異世界強制お引越し 魔力なしでも冒険者

緑ノ深更

文字の大きさ
72 / 87
2章

72 side ルーク

しおりを挟む
依頼を終えてエリカに帰って来た。
ギィとは入れ違いのはずだから明日はカイトとまた遠乗りに行くかな。とか考えながらギルドに顔を出したら、速攻ダスに捕まった。

「カイトの様子がおかしいんだが、お前原因はわかるか?」
「おかしいって何があった」

この依頼に出る前にも会ったがおかしな素振りはなかったと思うが。

「カイトの方から酔って浮気自慢してる奴に声をかけて、誘われてた」
「!?」
「露骨な誘いだったがカイトは気づいてなかったけどな」
「ソイツはどうした」
「俺が締めといたから気にしなくていい。問題はカイトだ。心当たりはないんだな?」
「……ない…」

クソっ。どういうことだ!?ギィは何してるんだ!

「今日、カイトを捕まえて聞き出す」
「あぁ。これ以上続くならフロストが黙ってないから早めに解決しろよ」

ギルド長も気づくくらいなのか。本当に何があった。

戻って来たカイトは一見いつも通りだ。
何か儚い雰囲気が出てるが、疲れてるのか?色が白くなったのか?

食事に誘うと大喜びで乗って来た。
んー。いつものカイトだな。
ただ、カイトと同級のグレンといったか。ソイツは何か思うところがありそうで、俺に強い視線を向けて来た。
お前からそんな目で見られる謂れはない。と、言いたいところだが、あるんだろうな…。今晩中にきっちり片をつけてやる。

ダスからミルクを受け取り、カイトがお気に入りのアンナの店で料理を見繕おうと立ち寄ったが、カイトを見るとすぐに奥からカイト専用って料理が出てきた。これどう見ても店で出してるランクの肉じゃないんだが…。旨いがなかなか手に入らない希少なヤツじゃないか?
カイトもよくわかってないようだが、まぁいいか。


宿の俺の部屋で話を聞き出してすぐ、とんでもないことを聞くことになった。

待て待て待て、ギィがカイト以外と結婚!?
いやその前に、食事が久しぶりってどういうことだ!?

聞けば聞くほど腹が立つ。
カイトが1人で考えてこの結論に至るまでにどれほど傷ついたのか。
悲しかっただろうし理不尽だって感じたはずだ。なのに仕方ないなんてギィに怒ることもなく受け入れてるなんてことがあっていいはずがない。

断言できる。この噂はほんの一部の中でだけの物だ。ギルド長やダスが知ってたら即否定だし、もちろんギィ自身も全く知らないだろう。
問題はそのほんの一部にカイトが含まれていることと、状況が噂を否定しきれない風にカイトに見えてるってことだ。

ギィは一体今までカイトに何をしてたんだ!って思ってたら俺の発言もそんな風に解釈されてたのか!?

カイトの自分で考える力と我慢強さは長所だが、今回は完全に裏目に出た。どれほど1人で泣いたんだろう。引っ越してすぐくらいから不安を持ちだしていたんなら、俺が気づいてもよかったはずだ。

あー、もうダメだ。
まずはギィを締める。納得のいく説明をきっちりしてもらう。いや、説明を聞く前に一発は絶対殴る。


久しぶりにカイトを抱きしめて寝た翌朝、神からもらったという種から生えた木を見て頭を抱えた。

これ、宿木になってないか?
庭に宿木が生えるって…。これにもギィは気づいてないんだろうな…。

とっととギィを取っ捕まえてカイトとしっかり話をさせないと。

ギィを捕まえに出る前にダスとギルド長に判明した内容を説明に寄ったら、グレンに呼び止められた。

「カイトは大丈夫?」
「お前に心配される必要はないよ」
「これ以上カイトが辛い思いをするんだったら、俺、カイトを迎えに行くから」
「あ゛??」
「あんなになってるのに気づけないなんて、ちゃんと見てないんだろ」

思わず威圧が漏れてしまったけど、怯みながらも言い返して来るとは、なかなかの根性だな。

「今回は完全に俺とギィに否があるのは認める。だが、お前にカイトを渡すことはない。余計な世話だ」

カイトが欲しいならカイトを守れるくらい強くなれ。俺やギィですらまだ力が足りない。その焦りが今回のことを引き起こしたとはわかっているが、やり方ってものがあるだろ、ギィ。

力不足は自覚があるのだろう、黙り込んだグレンは放っておいてギィを殴るために走り出す。
グレンが俺ぐらいに強くなったら殴られてやってもいい。けどな!追いつかれる気はさらさらない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙
BL
ごく普通の高校生だった優輝は勇者として招かれたが、レベル1だった。弱いキノコ狩りをしながらレベルアップをしているうち、黒衣の騎士風の謎のイケメンと出会うが……。 

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。

処理中です...