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第4話 死霊王
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『スキル、"死霊王"を発動します』
この声が聞こえた瞬間。
俺は大の字で寝転がっていた。
木の枝と葉が視界に移っていた。
隙間から、暖かな光が漏れて降り注いでいる。
どうやら、森の中にいるようだった。
――俺は死んだのか?
人食い蜂に体をズタズタにされ、間違いなくさっきまでは死ぬ寸前だった。
起き上がって体を確認する。
何ともない……
というか、むしろ前より快適なくらいだ。
人間生きていれば、普通はどこかに不調を抱えている。
仕事のせいで、目や肩、腰など色々な部分に疲労が溜まっていたのだが、それがきれいさっぱりなくなっていた。
もしかして……ここは死後の世界なのだろうか?
そうとしか考えられない。
茜の最後の姿と、青葉の悲鳴が記憶に浮かび上がってきた。
――守れなかった。
そして、死んでしまっては皇帝に復讐もできない。
「クソッ!!」
悔しさのあまり俺は近くにあった木を殴りつけた。
しかし、手応えは一切なかった。
俺の拳は木をすり抜けた。
は?
妙な現象を目にしてもう一度木を殴ってみる。
結果は同じ。
何度やっても拳は木に当たらず、すり抜けるのみだった。
ど、どういうことだ?
まるで自分が実体のない幽霊になったかのようだ。
いや……まて。
そう言えば、さっき……聞いた声。
スキル"死霊王"が発動したとか……
――死霊王――スキル。
スキルってのは異世界物では定番の特殊能力みたいな奴だろ?
それが、死ぬ直前に発動したと聞こえた。
――もしかして、俺は死んだは死んだのだが、スキルの力で霊になって異世界に留まっているのではないか?
……願望も混じった推測ではあるが、死ぬ直前に発動して何の意味もなく死後の世界に行くってあるか?
まあ、スキルがどうとかってのが、幻聴とかの可能性もあるがな。
自分の現状について考察していると、
「いたぞゴブリンだ! やるぞ!」
という声が聞こえてきた。
人間の声だ。
俺以外に誰かいるのか?
ゴブリンって、異世界ものでは定番の魔物の名前だ。
声が聞こえてきた方向へと向かう。
しばらく歩くと、三人の武装した人間が、醜悪な顔をした小柄な人型の化け物5体と、戦闘をしている光景が見えてきた。多分あの化け物がゴブリンなのだろう。
ゴブリンは人間達に飛びかかるが、剣で受け止められ、その後、あっさりと剣で一刀両断にされた。
数では人間側が負けていたが、ゴブリンは雑魚だったので人間側の勝利で終わった。
やっぱりここは死後の世界なんかじゃないのでは?
この人たちに話を聞ければ手っ取り早いんだが……
今の俺って人と会話とかできるの?
とりあえず試してみよう
「すみません」
と声をかけてみたが、人間達は何の反応も示さない。
俺のいる方向すら見ていなかった。
それから色々アプローチをとった
触ってみたりもしたが、すかっとすり抜けてしまうだけ。
やっぱ駄目か……
悩んでいると三人は会話を始めた。
「あーあ、こんなチンケな仕事してても、金貯まんねーぞ。戦争とかがあれば一発逆転できるかも知れねーのにな」
「仕方ねーよ。アストファス帝国が大陸を支配するようになってから、戦争なんて全然起きねーんだもんな。皆あの皇帝が怖いんだ」
――アストファス帝国――皇帝。
つい最近聞いた単語だ。
確か、俺たちを召喚した帝国の名が、アストファス帝国だったはずだ。
死後の世界に行ったわけではないく、俺を召喚した異世界に霊として止まっているようだ。
それならば復讐も出来るだろう。
――――あの皇帝は絶対に俺が殺してやる。
深い恨みを込めて、そう決意を固めた。
○
それから俺は森を歩き回った。
それで、分かったのは今の俺はこの世で最弱の存在ということだ。
森には様々な日本ではみないような怪物、魔物というべき存在だろうが、それがウヨウヨしていたが、俺に気づいた魔物は今のところゼロだ。
そして、触ることのできた魔物もゼロである。
念じながら触ってみたり、声を出しながら触っていたりと、様々な方法を試したが、どうやっても触ることができない。
誰にも気づかれることはない、その代わり自分から触れたりする事は不可能。
要は攻撃手段がゼロなのだ。
一応、体の動きなんかは生きていた頃よりかは良くなっている。飛行するなどあまりにも人間とかけ離れた動きは出来ないようだが、相当身軽に動けるようにはなっている。
……攻撃を当てられないから何の意味もないんだが。
最弱という以外表現の方法が思いつかない。
今の俺なんて意思があるだけで、存在していないのと一緒だ。
何か、死霊王とか立派なスキル名だったが、これ本当に使えるスキルなのだろうか?
てか、このまま誰にも認知されずにずっと過ごすとなったら最悪だぞ。
ちょっと前に復讐を誓ったばかりなので、情けない話ではあるのだが、かなり不安になってきた。
不安な気持ちで森の中を彷徨っていると、大怪我を負っている巨大なネズミを発見した。
大きめの犬くらいのサイズのネズミだ。
頭から鋭い角を生やしていた。
背中を斬りつけられたのか、背中の怪我赤く染まっている。
大量の血を流している割には、何だか平気そうに歩いていた。
痛覚が鈍いのだろうか?
それとも頑丈なやつで、奴にとってはたいしたことのない怪我だったとか。
観察していると、巨大角ネズミが俺の方を向いた。思わずビクッとする。
ビビる必要なんてないな。
俺は誰にも見えないんだから。
そう思っていると、巨大角ネズミは威嚇するように「ぢゅ~!」と鳴き声を上げた。ちょっとだけ可愛い鳴き声である。
後ろになんかいるのかと思って確認してみたが、何もいない。
どういうことだと思っていると、巨大角ネズミが俺に向かって突進してきた。
この声が聞こえた瞬間。
俺は大の字で寝転がっていた。
木の枝と葉が視界に移っていた。
隙間から、暖かな光が漏れて降り注いでいる。
どうやら、森の中にいるようだった。
――俺は死んだのか?
人食い蜂に体をズタズタにされ、間違いなくさっきまでは死ぬ寸前だった。
起き上がって体を確認する。
何ともない……
というか、むしろ前より快適なくらいだ。
人間生きていれば、普通はどこかに不調を抱えている。
仕事のせいで、目や肩、腰など色々な部分に疲労が溜まっていたのだが、それがきれいさっぱりなくなっていた。
もしかして……ここは死後の世界なのだろうか?
そうとしか考えられない。
茜の最後の姿と、青葉の悲鳴が記憶に浮かび上がってきた。
――守れなかった。
そして、死んでしまっては皇帝に復讐もできない。
「クソッ!!」
悔しさのあまり俺は近くにあった木を殴りつけた。
しかし、手応えは一切なかった。
俺の拳は木をすり抜けた。
は?
妙な現象を目にしてもう一度木を殴ってみる。
結果は同じ。
何度やっても拳は木に当たらず、すり抜けるのみだった。
ど、どういうことだ?
まるで自分が実体のない幽霊になったかのようだ。
いや……まて。
そう言えば、さっき……聞いた声。
スキル"死霊王"が発動したとか……
――死霊王――スキル。
スキルってのは異世界物では定番の特殊能力みたいな奴だろ?
それが、死ぬ直前に発動したと聞こえた。
――もしかして、俺は死んだは死んだのだが、スキルの力で霊になって異世界に留まっているのではないか?
……願望も混じった推測ではあるが、死ぬ直前に発動して何の意味もなく死後の世界に行くってあるか?
まあ、スキルがどうとかってのが、幻聴とかの可能性もあるがな。
自分の現状について考察していると、
「いたぞゴブリンだ! やるぞ!」
という声が聞こえてきた。
人間の声だ。
俺以外に誰かいるのか?
ゴブリンって、異世界ものでは定番の魔物の名前だ。
声が聞こえてきた方向へと向かう。
しばらく歩くと、三人の武装した人間が、醜悪な顔をした小柄な人型の化け物5体と、戦闘をしている光景が見えてきた。多分あの化け物がゴブリンなのだろう。
ゴブリンは人間達に飛びかかるが、剣で受け止められ、その後、あっさりと剣で一刀両断にされた。
数では人間側が負けていたが、ゴブリンは雑魚だったので人間側の勝利で終わった。
やっぱりここは死後の世界なんかじゃないのでは?
この人たちに話を聞ければ手っ取り早いんだが……
今の俺って人と会話とかできるの?
とりあえず試してみよう
「すみません」
と声をかけてみたが、人間達は何の反応も示さない。
俺のいる方向すら見ていなかった。
それから色々アプローチをとった
触ってみたりもしたが、すかっとすり抜けてしまうだけ。
やっぱ駄目か……
悩んでいると三人は会話を始めた。
「あーあ、こんなチンケな仕事してても、金貯まんねーぞ。戦争とかがあれば一発逆転できるかも知れねーのにな」
「仕方ねーよ。アストファス帝国が大陸を支配するようになってから、戦争なんて全然起きねーんだもんな。皆あの皇帝が怖いんだ」
――アストファス帝国――皇帝。
つい最近聞いた単語だ。
確か、俺たちを召喚した帝国の名が、アストファス帝国だったはずだ。
死後の世界に行ったわけではないく、俺を召喚した異世界に霊として止まっているようだ。
それならば復讐も出来るだろう。
――――あの皇帝は絶対に俺が殺してやる。
深い恨みを込めて、そう決意を固めた。
○
それから俺は森を歩き回った。
それで、分かったのは今の俺はこの世で最弱の存在ということだ。
森には様々な日本ではみないような怪物、魔物というべき存在だろうが、それがウヨウヨしていたが、俺に気づいた魔物は今のところゼロだ。
そして、触ることのできた魔物もゼロである。
念じながら触ってみたり、声を出しながら触っていたりと、様々な方法を試したが、どうやっても触ることができない。
誰にも気づかれることはない、その代わり自分から触れたりする事は不可能。
要は攻撃手段がゼロなのだ。
一応、体の動きなんかは生きていた頃よりかは良くなっている。飛行するなどあまりにも人間とかけ離れた動きは出来ないようだが、相当身軽に動けるようにはなっている。
……攻撃を当てられないから何の意味もないんだが。
最弱という以外表現の方法が思いつかない。
今の俺なんて意思があるだけで、存在していないのと一緒だ。
何か、死霊王とか立派なスキル名だったが、これ本当に使えるスキルなのだろうか?
てか、このまま誰にも認知されずにずっと過ごすとなったら最悪だぞ。
ちょっと前に復讐を誓ったばかりなので、情けない話ではあるのだが、かなり不安になってきた。
不安な気持ちで森の中を彷徨っていると、大怪我を負っている巨大なネズミを発見した。
大きめの犬くらいのサイズのネズミだ。
頭から鋭い角を生やしていた。
背中を斬りつけられたのか、背中の怪我赤く染まっている。
大量の血を流している割には、何だか平気そうに歩いていた。
痛覚が鈍いのだろうか?
それとも頑丈なやつで、奴にとってはたいしたことのない怪我だったとか。
観察していると、巨大角ネズミが俺の方を向いた。思わずビクッとする。
ビビる必要なんてないな。
俺は誰にも見えないんだから。
そう思っていると、巨大角ネズミは威嚇するように「ぢゅ~!」と鳴き声を上げた。ちょっとだけ可愛い鳴き声である。
後ろになんかいるのかと思って確認してみたが、何もいない。
どういうことだと思っていると、巨大角ネズミが俺に向かって突進してきた。
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