令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが

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7 花火があがる

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いい夢を見てしまった。大人になった殿下と愛を確かめながらたくさんエッチする夢だ。

大きくなった殿下めちゃくちゃかっこよかったな。まだ幸せの余韻に浸っていたいけど、そろそろ仕事に行かなくちゃ。そう、仕事にーー 

「やばい!今日から西方騎士団に行くんだった!」

急速に目覚めた僕はベッドからがばりと半身を起こした。今日から近衛じゃなくて西方騎士団に転属だから、朝イチで魔法師団塔から転移魔法で移送してもらう予約をしていたのを思い出したのだ。

「おはよう、アシュリー。西方騎士団へは私が先ほど伝達魔法で断りを入れておいたよ。だから慌てなくとも大丈夫だ」

「殿下!?お、おはようございます⋯」

飛び起きた僕の隣には、窓から差し込む陽の光を受けてキラキラと輝くイケメンがいた。枕を背もたれに座っている殿下は昨日と同じシャツにパンツの軽装なのにものすごくかっこいい。寝起きでぼんやりする僕を見て嬉しそうに目を細めると、僕の頭を軽く引き寄せておでこにキスした。あ、あれは夢じゃなかったのか⋯

そのまま肩を抱き寄せられて手も握られる。

「昨日は君と私の初夜だったというのに⋯君があまりにも魅惑的だったから、歯止めがきかず無理をさせてしまった。どこか痛むところはないか」

「えっと、ないと思います」

殿下が魔法でそうしてくれたのだろう、僕の身体にはどこにも痛みも汚れもない。あんなにドロドロになって抱き合ったのに、痕跡がなさすぎて寂しいくらいだ。夢だったと錯覚したのも無理はないと思う。

下半身が何だかソワソワすると思ったら、僕はパンツを履いていなかった。掛け布で隠れているからセーフだけど、それが唯一の情事の名残かもしれない。上半身だけは素肌の上に、僕のじゃないシャツを羽織っている。

「アシュリーが裸のままではまた淫心を抱きそうだったので、私のシャツを着せておいたんだ」

「ありがとうございます」

「見慣れた私のシャツだが、アシュリーが着ると愛らしく見えるな」

「っ…ありがとうございます」

女子にそこそこモテる程度には男らしい外見に成長した僕だけど、相変わらず殿下の目には僕のすべてが愛らしく映っているらしい。セックスの最中、僕の乳首とかにも愛らしいって言ってた気がする。

ブカブカなのが醍醐味のはずの彼シャツも、僕の体格が殿下よりちょっと小さい程度なのでほとんどジャストサイズだから、客観的には愛らしくもなんともないはずなんだけど⋯⋯殿下は小さな頃からほんとにブレないな。だけど今はそれがすごく嬉しくて、頬が火照ってしまう。



「む。部屋の結界に外から干渉がある。この魔力はおそらく魔法師団長だろう。父上達の気配も感じる。私が対応してくるから、アシュリーはここで休んでいてくれ」

そう言って僕のこめかみに口付けると、殿下はベッドから降りて寝室から出て行ってしまった。

魔力暴走が他の部屋に被害を及ぼさない為の結界は、殿下が小さい頃から彼自身の手でこの部屋に張られていて、防音や入室制限も殿下の匙加減で自由自在だった。

ていうか父上って陛下じゃないか。僕と殿下が王宮の廊下で再会してすぐに殿下の私室に転移したのが昨日の昼過ぎで、時計を見たらあれから丸一日は経ってしまっている。僕達が魔法で一緒に転移したのは大勢の令嬢達に見られているから、殿下の部屋に2人で部屋に籠もっていたことはバレているはずだ。

結界で外の音が全然聞こえなかったから分からなかっただけで、もしかして外ではけっこうな騒ぎになっていたりして⋯⋯

「僕も行ったほうがいいかな?あ、でも下半身裸なんだった」

下着もズボンも見当たらないので、僕はベッドの掛布を腰に巻きつけて移動し、寝室のドアを少しだけ開けた隙間からこっそり殿下達の部屋を覗いた。

昨日僕達がエッチしたソファに陛下と側妃様が、ローテーブルを挟んで対面するソファには僕のお父様とお母様が座っているのが見える。ソファは殿下が浄化の魔法で綺麗にしてくれたと思いたい。

「アシュリー。君も来たのだな。ちょうどよかった、こちらへおいで」

僕の気配を敏感に察知した殿下にエスコートされて陛下達の前に連れて行かれる。下半身はノーパンに布を巻いてるだけなんだけど、こんな格好で不敬じゃないかな。

「私とアシュリーは身も心も結ばれました。ついては私達の婚姻をお許し願いたい」

殿下は僕の肩を抱いて満面の笑みで言い放った。

「殿下!?」

僕はびっくりして、腰に巻いている布を押さえていた手をすんでのところで離しそうになった。危ないところだった。

「あ~、アシュリーよ。そのように慌てずとも良い。昨夜のうちに弟夫婦からそなたの事情は聞き及んでおる。そなたらの婚姻を阻むなど大国に戦争を吹っ掛けるようなものだからな。そのような愚かな真似はせぬ」

えっ。僕達結婚していいんだ。喜びたいところだけど、陛下も側妃様も僕の両親も目の下にクマができて何だかひどくお疲れの様子だ。

「イーライよ。アシュリーと結ばれて喜ぶ気持ちはわかるが、昨日の昼過ぎから今朝方まで城の上空でひたすら大輪の花火が打ち上がっていたのはそなたの仕業であろう?音がうるさくてちっとも眠れなかったぞ。民からも騒音についての苦情が大量に寄せられておる」

「申しわけありません。音にまで気が回りませんでした」

陛下に謝ると、殿下はバツが悪そうな顔で僕を見る。

「すまない、アシュリー。さすがに君をこの手で抱くのは興奮が勝ちすぎて魔力を抑えることができなかったんだ。苦肉の策で魔力を花火に変えて空に打ち上げやりすごしたつもりでいたが、爆発音が鳴っていたとは自分でも気付かなかった。アシュリーに夢中になるあまり」

「で、殿下⋯」

「情けない私に失望したかい?だが婚約は解消してあげられないんだ」

花火のことにはびっくりだけど、魔力が暴走するたびに聞いていた懐かしい殿下の口癖に、僕の頬は自然と緩んでしまう。

「失望なんてしませんよ。僕も殿下に夢中だから、婚約を解消されたら困ってしまいます」

「アシュリー⋯!!」




僕はイーライ殿下が小さい頃に何で僕を好きになったのか訊ねたことがあった。

『私の目にはアシュリーだけが光輝いて見えるんだ。4歳のあの日に王城で君を見た瞬間、私の伴侶は君だと思った。理屈じゃないんだ』

殿下は理屈抜きでまるっと僕のことが好きみたいだ。僕がこっちの世界に転生したのは、彼と出会うために神様がそうしてくれたのかもしれない。

僕達はその後すぐに結婚して、殿下が公爵家にお婿に来た。すごく幸せだけど毎晩のように公爵邸の空に音のない花火が打ち上がるので、事情を知る人々に僕達の営みがバレバレなのがちょっと恥ずかしい日々だ。





おしまい




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