執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?

陽海

文字の大きさ
62 / 66
マルチエンディング

HAPPY END 夕日の下【ジル・ブラックウェル】

しおりを挟む
「……俺さ、お前のこと好きなんだけど」

 唐突に言われてわたしはえ、と情けない声を漏らした。今わたしとジルはパーティの帰り道、馬車に揺られている最中だ。窓を見て綺麗な夕日だなあ、なんて呑気に考えていたのに急すぎた。

「なあ、お前は俺のことどう思ってるんだよ?」

 ジルが畳み掛ける。わたしは上手く顔を見ることができないまま口をぱくぱくさせた。
 今までだったら友達で、それ以上なんて考えられなかった。けれど、ジルはどんどん格好良くなっていって。他の女性たちにはそっけないのにわたしとは仲良くしてくれることとか、どうしてなんだろうって考えるくらいには、気になっていた。それって、わたしもジルのこと好きってこと、だよね……?

「わたしも、たぶん、ジル様のこと好き……だと思います」
「……だと思うって」
「あの、わたしもまだよく分からなくて。でもただの友達とは少し違くて。今だって、好きだと言われて嬉しいやら恥ずかしいやらで」

 真っ赤になった顔を隠すべく、わたしは扇子を取り出した。母が淑女の嗜みだとくれたものだ。初めてきちんと使った、こういう時に使うのか。ちらりとジルを窺えば、ジルは眉間に皺を寄せていた。けれど顔はほのかに赤い。ジルはムッとした顔をわたしに向けて、「顔見せろ」と勢いよく扇子を取り上げた。

「……その表情なら、嘘じゃなさそう、だな」
「嘘ではないです……」
「俺とお前は互いに好き合ってる、ってことで間違い無いか?」

 わたしはこくりと小さく頷く。珍しく慌てた様子のジルに、また顔が熱くなっていく。

「でも、悪いけど俺、お前と『だと思う』くらいの関係性で終わらせるつもりねーから」

 ジルはそうにっと笑ってみせる。いやに自信満々の表情だ。その目にはどこか安堵している様子も窺えて。

 夕日に照らされて、ジルのオレンジ色の瞳がより一層煌めいて見えた――



「ってことで、しばらく俺と2人で暮らそうな」
「急すぎませんか……了承したのはわたしですけれども……」

 ジルとわたしは数週間後にはジルの別荘にやってきていた。あれからジルは光の速さで婚約やら、挨拶やら諸々の手続きを終えた。最初から準備していたのでは、と疑ってしまうほど速かった。さらに以前から管理をしていたという別荘はやけに作り込まれていて。一緒に過ごす用、と言われた部屋なんてバスルームやトイレまで一部屋に完備されているほどだった。

「急なんかじゃない。むしろやっとか、って感じだな。俺がどんだけ待ったと思ってるんだよ?」
「う、それは……」

 ジルはずっとわたしに片想いしていたらしい。なんでも自覚したのは中等部の頃で、高等部3年間もずっとだったと言っていた。ジルなりにアプローチしていたつもりだったようだけれど……演劇のときの告白も本気だったとは驚いた。とにかく、わたしは気がつかなかった。
 正直に気がつかなかったし友達でいたいと思っていた、と伝えたところ「じゃあ分からせてやるよ」ということで別荘に連れてこられたのである。

 ……それにしたって、距離が、近すぎる!

 ジルは部屋に入るなり、わたしの腰に手を回して首元にキスを落としてくる。

「あああ、あの! さすがに到着したばかりなので、その、そういうのは!」
「へえ、してもいいとは思ってるってことだよな?」
「ううう……とにかく、少し! 控えて! いただきたいです!」

 なんとかジルを引っ剥がす。ジルはしょうがないな、というように肩をすくめてみせた。とりあえず、わたしはその一緒に過ごす用の部屋から出て用意されたわたしの自室へと向かった。


 夕食を終え、わたしは自室へと戻ってきていた。ジルも今頃は自室にいるだろうか、なんて考えながら少し顔が熱っぽくなったのが分かった。

 ジルは今日一日中、ずっと優しくて甘くて。けれどわたしの言う友達、というのを尊重してくれているのか、今までのように他愛無い話で笑ってくれたりしょうもないことでふざけ合ったりしてくれて。友達から婚約者、と関係が変わってしまったら、とずっと不安だったけれどジルはどこまでもわたしの大好きなジルだ。

 ちらりと時計に目を向ける。夜の9時。姿見には寝巻き姿のわたしが映っている。大きく深呼吸をしてから部屋を出た。


「……え、どうしたんだよ」

 ドアを開けたジルは呆けたような表情を浮かべ、それからぎこちなく視線を外す。

「……ジル様と一緒にいたくなった、と言ったらどうなりますか」

 まって、これって痴女なのでは。口に出してしまってから気づいて顔を伏せた。いくら婚約者といえど、結婚していない身で、貴族令嬢としてはまずい行動だ。なんとか答えるか、せめて揶揄って追い返してくれ、なんて思っていると。途端に腕を引っ張られ、わたしはつんのめってジルの胸にダイブしてしまった。

「一緒になりたい、って言ったらお前はどうするんだよ」

 目を瞬かせる。しばらくして意味に気がついてわたしは噴火したように顔が熱くなった。

「…………ハレンチ」
「大昔のこと掘り返すな、ばか」

 ジルはそうはにかんで、それからキスをした。だんだん深くなるそれにわたしは息をするのが精一杯で。ジルはわたしを抱き上げる。向かう先は寝室だ。ジルは歩いている最中さえわたしをじっと見つめていて。目を逸らしたら、きっとジルはいたずらっぽく笑うのだろう。なんだかここに来てからジルにしてやられてばかりだ。
 そう思うとなんだかむっとして、わたしは突然ジルの頬に手を伸ばした。そのまま勢いに任せて唇を押し当てる。
「はっ?」とジルは目をまんまるにしてわたしを見る。ふふん、わたしだってこのくらいできるんだから。ジルのその顔が見られて満足。

「……覚悟はできてそうだな。思ったよりも余裕そうで安心したよ。優しくするつもりだったけどあんまり気を使わなくてよさそうだな?」
「え、ちょっとそれは……」

 抵抗虚しくベッドに放り込まれ、指を絡められた。キスをされる、それもさっきとは段違いで長くて。

「大好きだよ、ローズ」

 唇で綺麗な弧を描いてみせたジルを見て、わたしは完璧にしてやられたと思わざるをえないのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転生したら4人のヤンデレ彼氏に溺愛される日々が待っていた。

aika
恋愛
主人公まゆは冴えないOL。 ある日ちょっとした事故で命を落とし転生したら・・・ 4人のイケメン俳優たちと同棲するという神展開が待っていた。 それぞれタイプの違うイケメンたちに囲まれながら、 生活することになったまゆだが、彼らはまゆを溺愛するあまり どんどんヤンデレ男になっていき・・・・ ヤンデレ、溺愛、執着、取り合い・・・♡ 何でもありのドタバタ恋愛逆ハーレムコメディです。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

乙女ゲームの中の≪喫茶店の店長≫というモブに転生したら、推しが来店しました。

千見るくら
恋愛
社畜OL、乙女ゲームの世界に転生!? でも私が転生したのは――女主人公でも攻略対象でもなく、ただの喫茶店の店長(モブ)だった。 舞台は大人気乙女ゲーム『ときめき☆青春学園~キミの隣は空いてますか?~』。 放課後、女主人公と攻略キャラがデートにやってくるこの店は、いわば恋愛イベントスポット。 そんな場所で私は、「選択肢C.おまかせメニュー」を選んでくる女主人公のため、飲料メーカーで培った知識を駆使して「魂の一杯」を提供する。 すると――攻略キャラ(推し)の様子が、なんかおかしい。 見覚えのないメッセージウインドウが見えるのですが……いやいや、そんな、私モブですが!? 転生モブ女子×攻略キャラの恋愛フラグが立ちすぎる喫茶店、ここに開店! ※20260116執筆中の連載作品のショート版です。

処理中です...