愛されSubは尽くしたい

リミル

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年下Subは甘えたい

可愛い恋人2

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……────。


月曜日が憂鬱に感じるのは社会人の性だ。汐とは半同棲で授業のない週末は、深見の家で過ごすことになる。最近はテスト期間だったため、汐が部屋に泊まる日は極端に少なくなっていた。今日でテストも終わりと聞き、思い切って旅行に誘ってみたのだが。

『ごめんねっ。テスト終わったら家族でキャンプに行く予定があって』

顔の前で手のひらを合わせ、汐は申し訳なさそうに眉尻を下げる。深見は「そうか」と軽く流したが、内心は深刻で慢性的な汐不足だ。

三十四までは仕事に打ち込み、若くして昇進してからふと自分の隣が寂しいことに気付いてしまった。同じ年に兄が女性と結婚したこともあり、それまで行きずりの相手と短期間で過ごすだけだったが、ずっと一緒にいられる最愛の人が欲しい。しかし、深見の男運は最悪だった。

三十五歳で付き合い出した男は、深見の稼ぎを知るやいなや、仕事を辞めてしまい家に入り浸るようになった。家事分担をするということで溜飲を下げたのだが、どう考えても深見の負担のほうが大きかった。次の年、三十六歳のときは年下の可愛らしい男性を選んだ。記念日は必ず一緒に過ごしたりして、付き合いは順調だったものの、浮気癖があり深見は疲弊してしまった。

土曜日曜を連続で休んだ深見のデスクには、書類がこんもりと溜まっている。立ち上げたパソコンには未読チャットの通知欄が「99」。その横にプラス表示があった。取締役という立場上、業務の最終決定権は深見にある。周りの社員達は八月の盆休み前で浮かれているように見えた。

深見自身も去年の今頃は、一緒に過ごしたい人もいなかったので、根を詰めて仕事を片す必要もなかった。でも、今年こそは。

──絶対に汐君と旅行へ行く!

今の深見の原動力は甘え上手な年下の恋人だ。先日の朝のやり取りを思い出すと、甘酸っぱい気持ちでいっぱいになる。濃いめのコーヒーを飲み終えた後、深見は山ほど溜まっている仕事に取りかかった。


……────。


「部長、何か今日は一段といきいきしてますね。いいことありました?」
「そこそこにな」

午後三時までノンストップでメールを片付け、休憩を挟んだところで、女性社員に声をかけられる。君佳きみかは深見家の従姉妹だ。二歳年下だが、幼稚園の頃から仲良くしている深見に対しては、ざっくりとした敬語を使う。

「仕事一辺倒だった部長が、二週連続で二日連続休暇! ……女子達は皆泣いてましたよ」
「……休みくらい普通に取らせてくれ」

悪事をすっぱ抜かれた記事タイトルのような呼ばれに、深見は苦笑する。ハーフアップにした髪を揺らしながら、君佳は顔を覗き込んできた。

「婚活。順調なんですか?」
「なんだ、いきなり」
「部長の言うそこそこっていうのは、とびきりいいことがあって幸せですー、ってことですよね? で、週末どうだったんですか。そのための有給休暇ですよね」

叔父とその娘に大量の縁談話を持ってこられた過去があり、深見は辟易していた。叔父が病に臥し、深見は子会社のオルタナに出向したのだ。早期発見が幸いし、胃癌は軽度のステージで進行を食い止められた。最近の癌治療は投薬を行いながら日帰りで通院し、変わりない生活を送ることが出来る。しかし、叔父も今年で七十であり、完全に職場復帰するのは叶わなかった。

体力的には衰えたものの、プライベートではあいも変わらず元気な様子だ。そして典型的な世話焼きおじさんで、三十七でいまだ独身の深見にいらぬお節介をかけてくる。

「まあな。紹介は今後必要ないと叔父さんに伝えておいてくれ」
「……へ? ほ、本当? 信じられないなぁ……そうだ写真! 写真はないの」
「あるが」

案の定見せて見せてとせがまれたが、深見は無視を決め込んだ。

「怪しいなー。本当に本当の彼女ですか? うちの父、姉妹続きだったから、男の部長のことすごく気に入ってますよ。今から結婚式のスピーチ考えてますもん」
「僕に構うのはいいから療養に専念して欲しい」

実の両親にも叔父や君佳にも、ゲイだとは明かしていない。けれど、汐と付き合いパートナーとなる以上、避けられない道だ。三十分の小休憩の後、深見は再び業務を再開する。ああ見えて律儀な性格の汐は、仕事中にメッセージを送ってこない。夜、実家にいるときは通話をするのがほとんどだ。今日も鳴らなかったスマートフォンを遠目に眺めつつ、気持ちを切り替える。

「あ、最後の質問です。何歳の方なんですか?」

あれもこれも、深見の口から出た婚約者の情報は、親戚中の耳に入るのだろう。深見は嘘偽りなく答えた。

「二十歳だ」
「へ、へぇ……。え、二十歳!? それってはんざ……」
「相手のご両親に挨拶も済ませてある。何か文句でもあるか?」

近年では年の差という言葉は好意的に使われるが、深見にとっては地雷だ。君佳の反応を視界から消し、深見は目の前の仕事に専念した。
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