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★ピタラス諸島第三、ニベルー島編★

423:ミッション4

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【ミッション4:メイクイとポピーを救出せよ!】



   カービィが立てた作戦はこうだ。

   まず、俺とカービィとカサチョの三人を乗せて、ケンタウロスの誰かにフラスコの国の裏側まで走ってもらう。
   おそらく、北の海岸線辺りに水路の出口があるから、そこを探して城の内部に潜入。
   そして、アルテニースの残した図面と、俺の望みの羅針盤を頼りに、どこかに捕まっているはずのメイクイとポピーを探し出し、救出する。

   ……うん。
   正直なところ、すごく無茶な作戦だと俺は思う。
   第一、あの城の中にはホムンクルスがうじゃうじゃいるはずだ。
   俺の石化の手を逃れたホムンクルス達はみんな、あの城の中へと駆け込んで行ったのだから……
   そんな場所へ、たった三人で乗り込んで、無事で済むわけがない。

   あまりに城の内部の敵が多い場合は、国内に通じる唯一の出入口である巨大な鉄の扉を内側から開き、城の外に待機しているケンタウロス達を中に引き入れるとカービィは言うが……
   それだって、まずは鉄の扉を無事に開けられるかどうかの問題もある。
   かなり危険な賭けだ。

   だけどもカービィは……

「いつもは冷静なノリリアが、あんなに泣いてたんだ……。おいら、奴らを許さねぇ」

   そう言って、相手を威嚇する猫のように全身の毛を逆立たせて、とてもとても怒っていた。

   カービィが仲間思いなのは知ってるし、メイクイとポピーを助けたい気持ちも分かる。
   だけど、だからって……

「三人だと……、さすがにキツくない? それに、そのメンバーじゃ実質二人だよ?? 僕は……、戦えないよ???」

   俺は疑問を呈した。
   
   カービィは、確かに強い。
   だって、魔法学校を首席で卒業した虹の魔導師なんだもの。
   カサチョだって……、いろいろと問題はあるけれど、戦闘においては相当な腕の持ち主なのだろう。 
   カービィやノリリアと同じく、カサチョも第一級魔導師だっていうし。

   ……だけどさ、よく考えてよ。
   何故、そこに俺を入れる?
   万年足手まといの俺を??
   ビビリで泣き虫で魔力皆無な無物である俺だぞ???
   いくら望みの羅針盤を持っているからって、メンバーの選出おかしくない????

「大丈夫さ。おまいにはその棒切れがあるだろ?」

   カービィはそう言って、俺の腰に装備されている万呪の枝を指差した。

   まぁ確かに、これを使えば俺も戦えるが……
   いやでも、さっきはシーディアの背に乗っていたし、後ろはアイビーが守ってくれていたからなんとかなったわけで……
   小ちゃいのが三人だけ……、しかも一人は変態だし、もう一人は何をするにも度が過ぎているヤバイ奴なのだ。
   不安材料しかないじゃないか。

「まぁ、とにかくやってみよう! 無理そうなら引き返せばいいさっ!!」

   なはは! と笑うカービィ。
   君の肝っ玉の座り具合には、いつも驚かされるよ、ほんと。

「じゃあ私は、ギンロと一緒に、お城の鉄扉の前で待機するケンタウロス達と共に行動するわね」

「おう! 頼むぞグレコさん!! な~に……、ホムンクルスなんざ屁でもねぇよっ!!!」

   ……ほんと、君のその自信はどこから湧いてくるのかね? カービィ君や。

   一人、楽しげに笑うカービィを横目に、俺は小さく頭を抱えるのだった。






   パカラッ! パカラッ!! パカラッ!!!

「ねぇっ!? どうしてメラーニアも来るのさっ!??」

「僕、水路の場所を知ってるんだ!」

   ケンタウロスで、メラーニアのお姉さんである、ゴリラ顔のゴリラーンの背に乗って、俺たちは海岸線をひた走る。
   太陽はもうすっかり西の空へと消え去って、夜の闇が辺りを包み始めていた。
   砂浜に打ち寄せる波の音が、静かに響いている。

   俺とカービィとカサチョ、そしてメラーニアを背に乗せているので、かなり重いだろうと思いきや、ゴリラーンは信じられないスピードで森を駆け抜け、島の北側に位置する浜辺まで一気に到達。
   そして……

「見えてきたぞ! 国の裏側だっ!!」

   ゴリラーンの言葉に、俺たちは前方を見た。

   暗がりに浮かぶ、不気味で透明な巨大容器。
   その中にそびえ立つ、立派なお城。
   窓がない為に、内部の明かりは漏れていない。
   いや、もしかすると、内部も真っ暗なのかも知れない。
   なんてったって、あそこに潜んでいる奴らは、心のない怪物、ホムンクルスなのだから。

「あっ! あそこだよっ!!」

   メラーニアが前方を指差しながら叫ぶ。
   その先には岩場があって、小さな洞窟のような穴が一つ空いていた。

   ゴリラーンは、足が滑らないようにと、スピードを落として岩場を歩く。
   そして俺たちは、フラスコの国の城へと続く水路に到着した。

「うっわぁ~……、暗いな! なははっ!!」

「うむ。何やら異臭がするでござる」

「……入りたくなさすぎる」

   それぞれに、思いを自由に口にするちびっ子三人。

   水路は、確かに細く小さかった。
   横幅は3トール以上あるのだが、高さがない。
   俺たち三人は余裕だけど、グレコなら屈まないと入れないくらいの……、天井まではたぶん1.4トールくらい、つまり140センチくらいの高さしかなかった。

「じゃあ、行くかっ!」

   杖の先に明かりを灯し、水路へと足を踏み入れるカービィ。

   ……うぅう、入りたくねぇ~。
   暗いし臭いし汚そうだし、何より気味が悪い。
   よくアルテニースは、こんな所に一人で入ろうと思ったもんだよ全く。
   とんだジャジャ馬娘だなっ!?

「カービィさん! やっぱり僕も行くっ!!」

   メラーニアが突然そう言った。
   しかし……

「駄目だ、メラーニア! お前はまだ子供……、このような危険な戦いに加わってはいけない!! 本当ならば、すぐさま里へと戻って欲しいところを、道案内をしたいというお前の希望で、私はお前をここまで連れて来たんだ。しかし、これ以上は許さないよ!!!」

   ゴリラーンが、鼻息荒くメラーニアを叱責し、メラーニアは口をつぐんだ。

「メラーニア、気持ちだけ受け取っとくよ、ありがとな。大丈夫……、おいら達の仲間は、おいら達の手で助け出すっ! だからおまいは、みんなと待っててくれ!!」

   グッ! と親指を立てるカービィ。

「案ずるでないメラーニア殿。貴殿の心遣いは重々承知故、後は拙者らに任せて貰いたいでござるよ。姉君共々世話になり、礼を言うでござる」

   深々と頭を下げて、傘帽子を被り直すカサチョ。

「メラーニア……。本当は、代わって欲しいけど……。君を危険な目に遭わせるわけにはいかないよ。三子岩で待ってて!」

   俺は、思わず本音を漏らしつつも、なんとか己を奮い立たせる。

   怖い、とっても怖いけど……、ここまで来たんだ、引き返すわけにはいかないさ。
   メイクイとポピーを助け出して、みんなで無事にこの島を出るんだっ!

   俺たちの言葉にメラーニアは、悔しそうに拳を握りしめながらも、こくんと頷いた。

「じゃあ、今度こそ行くかっ!」

「おうっ! 行くぞぉっ!!」

「行ってくるでござるよ~」

   右手に万呪の枝を持ち、左手にエルフの盾を装備して、俺はカービィの後ろにピタリと着く。
   最後尾は嫌だからねっ!

「みんなっ! 無事に帰って来てねっ!!」

「気をつけるんだぞっ!」

   メラーニアとゴリラーンに見送られながら、俺たちちびっ子三人は、暗い水路へと入って行った。
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