここよりひとつ手前の折れ口だな……そこで飛んでる魔鳥を射抜いて、街道に出よう……」

「……そうだな……そうなると街道に仕掛ける罠は、こことここだ……2ヶ所とも道幅が狭くなってるから、罠を仕掛けやすい……」

 馬を歩かせながら地図を取り出して、印をふたつ付ける。

「……あとは、どこかの隘路あいろの上に好い場所があれば、だな……」

「……ああ……だが岩を運び上げるのはキツいから、油を染み込ませた砂袋にしよう……」

「……それが好いな……あとは戻って来た皆と合流した上で……細かく話を聞いてこの地図を完成させれば、作戦も決まるだろう……」

「……ああ……そうだな……こちらから皆に合流しよう……罠の仕掛け場所としても、もう見当を付けている頃だろう……」

 暫く間道を戻り、山側への折れ口から更に険しい間道を経て隧道ずいどうに入る……3本の間道に8本の隧道ずいどうが絡んでいる……隧道ずいどうの中には、途中で行き止まりのものもある。

「……なかなか面白い地形だな……これなら結構奴らを引っ張り回せるかも知れん……」

 時折り立ち止まって地図に書き加えながら、空を見上げて魔鳥を射抜き墜としていく。

「……ジング……蹄の跡がある……ここから折れて行ったようだ……隘路あいろに続くのはどっちだろう? 」

「……ちょっと待ってくれ……」

 そう言うとジングは馬を止めて、両手で耳をそばだてる……この男は仲間内で1番耳が利く。

「……こっちだな……」

 そう言って左の細道に入る……1200ミルト程で道幅が急に狭まり、曲がりくねった絶好の隘路あいろになった……左側を見上げると、お誂えおあつらえ向きに広く張り出した崖になっていて……デラティフとナヴィドとサミールとクヴァンツが、2人の若者を馬の後ろに乗せて俺達を見下ろしている……俺とジングがそれぞれ右手と左手の空を指差すと、4人は空かさず弓に矢を番えて引き絞って放ち、ヒーピーとケイピーが2羽ずつ墜ちた。

「……ここは絶好だな…ナヴィド? 」

「……ああ……観て廻ったが、ここ以上の場所は無い……」

 脇の獣道けものみちを駆け登って、4騎に合流する。

「……あそこの山の斜面……岩肌が観えるか、ナヴィド? 」

 ナヴィドは仲間内で1番目が良い。

「……ああ、観えるよ……クレパスがあるだろ? 」

「……そうだ……クレパス自体は自然のものだが、下の穴は手で掘り抜かれている……奴らの寝ぐらだ……」

「……ほう……頃合いの距離だな……確認したのか? 」

「……いや…臭過ぎて近寄れなかった……」

「……分かる(苦笑)……でな……場所はここで絶好なんだが……岩を運び上げるのはキツくないか? 」

「……ああ……俺もそう思う……だから、油を染み込ませた砂袋にしよう……明日の準備でここに……シーソーを10基並べる……明後日、街道に仕掛けた2ヶ所の罠に嵌められても生き残った奴らを……俺達が引っ張り廻してここまで来たら……砂袋に火を点けて、シーソーで下に跳ね落とす……奴らの動きが止まったら、集中して射る……それで終わりだ……」

 そこまで言って…皆、馬から降りる。

「……ああ……実際……どんな魔物が何匹出て来るのかは、まだ判らないが……魔物共については…それで何とかなるだろう……あとは魔族だな……だが今は……ここで昼飯にしようぜ、シエン……」

「……そうだな、デラティフ……昼飯にしよう……デンガ……その鞄の中に弁当が入っているから、出して食べなさい……それは君の物だよ……」

「……えっ…シエンさんは、どうするんですか? 」

「……俺の事は心配しなくて好い……保存食料があるから……それを食べるよ……」

 俺がそう言って…貰った弁当をデンガに渡したものだから…あとの5人も、2人の若い人足に弁当を分けて与えた。

 シエナの鞍に括り付けていた物入れ袋から更に袋を取り出して、中から拳半分程の茶色と灰色の塊を一つずつ取り出す。

「……デンガ……その弁当の蓋を貰えるかい? 」

「……あ、はい…どうぞ……」

「……誰か、水を少しくれないか? 」

 ケープを外して座った右側に敷き、貰った弁当の蓋に塊を乗せてそこに置く……サミールが鞣革袋なめしかわぶくろの水筒を手渡してくれる。

「……またパルギか……好きだな(苦笑)……」

「……ほっとけよ、クヴァンツ……こいつは完全無欠の保存食料なんだからな……」

 そう言いながら、水筒から水を適当に振り掛ける……するとふたつの塊は水を吸って観る観る膨らみ、8倍程の大きさにまで膨れた……ふたつの塊をそれぞれ四つに割り、腰紐に締め込んでいた小さい袋を外して中の粉塩をほんの少し振り掛けて、食べ始める……もうひとりの若い人足『キトル』が不思議そうに観ていたので、ひとつを渡した。

「……どうだい? 」

「……不思議な味だね……美味いよ……」

「……だろ? 俺のお師さんの秘伝だぜ? 」

「……シエン……街道を往く隊商や乗合馬車を襲ってるような奴らだから、それ程数がいるとも思えないが……魔物共を飼って操っているのは魔族だ……どうするつもりなんだ? 」

「……クヴァンツ……ここいらで暴れている奴らについては、戻ったら騎士団の詰所や宿舎で話を聞いてくる……おそらく……魔族と言ってもそんなに強くはない筈だ……魔族としての地力が強くて、多くの魔物を使役できるのなら……隊商や乗合馬車を襲うより、城市に城攻めを仕掛ける筈だからな……それにレーナが魔力中和の護符を200枚も書いてくれてる……それだけあれば充分だろ? 」

「……まあ……それもそうかな……」

 1アハルも掛からずに弁当を食い終えて、また馬に跨る。

「……ナヴィド……観えるか? 」

「……ああ…ゲルギだな……」

 弓に矢を番えて構える……対面の崖に止まっている魔鳥だ。

「……殺れるか? 」

「……ちょっとギリだが……」

 狙い澄まして引き絞り…放つ……綺麗に射抜いた。

「……よし、戻ろう……騎士達からも話を聞くし…ダナルさんには、また色々頼むし…人足頭とも打ち合わせて、段取りを組まなきゃならん……ひょっとして…気付かれたかも知れんが……明日1日…邪魔されずに準備できれば、こっちの勝ちだ……」

 6頭の馬が、一斉に馬首を回らせてめぐらせて崖から降りて行く。

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