死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A

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第19話 エルフ

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「エルフの魔術師……!」

 やはりこの女はエルフか。それも魔術師。
 ゴーストなのか? 
 それともこの場にいるからレイスか?
 正気を失っているようだから、ゴースト? 
 いや、そもそもレイスって正気のままなのか?

 情報が少なくて、判断がつかないな。

「あああああぁあ!!」

 エルフの女は叫びながら杖を振る。
 すると、氷の刃5つが頭上に発生。
 それが俺たちに向かって飛んできた。

 刃は鋭いが、スピードはそれほどでもない。
 俺は楽に避ける。
 ミラは剣で氷の刃を弾いた。

「チュー!!」

 ネズオが先陣を切った。
 角でエルフの腹の辺りを狙う。
 エルフはそれを見て再び杖を振った。
 青色の半透明の壁が出現。
 それにネズオの角は阻まれた。

 このエルフ……
 目つきといい、たまに叫んだりするところといい、明らかに正気を失っているのに、戦い方からは理性を感じる。
 厄介だな。
 とはいえ、こっちは二人と二匹。
 4対1である。
 負けることはないはずだ。

「ガアアアッ!!」

 背後に回り込んでいたクロが、エルフに飛びかかる。

 エルフは反応も良く、杖を振り、再び壁を張って防御した。クロは壁に阻まれる。

 エルフが新しい壁を出した瞬間、先程ネズオの攻撃を防御するための壁が、消滅した。
 同時に二つは出せないのか。
 壁の面積もそこまで広いわけではない。
 一方向からの攻撃しか防げないだろう。

 同時に四方向から攻撃すれば、確実に攻撃が通るはず。

 俺はミラの方を見る。

 何も言わなかったが彼女は俺の意図を理解していたのか、軽く頷いて、エルフの側面に回り込んだ。

「ネズオはそっちから攻撃してくれ!」
「チュー!」

 ネズオには指を刺して立ち位置を指定する。

「ああアアアアァあア!!」

 エルフはまたも絶叫した。
 その後、氷柱が俺たちの頭上に発生し、それが次々に落ちてくる。

 俺とミラは全て回避したが、ネズオとクロは全部は避けきれず食らってしまった。

 元魔物だけにそれなりに耐久力はあったので、耐えていた。

「今だ! 攻撃!」

 氷柱が落ち切ったのを見計らって、俺はそう合図を出した。

 四方向から同時に攻撃をする。
 俺が攻撃を仕掛けた方向にエルフは壁を張った。
 壁を殴りつけたが硬い。
 あと、普通に拳に痛みが走った。
 ゴーストなので痛くないだろうと思って、油断してたが全然痛かった。
 ミラから火を食らった時も痛かったので、普通に痛み自体は感じるだよな。

 予想通り魔法の壁は、俺が攻撃を仕掛けた方向だけに張られていた。
 ミラ、ネズオ、クロはエルフに接近して、それぞれ同時に攻撃した。

「アアアアァ!!」

 苦しげな声をあげて、エルフは倒れた。

 どうやら倒せたようだ。
 光の球が出てきて、俺に向かってくる。
 配下にもできたようだな。
 結局このエルフがレイスなのかゴーストなのかは分からなかったけど、まあ倒せたからいいか。

 エルフの記憶が俺の頭の中に流れてくる。

 彼女の名前はシミア・サティース。
 エルフの里で生まれたシミアは、魔術が得意だった。
 エルフの里は辺境にあり、かなりの田舎でシミアにとっては退屈な場所だったようだ。
 退屈な生活が嫌で外の世界に飛び出して、冒険者になった。

 高飛車な性格で、あまり他人と馴染めず、ソロで冒険者をやることに。
 魔術の才能は高く、一人でも活躍できていた。
 そんな中調子に乗った彼女は、難関の場所と言われる霊城レプロートに来たが、強力なアンデッドにやられて、死んだようだ。

 彼女が死んだのは割と最近のようだった。
 ……何というか、死んだのは可哀想だが、俺やミラに比べると過去が薄いというか。
 自分を殺したアンデッドに恨みはあるだろうが、調子に乗って危ない場所に行って殺されたので、自業自得な感じもあるし……別に特別無念な思いをしていなくても、ゴーストにはなるのか?
 それとも、アンデッドに殺されたら、ゴーストになりやすいとか、そんな理由もあるのだろうか?

『スキル"死霊王"の効果でシミア・サティースが配下になりました。シミア・サティースの所持スキル"氷耐性”を手に入れました。配下を得たことでレベルが2から3に上がりました。レベル5でゴーストからレイスに進化可能です』

 と配下を増やした後、聞く声が聞こえてきた。
 レベルが3に上がった。
 あと2上げればレイスになれる。
 2から3に上げるまで、三人配下にする必要があったので、3から4はさらに多くのゴーストを配下にする必要がありそうだ。

 スキルは氷耐性か。
 これは氷属性の魔法とかが効きにくくなるのかな。持っていて悪いスキルではないな。

「う……」

 倒れていたシミアがうめき声を上げながら、立ち上がった。




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