追放賢者の領地改革! 〜成長魔法で優秀な人材を育てまくっていたら、弱小領地が最強領地になってた〜

未来人A

文字の大きさ
2 / 31

第2話 冤罪

しおりを挟む
 ある日、パーティーが王城の中で開催された。

 数日前の戦の勝利を祝う戦だった。その戦に僕も参加していた。

 魔法も残り少ないので、そこまで大活躍したわけではないのだが、それでも効果的に魔法を使い、勝利には貢献できた。

 パーティー会場には多くの貴族達がいた。踊ったり、談笑したり、食事を食べたりしている。

 あまりこういう雰囲気に慣れていない僕は、部屋の隅からパーティーの様子をぼんやりと眺めていた。

 ふと、僕は一人の女性と目があった。

 長い赤髪の女性だ。今まで見たことのある女性の中で、一番顔が整っている。長い髪も艶やかで、一切の乱れがない。

 背が高く、スタイルも非常に良かった。

 僕は彼女の赤い瞳から、目が離せなかった。

 恋愛感情を抱いたというわけではない。何か胸に引っかかるような、そんな感じがした。

 彼女は少し口元を歪ませた後、目線を逸らした。

 ……今、笑った?

 笑ったのなら何故だろうと、理由を考える。僕の顔に何かついていたとか?

 考えていると、

「ライル坊よ。あの女子《おなご》はよしておいた方がいいぞ」

 横から声をかけられた。

 視線を向けると見知った老人がいた。

 ルベルト・バッドンという、僕の教育係を務めた人だ。

 彼は貴族の生まれ。多種多様の魔法を使い、昔は大賢者とよばれていたけど、今では全部使い切っている。
 それからは、魔法を戦にいかに役に立てるかという、理論を研究しているみたいだ。
 僕は理論を無視する規格外の存在だから、けしからんと何回か理不尽に怒られたことがある。

 基本的にはいい人だ。もう大人になったのに、いまだに“坊”呼ばわりはやめてほしいけど。

「いや、別にそんな意味で見てたわけじゃないけど」
「はっはっは、照れんでいい。あんな熱心に見つめてバレバレじゃ」
「ち、違うって! なんか気になるから見てただけだ!」
「女として気になっておったのじゃろう?」
「だから、そういうんじゃなくて。何か、胸に引っかかるところがあったというか。とにかく、惚れたとかそういうんじゃないから」
「ならいいんじゃがのう」

 ルベルトはニヤニヤしながら僕を見ていた。これは明らかに信じてないな。

 どう言っても信じてもらえなさそうなので、僕は話題を変えた。

「彼女はダメって言ってたけど、なんか問題がある人なの?」
「あるのう。あの女は、十五年前この国の属国となった、トレンス王国の第二王女シンシア・ファーサスじゃ。
 当時、帝国はお主が出てくる前で、追い込まれ始めておった頃じゃ。そんな中、帝国に戦を仕掛けるでなく、属国になる決断をしたので、当時は相当国内が荒れたらしいのう。
 結局、帝国は優位となったから、その判断は正しかったのじゃが。
 今では、早めに属国になってくれたと、皇帝陛下はかなり感謝しておられて、トレンス王国へ多くの援助をしておられる……」
「その国の王女が何か不味いの? 僕じゃあ身分的に釣り合いそうにもないけど」

 話を聞いた限り、帝国とは友好的な関係を築いているようだ。

「身分的には釣り合わんという事はない。お主は国を救った英雄じゃ。高貴なものを妻としても、許される立場になっておる」

 そ、そうだったのか。別に相手の身分なんてどうでもいいから、特別嬉しいって事はないけど。

「問題は、シンシアにまつわる黒い噂じゃ。どうも、トレンス王国では帝国から離反する動きがあるようでな。第二王女のシンシアが裏で動いているという話がある」
「噂でしょ?」
「まあ、そうじゃな。
 シンシアは国内で様々な施策を提案してそれを実行し、トレンス王国の生産能力をあげたり、自分の軍を編成して、それを国内でも最強級の軍勢に仕上げたりと、とにかく有能な王女らしい。
 有能な者は野心が大きいことが多い。属国であることを良しとせず、反乱を仕掛ける可能性は十分ありそうじゃ。そして、もしかしたらそれを成功させるだけの才覚もある」
「うーん……」

 あくまでルベルトさんの想像だけの話で、証拠などは何もない話だった。

 だけど、確かに彼女のあの燃えるような赤い瞳を見ると、属国などという立場で、満足はしていないのでは? と直感で思った。

 話を聞いて、さらに気になった。
 シンシアの様子を、僕はちらちらと確認してする。

 彼女は、帝国の男の貴族から言い寄られている。しかし、ピクリとも表情を動かさず、完全にスルーしている。男貴族たちも非常に困っているようだ。

 もう一度目が合った。

 今度は、目を逸らして来ず、シンシアは僕に近づいてきた。

「貴方が、帝国の英雄、ライル・ブランドンか?」

 女性にしては少し低く、そして力強い声だった。

「は、はい」
「私は、シンシア・ファーサス。トレンス王国の第二王女だ」
「そ、そうらしいですね」
「君、私のものにならないか?」

 僕の目を見据えて、そう尋ねてきた。

 一瞬何を聞かれたのか理解できなかった。それくらい意外な問いだった。

「え? い、いや。あの、僕は帝国に仕える身ですので。お断りさせていただきます」
「そうか。残念だ」

 話はこれで終わりかと思った。
 だが、シンシアは僕に近づいてきて、耳元で、

「だが、予言しよう。君はいずれ私の物になる」

 そう告げた。

「帝国は、君のような出自の者に優しくすることは、決してない」

 不穏なことを最後に言い残して、シンシアは去っていった。





 パーティーがあった日から数日後。

 僕は何回か戦をし、遂に最後の魔法を使い切った。

 最後に残ったのは初級魔法だったので、戦にはあまり活躍できなかったけど、帝国軍はきちんと勝利した。

 これで僕は魔法の使えない、平凡な男になった。

 今の帝国軍は圧倒的な戦力を保持している。僕がいなくても、もう負ける事はないだろう。

 少し寂しい気がしたけど、その気持ちはすぐに失せた。

 今思えば、スラムから出てから、戦ってばかりだ。何度戦に赴いたか分からない。

 強力な魔法が使える僕だけど、戦に出るのはやはり恐怖を感じる。

 敵軍も僕を仕留めに来るので、心が休まる事なんてない。

 正直、身も心も疲れていた。

 早くゆっくり休みたい。今はそう思って僕は戦場から帰還した。


「ん? これは?」

 自分の部屋に入ると一通の書状が。

 差出人は何と皇帝陛下である。

 皇帝陛下は自分で文字をお書きにならない。文官は代わりに書くのだが、間違いなくその文官が書いた文字であった。

 内容を読む。

 僕を労うためのパーティーを行うので、城に来て欲しいという、手紙だった。

 皇帝陛下直々に誘ってくださるとは……これは行かないと。


 数日後、パーティー当日。

 疲れていた心が一気に回復して、僕は明るい気持ちで、皇帝陛下のいる王城へと向かった。

 その時は、これが何かの策略だとは思わなかった。ただ、嬉しい気分で、僕は歩を進めた。

 僕が城に入った瞬間、ドンッ!!と爆発音が響き渡った。

 地面が大きく揺れて僕はバランスを崩してその場で倒れた。

 慌てて立ち上がり、音のした方へと向かう。

 城のどこかが爆発したようで、煙が上がっていた。

 逃げ惑う人々。

 僕は事情を確かめるために、ホールへと向かった。

「!!」

 大きな瓦礫が崩れており、怪我人を負った人々がうめき声を上げていた。瓦礫の下に人がもしいたら、確実に死んでいるだろう。

 そして、皇帝陛下に姿も見た。足を怪我しているようである。

 だが、命に別状はなさそうだ。

 慌てて駆け寄る。

 その瞬間、

「あいつだ!! あいつが魔法を使っていた!!」

 と大声が周囲に鳴り響いた。
 犯人が近くにいるのか?

 大声をあげた人を確認する。
 その人はある一点を指差していた。

 僕だった。

「え?」

 次の瞬間、皇帝陛下が叫んだ。

「その者を拘束しろ!!」

 僕は兵士たちに取り押さえられた。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~

スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。 しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。 「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」 泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。 数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。 「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」

竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります

しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。 納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。 ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。 そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。 竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

処理中です...