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1滴の泥を落とされた楽園であっても
キスアの本棚:変性動物 アカラ・ルラクルタ
しおりを挟むその姿は四足の獣、草食の獣に良く似ていて、しかし頭部には無数の刃が突き出ていた。否、頭部にあたる首から上が全て刃でできていたというべきだろうか。
体表は毛皮に覆われていて、一部剥がれている箇所がある。そこからは血が流れ出し、肉と金属が露出していた。金属は蒼く発光し、血はやや黒い赤であった。
その場を動くことはなく、突然現れる。自ら攻撃を仕掛けることはないものの、その血は人の心を掻き乱し、狂わせた。
蒸発した血を浴びる。呼吸により取り込む等、体にその成分を取り込むとその者に、全てに対する疑心を噴出させる。
何も信じられるものが無くなり、自身さえ、記憶さえ。もはやどうしようもないくらいに、許せなくなってしまう。揺るぎないはずの地面は沈むように感じ、唐突に崩れ落ちるかのようにその心を不安定な物にしてしまう。
狂乱に陥ったものがさらに肉体を傷付けることを目的とし、血を撒き散らさせ、狂奔した者を使い血の効果を拡大させる。
自身の知覚するものが全て疑心の渦に呑まれた時、空間全てを飲み込む。
飲み込まれたものは広大な異空間で疑心による殺し合いを行い始める。疲弊し最後の一人となったものも狂気によって自害し、全て死に絶えたとき、異空間は閉じ、異の中へ消えていく。
ロアーズの一体。
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