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第一夜
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イマジナリーフレンド(Imaginary friend)『実在しない空想上の友達』
第三者からは認識できず、本人の空想の中だけで存在する人物。空想の中で会話したり、遊んだりすることができるとされる。
*
7月1日(金)晴れ
その男はある日突然、僕の病室に現れた。
空の燃えるような赤が夜に溶け出してゆく逢魔が時。群青色に染まってゆく空に一番星の輝きを見つけた時だった。
「何を見てるんだ?」
それは、とても澄んだ声だった。
窓の向こうの空から視線を外し、驚いて振り返る。すると、部屋の内側。ドアの前には、上下黒い服を身に纏った長身の男が立っていた。
僕と同い年くらいだろうか?
夜を彷彿とさせるような黒髪に、切長の瞳。美しすぎる美貌はぞっとする程冷たい印象なのに、その声は酷く柔らかく響いた。
「何を見てるんだ?」
もう一度、男が問う。
「…………一番星」
そう返すと、男はゆっくりと俺が座っているベッドに近づいて来た。
「あぁ、本当だ。もう星がでてる」
空を見上げるその横顔すら美しい。
「きみ、だれ?」
するりと唇から零れた質問は、無機質な病室に静かに響いた。
男は星を見上げながら、数回瞬きをしてから此方を見下ろす。
「俺は、お前の……友達だよ」
そう紡いだのは、まるで人形のような作り物めいた唇だった。
第三者からは認識できず、本人の空想の中だけで存在する人物。空想の中で会話したり、遊んだりすることができるとされる。
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7月1日(金)晴れ
その男はある日突然、僕の病室に現れた。
空の燃えるような赤が夜に溶け出してゆく逢魔が時。群青色に染まってゆく空に一番星の輝きを見つけた時だった。
「何を見てるんだ?」
それは、とても澄んだ声だった。
窓の向こうの空から視線を外し、驚いて振り返る。すると、部屋の内側。ドアの前には、上下黒い服を身に纏った長身の男が立っていた。
僕と同い年くらいだろうか?
夜を彷彿とさせるような黒髪に、切長の瞳。美しすぎる美貌はぞっとする程冷たい印象なのに、その声は酷く柔らかく響いた。
「何を見てるんだ?」
もう一度、男が問う。
「…………一番星」
そう返すと、男はゆっくりと俺が座っているベッドに近づいて来た。
「あぁ、本当だ。もう星がでてる」
空を見上げるその横顔すら美しい。
「きみ、だれ?」
するりと唇から零れた質問は、無機質な病室に静かに響いた。
男は星を見上げながら、数回瞬きをしてから此方を見下ろす。
「俺は、お前の……友達だよ」
そう紡いだのは、まるで人形のような作り物めいた唇だった。
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