654 / 797
★ピタラス諸島第五、アーレイク島編★
641:秘密結社サルヴァトル
しおりを挟む
-----+-----+-----
●秘密結社サルヴァトル
ヴェルドラ歴2027年、魔法王国フーガにおける五大貴族の一つ、ビダ家の若き当主サルテル・ビダ・バートンによって創設された組織。
2022年に起きた第74代国王ゾロモンの乱心による影響を受け、世界各地に出現したとされる魔界へ通ずる時空穴を塞ぐ事を主目的とし、世界平和を目指す為の活動を開始する。
その理念は国を越え、大陸を越えて、最盛期の構成員は数千人に登ったと考えられる。
しかしながら、その活動実態は平和とは程遠く、常に破壊と争乱と共にあった為、当時も現在も、サルヴァトルに対する世論は否定的な意見が多く見られる。
創設者サルテルの没後より、徐々に構成員が減少、また活動が消極化していった為、いつしか組織は空中分解し、その存在は世間からも忘れ去られていった。
-----+-----+-----
「今私の手元にあります、これまで各島で発見した墓塔攻略の鍵となるであろう四つのアイテムのうちの二つ……、コトコの遺産である盤と、ニベルーの遺産である金の鍵の持ち手部分の装飾、これらは二つとも五芒星の形をしております。皆さんも知っての通り、秘密結社サルヴァトルの社紋は五芒星です。そして……」
そこまで話すとパロット学士は、テッチャに視線を向けた。
「皆さんがイゲンザ島で発見したっちゅ~歯車なんじゃが、そこに書かれとる文字は古代ドワネス語じゃった。わしらドワーフ族の間でも、古代ドワネス語が一般的に使われとったんは二千年も昔の事じゃて、五百年前に作られたその歯車に使われとるっちゅ~事は、そいつを作ったもんが学のある王族ないしは貴族であった可能性が高いでの。そいで、五百年前に国を出た王族がいねかったかとデタラッタに確認したんじゃが、一人だけおったんじゃ。その者の名はコチャン。当時、時期国王の座を約束された王子じゃったが……、国を飛び出した後は消息不明になっとる。そいで、そのコチャンなんじゃが……、秘密結社サルヴァトルの一員であった事が分かっとるんじゃ」
テッチャの言葉に、またしても一様に驚く周りの皆さん。
各々に驚愕の表情を浮かべて、何やら只事ではないご様子です。
……残念ながら、事の重大性が全く理解出来ない俺と、ギンロと、ティカと、グレコは、ポカンとしております。
「それじゃあ……、故アーレイク・ピタラス大魔導師が魔界へ通ずる時空穴を塞ぐ為にかつてのムームー大陸を破壊した、という事実が歴史から排除されたのは、秘密結社サルヴァトルが裏に存在していたが為……、という事なのですか?」
インディゴの言葉に、ノリリアは少し躊躇いつつも頷いた。
「そう考えるのが妥当ポね。ただ、それを当時の国王や学会が知っていたのか否かは、あたちにも分からないポ。恐らく今後、このプロジェクトが終わった後に、いろいろと明らかになってくるはずポ」
ノリリアの言葉に、みんな沈黙する。
えっとぉ……、何が、どう……?
その、アーレイク・ピタラスが、秘密結社サルヴァトルとかいう組織の一員であり、ピタラス諸島が出来た経緯が、その秘密結社の活動の一環だった、って事はなんとなく理解出来た。
それで、その秘密結社が過激派で、あんまり良くない組織だった、ってのも理解出来たけど……
みんな、顔色がめっちゃ優れないんだけど、どうしたの??
他に何か問題があって???
「では、昨晩蘑菇神様が仰っていた、この塔に眠っている者というのは……、サルヴァトルの召喚した上級悪魔である可能性が高い、という事になるんだな?」
ロビンズの言葉に、俺とギンロ、グレコとティカは、揃ってギョッとする。
だけど周りのみんなは、覚悟していたかのように更に顔色を悪くするだけだ。
え? サルヴァトルが召喚した、上級悪魔??
え、え、えっ???
「ちょっと待って、どういう事なの? 確かに昨夜、アーレイク・ピタラスには五人目の弟子がいて、その弟子が悪魔だったっていうのは、リュフトが言っていた事だけど……。召喚したって……、悪魔召喚は古代の邪術でしょう?? しかも、上級悪魔ってことは、ハンニやカイムよりも……???」
悪魔召喚の事を知っているらしいグレコが、戸惑いながら、誰に聞くでもなく問い掛けた。
俺は、悪魔召喚が何なのか分からないけれど……、なんとなく邪悪なものである臭いがプンプンするぞ。
なんかこう、怪しげな魔法陣を用いて、沢山の魔導師が呪いの言葉を唱えながら、ゾゾゾゾ~って感じで魔界の扉を開いて、世界を滅ぼす悪魔を召喚するって感じ。
少なくとも、前世の知識的にはそういうものだったはずだ、うん。
「秘密結社サルヴァトルってのは、表向きには世界平和を掲げた集団だった。けど、その活動の大半は、めちゃくちゃなもんだったんだよ。過激派って言われるだけあって、町や村を滅ぼすのはお手のもの。紛争の裏にサルヴァトル有りってほどに、その名は悪名高いんだ。数年前に終結したフーガ近郊の内戦にも、裏にはサルヴァトルの思想を持った奴らが暗躍してたって噂だしな。そんな歴史の中で、奴らは禁忌とされる悪魔召喚を行なって、通常じゃ考えられないような卑劣な悪事を何度も繰り返してきたんだよ」
短い腕を組み、む~んと変顔をするカービィ。
「だからって、上級悪魔だなんて!?」
まだ興奮気味のグレコに対し、ノリリアが意を決したようにこう言った。
「秘密結社サルヴァトルの創設者であるサルテル・ビダ・バートンは、第74代国王ゾロモンを討ち滅ぼした大魔導師ポ。しかし王座に就く事は拒み、秘密結社サルヴァトルを作り上げた……。サルテルの意図は知る由も無いポが、ゾロモン王の乱心を止めた功績によって、サルテルには古代魔導書レメゲトンの閲覧が許可されていたらしいのポ。つまりそれは、悪魔の書ゴエティアを閲覧出来たという事ポね。実際、歴史に残されているサルテルの行った数々の偉業は、一魔導師に出来る範疇を優に超えていたポよ。この世界とは別の魔界より、あたち達とは比べものにならない程の力を持った悪魔を召喚し、事を為していたという事は容易に考えられるポ。そして、その悪魔召喚を用いた活動方法は、恐らく他の構成員にも受け継がれていたはず……。蘑菇神様が仰っていたように、故アーレイク・ピタラス大魔導師の五人目の弟子が、本当に悪魔なのだったとしたら……。その者は、悪魔の書ゴエティアに記載された召喚方法によって魔界から召喚された、上級悪魔に違いない、という事になるポよ。そして、サルヴァトルが関わっている以上、この塔には恐らく、それ以外にも何か……、あたち達には考えつかないような、良からぬものが潜んでいる可能性が高いポ」
ノリリアの言葉に、ようやく事態を理解した俺達は、周りのみんなと同じく絶句した。
上級悪魔に、それ以外にも……?
おいおい嘘だろ、ここへ来てまたしても問題発生って事なのか??
いったい、この赤銅色に輝く塔の中に、何がいるっていうんだ???
するとパロット学士は、おもむろに金の鍵を取り出した。
墓塔の攻略に必要となる、持ち手が五芒星の形をした、複雑な作りの鍵だ。
そしてその鍵の差し込み部分を持って、持ち手の装飾である五芒星を、逆にしてこちらに見せてきた。
「五芒星は、魔除けや守護、即ち平和の象徴と捉えられますが、それだけでは無いのです。こうして逆向きにする事で、その意味はガラリと異なる……。逆五芒星の意味は、悪魔崇拝。秘密結社サルヴァトルの社紋は、平和と破滅、両方の意を持っているのです」
パロット学士の言葉に俺は、背筋にスーッと寒気を感じた。
●秘密結社サルヴァトル
ヴェルドラ歴2027年、魔法王国フーガにおける五大貴族の一つ、ビダ家の若き当主サルテル・ビダ・バートンによって創設された組織。
2022年に起きた第74代国王ゾロモンの乱心による影響を受け、世界各地に出現したとされる魔界へ通ずる時空穴を塞ぐ事を主目的とし、世界平和を目指す為の活動を開始する。
その理念は国を越え、大陸を越えて、最盛期の構成員は数千人に登ったと考えられる。
しかしながら、その活動実態は平和とは程遠く、常に破壊と争乱と共にあった為、当時も現在も、サルヴァトルに対する世論は否定的な意見が多く見られる。
創設者サルテルの没後より、徐々に構成員が減少、また活動が消極化していった為、いつしか組織は空中分解し、その存在は世間からも忘れ去られていった。
-----+-----+-----
「今私の手元にあります、これまで各島で発見した墓塔攻略の鍵となるであろう四つのアイテムのうちの二つ……、コトコの遺産である盤と、ニベルーの遺産である金の鍵の持ち手部分の装飾、これらは二つとも五芒星の形をしております。皆さんも知っての通り、秘密結社サルヴァトルの社紋は五芒星です。そして……」
そこまで話すとパロット学士は、テッチャに視線を向けた。
「皆さんがイゲンザ島で発見したっちゅ~歯車なんじゃが、そこに書かれとる文字は古代ドワネス語じゃった。わしらドワーフ族の間でも、古代ドワネス語が一般的に使われとったんは二千年も昔の事じゃて、五百年前に作られたその歯車に使われとるっちゅ~事は、そいつを作ったもんが学のある王族ないしは貴族であった可能性が高いでの。そいで、五百年前に国を出た王族がいねかったかとデタラッタに確認したんじゃが、一人だけおったんじゃ。その者の名はコチャン。当時、時期国王の座を約束された王子じゃったが……、国を飛び出した後は消息不明になっとる。そいで、そのコチャンなんじゃが……、秘密結社サルヴァトルの一員であった事が分かっとるんじゃ」
テッチャの言葉に、またしても一様に驚く周りの皆さん。
各々に驚愕の表情を浮かべて、何やら只事ではないご様子です。
……残念ながら、事の重大性が全く理解出来ない俺と、ギンロと、ティカと、グレコは、ポカンとしております。
「それじゃあ……、故アーレイク・ピタラス大魔導師が魔界へ通ずる時空穴を塞ぐ為にかつてのムームー大陸を破壊した、という事実が歴史から排除されたのは、秘密結社サルヴァトルが裏に存在していたが為……、という事なのですか?」
インディゴの言葉に、ノリリアは少し躊躇いつつも頷いた。
「そう考えるのが妥当ポね。ただ、それを当時の国王や学会が知っていたのか否かは、あたちにも分からないポ。恐らく今後、このプロジェクトが終わった後に、いろいろと明らかになってくるはずポ」
ノリリアの言葉に、みんな沈黙する。
えっとぉ……、何が、どう……?
その、アーレイク・ピタラスが、秘密結社サルヴァトルとかいう組織の一員であり、ピタラス諸島が出来た経緯が、その秘密結社の活動の一環だった、って事はなんとなく理解出来た。
それで、その秘密結社が過激派で、あんまり良くない組織だった、ってのも理解出来たけど……
みんな、顔色がめっちゃ優れないんだけど、どうしたの??
他に何か問題があって???
「では、昨晩蘑菇神様が仰っていた、この塔に眠っている者というのは……、サルヴァトルの召喚した上級悪魔である可能性が高い、という事になるんだな?」
ロビンズの言葉に、俺とギンロ、グレコとティカは、揃ってギョッとする。
だけど周りのみんなは、覚悟していたかのように更に顔色を悪くするだけだ。
え? サルヴァトルが召喚した、上級悪魔??
え、え、えっ???
「ちょっと待って、どういう事なの? 確かに昨夜、アーレイク・ピタラスには五人目の弟子がいて、その弟子が悪魔だったっていうのは、リュフトが言っていた事だけど……。召喚したって……、悪魔召喚は古代の邪術でしょう?? しかも、上級悪魔ってことは、ハンニやカイムよりも……???」
悪魔召喚の事を知っているらしいグレコが、戸惑いながら、誰に聞くでもなく問い掛けた。
俺は、悪魔召喚が何なのか分からないけれど……、なんとなく邪悪なものである臭いがプンプンするぞ。
なんかこう、怪しげな魔法陣を用いて、沢山の魔導師が呪いの言葉を唱えながら、ゾゾゾゾ~って感じで魔界の扉を開いて、世界を滅ぼす悪魔を召喚するって感じ。
少なくとも、前世の知識的にはそういうものだったはずだ、うん。
「秘密結社サルヴァトルってのは、表向きには世界平和を掲げた集団だった。けど、その活動の大半は、めちゃくちゃなもんだったんだよ。過激派って言われるだけあって、町や村を滅ぼすのはお手のもの。紛争の裏にサルヴァトル有りってほどに、その名は悪名高いんだ。数年前に終結したフーガ近郊の内戦にも、裏にはサルヴァトルの思想を持った奴らが暗躍してたって噂だしな。そんな歴史の中で、奴らは禁忌とされる悪魔召喚を行なって、通常じゃ考えられないような卑劣な悪事を何度も繰り返してきたんだよ」
短い腕を組み、む~んと変顔をするカービィ。
「だからって、上級悪魔だなんて!?」
まだ興奮気味のグレコに対し、ノリリアが意を決したようにこう言った。
「秘密結社サルヴァトルの創設者であるサルテル・ビダ・バートンは、第74代国王ゾロモンを討ち滅ぼした大魔導師ポ。しかし王座に就く事は拒み、秘密結社サルヴァトルを作り上げた……。サルテルの意図は知る由も無いポが、ゾロモン王の乱心を止めた功績によって、サルテルには古代魔導書レメゲトンの閲覧が許可されていたらしいのポ。つまりそれは、悪魔の書ゴエティアを閲覧出来たという事ポね。実際、歴史に残されているサルテルの行った数々の偉業は、一魔導師に出来る範疇を優に超えていたポよ。この世界とは別の魔界より、あたち達とは比べものにならない程の力を持った悪魔を召喚し、事を為していたという事は容易に考えられるポ。そして、その悪魔召喚を用いた活動方法は、恐らく他の構成員にも受け継がれていたはず……。蘑菇神様が仰っていたように、故アーレイク・ピタラス大魔導師の五人目の弟子が、本当に悪魔なのだったとしたら……。その者は、悪魔の書ゴエティアに記載された召喚方法によって魔界から召喚された、上級悪魔に違いない、という事になるポよ。そして、サルヴァトルが関わっている以上、この塔には恐らく、それ以外にも何か……、あたち達には考えつかないような、良からぬものが潜んでいる可能性が高いポ」
ノリリアの言葉に、ようやく事態を理解した俺達は、周りのみんなと同じく絶句した。
上級悪魔に、それ以外にも……?
おいおい嘘だろ、ここへ来てまたしても問題発生って事なのか??
いったい、この赤銅色に輝く塔の中に、何がいるっていうんだ???
するとパロット学士は、おもむろに金の鍵を取り出した。
墓塔の攻略に必要となる、持ち手が五芒星の形をした、複雑な作りの鍵だ。
そしてその鍵の差し込み部分を持って、持ち手の装飾である五芒星を、逆にしてこちらに見せてきた。
「五芒星は、魔除けや守護、即ち平和の象徴と捉えられますが、それだけでは無いのです。こうして逆向きにする事で、その意味はガラリと異なる……。逆五芒星の意味は、悪魔崇拝。秘密結社サルヴァトルの社紋は、平和と破滅、両方の意を持っているのです」
パロット学士の言葉に俺は、背筋にスーッと寒気を感じた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
483
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる