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第五章 聖樹の都
35話 異邦の風
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翌朝、トレンティアの町並みに浮かれるズミ人達には構わず、一行は王都への旅を急ぐことになる。遠ざかっていく街を、ジュリは馬車の上から名残惜しそうに眺めていた。
街から抜けると、また同じような草原の景色が続いていく。遠目に見る街道の脇で、白っぽい四つ足の生き物らしいのが多く蠢いている景色が見えた。
近くで人間がそれをゆったりと追っている様を見るに、何かしらの家畜を放牧しているのだろう。トレンティアとて、ズミとの国境に近い場所は広くゆったりとした牧歌的な景色が広がっているものだ。
更に進むと、街道の途中で馬車を停めて何かを話している様子の男達の姿があった。ロードの御者も一度馬車を停め、彼らに話しかける。
「どうかしたんですか」
「いやこの近くで物取りが出たと聞いたんで、進むかどうか迷っていて」
「それは物騒ですな。ロード様、いかがいたしましょう。一度引き返して護衛のものを呼んだ方が……」
御者がロードを振り向いた。ロードはというと、一泊している間に彼宛てに届いた書簡があったらしく、それを馬車の上で睨んでいた。御者の方に視線もやらず「ん」なんて曖昧な相槌を打っていた。
「構うな、そのまま進め」
そしてそう言いつけた。御者は驚いたようで目を丸くして戸惑っている。
「既に近辺に警備団が来ているという話を聞いている。大丈夫だからそのまま進め」
戸惑っている御者にロードは再度言いつける。主人にそこまで言われると、御者は困ったような顔をしながらも馬車を進め始めた。
道端に馬車を停めていた男達もきょとんとして僕達を見ていたが、それも見送って馬車は先へ進む。浮かれた様子だったジュリが不安そうな表情を浮かべていた。
「トレンティアにも盗賊が出るんですね……。大丈夫なんですか? まあ、警備団というのがいてくださるなら……」
そう呟くように言ったのに対し、ロードは手元の書類から顔も上げずに、さらりと涼しい声で返事をした。
「警備団の話なんて聞いてません。適当な嘘ですよ」
ジュリがぎょっとしたような呻き声を上げた。ロードの隣りに座っているパウルが呆れたように片手で頭を押さえる。
「我々に警護せよと、そういうことですか」
「私も多忙でしてね、無駄な時間はとりたくないのですよ」
ロードは同じ調子で言いながら口元だけで微笑を浮かべた。ジュリの顔は青ざめている。
「で、でも、トレンティアなんですから、やっぱり盗賊も魔法で襲ってくるんですよね? 本当に大丈夫ですか……」
その言葉を聞いて、ロードもやっと顔を上げた。パウルと揃ってきょとんとした顔で目を丸めている。すぐに仕方なさそうに笑ったのはパウルだった。
「軍人の成り下がりでもない限り、戦闘魔術を使う盗賊なんてそうそういないさ。下賤の者はズミと同じだよ、せいぜい棍棒か斧が彼らの兵器だろう」
そんな言葉を受けて、ジュリは唖然として黙ってしまった。トレンティアの人間は誰もが例外なく魔法使いである……という、そんな幻想を壊されたのだろう。僕だって特段関心があったわけではないが、その話にはやや拍子抜けだった。
しかし何にせよ、無法者による襲撃がありえるという話だ、僕はそこから胸元の短剣に意識を向けながら気を引き締めた。
……が、結局次の町に着くまで襲撃の憂き目にあうことはなく、いたって平穏な旅が続いていった。
次の町に着いたのは正午を過ぎて少し経った頃だった。
「一度休憩と、所用があるので済ませてきます。次の宿場まではそう遠くないのですぐに発って、今日中にそこまで行きますのでそのつもりで」
ロードの短い連絡を受けて、僕達は馬車から降りた。ずっと座っていると足が固まるので目一杯伸びをしながら空気を吸った。
……すぐに下半身が所用を訴えているのを聞いて、きょろきょろと周囲を眺めたが、それらしいものがどこにあるか分からない。
「公衆の厠ってのはないの」
僕は小声でパウルに聞いた。パウルはあー、とぼやいて僕を手招きした。これまでの道中は勝手が分からなかったから失礼ながら道外れの草むらなどにお世話になったが、これからずっとそうというわけにもいかないだろう。
パウルに連れられて訪れた異国の厠は……、いや、あえて言葉を尽くすこともあるまい。
パウルと並んで用を足し終えると馬車の元に戻った。御者が眠たそうに欠伸をしているだけで、ロードとジュリの姿はない。
ロードはともかくジュリは何処に行ったのかと思って、僕はおそるおそる御者に話しかけた。
「彼女はどこへ?」
聞くと、御者は驚いて目を見開き、慌てた様子で周囲を見回した。
「あれっ。そういえば、どこに。いつの間にか……」
そんな間の抜けた声を上げるのだから、僕は小さく嘆息してパウルを顔を見合わせた。
「どうせ物珍しいものを見つけて、ふらっと見に行ったとかじゃないのかな。……俺はここでロード様を待っとくから、ヨハンお前探してきてくれ」
パウルは呆れた様子で言った。仕方ないな、と呟いて僕はジュリを探しに出かけることにする。僕達もさっき馬車を離れたばかりだからそう遠くへ行ったということはないだろう。
ジュリがつい目を引かれてしまいそうなもの……、と言っても、そんなものはどこを見ても溢れていて、逆に見当がつけづらい。
店頭に並んでいる野菜や果物は見慣れない形のものが多いし、干してある魚……は、そこまで変わらないな。
牛よりも小ぶりの白い家畜をぞろぞろ連れている牧人、甲高い鳴き声の、妙に毛の短い犬。……この周辺にもジュリの姿は見当たらない。
うーんと唸ってふと顔を上げると、遠くに不思議なものが目に入った。何か大きな旗を掲げた様子の建物? 軍の施設だろうか。
いや、旗にしては形が変だし、なんだか変な動きをしているように見える。遠目にも見えるそれは、結構大きな建物のようだが……。
その景色が異様にさえ見えて、僕はそちらに歩いていった。遠くにあるその建物はすぐにたどり着かなかったが、ふと途切れた建物の連なりの奥に、その奇っ怪な建造物が堂々と全身を現した。
格子状に組まれた木材が支えるのはのっぺりとした高い筒状の建物で、その頂きに、細長い四角に切られた大きな布が放射状に交差した、そんな巨大な旗とも壁ともつかない装置が、ごうごうと鈍く低い音を上げながらゆっくりと回転している。
その奇妙な巨軀がしかも定感覚でいくつも……、四つ、いや五つか? 視界の遠くまで連なって建っている、その景色にはジュリでなくとも圧倒されてしまうだろう。僕は唖然として、地面の上からそれを見上げた。
何かの装置……、やはり軍事施設か。魔法陣が見えるわけではないし、近くを魔力が流れているような様子も、少なくとも僕の感覚には引っかからないが……。
立ち尽くしてそれを見つめていると、その謎の建造物のふもとで、何やら複数の人間が蠢いているのが見えた。
なんとなくそれに視線を落として……、ズミの森で鍛えられた僕の聴覚がその騒動に気付くのに時間はかからなかった。
何か様子がおかしい。そう思って僕は足早に駆けた。彼らはどう見ても必要以上に密集して揉め合っている。それも、めいめいに大声を上げながら。
「……ズミ人か。本物か。本当に髪が黒い!」
「子どもか? 何歳だ。トレンティア人と歳のとり方が違うらしいぞ」
「脱がしてみれば分かるだろ。おかしな模様の服を着ている」
「なあ、ズミの女は皆芸姑だってのは本当か? 踊って見せてくれ。ああ、ほんとに綺麗な髪だ!」
下品な笑いを浮かべた男達が少女を壁に追い詰めている。その太い腕が彼女の手を乱暴に掴み、悲鳴をあげようとする口さえも押さえにかかる……
その横っ腹に、僕は後ろから思い切り蹴りを入れた。男は僕よりも背の高いたくましい体つきをしていたが、不意を打たれて受け身も取れず地面に転がった。
途端にどよめいた隣の男の顔を、次の瞬間に握りしめた拳で、首を撥ねるほどの心持ちで殴り飛ばしてやった。
町の民間人らしい彼らは、体が大きくとも戦い慣れているわけではない。悲鳴を上げながら容易くその場に蹲ってしまう。
「なんだこいつ! 男のズミ人だ!」
男達は大きな声で騒ぎ始めた。僕は語る言葉も持たない。腹の底から、抑えがたいほどの怒りが噴き上がっていた。
「触るな!」
僕は激昂して、胸元に挿していた短剣さえも抜いて見せた。汚らしい侵略者の豚どもが、なんて罵倒は、なんとか喉元で飲み込んだ。
男達は僕の剣幕と抜身の刃物を見て青ざめた。すぐに騒がしい悲鳴を上げながら全員が街の方へ駆け戻っていく。
それを見届けてから、僕はふっと息を吐いて、やっと壁に押し付けられてへたりこんでいたジュリを振り向いた。蒼白な顔で、わなわなと唇を震わせている。
「ヨ、ヨ……」
「ヨハンな」
先取りしてそう言うと、その黒い瞳からぼろぼろと涙を零してこちらに寄りかかってきた。ため息をつきながら片手で受け止めてやる。
状況を見た限り未遂に済んだように見えたが、念の為その体を見る。怪我をしたり服を破かれている様子はなさそうだ。
「怪我とかないか。何もされてないな? ……まったく、勝手に動くなよ」
呆れて言ってやると、ぐずぐずと泣きながらジュリは頷いた。あまりひっつかれても落ち着かないので、適当に振り払って僕は街の方へ足を切り返した。
ジュリはとぼとぼと後ろについてきたが、まだ恐怖が抜けないのだろう、その手で僕の服の袖をぎゅっとつまんでいた。
そうしてジュリを連れて街の方に戻ると、また何やら騒いでいる様子が目に入った。
金髪の男達……、僕達が歩み寄ったのに気付いて、こちらを指さして何かを騒ぎ立てている。頬が腫れ上がっているのを見るに、どうやら僕が殴り飛ばした男らしい。
ジュリがびくりと体を竦ませ、僕の後ろに隠れた。僕はむっと顔をしかめて正面を見つめる。
「ズミ人に襲われたんです! あいつ……あの男が武器を持ってて……危険ですよ、捕まえましょう!」
若い男はそう年長の男に言って騒いでいる。騒ぎを聞きつけて集まっていた市民らがどよめいて一斉に僕を見た。気分の悪さに舌打ちをしならがも、僕は真正面からそれを受け止める。
「先に狼藉をはたらいたのはそちらだ。言いがかりはやめろ」
そう反論をすると、顔を腫らした男は逆上した。
「うるさい! 何もしてないだろうが! 敗戦国のガキが、トレンティアででかい顔をするなよ!」
その罵倒が、また僕の逆鱗を撫でる。思わずマントの内側に手を入れた。……しかしその途端に、後ろからジュリが掴みかかってきた。
「だ、駄目です、ヨハン! こんなところで戦っては……!」
ジュリの言葉に止められて、短剣を抜こうとした手がかろうじてその場に留まる。
ただ僕は固く奥歯を噛んだ。……揉め事を起こすのは得策じゃない。だが、だからといってこんな侮辱を捨て置けというのか?
一度腹の中に留まった怒りは、しかし飲み込もうとするほどに圧力を増していく。それに押し出されるみたいに、短剣の柄にかけた指にぐっと力が入る……。
「何事だ! 一度静まれ!」
野次馬達をかきわけて、そう声を上げながら近付いてくる者があった。一同がどよめきながら振り向いた先に僕も視線を飛ばすと、青ざめた顔のパウルがいた。
「なに、ズミ人が喧嘩? 何かの間違いじゃないのか、このズミ人達がどなた様のお連れか分かっているのか!」
パウルは真剣な顔で声を張り上げ、やがて僕と、顔が腫れたトレンティア人の間に割って入った。周囲には更にどよめきが起こる。
更に後から、人混みをかき分けてロード様がかつかつと歩いてくるのも見えた。眉間に皺をよせて、しかめっ面をしている。
「ロード・レイン・クラネルトだ。彼らはズミからお連れした私の大切な友人達だ。何かあったかね?」
涼しげな声には目一杯の威圧の感情がこもっていたようだ。その名乗りを聞いて、顔を腫らした男は悲鳴を上げてその場に蹲ってしまった。
申し訳ありません、知らなかったんです、なんて叫び声を涙ながらに訴えている。そんな彼の頭を見下ろすロードの目は、……敵を殺す時の僕でさえそんな顔はできない。まるで人間を見る目ではないというほど、残酷に冷え切っていた。その手はがちりと、彼が腰に提げている長剣の鞘を鳴らしさえして。
「失せろ。死にたくなければ」
そう言い捨てたのを聞き、男は震えながら無言で引き下がっていった。恐ろしかったのは彼だけではないらしい、周囲に集まっていた野次馬達も蜘蛛の子を散らしたように、慌ててそれぞれの生活に帰っていった。
ようやく周囲が静まったのを見て、僕はゆっくりと短剣の柄から手を離した。ロードは僕達を見て、何事もなかったかのように冷めた笑みを浮かべた。
「時間がもったいないので、行きますよ」
促され、僕達は馬車へと戻った。ジュリはまだ目を赤くしたまま小さく震えていた。
座席について馬車が動き出してから、パウルがどっと疲れたため息を吐いた。
「……もう十分懲りただろうと思うけどな。くれぐれも一人で勝手にうろつくな、ジュリ。トレンティアだって治安の良い場所ばっかりじゃないんだからな。フェリアもいない今、お前はただの非力な小娘なんだ」
ジュリはまだ僕の服の袖をつまんだまま、力なく頷いた。
「……すみません……」
小言を言うパウルの隣で、ロードは仕方がなさそうに微笑んでいた。
「ここではあなた達が異国人であることを忘れないでください。特にズミの女性は美人揃いだ、なんて噂話が昔から流行っていますからね。見世物だと思って近付いてくる輩はいくらでもいるでしょう。くれぐれもお気を付けて」
ジュリは泣きながら何度もがくがくと頷いた。
「……それからヨハン、お前も。ジュリを助けたのはあっぱれだが、剣を抜くのはやりすぎだ。あんな騒ぎを起こしてどうするつもりなんだ、まったく!」
パウルが怒った顔でぎろりと僕を睨んできた。舌打ちひとつ、僕は顔を逸らしてやる。
……確かに逆上したが、トレンティア人にあんな舐めた態度をとられて黙ってなんかいられないだろう。小言を言われたところで、あまり反省する気にはならなかった。
「……ズミの方は、トレンティア人と比べてずっと同胞意識が強い。それは外国まで来ればなおのことでしょう。テーディルさんの怒りも尤もだとは思いますが……」
そんな言葉をかけてくるロードに、パウルは呆れたように首を振った。
「もともと血の気の多い奴ですからね、トレンティアまで来て余計に気が立ってるみたいだ。……ヨハンもジュリも、くれぐれもロード様に迷惑はかけるなよ」
すっかり小言ばかり言う役目になっているパウルをよそに、当のロードは可笑しそうに笑っていた。
「この辺りぐらいの田舎で起こることはどうとでもなるので構いませんよ。……王都に着いた後は、もう少し目立たないようにいしていただきたいですがね」
僕とジュリはぐっと顔を俯けた。
「それで、ジュリは一体なんで郊外になんぞふらついてたんだ。空飛ぶ絨毯でも見つけたか?」
呆れた顔のパウルがぼんやりと言う。ふと顔を上げると、ちょうど例の、謎の建造物が連なっている景色が隣を流れていた。ジュリは確かあれの足元で男達に囲まれていたのだ。
「あれが気になって……」
やはり彼女の関心もその建造物だったらしい。その視線を追うようにして、僕も目を細めた。
「何か……魔法で動く装置みたいだが。軍の施設……魔道兵器とかそういう類か?」
僕も加えて尋ねる。トレンティア人二人は揃ってそちらに視線をやって、やがて無表情で頷いた。
「ああ、風車ねえ……」
パウルがそうぼやいた声に力は入ってなかった。その気の抜けた声を聞くに、軍の施設だと言った僕の推測は外れてることだけは分かった。
何か拍子抜けしてしまったらしい。彼らはフーシャと言うそれの説明はしてくれなかった。まあ、戦争に関係ないなら何でもいいか、なんて思って僕も適当に切り捨てる。
異国で初めて見るもの全部にいちいち反応していたらきりがない……。
街から抜けると、また同じような草原の景色が続いていく。遠目に見る街道の脇で、白っぽい四つ足の生き物らしいのが多く蠢いている景色が見えた。
近くで人間がそれをゆったりと追っている様を見るに、何かしらの家畜を放牧しているのだろう。トレンティアとて、ズミとの国境に近い場所は広くゆったりとした牧歌的な景色が広がっているものだ。
更に進むと、街道の途中で馬車を停めて何かを話している様子の男達の姿があった。ロードの御者も一度馬車を停め、彼らに話しかける。
「どうかしたんですか」
「いやこの近くで物取りが出たと聞いたんで、進むかどうか迷っていて」
「それは物騒ですな。ロード様、いかがいたしましょう。一度引き返して護衛のものを呼んだ方が……」
御者がロードを振り向いた。ロードはというと、一泊している間に彼宛てに届いた書簡があったらしく、それを馬車の上で睨んでいた。御者の方に視線もやらず「ん」なんて曖昧な相槌を打っていた。
「構うな、そのまま進め」
そしてそう言いつけた。御者は驚いたようで目を丸くして戸惑っている。
「既に近辺に警備団が来ているという話を聞いている。大丈夫だからそのまま進め」
戸惑っている御者にロードは再度言いつける。主人にそこまで言われると、御者は困ったような顔をしながらも馬車を進め始めた。
道端に馬車を停めていた男達もきょとんとして僕達を見ていたが、それも見送って馬車は先へ進む。浮かれた様子だったジュリが不安そうな表情を浮かべていた。
「トレンティアにも盗賊が出るんですね……。大丈夫なんですか? まあ、警備団というのがいてくださるなら……」
そう呟くように言ったのに対し、ロードは手元の書類から顔も上げずに、さらりと涼しい声で返事をした。
「警備団の話なんて聞いてません。適当な嘘ですよ」
ジュリがぎょっとしたような呻き声を上げた。ロードの隣りに座っているパウルが呆れたように片手で頭を押さえる。
「我々に警護せよと、そういうことですか」
「私も多忙でしてね、無駄な時間はとりたくないのですよ」
ロードは同じ調子で言いながら口元だけで微笑を浮かべた。ジュリの顔は青ざめている。
「で、でも、トレンティアなんですから、やっぱり盗賊も魔法で襲ってくるんですよね? 本当に大丈夫ですか……」
その言葉を聞いて、ロードもやっと顔を上げた。パウルと揃ってきょとんとした顔で目を丸めている。すぐに仕方なさそうに笑ったのはパウルだった。
「軍人の成り下がりでもない限り、戦闘魔術を使う盗賊なんてそうそういないさ。下賤の者はズミと同じだよ、せいぜい棍棒か斧が彼らの兵器だろう」
そんな言葉を受けて、ジュリは唖然として黙ってしまった。トレンティアの人間は誰もが例外なく魔法使いである……という、そんな幻想を壊されたのだろう。僕だって特段関心があったわけではないが、その話にはやや拍子抜けだった。
しかし何にせよ、無法者による襲撃がありえるという話だ、僕はそこから胸元の短剣に意識を向けながら気を引き締めた。
……が、結局次の町に着くまで襲撃の憂き目にあうことはなく、いたって平穏な旅が続いていった。
次の町に着いたのは正午を過ぎて少し経った頃だった。
「一度休憩と、所用があるので済ませてきます。次の宿場まではそう遠くないのですぐに発って、今日中にそこまで行きますのでそのつもりで」
ロードの短い連絡を受けて、僕達は馬車から降りた。ずっと座っていると足が固まるので目一杯伸びをしながら空気を吸った。
……すぐに下半身が所用を訴えているのを聞いて、きょろきょろと周囲を眺めたが、それらしいものがどこにあるか分からない。
「公衆の厠ってのはないの」
僕は小声でパウルに聞いた。パウルはあー、とぼやいて僕を手招きした。これまでの道中は勝手が分からなかったから失礼ながら道外れの草むらなどにお世話になったが、これからずっとそうというわけにもいかないだろう。
パウルに連れられて訪れた異国の厠は……、いや、あえて言葉を尽くすこともあるまい。
パウルと並んで用を足し終えると馬車の元に戻った。御者が眠たそうに欠伸をしているだけで、ロードとジュリの姿はない。
ロードはともかくジュリは何処に行ったのかと思って、僕はおそるおそる御者に話しかけた。
「彼女はどこへ?」
聞くと、御者は驚いて目を見開き、慌てた様子で周囲を見回した。
「あれっ。そういえば、どこに。いつの間にか……」
そんな間の抜けた声を上げるのだから、僕は小さく嘆息してパウルを顔を見合わせた。
「どうせ物珍しいものを見つけて、ふらっと見に行ったとかじゃないのかな。……俺はここでロード様を待っとくから、ヨハンお前探してきてくれ」
パウルは呆れた様子で言った。仕方ないな、と呟いて僕はジュリを探しに出かけることにする。僕達もさっき馬車を離れたばかりだからそう遠くへ行ったということはないだろう。
ジュリがつい目を引かれてしまいそうなもの……、と言っても、そんなものはどこを見ても溢れていて、逆に見当がつけづらい。
店頭に並んでいる野菜や果物は見慣れない形のものが多いし、干してある魚……は、そこまで変わらないな。
牛よりも小ぶりの白い家畜をぞろぞろ連れている牧人、甲高い鳴き声の、妙に毛の短い犬。……この周辺にもジュリの姿は見当たらない。
うーんと唸ってふと顔を上げると、遠くに不思議なものが目に入った。何か大きな旗を掲げた様子の建物? 軍の施設だろうか。
いや、旗にしては形が変だし、なんだか変な動きをしているように見える。遠目にも見えるそれは、結構大きな建物のようだが……。
その景色が異様にさえ見えて、僕はそちらに歩いていった。遠くにあるその建物はすぐにたどり着かなかったが、ふと途切れた建物の連なりの奥に、その奇っ怪な建造物が堂々と全身を現した。
格子状に組まれた木材が支えるのはのっぺりとした高い筒状の建物で、その頂きに、細長い四角に切られた大きな布が放射状に交差した、そんな巨大な旗とも壁ともつかない装置が、ごうごうと鈍く低い音を上げながらゆっくりと回転している。
その奇妙な巨軀がしかも定感覚でいくつも……、四つ、いや五つか? 視界の遠くまで連なって建っている、その景色にはジュリでなくとも圧倒されてしまうだろう。僕は唖然として、地面の上からそれを見上げた。
何かの装置……、やはり軍事施設か。魔法陣が見えるわけではないし、近くを魔力が流れているような様子も、少なくとも僕の感覚には引っかからないが……。
立ち尽くしてそれを見つめていると、その謎の建造物のふもとで、何やら複数の人間が蠢いているのが見えた。
なんとなくそれに視線を落として……、ズミの森で鍛えられた僕の聴覚がその騒動に気付くのに時間はかからなかった。
何か様子がおかしい。そう思って僕は足早に駆けた。彼らはどう見ても必要以上に密集して揉め合っている。それも、めいめいに大声を上げながら。
「……ズミ人か。本物か。本当に髪が黒い!」
「子どもか? 何歳だ。トレンティア人と歳のとり方が違うらしいぞ」
「脱がしてみれば分かるだろ。おかしな模様の服を着ている」
「なあ、ズミの女は皆芸姑だってのは本当か? 踊って見せてくれ。ああ、ほんとに綺麗な髪だ!」
下品な笑いを浮かべた男達が少女を壁に追い詰めている。その太い腕が彼女の手を乱暴に掴み、悲鳴をあげようとする口さえも押さえにかかる……
その横っ腹に、僕は後ろから思い切り蹴りを入れた。男は僕よりも背の高いたくましい体つきをしていたが、不意を打たれて受け身も取れず地面に転がった。
途端にどよめいた隣の男の顔を、次の瞬間に握りしめた拳で、首を撥ねるほどの心持ちで殴り飛ばしてやった。
町の民間人らしい彼らは、体が大きくとも戦い慣れているわけではない。悲鳴を上げながら容易くその場に蹲ってしまう。
「なんだこいつ! 男のズミ人だ!」
男達は大きな声で騒ぎ始めた。僕は語る言葉も持たない。腹の底から、抑えがたいほどの怒りが噴き上がっていた。
「触るな!」
僕は激昂して、胸元に挿していた短剣さえも抜いて見せた。汚らしい侵略者の豚どもが、なんて罵倒は、なんとか喉元で飲み込んだ。
男達は僕の剣幕と抜身の刃物を見て青ざめた。すぐに騒がしい悲鳴を上げながら全員が街の方へ駆け戻っていく。
それを見届けてから、僕はふっと息を吐いて、やっと壁に押し付けられてへたりこんでいたジュリを振り向いた。蒼白な顔で、わなわなと唇を震わせている。
「ヨ、ヨ……」
「ヨハンな」
先取りしてそう言うと、その黒い瞳からぼろぼろと涙を零してこちらに寄りかかってきた。ため息をつきながら片手で受け止めてやる。
状況を見た限り未遂に済んだように見えたが、念の為その体を見る。怪我をしたり服を破かれている様子はなさそうだ。
「怪我とかないか。何もされてないな? ……まったく、勝手に動くなよ」
呆れて言ってやると、ぐずぐずと泣きながらジュリは頷いた。あまりひっつかれても落ち着かないので、適当に振り払って僕は街の方へ足を切り返した。
ジュリはとぼとぼと後ろについてきたが、まだ恐怖が抜けないのだろう、その手で僕の服の袖をぎゅっとつまんでいた。
そうしてジュリを連れて街の方に戻ると、また何やら騒いでいる様子が目に入った。
金髪の男達……、僕達が歩み寄ったのに気付いて、こちらを指さして何かを騒ぎ立てている。頬が腫れ上がっているのを見るに、どうやら僕が殴り飛ばした男らしい。
ジュリがびくりと体を竦ませ、僕の後ろに隠れた。僕はむっと顔をしかめて正面を見つめる。
「ズミ人に襲われたんです! あいつ……あの男が武器を持ってて……危険ですよ、捕まえましょう!」
若い男はそう年長の男に言って騒いでいる。騒ぎを聞きつけて集まっていた市民らがどよめいて一斉に僕を見た。気分の悪さに舌打ちをしならがも、僕は真正面からそれを受け止める。
「先に狼藉をはたらいたのはそちらだ。言いがかりはやめろ」
そう反論をすると、顔を腫らした男は逆上した。
「うるさい! 何もしてないだろうが! 敗戦国のガキが、トレンティアででかい顔をするなよ!」
その罵倒が、また僕の逆鱗を撫でる。思わずマントの内側に手を入れた。……しかしその途端に、後ろからジュリが掴みかかってきた。
「だ、駄目です、ヨハン! こんなところで戦っては……!」
ジュリの言葉に止められて、短剣を抜こうとした手がかろうじてその場に留まる。
ただ僕は固く奥歯を噛んだ。……揉め事を起こすのは得策じゃない。だが、だからといってこんな侮辱を捨て置けというのか?
一度腹の中に留まった怒りは、しかし飲み込もうとするほどに圧力を増していく。それに押し出されるみたいに、短剣の柄にかけた指にぐっと力が入る……。
「何事だ! 一度静まれ!」
野次馬達をかきわけて、そう声を上げながら近付いてくる者があった。一同がどよめきながら振り向いた先に僕も視線を飛ばすと、青ざめた顔のパウルがいた。
「なに、ズミ人が喧嘩? 何かの間違いじゃないのか、このズミ人達がどなた様のお連れか分かっているのか!」
パウルは真剣な顔で声を張り上げ、やがて僕と、顔が腫れたトレンティア人の間に割って入った。周囲には更にどよめきが起こる。
更に後から、人混みをかき分けてロード様がかつかつと歩いてくるのも見えた。眉間に皺をよせて、しかめっ面をしている。
「ロード・レイン・クラネルトだ。彼らはズミからお連れした私の大切な友人達だ。何かあったかね?」
涼しげな声には目一杯の威圧の感情がこもっていたようだ。その名乗りを聞いて、顔を腫らした男は悲鳴を上げてその場に蹲ってしまった。
申し訳ありません、知らなかったんです、なんて叫び声を涙ながらに訴えている。そんな彼の頭を見下ろすロードの目は、……敵を殺す時の僕でさえそんな顔はできない。まるで人間を見る目ではないというほど、残酷に冷え切っていた。その手はがちりと、彼が腰に提げている長剣の鞘を鳴らしさえして。
「失せろ。死にたくなければ」
そう言い捨てたのを聞き、男は震えながら無言で引き下がっていった。恐ろしかったのは彼だけではないらしい、周囲に集まっていた野次馬達も蜘蛛の子を散らしたように、慌ててそれぞれの生活に帰っていった。
ようやく周囲が静まったのを見て、僕はゆっくりと短剣の柄から手を離した。ロードは僕達を見て、何事もなかったかのように冷めた笑みを浮かべた。
「時間がもったいないので、行きますよ」
促され、僕達は馬車へと戻った。ジュリはまだ目を赤くしたまま小さく震えていた。
座席について馬車が動き出してから、パウルがどっと疲れたため息を吐いた。
「……もう十分懲りただろうと思うけどな。くれぐれも一人で勝手にうろつくな、ジュリ。トレンティアだって治安の良い場所ばっかりじゃないんだからな。フェリアもいない今、お前はただの非力な小娘なんだ」
ジュリはまだ僕の服の袖をつまんだまま、力なく頷いた。
「……すみません……」
小言を言うパウルの隣で、ロードは仕方がなさそうに微笑んでいた。
「ここではあなた達が異国人であることを忘れないでください。特にズミの女性は美人揃いだ、なんて噂話が昔から流行っていますからね。見世物だと思って近付いてくる輩はいくらでもいるでしょう。くれぐれもお気を付けて」
ジュリは泣きながら何度もがくがくと頷いた。
「……それからヨハン、お前も。ジュリを助けたのはあっぱれだが、剣を抜くのはやりすぎだ。あんな騒ぎを起こしてどうするつもりなんだ、まったく!」
パウルが怒った顔でぎろりと僕を睨んできた。舌打ちひとつ、僕は顔を逸らしてやる。
……確かに逆上したが、トレンティア人にあんな舐めた態度をとられて黙ってなんかいられないだろう。小言を言われたところで、あまり反省する気にはならなかった。
「……ズミの方は、トレンティア人と比べてずっと同胞意識が強い。それは外国まで来ればなおのことでしょう。テーディルさんの怒りも尤もだとは思いますが……」
そんな言葉をかけてくるロードに、パウルは呆れたように首を振った。
「もともと血の気の多い奴ですからね、トレンティアまで来て余計に気が立ってるみたいだ。……ヨハンもジュリも、くれぐれもロード様に迷惑はかけるなよ」
すっかり小言ばかり言う役目になっているパウルをよそに、当のロードは可笑しそうに笑っていた。
「この辺りぐらいの田舎で起こることはどうとでもなるので構いませんよ。……王都に着いた後は、もう少し目立たないようにいしていただきたいですがね」
僕とジュリはぐっと顔を俯けた。
「それで、ジュリは一体なんで郊外になんぞふらついてたんだ。空飛ぶ絨毯でも見つけたか?」
呆れた顔のパウルがぼんやりと言う。ふと顔を上げると、ちょうど例の、謎の建造物が連なっている景色が隣を流れていた。ジュリは確かあれの足元で男達に囲まれていたのだ。
「あれが気になって……」
やはり彼女の関心もその建造物だったらしい。その視線を追うようにして、僕も目を細めた。
「何か……魔法で動く装置みたいだが。軍の施設……魔道兵器とかそういう類か?」
僕も加えて尋ねる。トレンティア人二人は揃ってそちらに視線をやって、やがて無表情で頷いた。
「ああ、風車ねえ……」
パウルがそうぼやいた声に力は入ってなかった。その気の抜けた声を聞くに、軍の施設だと言った僕の推測は外れてることだけは分かった。
何か拍子抜けしてしまったらしい。彼らはフーシャと言うそれの説明はしてくれなかった。まあ、戦争に関係ないなら何でもいいか、なんて思って僕も適当に切り捨てる。
異国で初めて見るもの全部にいちいち反応していたらきりがない……。
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