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【2章】ユキと斗和
ライバル2
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レグルシュがバレットの中で冷やし固めていたクリームコロッケを揚げているうちに、千歳とユキはサラダの盛りつけを手伝うことにした。仕事に行く前にレグルシュがほとんどつくってしまっていたので、後は具材を切って盛りつけるだけだ。
千歳が扇形に切った林檎と生ハムを、ユキがサラダの上に均等にのせていく。最後にヨーグルトとオリーブオイルのドレッシングを回しかければ完成だ。
斗和が産まれる前に新調した、大きなテーブルでは、エレナと樹が寿司桶を用意していた。事前にレグルシュが料理をつくると連絡をしておいたので、まさかこんなに豪華なものを準備してくれているとは思いもよらなかったのだ。
「千歳くんと斗和くんが主役だから。たくさん食べてね。レグと私達の予定がなかなか合わなくて、産後のお祝いできなかったものね」
「本当にありがとうございます」
千歳は人数分のサラダを取り分ける。椅子の上に立ったユキが、その様子を見て指をさした。
「ユキね、これとこれ! ちーのお手伝いしたんだよ」
林檎と生ハムを一つ一つ指をさして、ユキは得意気に言った。ユキのアピールが可愛かったので、千歳はユキの皿にそれらを多めに分けてやった。
程なくして料理をつくり終えたレグルシュも、千歳の横の席に座った。レグルシュの持ってきた大皿には、千歳が大好きでリクエストした、海老と帆立のクリームコロッケが積まれている。いつもはぴりっと辛いトマトソースがかかっているのだが、ユキも食べるので今日は甘めの味付けだ。
千歳とレグルシュと帰りの運転をする樹は、ノンアルコールのスパークリングワインで乾杯をした。エレナは昼間から瓶ビールをすでに一本空けている。
「姉貴はいつも遠慮しないな」
「羨ましかったらあなたも飲めばいいじゃない。禁酒してるわけでもないんでしょ?」
レグルシュは千歳を一瞥すると、首を振った。
「俺はいい。斗和に何かあって動けないのは困るからな」
「レグ。僕も運転できるから。エレナさんもそう言ってくれているから、楽しんでください」
空のグラスいっぱいに注がれたビールを、レグルシュは「悪い」と断って口にした。テーブルの角を挟んで、千歳の隣に座るユキは目を輝かせて、テーブルの上のご馳走を眺めている。
「ユキくん、お腹空いちゃったね。僕が取ってあげるね。どれが食べたい?」
「コロッケといくらとウニとアワビが食べたい!」
「お前も遠慮を知らんやつだな」
眉根を寄せるレグルシュを宥め、レグルシュの分もユキと同じものを取り分けた。
「千歳が先に食べろ。俺は後でいい」
「僕も後で好きなものを取りますから。お疲れさまということで、レグが先に食べてください」
「千歳だって斗和の世話や家のことでいつも忙しいだろう。遠慮していると、野生児に全部食われるぞ」
義姉夫婦に「ラブラブねぇ」とからかわれて、千歳とレグルシュはお互いに顔を赤くさせた。
レグルシュは咳払いをしつつ、グラスビールを喉奥へ流し込む。レグルシュのためにと盛りつけたコロッケと寿司は、千歳が食べることになった。
「ちー、ユキとおんなじ!」
「エレナさんと樹さんが買ってきてくれたお寿司、美味しいね」
「うん! ユキ、いくらとウニが美味しくて好きなんだぁ」
溢れんばかりにいくらが載った軍艦を、ユキは口に頬張る。「んー!」とユキは幸せそうな顔をして、膨らんだ頬を動かした。千歳も普段は食べられないような豪勢な料理を、ゆっくりと味わった。
「それで、二人はもう番になったの?」
何気なく振られた話題に、レグルシュと千歳は同時に反応した。発情期が予定外に起きてしまい、そのときにレグルシュの子を身籠ったのだ。
アルファが行為中にオメガの項を噛むことで、番関係が成立する。アルファの犬歯がオメガのフェロモン分泌腺を噛み切ることで、生涯そのアルファ以外を誘惑するフェロモンは分泌されなくなる。
妊娠中と産後しばらくは、オメガの発情期は起こらないので、レグルシュと話し合い、斗和が産まれてから番の契約を結ぼうという話になったのだが──。
「俺達の問題だから、姉貴には口出ししてもらわなくて結構だ」
「何よその言い方! 式挙げるでしょ、番届も出すでしょ……子育てが一段落してからだと、千歳くんがほったらかしでかわいそうだわ。そのうち二人目も三人目だってできるのに」
千歳とレグルシュは同じタイミングで咳き込んだ。
「ま、まあ……斗和がもう少し大きくなってからだな」
「……そうですね」
エレナに「それってどっちの話?」と聞かれて、レグルシュは「どっちもだ」とぶっきらぼうに答えた。
大人達の会話に興味がないのか、黙々と美味しい料理を食べていたユキが、唐突に胸を張って言った。
千歳が扇形に切った林檎と生ハムを、ユキがサラダの上に均等にのせていく。最後にヨーグルトとオリーブオイルのドレッシングを回しかければ完成だ。
斗和が産まれる前に新調した、大きなテーブルでは、エレナと樹が寿司桶を用意していた。事前にレグルシュが料理をつくると連絡をしておいたので、まさかこんなに豪華なものを準備してくれているとは思いもよらなかったのだ。
「千歳くんと斗和くんが主役だから。たくさん食べてね。レグと私達の予定がなかなか合わなくて、産後のお祝いできなかったものね」
「本当にありがとうございます」
千歳は人数分のサラダを取り分ける。椅子の上に立ったユキが、その様子を見て指をさした。
「ユキね、これとこれ! ちーのお手伝いしたんだよ」
林檎と生ハムを一つ一つ指をさして、ユキは得意気に言った。ユキのアピールが可愛かったので、千歳はユキの皿にそれらを多めに分けてやった。
程なくして料理をつくり終えたレグルシュも、千歳の横の席に座った。レグルシュの持ってきた大皿には、千歳が大好きでリクエストした、海老と帆立のクリームコロッケが積まれている。いつもはぴりっと辛いトマトソースがかかっているのだが、ユキも食べるので今日は甘めの味付けだ。
千歳とレグルシュと帰りの運転をする樹は、ノンアルコールのスパークリングワインで乾杯をした。エレナは昼間から瓶ビールをすでに一本空けている。
「姉貴はいつも遠慮しないな」
「羨ましかったらあなたも飲めばいいじゃない。禁酒してるわけでもないんでしょ?」
レグルシュは千歳を一瞥すると、首を振った。
「俺はいい。斗和に何かあって動けないのは困るからな」
「レグ。僕も運転できるから。エレナさんもそう言ってくれているから、楽しんでください」
空のグラスいっぱいに注がれたビールを、レグルシュは「悪い」と断って口にした。テーブルの角を挟んで、千歳の隣に座るユキは目を輝かせて、テーブルの上のご馳走を眺めている。
「ユキくん、お腹空いちゃったね。僕が取ってあげるね。どれが食べたい?」
「コロッケといくらとウニとアワビが食べたい!」
「お前も遠慮を知らんやつだな」
眉根を寄せるレグルシュを宥め、レグルシュの分もユキと同じものを取り分けた。
「千歳が先に食べろ。俺は後でいい」
「僕も後で好きなものを取りますから。お疲れさまということで、レグが先に食べてください」
「千歳だって斗和の世話や家のことでいつも忙しいだろう。遠慮していると、野生児に全部食われるぞ」
義姉夫婦に「ラブラブねぇ」とからかわれて、千歳とレグルシュはお互いに顔を赤くさせた。
レグルシュは咳払いをしつつ、グラスビールを喉奥へ流し込む。レグルシュのためにと盛りつけたコロッケと寿司は、千歳が食べることになった。
「ちー、ユキとおんなじ!」
「エレナさんと樹さんが買ってきてくれたお寿司、美味しいね」
「うん! ユキ、いくらとウニが美味しくて好きなんだぁ」
溢れんばかりにいくらが載った軍艦を、ユキは口に頬張る。「んー!」とユキは幸せそうな顔をして、膨らんだ頬を動かした。千歳も普段は食べられないような豪勢な料理を、ゆっくりと味わった。
「それで、二人はもう番になったの?」
何気なく振られた話題に、レグルシュと千歳は同時に反応した。発情期が予定外に起きてしまい、そのときにレグルシュの子を身籠ったのだ。
アルファが行為中にオメガの項を噛むことで、番関係が成立する。アルファの犬歯がオメガのフェロモン分泌腺を噛み切ることで、生涯そのアルファ以外を誘惑するフェロモンは分泌されなくなる。
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「俺達の問題だから、姉貴には口出ししてもらわなくて結構だ」
「何よその言い方! 式挙げるでしょ、番届も出すでしょ……子育てが一段落してからだと、千歳くんがほったらかしでかわいそうだわ。そのうち二人目も三人目だってできるのに」
千歳とレグルシュは同じタイミングで咳き込んだ。
「ま、まあ……斗和がもう少し大きくなってからだな」
「……そうですね」
エレナに「それってどっちの話?」と聞かれて、レグルシュは「どっちもだ」とぶっきらぼうに答えた。
大人達の会話に興味がないのか、黙々と美味しい料理を食べていたユキが、唐突に胸を張って言った。
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