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18.レオとのデート
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翌日、私は出かける前から緊張していた。
(どうしよう、結局お礼を渡すか決められなかった……。渡すとしてもいつ渡したら良いの?)
「お待たせソフィア、じゃあ行こうか」
「あ、はい」
「この間行ったカフェの近くにバラ園があるんだ。今が見ごろだって聞いたからソフィアと行ってみたいなって思って……って、あれ? どうしたの?」
私が道中挙動不審だったため、レオは不思議そうに私に尋ねてきた。
「いえっ! あの、えーと……」
「うん」
(どうしよう、何て言ったら良いの? お礼を渡そうと思ったけど微妙なものだから渡すか悩んでる、なんて本人に言えないわよ)
私が何て言おうか分からずに固まっている間、レオは優しい目でこちらを待っていてくれる。その顔を見ているとなんだか何も考えられなくなり、勝手に口が開いていた。
「この間一緒にお出かけした時、すごくお世話になったし色々ご迷惑をおかけしてしまったので、そのお詫びというかお礼というか……これを作ったんですけど」
(あれ? 何やってるの私!? 渡しちゃった……)
自分の行動に動揺している私をよそに、レオは嬉しそうな顔をして包みを眺めている。
「ありがとう、すごく嬉しい。開けてもいい?」
「……はい。あんまり上手く出来なくて、渡すのも失礼かと思ったんですが……」
「ハンカチだ! この刺繍、ソフィアがやってくれたの? 可愛らしいね。ありがとう! 大事にするよ」
「はい……」
(受け取ってもらえた。それに、本当に喜んでくれてるみたい……)
レオの反応が思いのほか良かったことにホッと胸をなでおろした。どうやら私の下手くそな刺繍は、ちゃんとお礼として機能したようだ。
「ねえ、どうしてハンカチを選んでくれたの?」
ハンカチを広げて空に向かって掲げながらレオが上機嫌で聞いてきた。
「えっと、刺繍が一番しやすそう……だったからです。私は刺繍が苦手なので……」
「なあんだ。知っててくれたのかと思った」
レオはわざとらしく肩を落として残念……と呟いた。
「え?」
「この国でハンカチを異性に渡すっていうのは、好意を示すことになるんだよ。聞いたことない?」
「ええ!? すみません、私が無知でした。……ご気分を害されましたか?」
ハンカチにそんな意味があったなんて知らなかった。知らなかったとはいえ、いくらなんでも失礼すぎる行為だ。必死に頭を下げているとレオが面白そうに笑っていた。
「まさか。だって俺、ソフィアのこと好きだから。むしろ嬉しかったよ。だから、そんなに謝らないで」
「えぇ……!?」
まさかの返答にまじまじとレオの顔を見てしまう。
「好きだよ。今日ちゃんと言おうと思ってたから、こんな風に言わされると思わなかったけど」
「なっ……」
(レオが私のことを好き? 何かの間違いじゃないかしら……私、失態しか見せていないのに)
「あはは、固まっちゃったね。とりあえず行こうか」
手を差し出されて思わずにぎってしまう。心臓がドキリと高鳴った。
(あれ、今レオと手をつないでる? なんだか身体が熱い……)
つないだ手がとても熱くなって、そこから体中の体温が一気に上昇した気がした。
バラ園に着くと、華やかな花の香りが私たちを出迎えてくれた。
「いい匂い……それにとっても綺麗ですね」
「本当だね。ほら、あっちにバラのトンネルがあるよ。行ってみようか」
「はい!」
まだ心臓はドキドキしていたけれど、だんだんとバラ園の美しさに夢中になっていった。
(どうしよう、結局お礼を渡すか決められなかった……。渡すとしてもいつ渡したら良いの?)
「お待たせソフィア、じゃあ行こうか」
「あ、はい」
「この間行ったカフェの近くにバラ園があるんだ。今が見ごろだって聞いたからソフィアと行ってみたいなって思って……って、あれ? どうしたの?」
私が道中挙動不審だったため、レオは不思議そうに私に尋ねてきた。
「いえっ! あの、えーと……」
「うん」
(どうしよう、何て言ったら良いの? お礼を渡そうと思ったけど微妙なものだから渡すか悩んでる、なんて本人に言えないわよ)
私が何て言おうか分からずに固まっている間、レオは優しい目でこちらを待っていてくれる。その顔を見ているとなんだか何も考えられなくなり、勝手に口が開いていた。
「この間一緒にお出かけした時、すごくお世話になったし色々ご迷惑をおかけしてしまったので、そのお詫びというかお礼というか……これを作ったんですけど」
(あれ? 何やってるの私!? 渡しちゃった……)
自分の行動に動揺している私をよそに、レオは嬉しそうな顔をして包みを眺めている。
「ありがとう、すごく嬉しい。開けてもいい?」
「……はい。あんまり上手く出来なくて、渡すのも失礼かと思ったんですが……」
「ハンカチだ! この刺繍、ソフィアがやってくれたの? 可愛らしいね。ありがとう! 大事にするよ」
「はい……」
(受け取ってもらえた。それに、本当に喜んでくれてるみたい……)
レオの反応が思いのほか良かったことにホッと胸をなでおろした。どうやら私の下手くそな刺繍は、ちゃんとお礼として機能したようだ。
「ねえ、どうしてハンカチを選んでくれたの?」
ハンカチを広げて空に向かって掲げながらレオが上機嫌で聞いてきた。
「えっと、刺繍が一番しやすそう……だったからです。私は刺繍が苦手なので……」
「なあんだ。知っててくれたのかと思った」
レオはわざとらしく肩を落として残念……と呟いた。
「え?」
「この国でハンカチを異性に渡すっていうのは、好意を示すことになるんだよ。聞いたことない?」
「ええ!? すみません、私が無知でした。……ご気分を害されましたか?」
ハンカチにそんな意味があったなんて知らなかった。知らなかったとはいえ、いくらなんでも失礼すぎる行為だ。必死に頭を下げているとレオが面白そうに笑っていた。
「まさか。だって俺、ソフィアのこと好きだから。むしろ嬉しかったよ。だから、そんなに謝らないで」
「えぇ……!?」
まさかの返答にまじまじとレオの顔を見てしまう。
「好きだよ。今日ちゃんと言おうと思ってたから、こんな風に言わされると思わなかったけど」
「なっ……」
(レオが私のことを好き? 何かの間違いじゃないかしら……私、失態しか見せていないのに)
「あはは、固まっちゃったね。とりあえず行こうか」
手を差し出されて思わずにぎってしまう。心臓がドキリと高鳴った。
(あれ、今レオと手をつないでる? なんだか身体が熱い……)
つないだ手がとても熱くなって、そこから体中の体温が一気に上昇した気がした。
バラ園に着くと、華やかな花の香りが私たちを出迎えてくれた。
「いい匂い……それにとっても綺麗ですね」
「本当だね。ほら、あっちにバラのトンネルがあるよ。行ってみようか」
「はい!」
まだ心臓はドキドキしていたけれど、だんだんとバラ園の美しさに夢中になっていった。
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