無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

文字の大きさ
73 / 159
戦争と冒険者D

開戦

しおりを挟む
マジェント共和王国のスリム•ライザップ辺境伯軍は次第にその数を増していった。山越えするために騎馬兵は少なく、歩兵の騎士が多かったがその数は尋常では無かった。2000は越えているかと思えた。今までの小競り合いでは済まない気合いの入り方であった。
しかも新たなる戦力の投入という恐ろしい予感がしていた。空を飛ぶ魔導具を持つ傭兵がさらなる増強されたら、如何に堅固な城と言えど上空からの攻撃に耐えられない。
ドアンとギルーラはアロシア帝国皇帝チオミルに使者を送った。帝国軍の秘蔵兵魔獣騎士団の要請である。秘蔵兵の数は少ないがあの空を飛ぶ魔導具に対抗して戦うにはそれしか無いと思ったからだ。また、魔導具を操る傭兵の元にも暗殺者を送った。成功の連絡が無いので失敗に終わったと思われた。

◆スリム•ライザップ辺境伯視点◆
スリム•ライザップ辺境伯領の最北の街ヘゼワントからワルト山渓を通じてアロシア帝国領のスエータ地方に出て、陣を構えた。南東には赤龍峰が高々と見えた。目が良ければワイバーンやら赤竜などが飛んで居るのが見えるだろう。
陣容はおおよそ2000人を越えて、今回の戦が本気であることがエッテンベルク城からギルーラ•エッテンベルクにも理解できるだろう。今までは100騎程度の騎馬や傭兵団による攻めでお互いに火花を散らしてはいた。
今回は腕試しのような小競り合いでは無い。ウクイラナ王国からの秘密検使による同時攻撃になる。ウクイラナ王国側ではアロシア帝国本隊を国境まで押し戻す為の共同作戦なのだ。こちらが大きく攻めれば必ずギルーラ•エッテンベルクは皇帝に助力を乞う筈だ。アラド兄弟の『緋空旅団』だけでなく他の傭兵団も使い、陽動を注意深く行って来た。特に『緋空旅団』の翼竜艇ドラゴンラダー翼竜闘士ドラゴングラデュエータはギルーラ•エッテンベルクには脅威な筈だ。例え、皇帝からの援軍が無くてもエッテンベルク城を奪ってしまえばかなりの戦果である。王族の中の戦争反対派も力を失うに違いない。

陣幕の中からスリム•ライザップ辺境伯は『緋空旅団』の陣営を見た。そこには昨日には無かった異様な魔導具があった。馬車のような箱型でありながら蒸気を吐き、聞き慣れない音を立てるものだ。
「あれは何か?」

側近の護衛騎士長トールに聞けば笑いを含んだ言葉が帰ってきた。
「はっ、あれは『緋空旅団』の工兵魔導具でございます。何でもあれにはドワーフが乗り、水蒸気にて動く工房だそうで。」
「なんと、あれに乗り込んで居るのか?」
「ええ、騎馬兵程度の速さで動かせるので破城に参加したいとのことです。」
「う~む、あんな鉄の塊みたいのがのう」

スリム•ライザップは疑問よりも恐ろしさを感じざるを得ない。実際にあれより巨大な翼竜艇ドラゴンラダーが飛ぶところを見ているのだから。そして、その魔導具が今回の戦の胆でもある。

そこへ伝令がやって来て側近の護衛騎士長トールに傭兵団も全て揃ったとの報告を受ける。トールはスリムを見て騎士礼をして報告する。
「閣下、全軍揃いました。後は閣下の号令を待つのみです。」

その言葉にスリムは立ち上がり、側近の護衛騎士長トールを連れて幕舎を出る。そこにはスリムの愛馬が飾られて待機していた。空は晴れ、少し高原でもあるスエータ地方の空気が寒さを感じさせる。スリムは兵の援助を受けて馬上に上がり、引き馬されて全軍の前に出た。

遥か眼の前には昼の太陽に白く輝くエッテンベルク城が見えた。周りを見渡し軍容を確認すると右手を掲げ、鬨の声を上げた。
「全軍!前進っー!!」

◆D視点◆
スリム•ライザップ辺境伯の声が高らかに響くのを聞きながら笑みが浮かぶのが抑えきれなかった。
Dも馬を借り、白煙を吐く無限軌道車エレクサンドを追いかける。騎馬たちは少し馬脚を抑え、無限軌道車エレクサンドを前に押し出す位置で並んで前進していった。その後ろを雑多な防具を付けた傭兵団が追い、更に歩兵が後を追う。最後尾にはスリム•ライザップ辺境伯の騎馬とその護衛騎士団が追走する。
今頃翼竜艇ドラゴンラダーに乗ったアラド兄弟達がエッテンベルク城の上空高くで待機しているだろう。頃合いを見て、先制攻撃を仕掛ける筈だ。それがこちらの攻撃の合図となる。
エッテンベルク城の上空に黒い点が現れみるみる内に大きくなった。轟音と共に翼竜艇ドラゴンラダーが姿を見せ、艇の側面から魔法が放たれ、城に着弾していく。幾つかの魔法は城から飛んだ魔法に相殺されて空中で爆散する。翼竜艇ドラゴンラダーは城からの魔法が届くぎりぎりまで近づくと反転して、再び高く舞い上がる。

翼竜艇ドラゴンラダーが姿を現したタイミングで無限軌道車エッテンベルクが煤煙を吐き出し加速する。スピードが乗ってくると白煙に変わり騎馬隊を置いて凄い音を立てて驀進していった。そのまま真っすぐに堀を飛び越えて跳ね上げ橋ごと城門に突き刺さった!

おいおい、幾ら丈夫な無限軌道車エッテンベルクといえど無茶し過ぎじゃねえ?




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...