人生崖っぷちですが王子様に拾われました!?〜崖っぷち元人気漫画家×崖っぷち大学生が協力してBL漫画で一発逆転狙います!〜

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第一章

13. 謝罪

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 風呂上がり、俺はリビングの床に土下座していた。

「もっ、申し訳ありませんでした!」

 それは、今日の買い物での出来事のせいだった。勢いに任せて雇い主の笑顔を「嫌いだ!」宣言した挙句に、説教を垂れるなど言語道断。昔なら、切腹だろう。

 あれから、彼は何も話さなかった。
 帰り際に付き合ってもらったスーパーでも、バスの中でも、夕飯中でも……。
 おかげで、せっかく上手にできたブリの照り焼きは、味なんてちっともしなかった。

 俺は、あまりにも静かすぎる雇い主に、もう風呂を出る頃には耐えきれなかったのだ。


 土下座をすれば、ソファーで寛ぎながらBL漫画を読んでいた早川は口を開いた。
「え、なんで土下座してるの?」
 仕事用の銀縁眼鏡をかけた顔には、全く意味がわかりません!と書いてある。
 けれど、その反応の意味が分からないのは俺の方だった。
「いや、いやいや……。だって、早川さんにすっげぇ失礼なこと言いまくったし。俺、従業員で居候のくせに生意気じゃんか」
 ぺたんと床に座ったまま懺悔すれば、やはり凄まじい後悔が押し寄せる。
 やっぱりもう一度土下座だ!と頭を下げれば、慌てたのは早川だった。
「ちょ、ちょっと待って。反省するのは僕の方でしょ?君は大切なことを教えてくれようとしただけじゃないか」
 とてもありがたい言葉だったが、すぐには信じられなかった。
「怒ったから、口聞いてくれないんだろ?」
 想像以上に情けない呟きを零せば、早川はソファーから降りて目の前に膝をついた。
「違うよ。自分にはなかった発想だったから目から鱗だったというか……、ただ、自分が恥ずかしくてね。反省してたんだ」
 ヘーゼルの瞳は、困ったように瞬く。
 形の良い唇は、静かに言葉を紡いだ。
「ごめんね」
 その謝罪に、俺も自然と言葉が溢れる。
「こっちこそ、ごめんなさい」
「うん。いいよ」
 そう言ってくれたのは、嫌いじゃない笑顔だった。

 許してもらえたと分かった瞬間、俺の体から力が抜けてしまう。
 伸ばされた長い腕に抱きとめられれば、お互いに同じシャンプーの香りがした。
「よ、よかったぁ……!」
 切腹を逃れた安堵が、一気に体を襲ったようだ。どうやら自分は、雇い主に嫌われることを相当苦痛に思っていたらしい。
 仕事熱心な自分あっぱれ!と自画自賛つつ、その有難い腕から離れた……と思ったら、なぜかより深く抱き込まれた。
「え?」
 肌あたりの良いリネンのシャツから顔だけ上げれば、ミルクティー色の髪が頬を掠める。

「そんなに不安だったんだ」

 それは、揶揄うような声だった。
 俺が答えるよりも早く、長い指が首筋をなぞるように擽ってゆく。
「……っ、ん」
 その瞬間、感じたことのない感覚が体に走った。首筋から背中がぞくぞくとして、触れられた箇所から広がるように肌が火照り出す。

 早川は眼鏡をゆっくりと外すと、俺の鼻先に顔を寄せた。


「ねぇ、協力してくれる?」


 そのまま、俺の視界は反転した。
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