国に尽くして200年、追放されたので隣国の大賢者様に弟子入りしました。もう聖女はやりません。

香木陽灯

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「うぅ……ダメ。アレクサンドロス様は悪くないわ。ごめんなさい……私が悪いの。私、貧乏な男爵令嬢である自分が嫌だった。大司教様に『殿下と結婚すれば、一生金に困らない。貴女にはチャンスがある』って言われて……それでアレクサンドロス様に近づいたの。でもっ、本当に好きになっちゃって、騙されても良いから聖女になりたいって……。最初はそれだけだったの。でもどんどん自分が醜くなって……貴女にひどい事をしたわ。貴女はあんな痛みに耐えていたのに……私なんて一度も浄化出来なかったのにっ……」

 マリアはボロボロと涙を流して話し始めた。

(やっぱりマリアを殿下に近づけたもの大司教なのね)

 聖女の力を吸い取る水晶をマリア渡すよりずっと前から、大司教は計画を動かしていたのだ。

「マリア、貴女の力は後で消してあげる。だからもう聖女じゃないわ。ただのマリアとして、殿下に話すことがあるでしょう?」

 アレクサンドロスは、ニーナとマリアのやり取りを目を丸くして見つめていた。
 ニーナはマリアをアレクサンドロスの方に押し出す。

「マ、マリア……正気に戻ったのか?」
「アレクサンドロス様……申し訳ありません。私っ……貴方にもひどい事を……自分勝手なことを言いました。貴方を苦しめたのは私です。申し訳ありませんでした」

 泣きながらアレクサンドロスに頭を下げるマリア。

 アレクサンドロスは何かに耐えるようにじっと立ち尽くしていたが、やがてはじけるように彼女をさっと抱きしめた。

「いいんだマリア! 俺もすまなかった。もっと君の苦しみに寄り添うべきだったんだ……。俺が馬鹿だった」

 ニーナは二人が謝罪し合う様子を見て、そっと部屋を出た。




 一ヶ月後、ルティシアはセレンテーゼ帝国の従属国となった。
 いわゆる無血開城だ。王家は解体し、国教も廃止。当然、聖女制度もなくなった。

 マリアの聖女の力は水晶で回収し、その水晶は賢者の塔で厳重に保管されている。



 ルティシア国王は息子の暴走を止められなかったことを理由に、僻地で幽閉されることとなった。

 アレクサンドロスとマリアは、平民となり農村へと送られた。
 どうやら二人は今でも仲良くやっているようだ。
 一度だけ謝罪と感謝の手紙が届いたが、ニーナが返事を出すことはなかった。

 大司教はというと、終身刑となり、一生を独房で過ごす事となった。

(大司教は他人を動かすのが上手い。目的を果たした今、危険は少ないけれど……野放しには出来ないわ)

 ルティシアでは死刑の次に重い刑だ。
 ニーナは処分を決めたとき、大司教と直接話をした。

「貴方を終身刑にします」
「おや、死刑ではないのですね」

 大司教は少し驚きながら、「やはり聖女様は甘いのですね」と笑っていた。




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