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王都のQT

暁燿旅団

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20✕30✕3cmほどの荷物には送り先『暁燿旅団 ヴォルンタリ団長』で送り元『ロートル商会 アルクセイ•ロートル』

受付嬢アンナの微笑みに暖かい気持ちになったQTは紙片に書かれた場所へ走った。
場所は北地区の城壁近くのようだった。QTは知らなかったが錬金術ギルドや傭兵ギルドが密集しているのが北地区なのだ。
北地区が近づくに連れてあちこちの煙突からの煙が目立ち始める。そして広々とした庭を持つ邸宅が散見される。
そんな中、城壁の隣にという場所ながら大きな庭を持つ邸宅に辿り着いた。邸宅というよりも砦めいた無骨な造りと塀には崩れた跡や蔦が絡まって古風な雰囲気がある。
塀の中からは集団で稽古をしているような雄叫びや魔法に依る炸裂音と思われる音が響いていた。恐らくは魔法に依る結界も起動されているのだろうが漏れてしまっている。

塀に沿って歩くと門兵と思われる人が立っている入り口があった。QTは慌てず近づくと門兵に言葉を掛けた。
「商業ギルドの配送です。暁燿旅団 ヴォルンタリ団長様はいらっしゃいますか?」

門兵は衛兵よりも派手で防御力のありそうな制服を着て冒険者のように逞しかった。
「あん?荷物か、待ってろ。直ぐに確認してくる。」

そう言ってQTから荷物を受け取った。本人に直接渡すべきものだがこの場合は仕方ないと思う。

暫くすると荷物を受け取った門兵が戻ってきて言った。
「済まんが中に入って団長の所へ行ってくれ。庭で訓練しているから直ぐに分かると思うぞ!」

何故かヴォルンタリ団長さんに会わないといけないようだ。QTが良く分からないでいるとさっさと入れとばかりに門の中に押し込まれた。
受け取りさえ返してくれれば良いのになあと広い庭を見渡すと確かに集団に向かって声を上げている大男がいた。
たぶんあの人が暁燿旅団のヴォルンタリ団長なんだろう。

さっさと用事を済ませてしまいたいと思い小走りに近づいて声を掛けた。
「ヴォルンタリ様でしょうか?商業ギルドの配送の者です。お呼びとか?」

グォンと音がするように振り向いた大男は凄い揉み上げだった。しかも服の前を開けて胸毛まで見せていた。
「おお!あんたがきゅうぅてぃとかか?」

とても言いづらそうにQTの名を呼んだ。訝しげに肯定すると尚も言う。
「でぇい、から聞いてるぜぇ~。聞いた通りの美少女だなぁあ。」

ジロジロと舐め回すように大きな身体を屈ませて見てきた。思わずQTが手を身体に回して身を護る。それにしてもDからとは。いつ自分の事を話したのかと思う。
「Dから?」
「おおさ、商業ギルドの依頼で走り回っているからきゅうぅてぃとあったらよろしくと頼まれてぇんだ!」

普通に話しているのだろうがこちらにとってはとても大声で怒鳴られているように聞こえる。音圧で吹き飛びそうだ。
「どうだ!うちの団の訓練は?気になんだろ!」

ヴォルンタリ団長の声がでかすぎるから首を訓練中の団員の方へ向けていたら興味があって見ていると勘違いしたようだ。
「あ、いえ•••」

余り強く否定しては失礼かと小声になったせいか、更に言われる。
「やってみっか?冒険者と違ってまた傭兵の戦い方も面しれぇぜ!うおおぉい、ダリ!こっち来い!」

訓練中の団員を呼んだようで槍を持つ小柄な女性が駆けて来た。
「お呼びでしょうか?団長」

黒髪で腰まで長い髪を揺らして呼び付けられた女性が胸に拳を当てて礼をする。QTとほぼ同じくらいの背丈でありながら細身でとても小顔だった。胸も小さそうだ。南地区の冒険者ギルド受付嬢アンナを思い出す。
「こいつぁダリだ!」

QTに向かってヴォルンタリ団長が言う。
「ダリ!きゅうぅてぃに稽古つけてやれ!」

ダリがQTに向かって微笑んだ。
「私はダリア•マルチネスです。ダリって呼んでね。よろしく、きゅうぅてぃさん」
「あ、いや。あたしはQTです。キュウって呼んで下さい。」

ダリに連れられて何故か訓練を受ける事になったQT。
QTが短剣使いと知るとダリと同じ槍を扱ったほうが良いと勧められ、ダリの槍を借りてダリのように振ってみる事になった。
ダリから借りた槍はとても軽く靭やかで扱いやすかった。冒険者として魔物と戦う分には短剣が良さそうだが対人戦闘では槍でも行けそうな気がする。

ダリに槍の扱いを習いながらお喋りをする。
他愛のない話からQTの受けている商業ギルドの配送の事まで話していると何故か胸の話になる。
そして、南地区の冒険者ギルド受付嬢アンナの事を話すと急にダリは動きを止めた。
「え?そのアンナさんはどんな感じの方?」

QTが怪訝な思いで見た目を話すとダリは言った。
「その人、ずっと探していた私の知人かも知れません。ねえ、この後一緒に行ってくれない?」

ダリの気持ちもわかるけどあたしはまだ仕事の途中・・・あっ!送り状のサイン貰ってない!
ダリとふたりでヴォルンタリ団長の所へ行き、あたしは送り状のサインを貰い、ダリは訓練を止めて外出許可を貰っていた。どうやらヴォルンタリ団長はダリの知り合いの事を知っていたらしい。二つ返事で許可が出る。

時間的にはもう日が暮れ始めていた。






    
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