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4 ムルドVSイグニス?
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「ジェノ。あれから考えたんだが⋯⋯お前やっぱりイグニス様に良いように弄ばれているんじゃないのか?この領を治めている侯爵家の跡取り息子が平民の冒険者と本気で交際するだなんて、俺にはどうしても信じがたい」
イグニスとセフレ関係になってから一月くらい経った頃に、ムルドとピオニーの前でイグニスに俺の恋人のふりをしてもらった。
その場ではピオニーと祝いの言葉をかけてくれたムルドだったが、内心では俺とイグニスの仲を訝しんでいたようだ。ピオニーがソロの依頼で不在の今日、俺達三人の馴染みの飯屋に、こうして俺だけ呼び出されてしまった。
ムルドが俺とイグニスの関係を疑うのも無理はない。イグニスのステータスがあまりにも高過ぎたのだ。彼が侯爵家のお坊ちゃんで次期領主様で、領の騎士団では副団長をしているなんて最初から知っていたら、俺はイグニスを相手に選ばなかっただろう⋯⋯
「お前は俺とピオニーに言ったよな?『新しくできた恋人と一緒になる』と。神殿で祝福を⋯とまではいかずとも、せめてイグニス様と籍を入れる約束くらいは交わしてるんだろう?」
「う⋯⋯そ、それは⋯⋯」
次期領主様と冒険者崩れの俺が入籍なんてできるわけないと、その辺で遊んでる子どもだって思うだろう。
同性同士で結婚する場合は共に神殿に行き子授けの祝福を受ければ子が成せるようになるのだが――
「俺と彼は事実婚で⋯⋯神殿にはその、いつか行けたらいいね、とは約束したかもしれなくて⋯⋯」
「見え透いた嘘はやめろ。それだけ言い淀んでいて俺が騙されると思うのか」
俺は取り繕うのを諦めた。
「ムルドが心配する気持ちもよくわかるよ。ありがとうな。だけど仮に俺が遊ばれているんだとしても、イグニスはちゃんと転職の手助けはしてくれているんだ。それに彼は悪人じゃないってのだけは断言できるよ」
求職中だった俺に、中級の冒険者で戦闘経験があるなら騎士団の入団試験を受けてはどうかと勧めてくれたのはイグニスだ。
試験は実技と筆記の両方ある。俺は魔法はある程度は使えるからそれ以外――剣と体術を教えてくれる師匠と、勉強を教えてくれる家庭教師の手配をイグニスはしてくれた。
彼らは子どもの頃のイグニスを教えていた老齢の男女で『隠居生活で暇を持て余していたからちょうどよかった』と言って、学の無い平民の俺にも根気よく手ほどきしてくれる。入団試験は今から半年後だ。
「身分の低い人間を弄ぶ奴は俺の中では悪人だ。遊ばれているとわかっていながらジェノが彼と同じ騎士を目指すなんて、そんなのは絶対に認められない」
俺の入団試験の少し前にイグニスは退団して実家で領主補佐として働くことが決まっているから、俺とイグニスは一緒に働かないけれど。
「今からでも俺達のパーティーに戻って来い、ジェノ」
テーブルの向かい側に座るムルドが、黒い大きな瞳で俺を見据える。短い黒髪に野性味のある凛々しい顔立ち。
前にイグニスがムルドと会った時『思ったより全然たいしたことないな。俺のほうが万倍かっこいい』と評していたが、俺の目には相変わらず、ムルドの姿はとびきりかっこよく映る。こうして正面で向かい合っていると心がグラつきそうになるくらいだ。でも。
「俺はパーティーには戻らないよ」
「ジェノ。強情を張るな」
俺はその時ちょうどテーブルの上に両手を置いていた。その片方の手の上に、ムルドが彼の大きな手を重ねた。
「ムルド?手が」
そのまま手を握られて、俺の鼓動は早鐘を打つ。
「俺が最初に言った通りになった⋯⋯ジェノは人が好いから騙されるぞと。お前はやっぱり俺の傍に居ないと駄目だ。俺がずっとお前を守ってやる」
口説かれてるのか?と錯覚しそうになるがムルドのこれは標準装備だ。俺は彼のこういう態度にめっぽう弱くて、なかなか彼を諦められずにいた。今だってもう陥落すれすれだ。
「ムルド⋯」
その時たまたま店内でガタンと大きな音がして、そのおかげで俺は正気を取り戻すことができた。
「と、とにかくっ⋯どんなに説得されてもパーティーには戻らないって決めてるからっ」
俺はなんとかムルドの手を振り払うと、立ち上がりざまポケットから飯代の銅貨を取り出してテーブルに置いた。
「ジェノ、待てっ」
「またな。次はピオニーも一緒の時に会おう」
それだけ言うとムルドに背を向けて足早に店を出る。
(あ、危なかった⋯⋯!)
危うくムルドの誘いを受けてしまいそうになった。まだ胸がドキドキしている。落ち着くためにフゥと息を吐いていると「ジェノ!」と後ろから大声で呼ばれた。俺を追ってムルドも店を出てきたのだ。
「行くなよ、ジェノ!」
追いついたムルドが俺を背中から抱き締めた。
「なっ⋯ムルド!?」
「ジェノ。戻って来てくれ、頼む。俺はお前が心配だし、お前が傍にいないと寂しいよ。俺達は三人で、これまで支え合って生きてきたじゃないか」
ムルドからこんな風に抱き締められるのは初めてだった。大きな身体に包まれて、背中に彼の温度を感じる。耳元にかかる熱い吐息。
「ム、ムルド」
「お願いだ、ジェノ」
「おおおーい。ちょっとムルド君。駄目だろ、この距離感は。ジェノから離れなさい。今すぐに」
「えっ。イグニス?」
チラッと横を見ると、眉間にシワを寄せたイグニスが、俺を抱いているムルドの腕をぺちぺちと叩いている。反対側の手で『離れろ』とジェスチャーしながら。
渋々といった感じでムルドが俺を解放すると、イグニスは俺の肩をぐいっと引き寄せてぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「ちょ、苦しい⋯腕緩めて、イグニス。って言うかどうしてここに?今日は仕事のはずだったろ」
「ジェノがムルド君と二人きりで会うって言うから、気になってあらかじめ休みを取ってたんだよ。結果大正解だったわ。ジェノ、今にも『パーティーに戻る』って言い出しそうな雰囲気だったからな」
「うぅ、それは⋯⋯って言うか、いきなり現れたように感じたけど認識阻害かけてたのか?」
「そーだよっ。今さっき解いたの。店ん中でもお前らを見張ってたんだぜ。ジェノがヤバそうだった時に椅子ガタッて鳴らしたの俺よ」
あの時のあれはイグニスだったのか。おかげで命拾いしたけど。
いつもは洒落た刺繍が刺されたシャツ等を好んで着ているイグニスだが、今日はシンプルなシャツにズボンの、平民の様な格好だ。これは⋯⋯変装?
「あの、ちょっといいですか?イグニスさん」
「ああ?なんだよ、ムルド君」
「後生ですからそいつを解放してやってください。ジェノはあなたと違って純粋なやつなんです」
ムルドの中でイグニスが完全に悪い貴族になっている。俺もイグニスを利用している間柄なのだが、今それを言ったらイグニスに茶番を演じてもらった意味がなくなってしまう。
「ジェノを貴族様のお遊びに付き合わせるのはやめてください!」
「はん。イヤだね~。ジェノはもう俺のだし、弄んでなんかないし。君こそジェノを自分に縛り付けようとするのをやめてくれ。あんな、恋人にするみたいな態度で」
「っ⋯イグニスさん、俺はそんなつもりは」
「俺のほうこそ君に怒ってるんだぜ。人の恋人にバックハグとか絶対しちゃダメだろ。君もあのピオニーちゃんて子と恋人同士なんだろ?彼女がもしあの場面を見たら良い気はしないはずだ」
「それは⋯⋯すみませんでした。ジェノは俺にとって家族みたいな存在だから感情的になって、つい」
「家族って、弟的な?俺には兄貴も弟も両方いるが、あいつらにバックハグなんか頼まれたってしたくねえけどな」
「それは人によると思います」
「な、なあムルド、俺達これから用事があるから、悪いけどそろそろ帰るな」
「⋯⋯ああ」
イグニスとムルドの言い合いがどんどん険悪になるから会話に無理やり割り込んで、俺を抱いているイグニスの脇腹を叩いてここから離れるよう促した。
俺とイグニスは寄り添って歩きながらムルドから遠ざかる。一応恋人のふりは続行だ。
俺の肩を抱いて歩くイグニスの眉間に寄ったシワはますます深くなって、もう不機嫌全開って感じだ。
「イグニス。今日は来てくれて助かったよ。俺ひとりだったら危なかった」
「めっちゃくちゃトロンとした顔してたよな。何あれ?あんな顔、一度も俺にしたことねえじゃん」
「そうかな?」
「そうだよっ」
「まあ⋯⋯ムルドは長年片想いしていた相手で、イグニスと俺はお互いにセフレなわけだし⋯⋯」
俺がそう言うと、イグニスはますます不貞腐れた。
「はぁ。ムルド君ね。ジェノにあんな可愛い顔されたら、そりゃあ『俺のそばに居ろ。俺が守ってやる』とか、かっこつけて言いたくもなるわ。あいつ自身わかってねえんだろうが、ぜってージェノを他の男に渡すのが惜しくてあんな真似したんだぜ。後ろから熱烈に抱き締めたりとかよ~、家族にあんなんしねえっつーの!無自覚なとこが余計に腹立つっ」
今度はムルドに対してぷりぷりと怒り出した。イグニスはムルドに会う前からムルドを気に入らなかったみたいだけど、イグニスとムルドは何だか会うたびにお互いの好感度が下がっていってる気がするな⋯⋯
「ジェノがその気になればすぐにでもあいつのこと落とせるぜ。まずはジェノのエロいカラダで籠絡して」
「そんな泥沼みたいなの望んでないし、ムルドは誠実だからそんな誘いに乗らないよ」
「誠実な男は恋人以外の可愛い子にバックハグしないと思います」
「もういいってバックハグは。そんなことより、俺が最後までパーティーに戻るって言わなかったのはイグニスのおかげかも。手を握られたり抱き締められたりだとか、いつもイグニスが俺にするおかげで耐性がついてたって言うか⋯⋯前の俺ならムルドに手を握られた時点で即落ちてたと思う」
「ふーん?だったら俺に感謝の意を示してもらわねえとな。今日はジェノにたっぷりご奉仕してもらうから」
イグニスとセフレ関係になってから一月くらい経った頃に、ムルドとピオニーの前でイグニスに俺の恋人のふりをしてもらった。
その場ではピオニーと祝いの言葉をかけてくれたムルドだったが、内心では俺とイグニスの仲を訝しんでいたようだ。ピオニーがソロの依頼で不在の今日、俺達三人の馴染みの飯屋に、こうして俺だけ呼び出されてしまった。
ムルドが俺とイグニスの関係を疑うのも無理はない。イグニスのステータスがあまりにも高過ぎたのだ。彼が侯爵家のお坊ちゃんで次期領主様で、領の騎士団では副団長をしているなんて最初から知っていたら、俺はイグニスを相手に選ばなかっただろう⋯⋯
「お前は俺とピオニーに言ったよな?『新しくできた恋人と一緒になる』と。神殿で祝福を⋯とまではいかずとも、せめてイグニス様と籍を入れる約束くらいは交わしてるんだろう?」
「う⋯⋯そ、それは⋯⋯」
次期領主様と冒険者崩れの俺が入籍なんてできるわけないと、その辺で遊んでる子どもだって思うだろう。
同性同士で結婚する場合は共に神殿に行き子授けの祝福を受ければ子が成せるようになるのだが――
「俺と彼は事実婚で⋯⋯神殿にはその、いつか行けたらいいね、とは約束したかもしれなくて⋯⋯」
「見え透いた嘘はやめろ。それだけ言い淀んでいて俺が騙されると思うのか」
俺は取り繕うのを諦めた。
「ムルドが心配する気持ちもよくわかるよ。ありがとうな。だけど仮に俺が遊ばれているんだとしても、イグニスはちゃんと転職の手助けはしてくれているんだ。それに彼は悪人じゃないってのだけは断言できるよ」
求職中だった俺に、中級の冒険者で戦闘経験があるなら騎士団の入団試験を受けてはどうかと勧めてくれたのはイグニスだ。
試験は実技と筆記の両方ある。俺は魔法はある程度は使えるからそれ以外――剣と体術を教えてくれる師匠と、勉強を教えてくれる家庭教師の手配をイグニスはしてくれた。
彼らは子どもの頃のイグニスを教えていた老齢の男女で『隠居生活で暇を持て余していたからちょうどよかった』と言って、学の無い平民の俺にも根気よく手ほどきしてくれる。入団試験は今から半年後だ。
「身分の低い人間を弄ぶ奴は俺の中では悪人だ。遊ばれているとわかっていながらジェノが彼と同じ騎士を目指すなんて、そんなのは絶対に認められない」
俺の入団試験の少し前にイグニスは退団して実家で領主補佐として働くことが決まっているから、俺とイグニスは一緒に働かないけれど。
「今からでも俺達のパーティーに戻って来い、ジェノ」
テーブルの向かい側に座るムルドが、黒い大きな瞳で俺を見据える。短い黒髪に野性味のある凛々しい顔立ち。
前にイグニスがムルドと会った時『思ったより全然たいしたことないな。俺のほうが万倍かっこいい』と評していたが、俺の目には相変わらず、ムルドの姿はとびきりかっこよく映る。こうして正面で向かい合っていると心がグラつきそうになるくらいだ。でも。
「俺はパーティーには戻らないよ」
「ジェノ。強情を張るな」
俺はその時ちょうどテーブルの上に両手を置いていた。その片方の手の上に、ムルドが彼の大きな手を重ねた。
「ムルド?手が」
そのまま手を握られて、俺の鼓動は早鐘を打つ。
「俺が最初に言った通りになった⋯⋯ジェノは人が好いから騙されるぞと。お前はやっぱり俺の傍に居ないと駄目だ。俺がずっとお前を守ってやる」
口説かれてるのか?と錯覚しそうになるがムルドのこれは標準装備だ。俺は彼のこういう態度にめっぽう弱くて、なかなか彼を諦められずにいた。今だってもう陥落すれすれだ。
「ムルド⋯」
その時たまたま店内でガタンと大きな音がして、そのおかげで俺は正気を取り戻すことができた。
「と、とにかくっ⋯どんなに説得されてもパーティーには戻らないって決めてるからっ」
俺はなんとかムルドの手を振り払うと、立ち上がりざまポケットから飯代の銅貨を取り出してテーブルに置いた。
「ジェノ、待てっ」
「またな。次はピオニーも一緒の時に会おう」
それだけ言うとムルドに背を向けて足早に店を出る。
(あ、危なかった⋯⋯!)
危うくムルドの誘いを受けてしまいそうになった。まだ胸がドキドキしている。落ち着くためにフゥと息を吐いていると「ジェノ!」と後ろから大声で呼ばれた。俺を追ってムルドも店を出てきたのだ。
「行くなよ、ジェノ!」
追いついたムルドが俺を背中から抱き締めた。
「なっ⋯ムルド!?」
「ジェノ。戻って来てくれ、頼む。俺はお前が心配だし、お前が傍にいないと寂しいよ。俺達は三人で、これまで支え合って生きてきたじゃないか」
ムルドからこんな風に抱き締められるのは初めてだった。大きな身体に包まれて、背中に彼の温度を感じる。耳元にかかる熱い吐息。
「ム、ムルド」
「お願いだ、ジェノ」
「おおおーい。ちょっとムルド君。駄目だろ、この距離感は。ジェノから離れなさい。今すぐに」
「えっ。イグニス?」
チラッと横を見ると、眉間にシワを寄せたイグニスが、俺を抱いているムルドの腕をぺちぺちと叩いている。反対側の手で『離れろ』とジェスチャーしながら。
渋々といった感じでムルドが俺を解放すると、イグニスは俺の肩をぐいっと引き寄せてぎゅうぎゅうと抱き締めた。
「ちょ、苦しい⋯腕緩めて、イグニス。って言うかどうしてここに?今日は仕事のはずだったろ」
「ジェノがムルド君と二人きりで会うって言うから、気になってあらかじめ休みを取ってたんだよ。結果大正解だったわ。ジェノ、今にも『パーティーに戻る』って言い出しそうな雰囲気だったからな」
「うぅ、それは⋯⋯って言うか、いきなり現れたように感じたけど認識阻害かけてたのか?」
「そーだよっ。今さっき解いたの。店ん中でもお前らを見張ってたんだぜ。ジェノがヤバそうだった時に椅子ガタッて鳴らしたの俺よ」
あの時のあれはイグニスだったのか。おかげで命拾いしたけど。
いつもは洒落た刺繍が刺されたシャツ等を好んで着ているイグニスだが、今日はシンプルなシャツにズボンの、平民の様な格好だ。これは⋯⋯変装?
「あの、ちょっといいですか?イグニスさん」
「ああ?なんだよ、ムルド君」
「後生ですからそいつを解放してやってください。ジェノはあなたと違って純粋なやつなんです」
ムルドの中でイグニスが完全に悪い貴族になっている。俺もイグニスを利用している間柄なのだが、今それを言ったらイグニスに茶番を演じてもらった意味がなくなってしまう。
「ジェノを貴族様のお遊びに付き合わせるのはやめてください!」
「はん。イヤだね~。ジェノはもう俺のだし、弄んでなんかないし。君こそジェノを自分に縛り付けようとするのをやめてくれ。あんな、恋人にするみたいな態度で」
「っ⋯イグニスさん、俺はそんなつもりは」
「俺のほうこそ君に怒ってるんだぜ。人の恋人にバックハグとか絶対しちゃダメだろ。君もあのピオニーちゃんて子と恋人同士なんだろ?彼女がもしあの場面を見たら良い気はしないはずだ」
「それは⋯⋯すみませんでした。ジェノは俺にとって家族みたいな存在だから感情的になって、つい」
「家族って、弟的な?俺には兄貴も弟も両方いるが、あいつらにバックハグなんか頼まれたってしたくねえけどな」
「それは人によると思います」
「な、なあムルド、俺達これから用事があるから、悪いけどそろそろ帰るな」
「⋯⋯ああ」
イグニスとムルドの言い合いがどんどん険悪になるから会話に無理やり割り込んで、俺を抱いているイグニスの脇腹を叩いてここから離れるよう促した。
俺とイグニスは寄り添って歩きながらムルドから遠ざかる。一応恋人のふりは続行だ。
俺の肩を抱いて歩くイグニスの眉間に寄ったシワはますます深くなって、もう不機嫌全開って感じだ。
「イグニス。今日は来てくれて助かったよ。俺ひとりだったら危なかった」
「めっちゃくちゃトロンとした顔してたよな。何あれ?あんな顔、一度も俺にしたことねえじゃん」
「そうかな?」
「そうだよっ」
「まあ⋯⋯ムルドは長年片想いしていた相手で、イグニスと俺はお互いにセフレなわけだし⋯⋯」
俺がそう言うと、イグニスはますます不貞腐れた。
「はぁ。ムルド君ね。ジェノにあんな可愛い顔されたら、そりゃあ『俺のそばに居ろ。俺が守ってやる』とか、かっこつけて言いたくもなるわ。あいつ自身わかってねえんだろうが、ぜってージェノを他の男に渡すのが惜しくてあんな真似したんだぜ。後ろから熱烈に抱き締めたりとかよ~、家族にあんなんしねえっつーの!無自覚なとこが余計に腹立つっ」
今度はムルドに対してぷりぷりと怒り出した。イグニスはムルドに会う前からムルドを気に入らなかったみたいだけど、イグニスとムルドは何だか会うたびにお互いの好感度が下がっていってる気がするな⋯⋯
「ジェノがその気になればすぐにでもあいつのこと落とせるぜ。まずはジェノのエロいカラダで籠絡して」
「そんな泥沼みたいなの望んでないし、ムルドは誠実だからそんな誘いに乗らないよ」
「誠実な男は恋人以外の可愛い子にバックハグしないと思います」
「もういいってバックハグは。そんなことより、俺が最後までパーティーに戻るって言わなかったのはイグニスのおかげかも。手を握られたり抱き締められたりだとか、いつもイグニスが俺にするおかげで耐性がついてたって言うか⋯⋯前の俺ならムルドに手を握られた時点で即落ちてたと思う」
「ふーん?だったら俺に感謝の意を示してもらわねえとな。今日はジェノにたっぷりご奉仕してもらうから」
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