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第二章
31. 探検
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彼等は、張り合うようにして様々な部屋へと案内していた。それも、目まぐるしく。
きちんと手入れがされた台所。
おもちゃがいっぱいだけど整理整頓が行き届いたリビング。
アイウエオ表が貼ってある清潔なお風呂。
どこへ行っても幸せそうな家庭の温かさが溢れている。
芦名さんはパリッとしたパンツスーツを着こなし、仕事一筋のような雰囲気があった。
けれど、きっと家事も完璧で、家庭的な一面もあるのだろう。
「そうたさん! たのしい?」
「おう! 楽しいよ」
「おい、まみた! たんけんのつぎはなにしたい?」
「まみたじゃなくて間宮蒼大な。んー……、あ! じゃあリビング戻って、さっきあったブロックのカッケェ城みせて!」
「「いいよ!!」」
探検の次は、ブロック遊びが始まった。
ルイちゃんが人形も持ち出してお城の中でごっこ遊びまで始まり出す。
「おかえり、そうたさん。おふろにする? ごはんにする? それとも筋トレ?」
可愛い笑顔で、何とも男のロマンを惜しいところで崩しながら進んでゆく。
しかし、おだやかだったところへヒロくんの悪の組織が登場し、いつの間にか戦闘ものに変わっていたのはご愛嬌だろう……。
サンドイッチの昼飯まで出してもらい、気がつけば、窓の外はすっかり夕暮れだった。
二人が可愛すぎて、一緒になってハシャいでしまった俺だったが、ハッと我に返り芦名さんの様子を伺う。
彼女は、青いエプロンを身につけて台所に立っていた。
鍋の味見をするその姿は、まさに良妻賢母といった風貌で美しい。なんとなく悔しくて睨んでしまうと、目が合った。
慌てて視線を逸らしたが時すでに遅し。
「夕飯も食べていくよね、蒼大くん」
またもや爆弾発言が投下される。
「……はひ!?」
「やった! 食べよ食べよ、蒼大さん!」
「なんなら泊まっていけよ、まみた」
「あ、それもいいねぇ」
動揺する俺をよそに、マイペース親子達はどんどんと話を進めていく。
あっという間に寝るところの準備までの話を終えた彼女達。
もうどうにでもなれ、と投げやりに遠くをみてしまった時だった。
それは、リビングの棚に置かれた写真立てだった。
複数あるうちの一つを何気なく目で追い、すぐに後悔する。そこに写っている人物は、どうしたって見間違えるはずもなかった。
(芦名さんと…………、早川さん)
そこには、ブレザーの学生服を身に纏った今よりも若い彼らがいた。
二人で肩を組んで、幸せそうに屈託なく笑いながら。
「良いでしょう、蒼大くん。君と私の仲なんだし……、ね?」
不意に台所から聞こえた芦名さんの声に、俺は振り返ることができなかった。
胸に爪をたてられたような痛みが走る。
「ほら。夕飯できたよ」
その言葉に、あっという間に、子供達は駆け出してゆく。
動けなくなった俺だけが、リビングで立ち尽くすしかなかった。
きちんと手入れがされた台所。
おもちゃがいっぱいだけど整理整頓が行き届いたリビング。
アイウエオ表が貼ってある清潔なお風呂。
どこへ行っても幸せそうな家庭の温かさが溢れている。
芦名さんはパリッとしたパンツスーツを着こなし、仕事一筋のような雰囲気があった。
けれど、きっと家事も完璧で、家庭的な一面もあるのだろう。
「そうたさん! たのしい?」
「おう! 楽しいよ」
「おい、まみた! たんけんのつぎはなにしたい?」
「まみたじゃなくて間宮蒼大な。んー……、あ! じゃあリビング戻って、さっきあったブロックのカッケェ城みせて!」
「「いいよ!!」」
探検の次は、ブロック遊びが始まった。
ルイちゃんが人形も持ち出してお城の中でごっこ遊びまで始まり出す。
「おかえり、そうたさん。おふろにする? ごはんにする? それとも筋トレ?」
可愛い笑顔で、何とも男のロマンを惜しいところで崩しながら進んでゆく。
しかし、おだやかだったところへヒロくんの悪の組織が登場し、いつの間にか戦闘ものに変わっていたのはご愛嬌だろう……。
サンドイッチの昼飯まで出してもらい、気がつけば、窓の外はすっかり夕暮れだった。
二人が可愛すぎて、一緒になってハシャいでしまった俺だったが、ハッと我に返り芦名さんの様子を伺う。
彼女は、青いエプロンを身につけて台所に立っていた。
鍋の味見をするその姿は、まさに良妻賢母といった風貌で美しい。なんとなく悔しくて睨んでしまうと、目が合った。
慌てて視線を逸らしたが時すでに遅し。
「夕飯も食べていくよね、蒼大くん」
またもや爆弾発言が投下される。
「……はひ!?」
「やった! 食べよ食べよ、蒼大さん!」
「なんなら泊まっていけよ、まみた」
「あ、それもいいねぇ」
動揺する俺をよそに、マイペース親子達はどんどんと話を進めていく。
あっという間に寝るところの準備までの話を終えた彼女達。
もうどうにでもなれ、と投げやりに遠くをみてしまった時だった。
それは、リビングの棚に置かれた写真立てだった。
複数あるうちの一つを何気なく目で追い、すぐに後悔する。そこに写っている人物は、どうしたって見間違えるはずもなかった。
(芦名さんと…………、早川さん)
そこには、ブレザーの学生服を身に纏った今よりも若い彼らがいた。
二人で肩を組んで、幸せそうに屈託なく笑いながら。
「良いでしょう、蒼大くん。君と私の仲なんだし……、ね?」
不意に台所から聞こえた芦名さんの声に、俺は振り返ることができなかった。
胸に爪をたてられたような痛みが走る。
「ほら。夕飯できたよ」
その言葉に、あっという間に、子供達は駆け出してゆく。
動けなくなった俺だけが、リビングで立ち尽くすしかなかった。
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