戦いの中で無力化しながら成り行きで放置される事になった廃棄寸前の宇宙要塞を再生・再建して盛り返し、周辺宇宙の全域で最強にします。

トーマス・ライカー

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 それから1時間で、特務派遣艦3隻への物資搬入は終わった。


 全員が、1番艦である軽巡宙艦『スプリング』の右舷展望デッキに集合して、面舵を切って遠去かり征く『グラスタン』を敬礼で見送る。


 あと30分程で全艦隊がディメンション・スペース・ドライヴに入る筈だ。


 右手を下ろしたスコット・バウアーが皆を振り返る。


「…マーク…デニス…ハリット…レジーナ…ナタリー…ティパナリーは、2番艦の『サマー』へ……マグナス…ヘルベルト…ロジェ…ダーナ…グレテ…ニーナは、3番艦の『オータム』へ……残りはこの『スプリング』に残って操艦し、要塞に向かう…質問は? 」


「…取り敢えず、セントラル・ドックに入るのか? 」


 マーク・アンドリューが訊く。


「…そうだな…取り敢えず目指そう…こっちからのアクセスでゲートが開かなければ、撃ち壊してでも入る…じゃあ、それぞれランチに乗って移乗してくれ…」


「…アタシ達の任務が今から始まるんだけど…皆、死なないでね? 」


 レジーナ・クラークが見渡して言う。


「…そうだ……俺達は20人しかいない……これはチームで…同時に家族だ……そしてこの任務は長く続く……どこまでやれば達成なのかも…完了と言えるのかも分からない……長く続く中で誰かが欠ければ…それだけ達成も完了も難しくなる……だから死なないでくれ……これは命令じゃなくて頼みだ……俺達の命は…それぞれ自分だけのものではないのだと言う事を忘れないでくれ……じゃあ、行こう…」


 20人はそれぞれに分かれて、展望デッキから出て行った。


 スコット・バウアー…バーン・ゴーマン…オメロ・アルト…ロシャン・セス…マキシム・ガルキン…ナタリア・オレイロ…レナーテ・ミューラー…ラウラ・フェネシュ…ブルーナ・アラガンが『スプリング』のブリッジに向かう。


 20人しかいないから、準備が整う迄に3時間掛かった。


 『スプリング』を先頭に、右に『サマー』…左に『オータム』を配置して3隻は発進した。


「…あの要塞…何て呼ばれてましたっけ? 」


 オメロ・アルトだ…パイロット・シートに座って操りながら、携行非常食を齧っている。


「…傍受した交信の中では確か…『グーン』とかって言ってましたね…」


 ナビゲーションとレーダーのサイトを観ながらラウラ・フェネシュは、オレンジ・ジュースを飲んでいる。


「…我々の進駐に対して、何らかの抵抗があるでしょうか? 」


 エンジニアリング・シートでパワー・アセンブリをモニターしながら、マキシム・ガルキンが訊いた。


「…要塞にはもう基幹となるパワーが無い……手持ちの武器や兵器がどれだけ有っても、組織的に戦える戦力が無いなら…然程気にする必要はないだろう……多少あったにしても、この3隻なら制圧できるよ…」


「…何人が残っているんでしょう? 」
 

 レナーテ・ミューラーは、レーザー・センサーと環境制御システムを観ながら、茹で卵を食べている。


「…何千人もは…いないだろうな…セントラル・ドックの中で、かなりの爆発が観測されている……脱出の混乱で取り残されているんだろう…非戦闘員も相当数、いるんだろうな…」


「…セントラル・ドックの管制エリアまで、あと10分だ…」


 ロシャン・セスが言う。


「…よし…呼び掛けてくれ…応答があるかどうかは微妙だがな…」


 それから7分…


「…応答、ありません……管制エリアに入ります…」


「…もっと接近して、ドック・ゲートの管制システムにアクセスしよう……こちらからのオーダー・コマンド・ディレクションで、ゲートを開けるんだ…」


 『スプリング』のメイン・コンピューターからシステムに侵入…アクセスしてコマンド・コードの解析までは順調だった。


「…ダメですね……コマンド・コードのオーダー・ディレクションまでは通じましたけど、動きません……こちらからの観測では、メイン・パワー・グリッドが殆ど空です……」


 バーン・ゴーマンが、どうしようかと言った風情で言う。


「…サブ・パワー・グリッドはどうだ? アクセス出来ているんだろう? 」


「…アクセスは出来ていますが、こちらのオーダー・ディレクションに応えません……こちらの観測ですが、今あの要塞の環境制御は…サブ・グリッドのパワーで動いています…」


「…サブ・ゲートはどうだ? 」


「…セントラル・ゲートにパワーが通じていないせいか、サブ・ゲートは総てロックされています…」


 ナタリア・オレイロが、コーヒー・カップを置いて応えた。


「…う…ん…このまま手をこまねいていて…サブ・グリッドのパワーが切れれば、中の人達の生存にも関わってくる……意見はあるかい? 」


「…後の再建を考えれば、ゲートは壊したくないな…」


 ロシャン・セスだ。


「…メンテナンス・ハッチは開けられるだろうけど、時間が掛かり過ぎるよね…」


 レナーテ・ミューラーが言う。


「…止むを得ないな…ここは押し切ろう…こちらから観て、セントラル・ゲートの左下に観えるサブ・ゲートを突破する! 僚艦に連絡してくれ……主砲の斉射でゲートを開閉させるギア・システムを破壊する! 」


「…了解! 」


 3隻は20分で砲撃位置に着いた。


「…撃て! 」


 3隻の主砲、9砲塔からの斉射が先ず左側のギア・ボックスを破壊し、次いで右側のギア・ボックスも破壊した。


「…センサーでゲートを観測。左右どちらに牽引すれば良いかな?」


「…待って下さい……左から右に引っ張れば良いみたいですね……」


 オメロ・アルトが覗き込んでいた、センサー・ステージ・サイトのモニターから顔を上げる。


 3隻が全部で12本のアンカー・ワイヤーを伸ばし、サブゲート・ドアの左側に懸架して…タイミングを合わせて牽引した。


 多少手間取ったが、30分程度でゲートを開けた。


「…よし…『スプリング』を先頭に単縦陣たんじゅうじんで進入する…自動迎撃システムが動くかも知れないから、シールド・アップ! 」


「…了解! 」


 3隻は縦に並んでサブ・ゲートから入ったが…抵抗どころか、何の反応も無かった。


「…最寄りのポートから、並んで接舷してくれ…」


「…了解…エネルギー・レベルが低いですね…人の気配がありません…空気も澱んでいます…汚染レベルにまではいきませんが…」


「…各艦とも2人だけ残して下艦…先ずコントロール・センターを目指す…」


 接舷した3隻から15人が降り立つ。


 銃を携行して降りたが、まだ抜いてはいない。


 スコット・バウアーとマーク・アンドリューが、改めて握手を交わした。


 15人はコントロール・センターを目指して走り出したが、かなり遠い。


 アイオノクラフトで動く6人乗りのシュッター・カタムが3台乗り捨てられているのを見付けたので、調べてみたらまだ動く事が判った。


 路面に引っ張り出して分乗し、走り出す…抵抗どころか誰とも擦れ違わないし、人影さえ見掛けない……7分でセントラル・デッキに入った。


 カタムを止めて降り、徒歩で中央指令室のドアに歩み寄る。


 流石に人感センサーに捉えられて、ドアはスムーズに開いた。


 これも予想通りだったが…誰もいない。


 司令部を構成していたスタッフは、脱出したのだろう。


「…先ず、トライ・コーダーのセンサーで、ブービー・トラップが仕掛けられているのかどうかを確認するぞ……無いのが確認できたら……手分けして、システムチェックに掛かる……今のエネルギー・レベルでメイン・リアクターを再起動できるかどうか……次にセンサーを起動させて、生存者の確認だ……」


 15人が全員、携行して来た携帯型の『トライ・インベスティゲイション・アナリシス・コンクルージョン・レコーダー』【調査・分析・結論提示・記録するセンサー・ボックス】を取り出して起動し、回りの何にも触らずにセンサーで調べ始める。


 15分間はそれで調べ廻って、トラップの無い事は相互に確認した。


 各自トライ・コーダーを仕舞って、システムチェックに掛かり始める。
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