【『星屑の狭間で』『パラレル2』(アドル・エルク独身編)】

トーマス・ライカー

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ファースト・シーズン

デイ・タイム…3…エドナ・ラティス、レナ・ライス

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 メイン・スタッフの皆が、それぞれ自分の飲み物を手に控室からブリッジに戻って行く。

「エドナ、レナを呼んで来てくれ。それとハンナ、ちょっと残ってくれ…」

 皆と一緒にブリッジに戻ろうとした2人を呼び止めて、私はそう頼んだ。

 ハンナは飲み終えたカップをキッチンのシンクの中に入れてから戻り、長いソファーの端に腰を降ろした。

 20秒でエドナはレナを連れて戻り、ハンナの隣に2人で座ったので、私はそのソファーの反対側に腰を降ろした。

「いや、3人ともそんなに固くならなくても好いよ。大した話じゃないからさ。楽にしてくれ…実はカウンセラー、次にマッサージを施術するのは君だと言っていたけれども、先にエドナとレナに施術したいんだ。何故なら先の戦闘で2人はかなり身体を酷使している。これから休憩を挿んで訓練に入るんだが、2人が疲れを残したままでは時間短縮もままならないだろうから今の内に少しでも、2人の身体を解して疲れを癒やしてやりたい…承認して貰えるかな? 」

「!…ああ…アドル艦長、そう言う事でしたら何も私の承認を得る必要はありません。今はこの2人のコンディションの方が大事ですから、2人に施術してあげて下さい。私への対応は、もっと余裕のある時で結構ですので…」

「…ありがとう、カウンセラー…じゃあ、2人とも…ファースト・エクサザイスデッキのマッサージ・ルームでやろうか? 」

「はい、分かりました…」

 エドナがそう応えて、3人とも立ち上がった。

 マッサージ・ベッドが3台並んでいるマッサージ・ルームで、私は短パンにランニングシャツ1枚の姿で両手にオイルをよく馴染ませている。2人はランニング・パンツを穿き、上はスポーツ・ブラだけでベッドにうつ伏せに横たわって両手をベッドの両脇に垂らしている。

「あんまり時間が無いから、1人10分でやるよ? 」

「…分かりました…」

「…お願いします…」

 エドナから始める事にした。そうすると告げてから彼女の腰の上に膝立ちで跨り、両手で頭皮のマッサージを始める。毛流と頭皮の毛細血管と痛覚神経と表情筋の流れにも沿って強・中・弱でマッサージする。頭皮から耳の周りとツボ。そこから首。首から肩。肩から上腕。肩に戻ってまた頭皮。頭皮から顔面。表情筋の流れを丹念にマッサージして、顔のツボも適切な強さで指圧する。また肩から肩甲骨周辺。肩甲骨から筋肉を剥がすようにマッサージして、脊椎の両脇のポイントを上下に移動しながら指圧。脇腹の筋肉と大殿筋の中のポイントを指圧して解し、そのまま深部マッサージを施す。また脇腹から肩・肩甲骨周辺へと丹念に揉み解し、仰向けになって貰って顔面の表情筋をもう一度丹念に揉み解してから、首から肩から大胸筋から脇腹へと下がりつつマッサージと指圧を施す。次に両腕の筋肉と肘・手首・指の筋肉と関節を揉み解し、掌に集中するツボに対して丹念な指圧と揉み解しを時間を掛けて行う。また脇腹から腹筋から太腿のリンパ節に沿って流れを促すマッサージと指圧を施す。足の裏にもツボが集中しているので、そこにも丹念に指圧とマッサージと揉み解しを施す。

 2人とも全く同じ手順で施術したのだが、仰向けになって貰ってからは声が上がり始めて、最後の2分間は自ら腰を跳ね上げて絶叫の連続だった。

 1人に就き10分。2人で20分の施術を終えた。流石に疲れた私は、マッサージ・ルームの壁際にへたり込んで荒い息を吐いていたが、ようやっとで立ち上がると既に目を醒ましていたエドナを抱き起した。

「…さあ、エドナ…3人でシャワーを浴びて行こう…そろそろ時間になるよ…」

「…分かり…ました…すみません…まだ力が…」

「…よし…そうだ…足を降ろして…そう、踏ん張って立って…そう、レナを起して? 」

「…分かりました、レナ! ホラ! 起きなさい! レナ! 」

 エドナがレナに声を掛け、身体を揺すり顔や肩を軽く叩いて目を醒まさせる。

「…ア…あ、あ…エドナ? あ、アドルさん…ここは?…私は?…はっ! あっ、すみません! 」

「おう、眼が覚めたな。慌てるなよ…足を左に降ろして…そうだ。支えるから、踏ん張って立って? そう…」

「…あ、ありがとうございます…すごい…まだちょっと…ふらふらしてます…」

「肩を貸すから…そう…よし…じゃあ一緒に…シャワー・ルームに行くよ? 」

「…はい…すみません…」

 レナに左肩を貸し、エドナはレナを右脇から支えながら歩き出して、シャワー・ルームに入る。レナはエドナに任せて私は隣のブースに入り、シャンプーとソープを使って手早く体中を洗って洗い流す。先に出てタオルを使い、下着を着けてから2人の為にタオルを下着と服とで一緒にしてカゴに入れ、脱衣場の棚に置いてその旨を2人に告げる。服を着て身嗜みを調え、改めてタオルに髪の水分を吸い取らせてブラシで髪形を調えている時に、2人が出て来た。

 2人を観ないように脱衣場から出ると、隣の休憩室に入って紙コップに水を出させて座って飲む。煙草を持って来なかった事を少し悔やんだが仕方ない。もとよりここに灰皿は無い。

 暫くして2人が休憩室に入って来た。紙コップに水を入れて2人に渡す。うん。施術する前よりも血色が好い。身体の動きも軽やかに観える。

「…ありがとうございます。頂きます…」

「…ブリッジに上がったら、好きな飲み物を出したら好い…じゃあ、行こうか? 」

 3人とも水を飲み干して紙コップを潰して捨てる。

「…まあ念の為に言うけど、僕のマッサージは正式に習ったものではなくて独学で構築した我流だからね。知らずに良くない事をしてしまったかも知れない。後でどこかが痛くなったり、違和感があったりしたら遠慮なく言ってくれ。医療部に許可を取らなかったのも、マズかったかも知れないからね…」

「…お気遣い、ありがとうございます。でも大丈夫です。本当に気持ち好かったですし、芯から癒されましたし、身体もすごく軽く動くようになりました…ありがとうございました…」

 エドナがそう言いながら私を観る。レナもそうだが、2人とも眼がキラキラとして潤んでいる。

「どう致しまして。いつでもどうぞ。でも暫くは体調を監視してな? じゃ、もう行こうか? これ以上ここに3人でいたら、2人にキスしたくなっちゃうからさ(笑)? 」

「…キスして下さい! お願いします! 」

 そう言いながらエドナが私の胸に跳び込んで来る。レナも一緒に来たから、2人を両手で抱き止めた。

 エドナの顔を仰向けさせて唇を重ね、舌を絡めて30秒。レナにも同じようにした。終わると2人とも腰が抜けたように座り込む。

「さあ、もう皆がブリッジで待っているから行こう。2人が行かないと始まらないよ」

 そう言いながら、2人の手を取って立ち上がらせる。

『ブリッジよりアドル艦長へ。聴こえますか? 』

「ああ、良く聴こえるよ。シエナ副長」

『今はどちらにいらっしゃいますか? 』

「ファースト・エクササイズ・トレーニング・デッキの休憩室に3人でいるよ」

『エドナとレナは配置に就けますか? 他のクルーは既に配置に就いていますが? 』

「ああ、すまない。待ってくれ。直ぐに向かうから」

『了解しました。お待ちしています。エドナより以上』

「よし、2人とも行くよ」

「ハイッ! 」

 2人とも元気よく応えて、3人一緒にブリッジに向かった。

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