無貌の男~千変万化のスキルの力で無双する。

きゅうとす

文字の大きさ
158 / 159
遥かなる国

大災害

しおりを挟む
人々は飢えていた。
轟音と暴風を奇跡的に生き延びたけれど渇きには我慢が出来なかった。

水を求めて川に落ち、森に入り魔物に襲われた。
轟音と暴風から逃れる様に南に救いを求めた。
騎馬や馬車も無く、ほとんどの者が徒歩だった。
食料を持って居たものは幸せだったろうか。

武器を持ち暴力を行使出来るものが食料を持つものを襲った。暴力に抵抗出来る者は少数だった。

だから南へ移動する者達は群れた。
弱き者は群れる事で強者から逃れようとする。

だから少しの食料を得ても群れの飢えは却って満たせない。
群れが進む先も破壊と荒廃が進んだ。
飲める物は飲んだ。
食べられる物は食べた。
持てる武器は持った。

それでも、非力な者から脱落していった。
弱き乳幼児、歩けても体力の無い子供、自身を守ることが出来ない女性、飢えで見境の無くなった者が次々と脱落していった。

南を目指す飢えた群れは見える村や街に群がった。
木の防壁しか無い村は飢えた群れに成す術もなく収奪されて、抵抗出来た者も呑まれて行った。
後に残ったのは破壊されて収奪されて燃えてしまった村の残骸だった。

何とか飢えた群れから抵抗出来た街もスキルで防壁の周囲からよじ登ろうとする無謀な者達や魔法で門を破壊して中に入ろうとする者達が押し寄せる事で食料で儲けようと考えた商人達や物流を担う者達を導き入れる事が不可能になった。
小規模な街も大規模な街も数日は保つだろう。
だが、押し寄せる、きりの無い飢えた群れの前に成すすべもなく籠城するしか無かった。

最初の轟音と暴風は収まったかに見えたが何度も起こる大地の揺れは街の中の建物を崩した。
そして瓦礫の下に人々は埋まった。

助けを求める声は街の防壁の内外から上がる事になる。
為政者は最初の轟音と暴風の後に近隣から逃れた人々を受け入れたが数が膨らむに連れて選別を始めた。
街の中で生活ができる者だけを受け入れ、着のみ着のまま逃げて来た者を排除したのだ。

街の中に無防備に避難者を受け容れる事が如何に危険なことか、被害が膨らむ事で理解してきたのだ。
1日や2日ならば問題無かったかも知れないが防壁の中から外を見た景色は嘗てないほどの状況を見せていたのだ。

終わりのある魔物暴走スタンピードならいざ知らず、見渡す限りから集まる人の群れは甘味に群がる蟻の如く際限が無く見えたのだ。

それらを空から見ていた者たちが居た。
飛行船ノアンの操船者イシュタームとハイドゥン村の者達だ。Dが置いていった食料が船を傾ける程あったがDはまだ戻って来なかった。
南に向かいながら各地の街々を見て回り、降下する場所を探していた。

何処も酷い有り様で降りるに降りられない状況で、とうとうマジェント共和王国の王都まで来てしまった。

王都の城壁の周りには群れが群がって黒山の人だかりとなっていたがそこかしこで煙が立ち上り中に入る事は出来なくても何とか生活が出来ているようだった。
操舵室に集まった者達と相談してイシュタームは王都の城壁の中に降りる事にした。
王城の庭なら飛行船ノアンが降下する場所が確保出来ると思えたからだ。
そしてマジェント共和王国の侯爵令嬢アンナ•ハサイエルが居た。

大量の食料と彼女の身分にて保護が望めると言う判断だった。王都に到着する前から地上の飢えた群れには驚かれていたが手出しが出来なかったから王都まで無事に来れたのだ。
当然王都の民衆だけでなく王族にも驚かれて居た。
北から来た見も知らぬ空を漂う魔導具に恐れ慄き、興味を惹かれた。

イシュタームは魔法や弓矢が届かない高度の500mあたりを保ち外部音声拡声器で話し掛けた。
「こちらはハイドゥン村の生き残りだ。アンナ•ハサイエル嬢をお連れしている。王城の広場へ着陸の許可を頂きたい。」

余り丁寧な言葉遣いなどしたことが無かったが出来るだけ丁寧に話した。
ハイドゥン村の範疇から外れたからか過去世の記憶がほとんど無くなってしまって居た。
やっぱり、あそこは特殊な場所だったようだ。
操舵室にアンナが入って来て音声拡声器に向かって話した。
「わたくしはアンナ、宰相ハサイエル侯爵の娘です。どなたかお父様を呼んで頂けませんか」

イシュタームがアンナの名前を出した所で聞き付けたのかブリエ•ハサイエル侯爵が出てきた。
しかもマジェント共和王国の第三王子で宰相補佐のロージエ•サリ•マジェントもロージエ付きの筆頭魔術師マーキュリー•ディオンも一緒だった。

3人が口々に何か言っていたが突然マーキュリーの声が大きくなって聞こえて来た。
声が届かない事に気付いて魔法を使ったのだろう。
「・・・聞こえますかぁー!アンナ様ぁー!ブリエ様が構わないから降りて来るようにと仰せでぇーす!」

その言葉に飛行船ノアンの乗員は大歓声を上げたのだった。
王城のあちこちが崩れていたが青々とした広場に飛行船ノアンが着底し、ハイドゥン村の者たちが降りて来た。

騎士達に守られて居たブリエが人々の中にアンナを見つけると前に進み出て、それに気付いたアンナが走り、飛び付き、抱きついたのだった。
何処からか拍手が起きてその場の皆は温かい雰囲気に包まれたのだった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...