溺愛アルファは運命の恋を離さない

リミル

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【6章】二人の絆

助けにきてくれた1

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「遅れて申し訳ありません」

ノックの後、間髪入れず長身の男が入室する。千歳が避け続けていた……けれど、今一番に会いたかったアルファがいた。

「はあっ……? なんで……」

的場一家は、突然現れたレグルシュに動揺している。

的場の顔を見たレグルシュは、眉間に深い皺をつくった。あれほど嫌悪していたアルファと対面したレグルシュの口調は、信じられないほど穏やかなものだった。息子よりも体格のいい長身のレグルシュを見て、祖母のほうは押し黙っている。

「レグ……」
「遅くなって悪かった。俺のほうにも連絡が来ていたから、話は大方知っている。……任せきりですまなかった」

頬に残る涙の跡を確認したレグルシュは、優しく頭を撫でてくれた。こうして触れられるのは、久しぶりのことだった。

レグルシュは的場達に深く頭を下げる。

「先生から話はお聞きしています。この度は申し訳ありませんでした」
「だ……だから。謝罪はそっちのオメガにも何度もしてもらっている! いくら謝られても……」

苛立った的場は、レグルシュに舌打ちをする。レグルシュは怯むことなく、言葉を返した。

「ただ、一つ言わせてもらうのなら。うちの息子は理由もなく人を傷つけるようなことはしない。俺も、そして誰より妻がそれを分かっています」
「な、なによ……綾乃ちゃんが先に手を出したと仰りたいの?」
「そうは言ってません。あなた達が自分の子供を信じるように、俺と妻も斗和の言うことを信じている」

意志の強い言葉に、的場一家は口を噤む。しばらくの間沈黙が続き、先に口を開いたのは綾乃の祖母だった。

「そこまで仰るのでしたら、何か決定的な証拠があるんでしょうね? そちらのお子さんが潔白だという証拠が……」

祖母の台詞を遮るように、ノックの音が響いた。園の先生に連れられた……いや、斗和と綾乃を引き止めようとしているように見える。斗和と綾乃はぎゅっと手を繋いでいた。レグルシュと千歳の前まで来ると、綾乃はお辞儀をする。

「斗和くんのパパさんママさんごめんなさい……」

もの静かな性格だった綾乃が、今にも消え入りそうな声でそう言った。千歳だけでなく、レグルシュも目を丸くする。

「えっ……?」
「あ、綾乃ちゃんっ? どうしたの……綾乃ちゃんは謝らなくていいのよ。悪いのはそちらの……」
「ばあば違うの……わたしが斗和くんにひどいこと言ったから」
「でも、先に痛いことされたんでしょう? さっきもそう言ってたじゃない」

綾乃は弱々しく首を振った。

「わたしが斗和くんのほっぺつねっちゃったのっ! お、おこられるのがこわくて言えなかった……」

綾乃は言い切ると声を上げて泣いた。隣にいる斗和も、綾乃に負けないくらいの声で泣き始めてしまう。

的場達は自分達の発言が間違いだったと自覚し、揃って顔を赤くしていた。斗和も綾乃と同じように、的場に向かって「ごめんなさい」と頭を下げている。二人はばつの悪そうな顔をした。

千歳は綾乃の前に跪くと、小さな頭をよしよしと撫でた。偉かったね、と。

「綾乃ちゃん。勇気を出して僕達に言ってくれたんだよね? ごめんなさいって言ってくれてありがとう」
「どうしてありがとうなの……?」

綾乃は心底不思議そうに、千歳に尋ねた。

「自分の悪いところを認めて、謝れるのはすごいことなんだよ。斗和と喧嘩してて嫌いになったはずなのに、仲直りできてえらいね」

この場を丸く収めようという算段は一切なく、千歳は心から綾乃の行動を褒めた。隣にいたレグルシュが、何故かふっと笑い声を漏らす。綾乃の両親に対して、皮肉めいた発言をしてしまったと気付き、千歳は顔を熱くさせた。

「……斗和くんのパパとママ仲良くていいなぁ」
「綾乃!」

綾乃が呟いた言葉に、的場は鋭く反応する。

「綾乃ちゃんにはばあばがいるでしょう?」
「ばあば好きだけどママの悪口言うもん……。パパだって」

綾乃は寂しそうに不満を口にした。千歳の耳元へ近付いた斗和が、綾乃のママのことを教えてくれた。

「綾乃ちゃんのママね。こころがお風邪を引いて、じっかに帰ってるんだって」
「それは……綾乃ちゃんに聞いたの?」
「うん。斗和のママやさしそうでいいなぁって。それで綾乃ちゃんぼくのこときらいだったんだって」

仕方のない事情かもしれないが、ママに会えない綾乃が不憫だった。的場の祖母はこれ以上千歳達に家の事情を知られないように、綾乃を連れて出て行ってしまう。的場はそんな二人を気に留める様子もなく、ぞんざいな態度を隠さなかった。

「追いかけたらどうだ?」
「いいですよ。別に。後で向かうから」
「それなら、俺達は失礼する」

千歳は斗和を抱き、レグルシュの後に続いた。的場は綺麗に磨かれた革靴で、長テーブルを蹴り上げた。大きい音が響き、斗和は千歳の胸へ顔を埋める。千歳は斗和を守るように、頭をぎゅっと抱えた。
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