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王都のQT

キュウの仕事ー商業ギルド3

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バッタ商会の会長らしき男に教えられた場所にアルトリア商会はあった。
店の前に大柄な逞しい女性が立っていたので声を掛けてみる。

「すみません、商業ギルドの配送の者です。荷物を運んで来ました。」
声を聞いた女性がこちらを見た。
浅黒い肌に黒く長い髪、腕を出していながら身体を覆う麻の服はあちらこちら汚れていた。
瑠璃色の瞳を煌めかせて女性が言った。
「あら、荷物かしら。」
「マリア•アルトリアさんですよね?」

頷いたので再度宛先を確認しながらズタ袋から四角い壺のようなものが入った木枠の荷物を出して渡す。
マリアは荷物を受け取って宛先を確認すると
「確かにあたし宛だわ。へー、ロンからね。・・・とするとあれか!」

笑顔になったマリアが受け取りにサインをしてQTに渡して来た。じっとQTを見てマリアは言った。
「小さいのに偉いわね!」

確かにマリアはずっと背が高かった。Dと変わらないほどの高さだった。
侮蔑する気は無い明るい声だった。きっと背の高さでは無く、見た目の年齢の事だろう。だからQTの返事は微妙になった。
「はぁ、これでも成人してます。」

「ごめんなさい~」
手を合わせて高い所からマリアが謝って来た。良いですよ~と謝罪を受け入れて気になった事を聞いてみる。荷物の事を聞くのはマナー違反かもしれないが興味があった。

「その荷物の中身は何なんですか?」
マリアがニマーと笑って言う。
「これはとっても高い化粧水なのよ。ロンにお願いしてあった物なのよ。」

そう言ってマリアは教えてくれた。
ロン•ベーリッカのベーリッカ商会は主に薬品を扱う商会で化粧水を始め、女性向けの薬品を造っているらしい。会合で会って話をしたとき海運で肌を焼いてしまい黒くなるのを気にしている事を話した所、入手は困難だが日焼けを防ぐ化粧水があることを教えてくれたらしい。そこから依頼して今回買ったという事だった。ほんの少量だが値段は金貨5枚はするらしい。
どうも仕事上の荷物でなく個人的な荷物だったようだ。マリアから女の子の気を付けるべき蘊蓄をたっぷり30分は聞かされてQTはアルトリア商会を後にしたのだった。

次の荷物を確認する前にQTは色々な人に会えて、こういった仕事も楽しいなと思う。冒険者として魔物と戦うのも緊張感があって張り合いがあるが、人と人との出会いが面白いと思えるのだ。
貿易の街ヨークゼンでのスラム暮らしは辛い事もあったが楽しいと思えたのはやっぱり人との出会いだったと思う。ちょっとだけ思い出す。

仕事に納得して最後の荷物を確認する。
20✕30✕3cmほどの荷物には送り先『暁燿旅団 ヴォルンタリ団長』で送り元『ロートル商会 アルクセイ•ロートル』とあった。
暁燿旅団の場所が分からなかった。戻ってマリアさんに聞くか商業ギルドに行って聞くか迷う。
マリアさんは楽しい人だったがこれから忙しくなる雰囲気だったし、どちらかと言うとここからなら南地区の冒険者ギルドが近い筈だった。傭兵ギルドの場所は全然分らないけど誰かに聞けるかも知れないと思う。

南地区の冒険者ギルドを目指して走り出す。大通りを外れ、狭い脇道とも言えない路地裏を通り抜け、民家の屋根の上を越えていく。
思った通りの場所に南地区の冒険者ギルドが見つかった。スラムのような雑多な場所に育ったQTは記憶力は良いのだ。

昼過ぎのおやつ時間のためかまだ冒険者ギルドは混雑していなかった。
ドアを開けて中に入るとのんびりとした雰囲気が漂っていて、柄の悪い冒険者の喧騒は無かった。むしろ、受付嬢が紙をめくる音が聴こえるくらい静かだった。

その中で埃舞う光指す中で熱心に紙をめくる受付嬢に目が行った。
QTはその受付嬢に向かって歩を進め椅子に座って、冒険者証を提示して言った。
「すみません、教えて欲しい事があるんですが」

胸のネームプレートには『アンナ』とある女性が顔をあげる。
美人という程ではないがやや吊り目で胸ばかりが大きな受付嬢が答える。
「はい、何か•••QTさんですか?」

冒険者証を見た受付嬢に訝しげな影が瞳に宿るがQTは言う。
「暁燿旅団という、たぶん傭兵ギルドの場所を教えて欲しいんです。」

アンナという受付嬢は指を顎に当てて考える。
「すみません、名前は聞いた覚えがあるんですけど私にはちょっと分らないので待って貰えます?」

相手が小さな娘と分かっているからか受付嬢アンナは丁寧に答えてくれた。
そして、奥に行って暫くすると小さな紙片を持って戻って来た。
「これに場所が書いてあるからどうぞ」

渡された紙片を見てQTは礼を言った。
「ありがとう。丁寧に対応してくれて」

冒険者ギルドの受付嬢はQTであっても結構ぞんざいな口を利くのだ。にっこりと笑う受付嬢アンナは答える。
「こちらの冒険者ギルドに配属に成ったばかりで、良く分からなくてごめんなさいね。昔は王都の東地区に住んでいたんだけどね。」

「そうなんですね!あたしは逆に王都に来てそんなに経っていないんです。商業ギルドの依頼をこなして少しは分かって来たんですけど、流石に傭兵ギルドまでは分からなくて。」
何故か余計なことまで話して、思わず口に手を当てる。

「ごめん!忙しいのに話し込んじゃって!」
「大丈夫です。私も仕事に慣れるようにしているところだから」
そう言って受付嬢アンナが微笑んだ。




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