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仁居
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……────。
少し遅めのランチを済ませて、そろそろ帰ろうかとなったときに、二葉が買いもの中に迷っていた雑貨をやっぱり買いたいと言い出した。立花も付き合うと言ったが、解散の予定にしていた時間を過ぎていることを気にして、二葉は「大丈夫です」と断った。
二葉とは別れて、1人帰るために駅へ歩を進める。確か構内の改札のすぐ隣に書店があったはずだ。レシピ本を買おうかと考えると、自然と足早になる。
「立花。立花だね?」
声も呼び方も、二葉や涼風の発したものではない。指先が急に冷えて感覚をなくしていく。すぐに地面を蹴って逃げ出せば……思考がよぎったけれど、客の機嫌を損ねれば瑛智にもそれが後に伝わる。立花は諦めて、名前を呼んだ男の元へ行く。
「……こんにちは」
「久しいね。包海氏からなかなか誘いの連絡がなくてね。私に会えなくて寂しかっただろう? 立花」
感覚の失った手足が甦り、不快なものに這い寄られている気分だ。瑛智が懇意にしている仁居の前で、立花はアルファに媚を売るようなオメガを演じられなかった。そもそも客の要望には柔軟に対応出来るタイプじゃない。シチュエーションに応えられない代わりに、複数でやや乱暴に扱われることが許可されているのだ。
「すみません。あなたと個人的にお話することはありません。僕と……したかったら、あの人を通してください」
「確かに今は君のプライベートだ。だが、いつまでその態度を取るつもりだ? お義父様の躾がどうも足りないらしい」
瑛智の名前が出た途端に強張る身体を、仁居は強引に引き寄せた。周りから不自然に見えないような触れ方で、仁居は立花の細い背と腰を数度なぞった。
怯えの走った目を捕らえて、仁居は不気味な笑みを浮かべる。
「今度立花を抱くときに、ここにたっぷり鞭を食らわせてやろう。思いきり振ると皮膚が裂けて、綺麗な花が咲くんだよ」
「い……いや……嫌っ!」
「また目に怯えが走ったね……可愛いよ。お気に入りのオメガに傷をつけるようなことは、私も極力はしたくないからね。いい子だから、分かるだろう?」
立花は必死にこくこくと頷く。プレイの一環で嗜虐的な言葉を吐かれることは多々あって、大袈裟な脅しだとは理解していても、反抗的な態度は取れなかった。この男なら、本当にやりかねない。仁居は客の中でも立花に暴力こそ振るわないが、言動や道具でいたぶるのが好きなのだ。
棒のように突っ立っている立花を、ロータリーに停めてある黒の外車へ押し込むと、前方の運転手に発つように告げた。
「……あの、叔父さんに連絡を……帰りが遅くなると、怒られるから……」
「ああ。私から連絡してあげよう。そのほうが話も早いだろう」
スラックスからプライベート用の携帯を取り出して、仁居は瑛智に電話をかける。立花の恐れているもう1人の男の声が、スピーカーから聞こえた。
瑛智から了承の返事をもらうと、仁居は車内の椅子に深く腰かけて立花の腰を抱き寄せた。
「これでいいのだろう。今日1日は好きにしていいと仰っていたよ。どこか行きたいところはあるかな?」
ある訳がない。嫌がる立花を半ば拉致のような形で連れ回しているのだから。車が知らない土地を走るにつれて、立花は帰りのほうを心配していた。腕の中で弱々しく首を振る立花を、仁居は抱き竦める。
「そうかそうか。君の希望がないのなら、仕方ないね」
「……あっ」
内股を撫でている手が、立花の中心に絡みついて服の上からゆるゆると扱き始める。痴態を晒すのが嫌で、仁居の腕にしがみついた。
「いや……嫌だ。こんなところで……」
「君の恥ずかしいところは私が1番よく知っているだろう。前の彼なら別に心配しなくていい」
──涼風さん以外は、嫌だ。
逃げ場のない車内では、どれだけ抵抗しても無意味だった。立花を自らの膝の上へ向かい合わせるようにして座らせて、足の間に手を滑らせる。
「あ、あっ、あ……」
涼風以外を拒絶する心とは裏腹に、アルファに触れられることに身体は歓喜している。濡れた感触が下着に拡がって気持ち悪い。仁居は後ろを使うことなく、前だけを擦って立花を絶頂へ導いた。
肩で息をする立花を労りながら、仁居は精液で汚れた手指を拭き取る。抵抗の1つすらろくに出来ないのが、情けない。涼風への裏切りがまた増えて、罪悪感の海で窒息しそうになる。射精後で呼吸の乱れている立花は、仁居の胸元に沈んでいた。
「これでは食事に行けないね。立花にもっと似合う服を買ってあげよう」
下半身の濡れた場所を撫で回しながら、仁居は苦笑する。仁居の立てていたプラン通りに、立花は無理矢理付き合わされることになった。
少し遅めのランチを済ませて、そろそろ帰ろうかとなったときに、二葉が買いもの中に迷っていた雑貨をやっぱり買いたいと言い出した。立花も付き合うと言ったが、解散の予定にしていた時間を過ぎていることを気にして、二葉は「大丈夫です」と断った。
二葉とは別れて、1人帰るために駅へ歩を進める。確か構内の改札のすぐ隣に書店があったはずだ。レシピ本を買おうかと考えると、自然と足早になる。
「立花。立花だね?」
声も呼び方も、二葉や涼風の発したものではない。指先が急に冷えて感覚をなくしていく。すぐに地面を蹴って逃げ出せば……思考がよぎったけれど、客の機嫌を損ねれば瑛智にもそれが後に伝わる。立花は諦めて、名前を呼んだ男の元へ行く。
「……こんにちは」
「久しいね。包海氏からなかなか誘いの連絡がなくてね。私に会えなくて寂しかっただろう? 立花」
感覚の失った手足が甦り、不快なものに這い寄られている気分だ。瑛智が懇意にしている仁居の前で、立花はアルファに媚を売るようなオメガを演じられなかった。そもそも客の要望には柔軟に対応出来るタイプじゃない。シチュエーションに応えられない代わりに、複数でやや乱暴に扱われることが許可されているのだ。
「すみません。あなたと個人的にお話することはありません。僕と……したかったら、あの人を通してください」
「確かに今は君のプライベートだ。だが、いつまでその態度を取るつもりだ? お義父様の躾がどうも足りないらしい」
瑛智の名前が出た途端に強張る身体を、仁居は強引に引き寄せた。周りから不自然に見えないような触れ方で、仁居は立花の細い背と腰を数度なぞった。
怯えの走った目を捕らえて、仁居は不気味な笑みを浮かべる。
「今度立花を抱くときに、ここにたっぷり鞭を食らわせてやろう。思いきり振ると皮膚が裂けて、綺麗な花が咲くんだよ」
「い……いや……嫌っ!」
「また目に怯えが走ったね……可愛いよ。お気に入りのオメガに傷をつけるようなことは、私も極力はしたくないからね。いい子だから、分かるだろう?」
立花は必死にこくこくと頷く。プレイの一環で嗜虐的な言葉を吐かれることは多々あって、大袈裟な脅しだとは理解していても、反抗的な態度は取れなかった。この男なら、本当にやりかねない。仁居は客の中でも立花に暴力こそ振るわないが、言動や道具でいたぶるのが好きなのだ。
棒のように突っ立っている立花を、ロータリーに停めてある黒の外車へ押し込むと、前方の運転手に発つように告げた。
「……あの、叔父さんに連絡を……帰りが遅くなると、怒られるから……」
「ああ。私から連絡してあげよう。そのほうが話も早いだろう」
スラックスからプライベート用の携帯を取り出して、仁居は瑛智に電話をかける。立花の恐れているもう1人の男の声が、スピーカーから聞こえた。
瑛智から了承の返事をもらうと、仁居は車内の椅子に深く腰かけて立花の腰を抱き寄せた。
「これでいいのだろう。今日1日は好きにしていいと仰っていたよ。どこか行きたいところはあるかな?」
ある訳がない。嫌がる立花を半ば拉致のような形で連れ回しているのだから。車が知らない土地を走るにつれて、立花は帰りのほうを心配していた。腕の中で弱々しく首を振る立花を、仁居は抱き竦める。
「そうかそうか。君の希望がないのなら、仕方ないね」
「……あっ」
内股を撫でている手が、立花の中心に絡みついて服の上からゆるゆると扱き始める。痴態を晒すのが嫌で、仁居の腕にしがみついた。
「いや……嫌だ。こんなところで……」
「君の恥ずかしいところは私が1番よく知っているだろう。前の彼なら別に心配しなくていい」
──涼風さん以外は、嫌だ。
逃げ場のない車内では、どれだけ抵抗しても無意味だった。立花を自らの膝の上へ向かい合わせるようにして座らせて、足の間に手を滑らせる。
「あ、あっ、あ……」
涼風以外を拒絶する心とは裏腹に、アルファに触れられることに身体は歓喜している。濡れた感触が下着に拡がって気持ち悪い。仁居は後ろを使うことなく、前だけを擦って立花を絶頂へ導いた。
肩で息をする立花を労りながら、仁居は精液で汚れた手指を拭き取る。抵抗の1つすらろくに出来ないのが、情けない。涼風への裏切りがまた増えて、罪悪感の海で窒息しそうになる。射精後で呼吸の乱れている立花は、仁居の胸元に沈んでいた。
「これでは食事に行けないね。立花にもっと似合う服を買ってあげよう」
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