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★ピタラス諸島、後日譚★
764:引き受けてやるよっ!!!
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「ふむ。つまり……、世界を救うついでに自分も救っちまおう! っていう作戦なわけか?」
顔は真面目なんだけど、言っている事がふざけている様にしか聞こえないカービィ。
「まぁ……、そういう事になるな」
あっさり受け入れるウルテル国王。
彼は再びローブを羽織り、左腕のニョグタを隠した。
「ウルテル、あなた……、正気なの? 十二神王なんて、本当に存在すると思っているの??」
冷めた目でウルテル国王を見つめ、問い掛けるローズ。
「勿論、存在するさ。その証拠に先日、近隣諸国に王議会の開催と十二神王の捜索を提案した折、北のオルドール共和国の現国王より、自らが【絶対神カオス】より神力を授かりし神王の一柱、地を司る【地王】であると、進言があった」
ウルテル国王の言葉に、ローズは目を見開いて無言で驚く。
「ウルテル、その話はまだ外部に漏らすべきでは無いと言ったろ? 歴史的に見ても、オルドールはなかなかに手強い相手だ。全てが虚言という可能性もある。自らが神王であると進言し、他国を支配下に置こうと企んでいる可能性もあるんだからな。いくらお前が現国王と旧知の中とはいえ、易々と鵜呑みにするな」
そう言ったのは、ウルテル国王の左隣に座る巨大な男だ。
その釘を刺す様な物言いに、ウルテル国王はあからさまにムッとした表情になるが……
「私も、ジェイルの意見に賛成ですわ。ウルテル、あなたは他人を簡単に信用し過ぎる傾向があります。無事に王議会が開催された暁には、私が召集に応じた各国の王全員の心中を心探魔法で探りますから、それが済むまでは、無闇に他国の王の言葉を信じないでくださいな」
ウルテル国王の右側に座る、濃い緑色の髪をしたお色気ムンムンな美女も、巨大な男と同じ様に、釘を刺す様な言葉をウルテル国王に告げた。
するとウルテル国王は、フーッと大きな溜息をつきながら、椅子の背もたれに寄り掛かり、体を少し斜めにしながらこう言った。
「と、いうわけだ……。まぁ、お前達がそう言うのも無理はない。十二神王などと呼ばれる輩は、現在では、それこそ空想の産物と化しつつある。しかしながら、かつて世界の中心であった彼の大国アストレアが滅んだ後、ヴェルハーラが興り現世界の暦が始まるまでの空白の数百年間……、その何処かで、何かが起きたが故に、今のこの世界があるのだ。そして、その当時に栄えていたとされる国の跡地や遺跡には、必ずと言っていいほどに、同じ存在の痕跡が残されている。その存在こそが、全知全能の神カオスと、そのカオスに仕えるとされる十二人の王、十二神王なのだ。どの地域、どの大陸においても、それは嘘偽りの無い事実……。考えてもみろ。何故、今のこの世界に、十二神王が存在しないと言い切れる? 誰かが存在しない事を確認したのか?? 一体誰が??? ……否、誰もその存在を否定出来ないのだ、存在しないという確証が無い故な。ならば、必ずやこの世界のどこかに、十二神王は存在しているはず。そして……、勘の良いお前ならば気付いただろう、カービィ・アド・ウェルサーよ。何故、全知全能の神カオスは、アストレアが滅んだ後、十二もの神王を必要としたのか。自らの神力を分け与えたその理由……。私が答えを言わずとも、お前ならば解るだろう?」
試す様な視線を、カービィに向けるウルテル国王。
カービィは、短い両腕を胸の前で組み、お得意の変顔をしながら、むむむと考えている……、いや、考えているフリをしているだけだろう。
「まぁな……、おまいが言いてぇ事は分かるよ。けどなぁ……。なぁモッモ、おまいは時の神の使者なんだよな?」
ふぉっ!?
きゅ、急に来たなっ!!?
いや、てか……、何にも分かってない俺に話を振るなよっ!!??
「えっ!? あっ!!? そ、……うん、そうだよ」
ビックリしたけど、とりあえずちゃんと返事が出来る質問でした。
そうです、僕は時の神の使者ですよ、はい。
「だよな。なら、空白の時代に存在したという、全知全能の神カオスと十二神王、そして、モッモを遣わした時の神クロノシア・レア、この双方は別の神格のはずだ。となると……。なぁウルテル、モッモやおいら達は、十二神王を探さなくていいよな?」
カービィの問い掛けに、ウルテル国王の眉根がピクリと動く。
「何が言いたい? カービィ・アド・ウェルサー」
怒った様子では無いものの、なんとなくさっきまでと雰囲気が違うウルテル国王。
なんていうかこう……、周りの空気が一瞬にして重くなった様に感じられた。
「おまいがおいら達に頼みたいのは、あくまでも、パーラ・ドット大陸の三大国に遣わした三人の臣下を探す事、なんだよな? じゃあおいら達が、光王レイアを探すとか、その他の神王を探すとか……、そういう話じゃ無いんだよな??」
「……あぁそうだ。私が頼みたいのは、行方不明になった三人の臣下の捜索だ。このままでは【砂漠三国】の王とのパイプが作れぬ。王議会には、全世界のあらゆる国の王に出席してもらいたいと、そう考えているからな」
「そうだよな。じゃあ……、なんで今、光王レイアだとか、十二神王の話まで、おいら達にしたんだ? まさかとは思うけど、おまい……、その左腕の奴に、心を支配されてるわけじゃねぇよな??」
ウルテル国王に向かって、鋭い視線を送るカービィ。
すると、カービィの言葉を聞いた、台座の上にいるウルテル国王以外の四人が、それぞれに血相を変えて、バッ! と立ち上がり、ウルテル国王に向き直った。
しかも、四人の手にはそれぞれに、魔法を使う為の杖が握られているでは無いか。
その杖の先端を、真っ直ぐウルテル国王に向ける四人は、今までになく顔が強張っており、非常に緊迫した様子だ。
「あ~……、皆、落ち着いてくれ。大丈夫、私は私だ。カービィ、確かに今、ここで話すべき事では無かったな。しかしながら、理由も知らずにクエストを受けてくれるほど、お前は馬鹿では無いと私は知っている。故に、今判明している真実と、私の考えを、全て伝えたまでだ。まぁ多少はな、ニョグタのお喋りに影響を受けている部分もあるだろうが……。心配するな、奴からは必要な情報のみを得ているつもりだ。私の腕に宿っている限りは、その知識を最大限活用させてもらうさ。つまり……、私はまだ、正気だ」
ニッと笑って、ウルテル国王はそう言った。
その言葉に、台座の上の四人はお互いに目配せをしながら、そっと杖を戻して椅子に座り直す。
安心した……、というわけではなさそうだが、四人共、緊急性は無いと判断した感じだ。
……だけども、その言葉の最後の方、「まだ」という言葉が、なんだか引っかかる。
「まだ」って事は、いつかは、ニョグタに心を支配される危険性がある、って事なのだろうか?
それって……、かなりヤバイんじゃないの??
「なるほど……。よし、おまいの話は分かった! どうせおいらもモッモも、パーラ・ドット大陸の砂漠三国を巡るつもりだったんだ!! 仕方ねぇから、そのクエスト、引き受けてやるよっ!!!」
……はっ!? どうぇえっ!??
待て待て待てっ!
何勝手に決めてんだよカービィこの野郎っ!!
俺、引き受けるなんて、一言も言ってませんけどっ!!??
「おぉっ! そうかそうかっ!! 引き受けてくれるかっ!!! いやぁ~、助かった。私の一存で臣下三名をパーラ・ドットへ向かわせていた故な、政界の者共の追求を受けぬ為にも、国軍以外の者に頼みたかったのだ。ギルドにクエストを出しても良かったのだが、緊急故な、人選に時間をかけていられん。いやいや、恩に着るぞ、カービィ!!!! そしてモッモ君!!!!!」
ひゃあっ!? 決まっちゃったのっ!!?
王様めっちゃ喜んでるしっ!
こんなのもう、断れないじゃんっ!!
「んでも、仮にも国王直々のクエストなんだ、報酬は弾めよぉ~?」
嫌らしい顔して、胸の前で、指でお金のポーズを作って見せるカービィ。
国王を揺するなんざ、とんでもない奴だなっ!?
「はははははっ! 分かった分かった!! 成功の暁には、言い値を払うぞっ!!!」
乾いた笑い声と共に、どこぞの大富豪のようなセリフを吐くウルテル国王。
うぅ~、どうしよう、決まっちゃった……
まぁ~た変な事に巻き込まれてる気がするぞぉ~?
フーガの王様からの依頼なんて、めちゃくちゃ重要な任務じゃ無いか。
そんなの、俺やカービィに成し遂げられるのか??
いやいや、無理だろそんなの。
行った事の無い国で、人探しなんてそんなそんな……
てかさ、それより何よりさ、勝手に決めたらグレコに怒られない???
俺は、グレコの怖~いガチギレ顔を想像しながら、ぶるるっと小さく身震いした。
……と、その時だ。
何やら隣から、メラメラと燃える様な殺気を、俺は感じ取った。
そこに居るのは、他の誰でも無い。
身体中から溢れんばかりの真っ赤な怒りのオーラを発しながら、台座の中央にいるウルテル国王を睨み付ける、白薔薇の騎士団が団長……、ローズだ!
ヒィイィィッ!?
めぇ~~~っちゃ……、怒ってるぞっ!!?
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!??
竜化していないにも関わらず、歯を食いしばるその口からは、白い湯気の様なものが立ち上っており、今にも火を吹きそうな雰囲気である。
ローズの腕の中にいるコニーちゃんは、ローズに力一杯縛られ過ぎたせいで、もはや人形だった頃の面影は無く、ただの皺くちゃな布と化していた。
そして……
「私はぁ~……、許しませんわよ……? 私はっ! カービィ・アド・ウェルサー及びその仲間が白薔薇の騎士団に一時的にでも入団する事を決してっ!! 許しませんわよぉおっ!!!」
吠えたぁあぁぁぁっ!!!??
竜の咆哮の如き吠え声で、ローズは叫んだ。
ビリビリと、周囲の空気が震え、クリスタルの床がピシピシと音を立てて軋んだ。
完全にビビっている俺とノリリア。
ちょっぴり冷や汗をかいた様な顔になるカービィ。
しかしながら、ウルテル国王は……
「そう言うと思っていたさ。だから、特別なものを用意した」
そう言って、パチンッ! と指を鳴らした。
するとウルテル国王の目の前に、パッと、小さな箱が一つ、現れたではないか。
恐らく空間魔法か何かで呼び出されたのだろうそれは、空中をフワフワと浮遊しながら、ひとりでに移動していく。
そして、ローズの目の前に到着すると、箱の蓋がパカッと開き、中から古い鍵が現れた。
それを目にしたローズは、驚いているのだろうか、口を小さく開いたまま、数秒間固まっていた。
えっと……、何? 何なの??
その古い鍵がどうかしたの???
小首を傾げながら、事の成り行きを見守る俺。
そして……
「これは、まさか……? ウルテル?? 貴方一体……、何を考えてるの???」
振り絞る様に声を出したローズは、完全に怒りを忘れていた。
その表情……、両の目が、左右へチラチラと小刻みに揺れていて、困惑しきっている様だ。
ウルテル国王は、そのローズの反応を楽しげに見つめ、こう言った。
「私の我儘を聞いてもらうのだ、それ相応の対価は必要だろう? ローズ、お前の悲願だった【無限迷宮:クレイマンズ・ダンジョン】下層への挑戦権……。それが、カービィとモッモ君、その他の彼らの仲間達全員を、白薔薇の騎士団に一時的に入団させる事への対価だ。どうだろう?? ローズ、引き受けてくれるかな???」
キラキラと輝きながら、ローズを見つめる、ウルテル国王の宇宙のような瞳。
しかしながらローズは、その瞳を見つめ返す事はせず、目の前に浮かぶ箱の中……、そこにある古びた鍵を、ただただ凝視していた。
顔は真面目なんだけど、言っている事がふざけている様にしか聞こえないカービィ。
「まぁ……、そういう事になるな」
あっさり受け入れるウルテル国王。
彼は再びローブを羽織り、左腕のニョグタを隠した。
「ウルテル、あなた……、正気なの? 十二神王なんて、本当に存在すると思っているの??」
冷めた目でウルテル国王を見つめ、問い掛けるローズ。
「勿論、存在するさ。その証拠に先日、近隣諸国に王議会の開催と十二神王の捜索を提案した折、北のオルドール共和国の現国王より、自らが【絶対神カオス】より神力を授かりし神王の一柱、地を司る【地王】であると、進言があった」
ウルテル国王の言葉に、ローズは目を見開いて無言で驚く。
「ウルテル、その話はまだ外部に漏らすべきでは無いと言ったろ? 歴史的に見ても、オルドールはなかなかに手強い相手だ。全てが虚言という可能性もある。自らが神王であると進言し、他国を支配下に置こうと企んでいる可能性もあるんだからな。いくらお前が現国王と旧知の中とはいえ、易々と鵜呑みにするな」
そう言ったのは、ウルテル国王の左隣に座る巨大な男だ。
その釘を刺す様な物言いに、ウルテル国王はあからさまにムッとした表情になるが……
「私も、ジェイルの意見に賛成ですわ。ウルテル、あなたは他人を簡単に信用し過ぎる傾向があります。無事に王議会が開催された暁には、私が召集に応じた各国の王全員の心中を心探魔法で探りますから、それが済むまでは、無闇に他国の王の言葉を信じないでくださいな」
ウルテル国王の右側に座る、濃い緑色の髪をしたお色気ムンムンな美女も、巨大な男と同じ様に、釘を刺す様な言葉をウルテル国王に告げた。
するとウルテル国王は、フーッと大きな溜息をつきながら、椅子の背もたれに寄り掛かり、体を少し斜めにしながらこう言った。
「と、いうわけだ……。まぁ、お前達がそう言うのも無理はない。十二神王などと呼ばれる輩は、現在では、それこそ空想の産物と化しつつある。しかしながら、かつて世界の中心であった彼の大国アストレアが滅んだ後、ヴェルハーラが興り現世界の暦が始まるまでの空白の数百年間……、その何処かで、何かが起きたが故に、今のこの世界があるのだ。そして、その当時に栄えていたとされる国の跡地や遺跡には、必ずと言っていいほどに、同じ存在の痕跡が残されている。その存在こそが、全知全能の神カオスと、そのカオスに仕えるとされる十二人の王、十二神王なのだ。どの地域、どの大陸においても、それは嘘偽りの無い事実……。考えてもみろ。何故、今のこの世界に、十二神王が存在しないと言い切れる? 誰かが存在しない事を確認したのか?? 一体誰が??? ……否、誰もその存在を否定出来ないのだ、存在しないという確証が無い故な。ならば、必ずやこの世界のどこかに、十二神王は存在しているはず。そして……、勘の良いお前ならば気付いただろう、カービィ・アド・ウェルサーよ。何故、全知全能の神カオスは、アストレアが滅んだ後、十二もの神王を必要としたのか。自らの神力を分け与えたその理由……。私が答えを言わずとも、お前ならば解るだろう?」
試す様な視線を、カービィに向けるウルテル国王。
カービィは、短い両腕を胸の前で組み、お得意の変顔をしながら、むむむと考えている……、いや、考えているフリをしているだけだろう。
「まぁな……、おまいが言いてぇ事は分かるよ。けどなぁ……。なぁモッモ、おまいは時の神の使者なんだよな?」
ふぉっ!?
きゅ、急に来たなっ!!?
いや、てか……、何にも分かってない俺に話を振るなよっ!!??
「えっ!? あっ!!? そ、……うん、そうだよ」
ビックリしたけど、とりあえずちゃんと返事が出来る質問でした。
そうです、僕は時の神の使者ですよ、はい。
「だよな。なら、空白の時代に存在したという、全知全能の神カオスと十二神王、そして、モッモを遣わした時の神クロノシア・レア、この双方は別の神格のはずだ。となると……。なぁウルテル、モッモやおいら達は、十二神王を探さなくていいよな?」
カービィの問い掛けに、ウルテル国王の眉根がピクリと動く。
「何が言いたい? カービィ・アド・ウェルサー」
怒った様子では無いものの、なんとなくさっきまでと雰囲気が違うウルテル国王。
なんていうかこう……、周りの空気が一瞬にして重くなった様に感じられた。
「おまいがおいら達に頼みたいのは、あくまでも、パーラ・ドット大陸の三大国に遣わした三人の臣下を探す事、なんだよな? じゃあおいら達が、光王レイアを探すとか、その他の神王を探すとか……、そういう話じゃ無いんだよな??」
「……あぁそうだ。私が頼みたいのは、行方不明になった三人の臣下の捜索だ。このままでは【砂漠三国】の王とのパイプが作れぬ。王議会には、全世界のあらゆる国の王に出席してもらいたいと、そう考えているからな」
「そうだよな。じゃあ……、なんで今、光王レイアだとか、十二神王の話まで、おいら達にしたんだ? まさかとは思うけど、おまい……、その左腕の奴に、心を支配されてるわけじゃねぇよな??」
ウルテル国王に向かって、鋭い視線を送るカービィ。
すると、カービィの言葉を聞いた、台座の上にいるウルテル国王以外の四人が、それぞれに血相を変えて、バッ! と立ち上がり、ウルテル国王に向き直った。
しかも、四人の手にはそれぞれに、魔法を使う為の杖が握られているでは無いか。
その杖の先端を、真っ直ぐウルテル国王に向ける四人は、今までになく顔が強張っており、非常に緊迫した様子だ。
「あ~……、皆、落ち着いてくれ。大丈夫、私は私だ。カービィ、確かに今、ここで話すべき事では無かったな。しかしながら、理由も知らずにクエストを受けてくれるほど、お前は馬鹿では無いと私は知っている。故に、今判明している真実と、私の考えを、全て伝えたまでだ。まぁ多少はな、ニョグタのお喋りに影響を受けている部分もあるだろうが……。心配するな、奴からは必要な情報のみを得ているつもりだ。私の腕に宿っている限りは、その知識を最大限活用させてもらうさ。つまり……、私はまだ、正気だ」
ニッと笑って、ウルテル国王はそう言った。
その言葉に、台座の上の四人はお互いに目配せをしながら、そっと杖を戻して椅子に座り直す。
安心した……、というわけではなさそうだが、四人共、緊急性は無いと判断した感じだ。
……だけども、その言葉の最後の方、「まだ」という言葉が、なんだか引っかかる。
「まだ」って事は、いつかは、ニョグタに心を支配される危険性がある、って事なのだろうか?
それって……、かなりヤバイんじゃないの??
「なるほど……。よし、おまいの話は分かった! どうせおいらもモッモも、パーラ・ドット大陸の砂漠三国を巡るつもりだったんだ!! 仕方ねぇから、そのクエスト、引き受けてやるよっ!!!」
……はっ!? どうぇえっ!??
待て待て待てっ!
何勝手に決めてんだよカービィこの野郎っ!!
俺、引き受けるなんて、一言も言ってませんけどっ!!??
「おぉっ! そうかそうかっ!! 引き受けてくれるかっ!!! いやぁ~、助かった。私の一存で臣下三名をパーラ・ドットへ向かわせていた故な、政界の者共の追求を受けぬ為にも、国軍以外の者に頼みたかったのだ。ギルドにクエストを出しても良かったのだが、緊急故な、人選に時間をかけていられん。いやいや、恩に着るぞ、カービィ!!!! そしてモッモ君!!!!!」
ひゃあっ!? 決まっちゃったのっ!!?
王様めっちゃ喜んでるしっ!
こんなのもう、断れないじゃんっ!!
「んでも、仮にも国王直々のクエストなんだ、報酬は弾めよぉ~?」
嫌らしい顔して、胸の前で、指でお金のポーズを作って見せるカービィ。
国王を揺するなんざ、とんでもない奴だなっ!?
「はははははっ! 分かった分かった!! 成功の暁には、言い値を払うぞっ!!!」
乾いた笑い声と共に、どこぞの大富豪のようなセリフを吐くウルテル国王。
うぅ~、どうしよう、決まっちゃった……
まぁ~た変な事に巻き込まれてる気がするぞぉ~?
フーガの王様からの依頼なんて、めちゃくちゃ重要な任務じゃ無いか。
そんなの、俺やカービィに成し遂げられるのか??
いやいや、無理だろそんなの。
行った事の無い国で、人探しなんてそんなそんな……
てかさ、それより何よりさ、勝手に決めたらグレコに怒られない???
俺は、グレコの怖~いガチギレ顔を想像しながら、ぶるるっと小さく身震いした。
……と、その時だ。
何やら隣から、メラメラと燃える様な殺気を、俺は感じ取った。
そこに居るのは、他の誰でも無い。
身体中から溢れんばかりの真っ赤な怒りのオーラを発しながら、台座の中央にいるウルテル国王を睨み付ける、白薔薇の騎士団が団長……、ローズだ!
ヒィイィィッ!?
めぇ~~~っちゃ……、怒ってるぞっ!!?
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!??
竜化していないにも関わらず、歯を食いしばるその口からは、白い湯気の様なものが立ち上っており、今にも火を吹きそうな雰囲気である。
ローズの腕の中にいるコニーちゃんは、ローズに力一杯縛られ過ぎたせいで、もはや人形だった頃の面影は無く、ただの皺くちゃな布と化していた。
そして……
「私はぁ~……、許しませんわよ……? 私はっ! カービィ・アド・ウェルサー及びその仲間が白薔薇の騎士団に一時的にでも入団する事を決してっ!! 許しませんわよぉおっ!!!」
吠えたぁあぁぁぁっ!!!??
竜の咆哮の如き吠え声で、ローズは叫んだ。
ビリビリと、周囲の空気が震え、クリスタルの床がピシピシと音を立てて軋んだ。
完全にビビっている俺とノリリア。
ちょっぴり冷や汗をかいた様な顔になるカービィ。
しかしながら、ウルテル国王は……
「そう言うと思っていたさ。だから、特別なものを用意した」
そう言って、パチンッ! と指を鳴らした。
するとウルテル国王の目の前に、パッと、小さな箱が一つ、現れたではないか。
恐らく空間魔法か何かで呼び出されたのだろうそれは、空中をフワフワと浮遊しながら、ひとりでに移動していく。
そして、ローズの目の前に到着すると、箱の蓋がパカッと開き、中から古い鍵が現れた。
それを目にしたローズは、驚いているのだろうか、口を小さく開いたまま、数秒間固まっていた。
えっと……、何? 何なの??
その古い鍵がどうかしたの???
小首を傾げながら、事の成り行きを見守る俺。
そして……
「これは、まさか……? ウルテル?? 貴方一体……、何を考えてるの???」
振り絞る様に声を出したローズは、完全に怒りを忘れていた。
その表情……、両の目が、左右へチラチラと小刻みに揺れていて、困惑しきっている様だ。
ウルテル国王は、そのローズの反応を楽しげに見つめ、こう言った。
「私の我儘を聞いてもらうのだ、それ相応の対価は必要だろう? ローズ、お前の悲願だった【無限迷宮:クレイマンズ・ダンジョン】下層への挑戦権……。それが、カービィとモッモ君、その他の彼らの仲間達全員を、白薔薇の騎士団に一時的に入団させる事への対価だ。どうだろう?? ローズ、引き受けてくれるかな???」
キラキラと輝きながら、ローズを見つめる、ウルテル国王の宇宙のような瞳。
しかしながらローズは、その瞳を見つめ返す事はせず、目の前に浮かぶ箱の中……、そこにある古びた鍵を、ただただ凝視していた。
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