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★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★

613:みんなから離れませんっ!!!

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 なんでっ!?
 なんで俺ばっかり、命を狙われなくちゃならないのさっ!??
 俺、何も悪い事してませんけどぉっ!!??

 ……いや、でもまぁ、悪魔達にとっては、仲間を次々と倒してきた俺は悪者なわけか。
 いやでもさ、そんな事言われたって仕方ないじゃないの。
 俺だって必死に生きてるんですよ!
 そう易々と、ポックリやられちゃうわけにはいかないんですよ!!
 そもそも悪いのは、悪い事する悪魔なんだからねっ!!!

「ポポ、相手の狙いがモッモちゃんなら……。ミルクが帰ってしまった今、精霊召喚師はモッモちゃんだけポ。本当ならモッモちゃんには、墓塔の探索調査の手助けをして貰いたかったポが、致し方ないポね。今回の探索には同行しない方がいいポよ」

 えぇっ!? マジかノリリア!??
 そりゃ確かに、その方が安全だし、俺の命は守られる。
 けど、ここまで来てそれは……

「仕方が無いわね。今回ばかりは、モッモは船でお留守番してなさい。私達が代わりに行ってくるから」

 えぇっ!? そりゃ無いぜグレコ!??
 俺だけお留守番とか、そんなの嫌だっ!
 正直、ハーピーや、ハーピー達を操っている悪魔かも知れない奴の存在は怖いし、さっきまでは森になんか入りたくねぇ~、とか思っていたけど……
 ここまで来たんだ、俺だってアーレイク・ピタラスの墓塔がどんななのか、この目で見てみたいんだぞっ!!

 まさかまさかの、主人公であるはずのこの俺が、ピタラス諸島編のクライマックスとも言えよう最後のこのアーレイク島で、船でお留守番だなんて……
 それってどうなのよっ!?
 ストーリー展開的にどうなのよっ!?? 
 (作者の奴、いったい何考えてんだよっ!!??)

 余りの事態に、頭が真っ白になる俺。
 命を狙われるのは勿論嫌だけど、冒険を諦めるのはもっと嫌だった。
 しかし、ノリリアもグレコも、既に俺を船に残していくのを決めたかのような雰囲気で、これからの事を話し合っていて……

「モッモちゃんが残るなら、キッズ船長に話しておかないといけないポ」

「そうね、じゃあ私が……」

 この二人の決定に抗う術など、俺は持ち合わせて無い。
 ガックリと肩を落とし、項垂れる俺。
 全身がプルプルと小刻みに震えて、悔しくて涙が出ちゃいそう。

 するとカービィが……

「なぁ、モッモを置いて行くのは得策じゃねぇと思うぞ?」

 先ほどから何かを考えていたらしい、妙な真顔で固まっていたカービィが、突然そう言った。

「得策じゃない? どういう事ポか??」

 首を傾げるノリリア。

「うん。グレコさんの推測は、半分当たってるけど、半分外れだ」

 ヘラヘラと笑うカービィ。

「外れですって? どこがよ??」

 ムッとするグレコ。

「グレコさんの言う通り、この島には五体目の悪魔が存在していて、グノンマルの悪魔の号令によって目覚めている可能性は高い。そいつが時の神の使者を狙っていて、ハーピー達にこの町を襲わせたってのも正解だろう。だけど一つだけ間違ってる。少なくとも、その悪魔はまだ……、モッモが・・・・時の神の使者だとは知らねぇはずだ」

 カービィの言葉に、グレコもノリリアも、周りにいる他のみんなもハッとする。
 
 た、確かに……、その通りかも知れない。
 俺なんて、見た目も実力も弱弱で、魔力の欠片も持ってないのだ。
 そんな俺が時の神の使者だなんて、誰も、間違っても思わないはず。
 つまり、こっちから名乗り出なければ、俺が時の神の使者だという事はバレないという事か……?

「そ、それは確かに……、そうポね」

「んで、それに加えておいら達は、それぞれになかなかの腕前の魔導師だ。アーレイク・ピタラスもその弟子も、みんな手練れの魔導師だった。つまり、時の神の使者が、魔法の使えないピグモルだなんて事は、相手も予想してないはずだぞ」

「なるほど、そうかも知れないわね……。けどニベルー島では、モッモが捕まったでしょう? それは相手に、時の神の使者だとバレたからじゃないの?? つまりモッモには、何かしらの時の神の使者だとバレる要素がある、って事じゃないのかしら???」

「それはあるだろうな。モッモは微量ながらも、おいら達には無い力、神力を持っている。それを悪魔が感知出来るのだとしたら、バレちまうだろう。だけどあの時……、ホムンクルスの城に乗り込み、モッモが捕まってしまったあの場所には、モッモだけしかいなかった。おいらが思うに、モッモ一人だけだったから、バレたんだと思うんだ。じゃあどうすればバレないか……、簡単だ。常においら達で囲んでおけばいいんだよ、そうしたらモッモが時の神の使者である事は悪魔にはバレねぇはずだ」

 ほ……、本当に?
 なんか、結構ふわっとした説明だけど??
 つまりカービィが言いたいのは、俺の持つ微々たる神力よりも、カービィや騎士団のみんなが持つ膨大な魔力の方に気を引かれて、悪魔は俺を時の神の使者などとは思わないはず、という事なのか???
 
「それに、もし本当に悪魔がいるとして、その標的が時の神の使者なのだとしたら、尚更モッモを連れて行った方がいい。最悪の場合……、いざって時に囮にできる!」

 お……、囮っ!? はぁあぁぁっ!??
 何言ってくれてんのさカービィこの野郎っ!?!?

「囮って……、カービィ、何考えてんのよ!?」

「落ち着いてグレコさん。勿論、モッモを見捨てたりしねぇよ、ちゃんと助ける。けど、モッモを船に残したまま森でおいら達が悪魔と対峙したとして、おいら達の中に時の神の使者がいないと分かれば、相手はまたしても町を襲うはずだ。タイニック号はたぶん……、ここに停泊しているだろうし、またハーピーを操って、あんな巨大な岩をぼんぼこ上空から落とされちゃ、船なんて一溜りもねぇよ、あっという間に沈んじまう。そっちの方が困るだろう?」

 なる、ほど……、うん、それもそうだな。
 俺達の旅の目的は、遥か南にあるパーラ・ドット大陸に存在すると言われている、精霊国ババントムに行く事なのだ。
 ここで船が壊れてしまえば、進路が断たれてしまうのである。
 それだけは避けねばなるまい……

「ポポ、カービィちゃん、その言い方だとまさか……。悪魔を倒すつもりポか?」

「おう! そのつもりだ☆」

「……けど、あたち達は、団長から悪魔の捜索も退治も禁止されているポよ」
 
「んだな! でも、墓塔の探索調査を邪魔する相手を倒す事・・・・・・・・・・は禁止されてねぇだろ!? 墓塔攻略の為の鍵は手に入ったけど、ドワネス語を読解出来るテッチャと、エルフィラン語を扱えるグレコさん、更には精霊を召喚出来るモッモの存在も、おまい達には必要なはずだ。つ~ま~り~!! それを邪魔してくる悪魔を倒す事は、墓塔の探索調査に必要な事だと言える!!! と、おいらは思うぞ~♪」

 あ~っとぉ~……、カービィ君や、なんだかこじ付け感が半端ないけど大丈夫?
 言ってる意味は分かるけど、何故だろう、屁理屈に聞こえる。

 だがしかし、意外にもノリリアは……

「ププッ……、ポポポポポポッ!!!」

 変な口癖で、爆笑した。
 これまで、にっこりした顔とか、ふふっと笑ったところとか、そういう可愛らしい笑い方をするノリリアは見た事があったけど、こんな風に大笑いする姿なんて初めて見たものだから、俺達はみんなギョッとした。

「ほんと、相変わらずのカービィちゃんポね! そういうところ、嫌いじゃないポよ!!」

「おう! けど、もう好きにならなくてもいいぞ!!」

「うるさいポ。それじゃあ……、そういう事にしようポか!」

 おっ!? ノリリアが納得した!??
 俺もついて行っていい!?!?

「しかしノリリア、悪魔と対峙した際は、すぐに退避しろと団長に言われたんじゃ……?」

 難色を示すアイビー。
 やめろよアイビーこの野郎。
 せっかくノリリアが納得したんだから、蒸し返すんじゃねぇよ。

「ポ、そうポね。けど、まだ悪魔と決まったわけじゃないポよ。角のある黒い鳥がいるって、ボナークさんが言っていただけポね。そのボナークさんと通信が取れないのポ、悪魔か否かなんて、あたち達には判断のしようが無いポよ。それに、カービィちゃんの言う通り、墓塔の攻略にはモッモちゃん達の力を借りる必要があるポ。協力者の身の安全を守る事は、最低限のマナーポね。本当にこの島に悪魔が潜んでいて、時の神の使者を狙っているのなら……、仲間であるモッモちゃんを、あたち達が全力で守らないといけないポよ!」

「しかしなぁ……。団長に知られたら、今度はギルド本部が消し飛ぶかも……? ルートを変更するってのはどうだろう?? 少し遠回りにはなるが、迂回して行けば」

 まだ話の途中であろうアイビーの言葉を、スッと手を上げて遮るノリリア。

「ルートは変更しないポよ。ボナークさんの捜索も含めて、彼の提示した最短ルートを進むポね。大丈夫ポよ、いざとなったら、全部カービィちゃんに任せるポ」

 ノリリアに指名されたカービィは、いつも通りの緊張感の無い顔でニカっと笑った。

「いや、それでもなぁ……」

 アイビーは顎に手を当てて、まだ渋い顔をしている。

 なんだろうな、アイビーがここまで難色を示すのも珍しい気がする。
 やっぱり、これほどまでにあのローズ団長は、団員達から恐れられているという事か。
 ……まぁ、普通怖いよね、竜だもんね彼女。
 
 しかしながら、ノリリアは……

「そんな事よりも……。悪魔には関係無いポが、その甘ったるい香りのコロンはやめてって、前にも言ったポよね? プロジェクトにお洒落な香りは必要無いポよ!」

 ビシッ! とアイビーを指差して、ピシャリと言い放った。
 久しぶりにお気に入りのコロンを付けていたらしいアイビーは、諦めたかのように閉口し、苦笑するしかなかった。

「それじゃあ……、いいモッモ? いつも通りの事だけど、絶対に一人にならない事! 何があっても、みんなの側から離れない事!! 分かった!? 今度こそ約束、守れるわよね!??」
 
 俺に向かってズイッと顔を寄せて、念押しするグレコ。
 何度も約束を破って、拉致されたり、捕獲されたりしてきた俺だけど……、今回ばかりは違うぞ!

「分かった! ぜぇ~ったい!! みんなから離れませんっ!!!」

 ビシッ! と敬礼し、俺はそう言った。
 
 良かった! 
 これで俺も、アーレイク・ピタラスの墓塔へ行けるぞ!!
 イェエーーーイ!!!

「時にノリリア、ボナークの奴は、諸島に残留悪魔がいるかもって事は知ってたのか?」

 心の中でスキップする俺を他所に、話を変えるカービィ。

「ポポ、ちゃんと全てを事前に伝えてあるポね。ボナークさんを含め、オーラス、クリオ、カサチョ、ダートの五人の現地調査員には、それぞれに危険を承知してもらった上で、事前現地調査に向かって貰ったポよ。カービィちゃんも知っての通り、この五人は騎士団の中において役職こそないポが、みんなレベル80以上の第一級魔導師ポ。特にボナークさんは、捕獲師のレベルも90を超えている強者ポね。そう簡単に、悪魔にやられるとは思えないポが……」

 ちょっぴり暗い表情になるノリリア。
 そうか、そのボナークって奴は、ずっと連絡が取れないからして、もしかしたらもう亡くなっているかも知れないって事か……

「はは~ん、なるほどなぁ~。ノリリア、おまいはちょいと見誤りをしちまったようだぞ」

「何がポか?」

 ニヤつくカービィに対し、ノリリアは少々イラッとした様子だ。

「確かにボナークはすげぇ奴だ。だけどな、あいつはマジでヤバいんだ。後でヤーリュかモーブのどっちかに聞くといいよ、頭おかしいからあいつ」

「……カービィちゃん、もう少し分かりやすく説明してくれないポか? 何がヤバいポ?? 今ここで教えてポよ」

「ん、そこまで言うなら教えてやろう。ボナークはかなり変人でな、相手が危険であればあるほど燃えるような奴なんだ。これまでだって無茶ばっかしてきたって聞くし、その分功績はあるが、なかなかに破天荒な奴なんだよ。それに、これは本人から聞いたんだけどな……。何を隠そうボナークは、悪魔を捕獲キャプトするのが夢なんだそうだ」

 カービィの言葉に一瞬、俺たちの間に沈黙が流れた。

「……え、本当ポか?」

 ノリリアの可愛らしいお顔が歪む。

「んだ、残念ながら本当だ。知る人ぞ知るってやつだな、あいつにゃ数々の馬鹿みたいな逸話がある」

「はぁあぁぁ~~~。知らなかったポよぉ~……」

 激しく項垂れるノリリア。

 どうやら、絶賛行方不明中の現地調査員ボナークは、大層ヤバい奴らしい。

 悪魔を捕獲って……、馬鹿じゃねぇの?
 やっぱり、強い奴って、みんな思考がヤバいのかな??
 うちの連中は特に、カービィは変態だし、ギンロは中二病だし、ティカも似たようなもんだし……、うん。
 
「え、待って、まさか……。じゃあそのボナークさんは、ハーピー達を操っているのが悪魔だと分かった上で、捕獲しようと考えて単身森に入り……、結果今、行方知れずになっているって事なの?」

 眉間にシワを寄せるグレコ。

「いや、まだそうと決まった訳じゃない。森に悪魔が潜んでいるというのも、僕達の仮説に過ぎない。が……、それでも、カービィさんの言葉を信じるならば、可能性は大いにあるという事だろうね」

 アイビーも、なかなかに複雑そうな顔をしている。
 たぶんだけど、ここにいる騎士団のメンバーはみんな、ボナークの事をさん付けで呼んでいるからして、さほど仲が深いわけではないのだろう。
 ノリリアもインディゴも、マジかあいつ!?って表情になっていた。

 ん~……、なんか、またややこしい感じになってきたけど……
 まぁいいや! 
 とりあえず俺も、探索調査に行けるんだ!!
 頑張るぞぉ~……、えいっ、えいっ、おぉお~~~!!!
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