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冒険者Dとダドンの街

塩漬け案件2-龍の息子

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俺が向かったのは娼館だった。
別に女を買うためでは無い。アンナが居なければ遊びに来るのは吝かではないのだが。

覇王龍ズァークの記憶の中には息子の一人が人化して街に住んでいた。娼館『天越快楽』のオーナーがズァークの息子なのだ。
名前を”ストラーダ”と言う。
彼の協力を得れば好き者のゴルバカを牽制しながらアンナを助け出せるだろうと考えたのだ。助け出したのが冒険者の俺と知られるのは今後のアンナの事を考えると不都合だ。

なに、簡単な話だ。門番から聞き出した話の中にはゴルバカのバカ野朗は無類の女好きらしく娼館から女を呼んでいるらしい。毎晩のようにでは無くである。
それに紛れ込む予定だ。女に成るのは苦手だが潜り込むだけだから何とかなるだろう。

都合の良い事に娼館は決まっていた。『天越快楽』だったのだ。こりゃ何か裏があるよね。

俺は娼館『天越快楽』に乗り込んでそのまま女を選んだ。えぇ?楽しんでいる訳じゃ無いぞ!アンナが攫われたんだから!
時間も時間だから女は大した玉じゃ無かったが俺には問題なかった。一晩中抱き続けて女が疲れ果てて眠った明け方頃俺は動き出した。

女の記憶からオーナー室に行く。部屋を訪ってドアを叩くと入室許可の声がしたので開けると何もない大きな部屋に男がひとり座っていた。
覇気の強さからこいつがオーナーのストラーダだろう。
「只者じゃ無いと思ったが・・君は誰だ?」
低いイケボは見た目成人したての若さに合わない。龍だから見た目通りの年齢ではあるまい。

「あー実は頼みがある。」
「何だね、お客人。」
やっぱり『天越快楽』のオーナーだけはある。名乗りもしない無礼を気にもしない。何かしても対処できる自信があるのだろう、龍だけに。

「今日の娼婦に”アケミ”を加えて欲しい。」
「理由を聞いても?」
「ああ、無論だ。」

そうして俺は冒険者ギルドの受付嬢アンナが副街長ゴルバカに囚われている事を告げた。そして、俺がアンナを助け出すつもりの事も。
「それで、私にどんな利益が?」
「いや、利益なんかねぇ。あんたの秘密がバレて不利益がねえ事だけだな。」

ストラーダは座ったまま顎に手をやり考える。

「・・ほう、ここから出ていけるとでも思っているのかな?」
睨むでもなく淡々と言うのは事実を言っているだけだろう。

座った状態からいきなりストラーダは目の前に移動して正拳を俺の正中に打ち込んだ。
殺気も放たずに行動出来るなんて相当やるな。

飛び上がって脚をクッションに正拳の力を受け流しながら後方宙返りして、ドアを蹴りストラーダの頭を越えて前転しながら立つとストラーダの左捻りの蹴りが俺の脇腹狙いで放たれた。俺は飛び上り側転捻りで蹴りを躱してストラーダと正面から相対した。
さっきとは立ち位置が変わった。

「なんでぇー殺気がねえじゃねえか。」
俺を試すよ様な攻撃には龍の力は篭って居なかった。
ストラーダは構えを解くと自然体で立った。体から湯気の様に殺気と共に闘気が立ち昇った。

「ヘヘッ そう来なくっちゃな」
俺の笑いを含んだ挑発にストラーダは行為で応えた。

ストラーダの姿が消え、あらゆる方向から殺気が迫る。実態のある攻撃を払い、いなし、カウンターを加える。
次第と早くなる攻撃を受けながら俺もスキルを発動する。

風が唸り、空気が凍り、部屋全体がミシミシ音をたてる。
ストラーダの正拳を躱して俺の拳が眉間を打ち抜き、ストラーダがぶっ飛んで行くのを追いかけ、正中に蹴りを加えると壁と挟まれたストラーダがくの字になって血反吐を吐いた。

俺は摺足で後ろへ下がり様子を見る。

手を付いて呼吸を整えるストラーダは直ぐに立ち上がり訝しげにこちらを見た。
「何故、殺さない?」

肩を竦めて俺は言った。
「だから言ったろ。俺はあんたをどうにかしたいんじゃないんだ。アンナを救いたいだけさ。それにあんたは本気じゃなかったろう?」

目を瞬かせてストラーダは呆けたが直ぐに何事も無かった様に言った。
「何を知っているか教えてくれるなら協力しよう。」


◆◆アンナ視点◆◆
入って来たのはやっぱりゴルバカだった。トンブリに応対した秘書を連れている。秘書はおどおどしていたがゴルバカは喜色満面だった。

「おうおう、目が覚めたか。良かった良かった。」
睨みつけても何の痛痒も感じないようだ。ゴルバカは手をモミモミしながら話す。

「アンナ嬢は何故こんな状態なのか理解できないだろうから教えてあげよう、ふひっ」

「君は何度も私の誘いを断り挙句の果てには周りに迷惑してると言っているらしいね、ひひっ」

「だから、ちょっとだけ強引だったが来てもらったと言う事さ、はひっ」
ゴルバカは変な笑いを交えながら説明してアンナのベッドの周りをうろつく。
視線が手足に向くのを見るとゴルバカが言った。

「まぁ、暴れられても困るので拘束させて貰って居るが直ぐに外そう、ふひっ」
そう言ったゴルバカは懐からガラス瓶に入った紫色の何かを取り出した。

あたしの視線がそれに向くとまたもやご機嫌にゴルバカは説明する。

「これかい?これはね、君が進んで私に奉仕してくれるようになる薬さ、へへっ」
その言葉にとても嫌な予感がした。


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