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「殿下、今一度よくお考えください。今は帝国に争いを仕掛けるべきではありません。国中一丸となって、瘴気や病と闘うのです」
「だが……俺は……」
アレクサンドロスが躊躇していると、皇帝が大きなため息をついた。
「なんだ、つまらん。こちらとしては争っても構わんのだが」
「陛下、民をお守りいただきたいと、以前お願いしましたね。聞き入れてくださったはずです。お守りいただけないのなら、私はもう失礼させていただきますよ」
ニーナは皇帝にも厳しい視線を向ける。
(約束を違えないでちょうだい。私が納得する判断を下すと言ったのだから)
皇帝は分かったと言わんばかりに両手を小さく上げた。
「本来の聖女は器が違うな……ははは。安心しろ、争いにもならんだろう。さてアレクサンドロスよ、ひと月だけ時間をやろう。自国の身の振り方をよく考え、ルティシア国王に意思を伝えよ。次はお前からではなく国王からの返事を期待しよう」
「お、俺では不満なのか!? 俺は国王陛下から外交を一任されているのだぞ!」
大人しくなっていたアレクサンドロスが再び怒り出す。
(もぉー!!)
ニーナが頭を抱えていると、大司教の笑い声が聞こえた。
「ほっほっほ、陛下は手厳しいですなぁ……。しかし、我が国の代表が取り乱したのは事実。どうですかな、一度この二人には退出いただいて、話し合いを続行しませんか? 私が代理を務めましょう。アレクサンドロス殿下は少し休んだ方が良い」
大司教が指示すると従者たちがさっと現れ、アレクサンドロスとマリアを出口へと案内し始める。
「おい! 俺なしで話を進める気か!? 大司教なんかに代理が務まるものか!」
フェルディナンドは最後までわあわあと文句を言っていた。
一方のマリアは、言われるがままに立ち上がるとふらふらと歩き出す。
そしてちょうどニーナの目の前を通り過ぎる時、ふらりと転んだのだ。
「大丈夫ですか?」
ニーナが思わず立ち上がって手を差し伸べると、マリアがそろそろと手を取った。
そして立ち上がる瞬間――
「大司教には気をつけなさい。貴女、また騙されるわよ」
ニーナの耳元で無声音が響いた。パッとマリアを見るが、彼女は虚ろな目のままふらふらと立ち上がって再び歩き始めた。
(今の、なに……?)
ニーナが言葉に気を取られている間に、マリアもアレクサンドロスも退出してしまった。
「さて……邪魔者はいなくなりましたのでお話をしましょうか」
大司教がゆったりと座り直す。
ニーナはその姿を見てゾクリとした。
彼の目つきは、興奮に満ちていたのだ。
皇帝は大司教を見て喉を鳴らす。
「悪い男だ。これから自らの国を売り払う算段を話すというのに」
「私は神の御心のままに行動しているだけですよ。さて、ニーナ・バイエルン」
「はい……」
突然名前を呼ばれ、ニーナは警戒した。
「そう構えないでください。今から話すのは昔話です」
そして大司教が語りだしたのは、ルティシアの秘密だった。
「だが……俺は……」
アレクサンドロスが躊躇していると、皇帝が大きなため息をついた。
「なんだ、つまらん。こちらとしては争っても構わんのだが」
「陛下、民をお守りいただきたいと、以前お願いしましたね。聞き入れてくださったはずです。お守りいただけないのなら、私はもう失礼させていただきますよ」
ニーナは皇帝にも厳しい視線を向ける。
(約束を違えないでちょうだい。私が納得する判断を下すと言ったのだから)
皇帝は分かったと言わんばかりに両手を小さく上げた。
「本来の聖女は器が違うな……ははは。安心しろ、争いにもならんだろう。さてアレクサンドロスよ、ひと月だけ時間をやろう。自国の身の振り方をよく考え、ルティシア国王に意思を伝えよ。次はお前からではなく国王からの返事を期待しよう」
「お、俺では不満なのか!? 俺は国王陛下から外交を一任されているのだぞ!」
大人しくなっていたアレクサンドロスが再び怒り出す。
(もぉー!!)
ニーナが頭を抱えていると、大司教の笑い声が聞こえた。
「ほっほっほ、陛下は手厳しいですなぁ……。しかし、我が国の代表が取り乱したのは事実。どうですかな、一度この二人には退出いただいて、話し合いを続行しませんか? 私が代理を務めましょう。アレクサンドロス殿下は少し休んだ方が良い」
大司教が指示すると従者たちがさっと現れ、アレクサンドロスとマリアを出口へと案内し始める。
「おい! 俺なしで話を進める気か!? 大司教なんかに代理が務まるものか!」
フェルディナンドは最後までわあわあと文句を言っていた。
一方のマリアは、言われるがままに立ち上がるとふらふらと歩き出す。
そしてちょうどニーナの目の前を通り過ぎる時、ふらりと転んだのだ。
「大丈夫ですか?」
ニーナが思わず立ち上がって手を差し伸べると、マリアがそろそろと手を取った。
そして立ち上がる瞬間――
「大司教には気をつけなさい。貴女、また騙されるわよ」
ニーナの耳元で無声音が響いた。パッとマリアを見るが、彼女は虚ろな目のままふらふらと立ち上がって再び歩き始めた。
(今の、なに……?)
ニーナが言葉に気を取られている間に、マリアもアレクサンドロスも退出してしまった。
「さて……邪魔者はいなくなりましたのでお話をしましょうか」
大司教がゆったりと座り直す。
ニーナはその姿を見てゾクリとした。
彼の目つきは、興奮に満ちていたのだ。
皇帝は大司教を見て喉を鳴らす。
「悪い男だ。これから自らの国を売り払う算段を話すというのに」
「私は神の御心のままに行動しているだけですよ。さて、ニーナ・バイエルン」
「はい……」
突然名前を呼ばれ、ニーナは警戒した。
「そう構えないでください。今から話すのは昔話です」
そして大司教が語りだしたのは、ルティシアの秘密だった。
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