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フェンネル家の使用人(2)

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「おやおや、ヘンリー様と随分親しくなられたのですねぇ」
「ヘンリー様って、見た目も素敵ですよね! もしかして……ここから恋が始まっちゃうのかしら? とってもお似合いです!」
「お茶会に誘ってみたらいかがでしょう? 私達も腕をふるいますわ」

 三人はヘンリーとクリスティーナが親しくなったのだと大いに喜んだ。

「ごごご、ごめんなさい。そういうのではないの! ヘンリー様は……私にお手伝いをお願いしに来ただけというか、ちょっとした仕事を依頼しに来ただけというか……とにかく! 親しくなった訳ではありませんっ!」

 クリスティーナがそう叫ぶと、三人は口をつぐんだ。
 しんとした静寂が部屋中を包みこむ。

(皆をガッカリさせちゃったわよね……私の説明が下手だから……)

 じわじわと目に涙が溢れてきた。なんと不甲斐ないのだろう。自分自身の問題を一人で解決する事も出来ず、上手く人に相談する事も出来ないのだから。
 俯いて目をぎゅっと閉じると、「お嬢様」と優しい声色の声が聞こえてきた。
 ふと顔を上げると、三人が申し訳無さそうな顔でこちらを見つめていた。

「失礼いたしました、お嬢様。我々は少々先走ってしまいましたな。お嬢様が外に出ようと考えてくださったことが嬉しくて……」
「え……?」
「幼い頃からお嬢様は我慢ばかりしておりました。そんなお嬢様が自らやりたい事を見つけて、その上、我々に話してくださった……それでつい興奮してしまいました。お許しください」
「そんな……謝らないで。あの、喜んでもらえて嬉しいのよ」

 彼らが少し暴走してしまったのは、クリスティーナのことを大切に思っているからだ。その気持ちはクリスティーナにも伝わってきた。

(今までちゃんと話をしたことがなかったけれど、三人とも私のことを見てくれていたのね。気づかなかった……きっと私が皆のことを見ていなかったからね)

 クリスティーナは前を向いた。そして三人の顔をしっかりと見つめて口を開いた。

「上手く説明出来ないのだけれど、貴族として社交界に出る必要があるかもしれなくて、まだ確定ではないんだけど……成り行きで……。私一人では抱えきれなくて、皆さんに相談したくて……」

(本当に上手く言えないっ! でもヘンリー様とのお話を打ち明ける訳にもいかないし……)

 タジタジになりながらも打ち明けると、三人は力強く頷いた。

「最初に申した通り、お嬢様なら大丈夫です。伯爵として社交界に出られるのでしたら、出来る限りサポートいたしますよ」
「私たちが素敵な伯爵様にして差し上げます!」
「どんな事情であれ、お嬢様が決めた事なら私達は応援しますよ」
「ありがとう……!三人がいてくれたら心強いわ」

 一人じゃない。クリスティーナは、相談する相手が出来たことの喜びを噛み締めた。

 クリスティーナが感動に浸っていると、マシューが明暗を思いついたとばかりに手を叩いた。

「領主代理にも相談してみてはいかがでしょう? きっとお力になってくれるはずです」
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