死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A

文字の大きさ
6 / 24

第6話 炎の女騎士

しおりを挟む
 ゴーストを見つけるべく行動を開始した。

 配下にしたホーンマウスは、俺の後ろをついてきている。

 俺が「走れ」や「止まれ」と指示を出したら、それに従ってきた。
 ネズミなので言葉が分からず、配下になっても指示は出せないと思ったが出せるようだ。

 そういえば、せっかく配下にしたのにいつまでもホーンマウスと呼ぶのは、どうなんだろうな。

 名前を付けてやった方がいいだろうな。

 うーん……ネズミだから……ミッ○ーは……流石にダメか。

 こいつの記憶を見た限りでは確か雄だったよな。
 ネズオとかでいいか。

「お前は今日からネズオだ」
「ちゅ~!」

 適当に考えた名前だったが、思いのほか嬉しそうにしていた。

 ネズオと一緒に俺は森を散策する。

 ゴーストはぱっと見では分からない。
 ただ、生きている者たちには俺たちを見ることが出来ないので、近付いて視界に入ってみたら生きているということは大体わかった。

 結構歩くが、ゴーストは中々見つからない。

 ネズオもだいぶ探しまくった末に発見したので、ゴーストは大量にいるものではないのかもしれない。

 死んだら全員がゴーストになるのだったら、元いっぱいいそうなので、この世に大きな未練を残して死んだとか、ゴーストになるには何かしらの条件を満たす必要があるんだろう。

 俺にしてもネズオにしても、死んでも死にきれない理由があったからな。

 珍しいとしても、ゴーストはどっかに存在するのは間違いないはずだ。
 幸い、この体になってから、疲れは一切感じなくなっている。
 夜通しで走り回っても何の問題もない。

 とにかく気を取り直して、森を駆け回っていると、

「ああああああぁあ!!」

 突如女の叫び声が聞こえてきた。

 苦しんでいるような声だ。
 もしかしたら、魔物に襲われてピンチになっているのかもしれない。

 俺は急いで声のした方に向かう。

 30秒ほど移動すると、森の中で炎が見えた。

 女性が炎に焼かれて苦しんでいた。
 鎧を身に着けており、剣を手に持っている。
 騎士というような格好だ。

 助けてやりたくて思わず来たが、よく考えたら今の俺には何にも出来ない。

「ちゅ~!!」

 すると、俺の隣にいたネズオが、燃える女騎士を威嚇するかのように鳴き声を上げた。

 どういうことだ? 
 森を歩き回っている間も、魔物には出くわしたが、何の反応もしなかったのに。

 そう思っていると、女騎士の目がギョロリとこちらを見てきた。

 この世への怨嗟が詰まったような、そんな目つきだ。

 見られると思っていなかったので、めちゃくちゃビビった。
 それ以外にも何かヤバそうな気配を感じる。
 本能が全力で女騎士を警戒せよと命じているような、そんな感じだ。

 いや……
 でも、俺たちゴーストだし、女騎士には見えているはずが……

「あぁあああぁあああ!!!!」

 そう思っていると女騎士が、叫びながらこちらに向かって突進してきた。
 持っている剣を構えて、俺に斬りかかってくる。

「うわあ!?」

 何とか後ろに下がり剣を回避した。

 俺が見えている!?

 こいつゴーストか!!

 この嫌な感じは、俺に敵意を向けているからか。
 そう言えば、殺気察知スキルとやらを獲得したから、その効果なのかもしれない。
 今回は俺が先に女騎士を見つけたから、そこまで意味はなかったが、相手に先に見つかった場合、殺気察知スキルは使えるかもしれない。
 不意打ちを受けるのを防げる。

 しかし、ようやくゴーストに出会えた。
 人間のゴーストだが、ネズオと一緒で俺に敵意を向けているようだ。
 何か話が通じそうな雰囲気じゃない。
 燃えているからか我を失っているようだ。

 長く探し回って見つけた分、嬉しいが……

 燃える女騎士を改めて見る。

 ……強そうだぞ?

 勝てるのか?
 今回はネズオもいるのだが……剣術を磨いた騎士だろうから果たして勝てるかどうか。

 しかし、せっかくゴーストを見つけたので、倒して配下にしておきたい。
 ここで逃したら、次に見つかるのがいつになるか分からないからな。

「あがああああああ!!」

 女騎士が叫びながら斬りかかってきた。
 攻撃は単調そのもの。
 俺は横によけて避けた。

 あっさり避けられたな。
 我を失っているから、知能が低下しているのか。
 これなら生前に剣術を練習しているとか関係ない。
 思ったより簡単に倒せるかも。

「うぁあああァあアあアあ!!」

 女騎士は再び苦しい声を上げる。
 すると、爆発したかのように、纏っている炎の激しさが増す。火の粉が周囲に飛び散り、俺の方へと飛んできた。

 かなりの数の火の粉だったので避けきれず、当たってしまう。

「あちっ!!」

 ゴーストになって初めて痛みを感じた。
 ゴーストにも痛覚はあるんだな。

 一発、被弾しただけなので、ダメージは少ない。
 ネズオの方も大丈夫のようだ。
 でも、あの炎は攻撃手段にもなるのかよ。
 炎は全身を覆っている。
 女騎士を攻撃したら、こちらもただでは済まなそうだな。
 だが攻撃しないと何も始まらない。

 ネズオは俺の指示に従ってくれるし、ここは協力して倒そう。

「背後に回って攻撃するから、引き付けてくれ」
「ちゅー!」

 ネズオは頷く。

 炎に怯むことなく、ネズオは女騎士の前に出て、挑発し始めた。

「うあああっアァア!!」

 女騎士の攻撃対象が、ネズオになったところで、俺は素早く背後に回り込む。

「ちゅーちゅー!!」

 女騎士の剣をネズオは自らの角で受ける。

 俺の事は完全に意識の外に行ったようで隙だらけだ。
 しかし、背中にも炎があるので、近付いたら熱そうだ。

 それでも覚悟を決めて、俺は女騎士の後頭部を狙って飛び蹴りを食らわせた。

「ぁアあっ!!??」

 飛び蹴りを決め、その反動ですぐ女騎士から離れたので、あんまり熱さを感じることはなかった。

 女騎士は蹴りを受け地面に臥す。
 その後、火が消滅し、ネズオの時と同じように光の球が女騎士の体から出てきて、俺の頭に向かって飛んできた。

 頭に当たった直後、女騎士の生前の記憶が、俺の頭に流れ込んできた。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...