溺愛アルファは運命の恋を離さない

リミル

文字の大きさ
3 / 42
【1章】はじめまして

ただいま

しおりを挟む
……────。


退院日になり、千歳は三週間ぶりに自宅へと帰ってきた。レグルシュと、新しく誕生した斗和を連れて。斗和は目鼻立ちがくっきりとしていて、可愛いと病院のスタッフに持て囃されていたので、千歳が退院する日は「寂しくなるわ」と口々に言われた。

毎日見舞いへと足を運ぶレグルシュのことも、院内で話題になっていたようで、彼の素性ことや馴れ初めなどをよく聞かれたものだ。
斗和は本当にレグルシュの生き写しのようで、髪も睫毛の色も、彼にそっくりだ。

家の中の香りを懐かしく感じていると、リビングへ続く扉を開けたレグルシュがばつの悪そうな顔をして振り返った。

「あ……」

整理整頓がまめな彼にしては珍しく、部屋の中が散らかっている。とりあえず、斗和を安全なベビーベッドへと避難させてから、「どうしようか」と二人揃って首をひねった。

「このところ忙しくてな……悪い」
「う、ううん。……何だか、ユキくんがいたみたいだね」

シッター時代をふと懐かしく感じてしまった。寂しがりやで、けれどもパワフルなユキをなるべく一人にさせまいと、レグルシュと千歳は奮闘していたのだ。「ユキのほうが酷いぞ」と、レグルシュは呟き、些細な対抗心を芽吹かせる。

「あいつの面倒を見るのは身体がいくつあっても足りない」
「ふふ。でもこれから、そんなことも言っていられなくなるよ」

千歳は今は大人しく眠っている斗和へ、顔を向けた。含み笑いをしながら冗談を飛ばしていたレグルシュの顔つきが、神妙なものへと変わる。

「……そうだな」
「あのね、レグ。この子がアルファでもベータでもオメガでも、僕とレグが親でよかったって思ってほしいんだ」

レグルシュの意思を確認するように、千歳はありのままの気持ちを語った。幼少期、レグルシュのアルファの父母は運命として現れたオメガに切り裂かれたのだ。

アルファとオメガの運命の番同士の間に産まれた千歳自身も、オメガだと分かった瞬間に二人から突き放された。だから──どんなことがあっても、斗和の一番の味方でいたい。

レグルシュも千歳の覚悟を受け取ったように、頷いた。

「俺も千歳と全く同じ気持ちだ。俺や千歳が受けたような苦しみは、斗和には味わってほしくない」
「レグは、斗和がオメガでも、ずっと愛してくれる?」
「当たり前だろう。だからもう、そんな心配はするな」

千歳が涙ぐんだ声で返事をする。同時に向こうのベッドで斗和が同じようにあー、と声を上げた。

泣いてしまったのかと思い、斗和の顔を覗き込んだが表情はすぐに穏やかなものへと変わり、夢の中に再び落ちていった。

「もしかして、お返事したのかな。お利口さんだね」

ちょっと親バカかもしれないが、自分達の会話と噛み合っていたので少し感動してしまった。レグルシュも続けて「どんな子に育つか楽しみだ」と、千歳の肩を抱き寄せる。

「できれば千歳のほうに似てほしいが」
「斗和はレグそっくりだよ。パパの血が濃いのかな」

困る、と吐いた言葉には似つかわない表情をする。喜色めいた横顔が美しく、千歳は毎度のことながら見惚れてしまう。

斗和がお腹の中にいるときも、レグルシュはまじないをかけるように「千歳似で」と語りかけていた。

くうくうと寝息を立てながら、可愛く眠る斗和をたっぷりと見つめた後、二人で散らかった部屋の掃除に取りかかった。レグルシュは溜まった洗濯物を片付けていき、千歳は微力ながらその手伝いをする。

「千歳は休め。後は俺がやる。まだ身体が万全ではないのだろう」
「このくらい、力仕事じゃないから大丈夫だよ。レグの仕事も手伝わないと」
「……お前に働かせたら、俺が心配で倒れそうだ」

レグルシュはわざとらしく額に手をやり、溜め息をつく。千歳が畳んでいた洗濯物は取り上げられ、次の授乳の時間まで眠るようレグルシュは進言する。

「レグのほうこそ倒れちゃうよ」
「何度も言っているが、俺は丈夫だから気にするな」

疲労を隠しきれていないので、どうしても気にかかる。結局、千歳のほうが折れる形で、ベッドへと移動した。

久々の寝室……レグルシュの匂いに包まれて、レグルシュの顔をずっと見ていたいと思うのに、睡魔には勝てず夢の中へ落ちていく。愛する番の隣で、千歳は久々に深く眠った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 8/16番外編出しました!!!!! 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭 4/29 3000❤️ありがとうございます😭 8/13 4000❤️ありがとうございます😭 12/10 5000❤️ありがとうございます😭 わたし5は好きな数字です💕 お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...