41 / 91
第一章
番外編② 間宮くんと好きな色
しおりを挟む
「はい、今月もご苦労様でした」
「うっす!ありがとうございます!」
月末の恒例となるお給料日。
封筒を手渡す早川に、間宮は元気よく頭を下げた。
間宮の給料は、希望を言って手渡しにしてもらっている。生活費やもろもろかかるであろう出費を差し引いてから、祖父が自分名義で残してくれた通帳に貯金するためだ。
ホクホクと封筒を覗き込む横顔に、早川は笑いを堪えつつ声をかけた。
「ねぇ、間宮くん。お買い物にいかない?」
これが、彼らの二回目のお出かけである。
二人がやって来たのは、大きなショッピングモールだった。
久しぶりのお出かけに、わくわくと目を輝かせる間宮が言った。
「なぁなぁ!何買うの?」
「ふふ。うーんとね……」
早川が真っ直ぐな足取りで向かったのは、食器を取り扱っている店だった。
彼は、茶碗やマグカップを手に取りながら、機嫌良く答える。
「もう、君がうちに来てからだいぶ経つでしょう?そろそろ、間宮くん専用の食器があってもいいと思ってね」
予想外の回答に、間宮は大きな瞳をパチパチさせて呟いた。
「へ……、俺の?あっ!今家にあるの借りてちゃまずかった?」
「そういう訳じゃないけど。ただ、君の物が少なすぎるから寂しいだけだよ」
「~……っ、そっか」
早川の言葉に照れた間宮は、頬の赤みを誤魔化すように茶碗を一つ手に取る。
そして、絶句した。
「なんだ、こりゃあ……」
「あ、それいいね!……へ?」
微笑む早川は、突然腕を引っ張られて店の外へと連れ出された。もちろん、間宮によって。
「0が多すぎんだろッッ!!」
悲鳴のような絶叫は器用にも小声で、店の方には迷惑にならなかった。
気を取り直して次にやって来たのは、食器も含めた様々な商品が取り揃えられている雑貨屋だった。
そこでは、今度は早川が驚愕した。
「え……、0が足りなくない?」
その声を無視しながら、間宮は自分の茶碗や箸を選んでいく。
値段と質を比べつつ納得のいく物をカゴに入れていると、その横から更に色違いの物を入れる大きな手があった。
思わず、その手を叩く。
「痛っ。え……なに?」
「なんでおんなじの二つもカゴに入れんだよ!そんなにいらねぇだろ?」
すると、目の前の長身の男は不思議そうに首を傾げた。
「え、僕のだけど」
「なんでやねん!」
「安いし、せっかくだから買っちゃおうよ。なんか僕達BLっぽくない?」
綺麗なウインクに、間宮は噴き出した。
「ふはっ!何それ!カップルかよっ」
「いいじゃない。カップルごっこしよ」
「こら、腕組んでくるなし!ひひっ、腹痛いからマジでやめてよ……ぷぷっ」
「ダーリン、僕マグカップもほしいな」
「じゃあ、あっちの棚に行こうぜハニー」
二人は、何だかんだとノリノリでカップルごっこをしながら、店内を練り歩く。
辿り着いた目的の棚には、色とりどりのマグカップが並んでいた。
「んー、あっ。俺、これがいい!」
間宮が手に取ったのは、鮮やかな赤色のマグカップ。
「じゃあ、僕はこれにしようかな」
そう言って早川が手に取ったのは、色違いの青色のマグカップだった。
必要なものを一通りカゴに入れ終えた後、間宮は早川を見上げて尋ねた。
「なぁ……マジで早川さんのも買うの?俺、お給料入ったばっかだからいいけどさ」
すると、早川はその手からひょいっとカゴを取り上げて、さっさとレジに行ってしまった。
間宮も、慌ててその背を追いかける。
「えっ、ちょ……!」
「何言ってるの。君に払わせるわけないでしょうが」
ぽんぽんと、大きな手が癖毛な頭を優しく撫でる。
赤面したのは、レジの店員だった。
***
とある日の夜。
ソファーでくつろぐ二人の手には、あの日のマグカップが握られていた。
もちろん、間宮は赤色。
早川は、青色である。
不意に、早川が口を開いた。
「ねぇ、蒼大くん。君って赤色が好きだよね?」
「んー……、そうか?」
「お気に入りのパーカーも赤だし、このマグカップだって赤じゃない」
「あ!たしかに!」
本当だ~と、笑う横顔に早川は尋ねる。
「でもさ、なんでスマホは青だったの?」
一緒に行ったショップで、間宮が迷わずに手にしたのは鮮やかな青色だったのだ。
間宮は、考える様に首を傾げる。
「なんでだろ。でも、これが一番しっくりきたんだよなぁ……」
そう言いながら、彼は机に置いてあったスマホを手に取った。
早川もその姿を横目に、ココアを一口飲んだ時だった。
「あっ!」
間宮が、早川のマグカップを握る手元にスマホを翳す。
そして、満面の笑みで言った。
「早川さんの色だからだっ!」
静かに夜はふけてゆく。
赤面したのは、早川だった。
《おしまい》
「うっす!ありがとうございます!」
月末の恒例となるお給料日。
封筒を手渡す早川に、間宮は元気よく頭を下げた。
間宮の給料は、希望を言って手渡しにしてもらっている。生活費やもろもろかかるであろう出費を差し引いてから、祖父が自分名義で残してくれた通帳に貯金するためだ。
ホクホクと封筒を覗き込む横顔に、早川は笑いを堪えつつ声をかけた。
「ねぇ、間宮くん。お買い物にいかない?」
これが、彼らの二回目のお出かけである。
二人がやって来たのは、大きなショッピングモールだった。
久しぶりのお出かけに、わくわくと目を輝かせる間宮が言った。
「なぁなぁ!何買うの?」
「ふふ。うーんとね……」
早川が真っ直ぐな足取りで向かったのは、食器を取り扱っている店だった。
彼は、茶碗やマグカップを手に取りながら、機嫌良く答える。
「もう、君がうちに来てからだいぶ経つでしょう?そろそろ、間宮くん専用の食器があってもいいと思ってね」
予想外の回答に、間宮は大きな瞳をパチパチさせて呟いた。
「へ……、俺の?あっ!今家にあるの借りてちゃまずかった?」
「そういう訳じゃないけど。ただ、君の物が少なすぎるから寂しいだけだよ」
「~……っ、そっか」
早川の言葉に照れた間宮は、頬の赤みを誤魔化すように茶碗を一つ手に取る。
そして、絶句した。
「なんだ、こりゃあ……」
「あ、それいいね!……へ?」
微笑む早川は、突然腕を引っ張られて店の外へと連れ出された。もちろん、間宮によって。
「0が多すぎんだろッッ!!」
悲鳴のような絶叫は器用にも小声で、店の方には迷惑にならなかった。
気を取り直して次にやって来たのは、食器も含めた様々な商品が取り揃えられている雑貨屋だった。
そこでは、今度は早川が驚愕した。
「え……、0が足りなくない?」
その声を無視しながら、間宮は自分の茶碗や箸を選んでいく。
値段と質を比べつつ納得のいく物をカゴに入れていると、その横から更に色違いの物を入れる大きな手があった。
思わず、その手を叩く。
「痛っ。え……なに?」
「なんでおんなじの二つもカゴに入れんだよ!そんなにいらねぇだろ?」
すると、目の前の長身の男は不思議そうに首を傾げた。
「え、僕のだけど」
「なんでやねん!」
「安いし、せっかくだから買っちゃおうよ。なんか僕達BLっぽくない?」
綺麗なウインクに、間宮は噴き出した。
「ふはっ!何それ!カップルかよっ」
「いいじゃない。カップルごっこしよ」
「こら、腕組んでくるなし!ひひっ、腹痛いからマジでやめてよ……ぷぷっ」
「ダーリン、僕マグカップもほしいな」
「じゃあ、あっちの棚に行こうぜハニー」
二人は、何だかんだとノリノリでカップルごっこをしながら、店内を練り歩く。
辿り着いた目的の棚には、色とりどりのマグカップが並んでいた。
「んー、あっ。俺、これがいい!」
間宮が手に取ったのは、鮮やかな赤色のマグカップ。
「じゃあ、僕はこれにしようかな」
そう言って早川が手に取ったのは、色違いの青色のマグカップだった。
必要なものを一通りカゴに入れ終えた後、間宮は早川を見上げて尋ねた。
「なぁ……マジで早川さんのも買うの?俺、お給料入ったばっかだからいいけどさ」
すると、早川はその手からひょいっとカゴを取り上げて、さっさとレジに行ってしまった。
間宮も、慌ててその背を追いかける。
「えっ、ちょ……!」
「何言ってるの。君に払わせるわけないでしょうが」
ぽんぽんと、大きな手が癖毛な頭を優しく撫でる。
赤面したのは、レジの店員だった。
***
とある日の夜。
ソファーでくつろぐ二人の手には、あの日のマグカップが握られていた。
もちろん、間宮は赤色。
早川は、青色である。
不意に、早川が口を開いた。
「ねぇ、蒼大くん。君って赤色が好きだよね?」
「んー……、そうか?」
「お気に入りのパーカーも赤だし、このマグカップだって赤じゃない」
「あ!たしかに!」
本当だ~と、笑う横顔に早川は尋ねる。
「でもさ、なんでスマホは青だったの?」
一緒に行ったショップで、間宮が迷わずに手にしたのは鮮やかな青色だったのだ。
間宮は、考える様に首を傾げる。
「なんでだろ。でも、これが一番しっくりきたんだよなぁ……」
そう言いながら、彼は机に置いてあったスマホを手に取った。
早川もその姿を横目に、ココアを一口飲んだ時だった。
「あっ!」
間宮が、早川のマグカップを握る手元にスマホを翳す。
そして、満面の笑みで言った。
「早川さんの色だからだっ!」
静かに夜はふけてゆく。
赤面したのは、早川だった。
《おしまい》
0
あなたにおすすめの小説
パパ活は塾の帰りに。
茜琉ぴーたん
BL
塾講師の下滝は、生徒の赤坂少年のことが気になっている。
彼は最近どうも元気が無く、挙動不審で落ち着かない。
悩みでもあるのかと下滝が助け舟を出したら、事態は思わぬ方向へと走り出す。
(58話+番外5話)
*性描写あります。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。
おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを流れで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる