家族から虐げられた令嬢は冷血伯爵に嫁がされる〜売り飛ばされた先で温かい家庭を築きます〜

香木陽灯

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一歩前進

「え……?」

 クロードは固まるナタリアの手をそっと握り、ナタリアの目を覗き込んだ。

「君の家族は、ヴィルト男爵と僕だろう? あのような人でなしは君の家族ではないよ」

 諭すように話すクロードは優しい表情をしており、柔らかい視線がナタリアの頬を赤く染めた。

「クロード様……ありがとうございます」

 赤くなった頬を誤魔化すようにナタリアがぎこちなく笑うと、クロードは満足そうに手を離した。

「さて、そんなことより、出かけたついでに買い物をしてきたんだ。受け取ってほしい。気に入ると良いのだが」

 買い物? とナタリアが不思議に思っていると、先程二人を追い出した使用人達が荷物を抱えて戻ってきた。

 大きな箱がいくつも運び込まれ、クロードがその中の一つを開封すると、中から服や装飾品が出てきた。

「これ、全部ですか? こんなにたくさん……!」

「昨日持ってきた荷物があまりにも少なかったとポールから報告があってな。生活に不自由しないように最低限のものは揃えたつもりだ。不足があったら言ってくれ」

「いえ、充分すぎるくらいです」

 そもそも実家にいたときでさえ、たくさんの服を持っていた訳ではない。いつも使用人の制服を身に着けていたのだから。

「そうか? 結婚披露パーティー用のドレスは用意していないから、君の好きなものを買おう。今度仕立て屋を呼ぶからデザインを指示してくれ」

 パーティーに出席してこなかったナタリアは、当然ドレスなど持っていない。好きなデザインと言われてもピンとこなかった。

 その上プレゼントを貰うことにも慣れていなかったため、居心地が悪かった。

(そもそも、なぜ私にここまでしてくださるのかしら?)

「どうして……」

「うん?」

「どうしてこんなにも良くしてくださるのですか? 私なんかに」

「それは……君が僕の婚約者だからかな。前にも言ったけれど、僕との結婚で君に迷惑をかけることになる。だからせめて日々の暮らしだけでも快適に過ごしてほしいんだ」

 神妙な面持ちのクロードを見て、ナタリアはいたたまれない気持ちになった。

(クロード様は何も悪くないわ。私に迷惑だなんて考えなくて良いのに)

「そんなこと私は気にしません! むしろ私が義母達のことでご迷惑をおかけしているのに……」 

 大きな声を出したナタリアを見て、クロードは少しだけ可笑しそうに笑った。

「君は優しいな。……もう、お互い申し訳無さそうにするのは止めないか? 僕も君もお互い気にしていないようだし」

(確かに、お互いがお互いに謝ってばかりでは何も進まないし)

 クロードの提案にナタリアの心は少しモヤモヤが晴れた気がした。

「……そうですね。止めましょう!」

(なんだか少しだけクロード様に近づけた気がするわ)
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