無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

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王都のQT

新しいスキル

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見張りのねずみ顔の女を倒し、窓を破って逃げ出した。捉えられていたところは王都の南側の倉庫街に近い屋敷だったようだ。それに気づいてDの屋敷の方向がわかった。思わぬところで冒険者ギルドで請け負った依頼で覚えた地理が役に立った。

最短で屋敷に戻る為に屋根伝いに移動することにする。既に夜が明け始めていたので屋根を飛び移る時の音を煩くしない体重が助かる。でも、余り肉付が無い自分の身体は恨めしい。
沈み込みそうになる気分を振り払ってDの事を考える。屋敷にヨハンナさんやDが帰っていればチッチェから聞いて、心配しているだろう。逆に自分が帰ればジルやねずみ顔の女がまた襲って来るかも知れないと思うと迷惑かけてるなあと思ってしまう。
30分も掛からずに着いた。飛び込むようにドアを開けて声を上げた。
「Dー!」

居間のソファにはDとヨハンナさんとチッチェが居た。こちらを振り返るとDが言った。
「ほらな、QTなら無事に帰って来れると言ったろ」

ヨハンナさんは立ち上がるとあたしの名前を呼びながら抱きついてきた。
「良かったわ、心配したのよ」
「心配かけてごめんなさい」

とりあえず謝る。チッチェも安心したのか目に涙を浮かべながら頷いてくれた。
「それで何があったんだ?グレイラットの大群が押し寄せて来たとチッチェから聞いたが?」

Dがソファに座るように言って、自分も座る。あたしはヨハンナさんに抱きかかえられるようにDの反対側にヨハンナさんと並んで座った。
チッチェが紅茶をそっと差し出してくれた。チッチェに笑顔を向けて一口飲んだ後に自分に起きたことを話した。

ねずみ顔の女と人のジルが大量のグレイラットと襲ってきた事
ゾラにハニー家の証拠という胸の痣に魔力を流された事
理由は分からないけどと猫の姿に成れて拘束を解けた事

ヨハンナさんは心配顔で見ていたがDは改めてあたしを鑑定して言った。
「QT、スキルが変わっているぞ。」

Dが教えてくれたあたしのステータスは

QT
本名  キュート・テレジア・ハニー
通称キュウ
16歳 女 金髪蒼眼  E級冒険者
孤児上がりで身体の線は細く胸も薄い。ハニー家の孫。
固有スキル『まねまね』⇛『変身』クィール
一般スキル 『スリ』『逃走』『擬態』『記憶』

だと言う。胸が薄いは余計なお世話だよ!そしてスキルについてもっと詳しく鑑定して教えてくれた。

固有スキル『変身』
固有スキル『まねまね』がゾラの魔力によりゾラのスキル『獣化』の影響も受けてスキル変化を起こした。スキル『擬態』で対象となった生物の擬態状態がマックスになると固有スキルが追加される。

らしい。あたしが冒険者として森の中で良く見た猫型の魔物がクィールだったようだ。
見た目は体長1m程度で靭やかな尻尾も同じ位あり暗い緑色をした猫だと思っていた魔物だ。豹の魔物であるジルスターよりだいぶ小型だ。

「クィールだって?」
「まぁ、なんてこと!」
Dとヨハンナさんが驚く。
そんなに驚くことなのだろうか。結構あたしには慣れていて悪戯さえしなければ可愛い魔物だったのだが。

「森猫という動物がいるの。その動物が魔物、いえ精霊化したのがクィールと言われているのよ」
驚きながらもヨハンナさんが教えてくれる。それにしても精霊ってなんだろう。
あたしが首を傾げていると堪らずDが説明に入った。

「精霊ってのは聖なる力が意思を持った存在と言われていてな、スキルも精霊が与えたと言われてんだ。目撃例はほとんど無くて、信憑性は疑われて居るんだよ。俺も見たことは無い。魔森の奥に居るとか生き物がいない場所に居るとかよくわからんな。
そのせいか、見ることが出来たら運が向いてきてるとか、幸せになれるとか言う噂もあるくらいだ。」

Dの説明で出逢った森猫の事を思い浮かべた。確かにいつの間にか近くにいたし、特に何をされた記憶もない。ただ、じっと見詰められた記憶はある。意思を交わしたわけでもないけど、脅威が何も無いように優雅に立ち去る姿を擬態してみただけだ。
どう考えてもそれしかない。あれがクィールだったんだろう。なぜスキルに成ったのかなんて考えても無駄だ。

あたしがそんなことを考えている間にヨハンナさんとDはクィールの事を話していた。
クィールの目撃例は少ないらしい。魔物との戦闘中や休憩中や移動中に見られるらしいが攻撃を仕掛けることないし、ことすら出来ないらしい。冒険者たちの間では無害な動物らしい。嫌、動物では無く精霊化した動物=聖獣なのか。

クィールの存在も不思議だがDとヨハンナさんはあたしのスキルの「生物の擬態状態がマックスになると固有スキルが追加される」というところを気にしだした。今回はクィールだったけど人にも適用されるのかとか空を飛ぶ鳥も可能なのかとか言い出した。そんなことを聞かれてもあたしには分らない。
クィールの擬態だって知らずに成立していたし。
「QT、ヨハンナでスキル『擬態』を使ってみろ」

Dが無責任にそんなことを言い出した。ヨハンナさんは自分の真似をされるとわかっているからか何となく恥ずかしがっている。
良くわからないまま、あたしはヨハンナさんの前に立ち、スキル『擬態』を意識しながら普段のヨハンナさんの真似を始めた。幾つかの言葉遣いや癖を思い出しながら独り芝居地味た気分になった頃変化が起きた。
意識していた擬態が自動的になったと思うと魔力が全身に満ちて光を発し、視点が高くなり声が変わった。

あたしを見ていたヨハンナさんとD、チッチェの目が点になった。


    
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