死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A

文字の大きさ
4 / 24

第4話 死霊王

しおりを挟む
『スキル、"死霊王"を発動します』

 この声が聞こえた瞬間。

 俺は大の字で寝転がっていた。

 木の枝と葉が視界に移っていた。
 隙間から、暖かな光が漏れて降り注いでいる。
 どうやら、森の中にいるようだった。

 ――俺は死んだのか?

 人食い蜂に体をズタズタにされ、間違いなくさっきまでは死ぬ寸前だった。

 起き上がって体を確認する。
 何ともない……
 というか、むしろ前より快適なくらいだ。

 人間生きていれば、普通はどこかに不調を抱えている。
 仕事のせいで、目や肩、腰など色々な部分に疲労が溜まっていたのだが、それがきれいさっぱりなくなっていた。

 もしかして……ここは死後の世界なのだろうか?
 そうとしか考えられない。

 茜の最後の姿と、青葉の悲鳴が記憶に浮かび上がってきた。

 ――守れなかった。

 そして、死んでしまっては皇帝に復讐もできない。

「クソッ!!」

 悔しさのあまり俺は近くにあった木を殴りつけた。

 しかし、手応えは一切なかった。

 俺の拳は木をすり抜けた。

 は?

 妙な現象を目にしてもう一度木を殴ってみる。
 結果は同じ。
 何度やっても拳は木に当たらず、すり抜けるのみだった。

 ど、どういうことだ?

 まるで自分が実体のない幽霊になったかのようだ。

 いや……まて。
 そう言えば、さっき……聞いた声。
 スキル"死霊王"が発動したとか……

 ――死霊王――スキル。

 スキルってのは異世界物では定番の特殊能力みたいな奴だろ?
 それが、死ぬ直前に発動したと聞こえた。

 ――もしかして、俺は死んだは死んだのだが、スキルの力で霊になって異世界に留まっているのではないか?

 ……願望も混じった推測ではあるが、死ぬ直前に発動して何の意味もなく死後の世界に行くってあるか?
 まあ、スキルがどうとかってのが、幻聴とかの可能性もあるがな。

 自分の現状について考察していると、

「いたぞゴブリンだ! やるぞ!」

 という声が聞こえてきた。

 人間の声だ。 
 俺以外に誰かいるのか?
 ゴブリンって、異世界ものでは定番の魔物の名前だ。

 声が聞こえてきた方向へと向かう。

 しばらく歩くと、三人の武装した人間が、醜悪な顔をした小柄な人型の化け物5体と、戦闘をしている光景が見えてきた。多分あの化け物がゴブリンなのだろう。

 ゴブリンは人間達に飛びかかるが、剣で受け止められ、その後、あっさりと剣で一刀両断にされた。

 数では人間側が負けていたが、ゴブリンは雑魚だったので人間側の勝利で終わった。

 やっぱりここは死後の世界なんかじゃないのでは?
 この人たちに話を聞ければ手っ取り早いんだが……
 今の俺って人と会話とかできるの?
 とりあえず試してみよう

「すみません」

 と声をかけてみたが、人間達は何の反応も示さない。
 俺のいる方向すら見ていなかった。

 それから色々アプローチをとった
 触ってみたりもしたが、すかっとすり抜けてしまうだけ。

 やっぱ駄目か……

 悩んでいると三人は会話を始めた。

「あーあ、こんなチンケな仕事してても、金貯まんねーぞ。戦争とかがあれば一発逆転できるかも知れねーのにな」
「仕方ねーよ。アストファス帝国が大陸を支配するようになってから、戦争なんて全然起きねーんだもんな。皆あの皇帝が怖いんだ」

 ――アストファス帝国――皇帝。

 つい最近聞いた単語だ。
 確か、俺たちを召喚した帝国の名が、アストファス帝国だったはずだ。

 死後の世界に行ったわけではないく、俺を召喚した異世界に霊として止まっているようだ。

 それならば復讐も出来るだろう。

 ――――あの皇帝は絶対に俺が殺してやる。

 深い恨みを込めて、そう決意を固めた。





 それから俺は森を歩き回った。

 それで、分かったのは今の俺はこの世で最弱の存在ということだ。

 森には様々な日本ではみないような怪物、魔物というべき存在だろうが、それがウヨウヨしていたが、俺に気づいた魔物は今のところゼロだ。

 そして、触ることのできた魔物もゼロである。
 念じながら触ってみたり、声を出しながら触っていたりと、様々な方法を試したが、どうやっても触ることができない。

 誰にも気づかれることはない、その代わり自分から触れたりする事は不可能。

 要は攻撃手段がゼロなのだ。

 一応、体の動きなんかは生きていた頃よりかは良くなっている。飛行するなどあまりにも人間とかけ離れた動きは出来ないようだが、相当身軽に動けるようにはなっている。

 ……攻撃を当てられないから何の意味もないんだが。

 最弱という以外表現の方法が思いつかない。
 今の俺なんて意思があるだけで、存在していないのと一緒だ。

 何か、死霊王とか立派なスキル名だったが、これ本当に使えるスキルなのだろうか?
 てか、このまま誰にも認知されずにずっと過ごすとなったら最悪だぞ。

 ちょっと前に復讐を誓ったばかりなので、情けない話ではあるのだが、かなり不安になってきた。

 不安な気持ちで森の中を彷徨っていると、大怪我を負っている巨大なネズミを発見した。

 大きめの犬くらいのサイズのネズミだ。
 頭から鋭い角を生やしていた。

 背中を斬りつけられたのか、背中の怪我赤く染まっている。
 大量の血を流している割には、何だか平気そうに歩いていた。

 痛覚が鈍いのだろうか?
 それとも頑丈なやつで、奴にとってはたいしたことのない怪我だったとか。

 観察していると、巨大角ネズミが俺の方を向いた。思わずビクッとする。

 ビビる必要なんてないな。
 俺は誰にも見えないんだから。

 そう思っていると、巨大角ネズミは威嚇するように「ぢゅ~!」と鳴き声を上げた。ちょっとだけ可愛い鳴き声である。

 後ろになんかいるのかと思って確認してみたが、何もいない。
 
 どういうことだと思っていると、巨大角ネズミが俺に向かって突進してきた。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...