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冒険者Dと近隣国

魔石再生

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おおよそ100個の壺をインベントリに収納して俺とユキはランドルト達の所へ戻った。夜明け前に出て、次の日の夜更けには戻れたからまずまずだろう。

インベントリは普通、そのままでは生き物は収納出来ないが何かに入れる事で収納出来てしまう。中では気絶してしまうだけで死にはしない。

中1日でスライムを用意したので今度はランドルトとベラベララが忙しくなった。

魔力を失った魔石を種に特殊なスライムに再生させる魔導具はアミバ•モトーレン伯爵のスキル『魔石知識』から得られた。
アミバがやったように巨大なガラスの容器に特殊なスライム、ジャングルスライムと魔力を失った魔石を入れて浄水を常に与え続けるだけだ。

ジャングルスライムが出す汚れを取り除く為に廃液用のパイプも要るのだ。魔導具は簡単ではあるが浄水の生成装置、浄水の送液装置、汚れを吸着、排出する装置、廃液を循環させる装置と複雑な仕組みが要るのだ。

何でも造るランドルトとは違い、魔物の解体素材化をしていたベラベララには少し難しそうだった。

場所が足らなそうだったから秘密基地を陸地方向へ拡充する。
水は海水を浄化することで簡単に得られ、副産物として、塩分やらその他の貴金属が少量だが得られた。
まぁ錬金術師のランドルトにとってはゴミみたいなものらしい。当座はこれで良いだろう。

魔石再生がどれ位出来るかはやってみないと分からん。魔石が揃わないと海獣挺シーモンスター『リバイアー』の再起動は出来ないがジャングルスライムを捕獲してくるついでに得た魔石があった。数は少なかったがランドルト達が購入した魔石よりも大きくて魔力も高かった。

ランドルトに渡した時はどこでどうやって得たのかと詰め寄られてしまったがまぁ経緯は・・・ちょっとな。

そんな事で2度目の試験潜航と行きたかったが改造改修にもう少し時間が掛かるらしい。

時間が余ったので次の日にバラナビィーチの冒険者ギルドに顔を見せに行くついでにアミバ•モトーレン伯爵の状況を聞くことにした。
ギルドの中で受付嬢ミリュエルを探したが見つからなかった。俺と寝たことで居づらくなったという事もねぇだろう。

2階に上がり、ギルドマスターの部屋のドアを遠慮無しに開けるとそこにはミリュエルがギルドマスターのライアンと何やら話をしていた。急に現れた俺に驚いたがドアを開ける前にノックしなかった事を怒られただけだった。
「それでアミバはどうなった?」

ライアンの都合も考えずに聞く。ライアンとミリュエルは顔を見合わせて頷いた。こりゃ厄介事か?
「アミバは捕縛されて領主の所で牢に入れられているんだが、テンペストの連中が捕まって居ねえ」
「へぇ、大変だなぁ」

他人事みたいな言い方だが実際のところギルドの問題だ。苦虫を潰した顔になって唸るライアンに変わってミリュエルが口を開いた。
「そこでギルドの指名依頼をしようかとマスターと相談をしていた所なんです。」
「へぇ、そうなんだぁ」
「Dに依頼したい」
「Dさんに依頼したいんです。」


2人して俺を見て言い出した。昨日の様子も微塵も無くミリュエルが言うのには閉口した。俺が断りの口を開く前にミリュエルが更に言う。
「アルピーヌは酒場で男に言い寄っている所を見つけて拘束しました。ホソップはのこのこギルドに来た時に囲んで捕まえました。ツキガラスとスキュラが逃げている状況なんです。」

まぁ困っているなら少しは情報を提供するか。
「ツキガラスはバラナビィーチの西の森で襲われたから返り討ちしたぞ。一昨日くらいだからもしかしたら、近くを彷徨(うろつ)いているかもな」
「そういう事は早く言え!」

ライアンが焦った口調で怒鳴る。慌ただしく部屋を出て階下に怒鳴りながら誰かを呼びつけているようだ。部屋には俺とミリュエルが残った。
「なら、後はスキュラだけですね。」

ミリュエルはライアンが居る時違って妖艶な雰囲気を出しながら、話を続ける。
「違法行為をしたと言えど『テンペスト』はA級、その辺の冒険者じゃあ刃が立たないんですのよ。しかもスキュラはバラナビィーチ随一の冒険者だから、捕まえるのにどれだけ大変か」
「ふふん、俺の評価も随分だな。それとも評価を改めたか」

ミリュエルの目を見つめながら言うとドアの方から声がした。
「ディは格別」

下で待つように言っておいたユキがいつの間にか|ドアの内側《
・・・・・》に立っていた。
その目はミリュエルを睨んでいる。
「そうね、ディは特別だから指名依頼の報酬は金貨15枚」
「あたしなら、金貨20枚」
「個人的にもお願いしたいわ、金貨16枚」
「無傷で、金貨20枚」
「明日までなら金貨17枚」

ユキとミリュエルの交渉に口を挟む。
「単に買収されただけとは思えん」

更にユキとミリュエルは交渉を続ける。
「背後まで探るから金貨20枚」
「そうね、・・・何処の国に誑かされたか」
「金貨20枚」
「あなたもしつこいわね」
「お金は大事」

堪りかねて俺がミリュエルに言い募った。
「どうせ、金貨20枚は出せるんだろ。俺に任せたいなら言い値を出せ」

やれやれと肩を竦めながら、ため息をミリュエルは付いて言った。
「お見通しなら仕方ないわね。確実な仕事を頼みたいわ」
「任せとけ。俺の実力も素性も折込済だろ」

今度はユキが口を挟む。
「あたしも居るからなんの問題もなし」
「何処の誰とも分からない小娘が居ても変わらないわよ」

「ミリュ、見損なうな。あたしは『月牙ムーンファング』の元一員。」

ユキが爆弾宣言をするとミリュエルが驚いたぞ。にしても名前を略すな。





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