婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!

山田 バルス

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第63話 ローゼ視点 ― 贅沢引きこもりと帝国の工作員

 ローゼ視点 ― 贅沢引きこもりと帝国の工作員

 ふかふかのベッドに沈み込みながら、私はまた朝を迎えた。
 牢屋の中で迎えるはずの朝が、これほどまでに優雅だなんて、世界中どこを探しても私だけじゃないかしら。
 窓辺から差し込む光は、柔らかなレースのカーテンを透かし、部屋いっぱいに金色を広げている。
 昨夜は苺のミルフィーユを食べながら、ふわふわクッションに埋もれて眠った。
 最高に甘美な夢を見たのは言うまでもない。

「んー……しあわせ……」

 ぐっと伸びをすると、机の上にまた一通の封筒が置かれているのに気づいた。
 金色の封蝋、《請求書》の文字。

「はいはい、来ましたね」

 私は慣れた手つきで封を切る。

《ご利用明細》
・高級パフェ(夜食用)……金貨4枚
・ショコラ専門店お取り寄せ……金貨7枚
・映画ウインドウ視聴料……金貨3枚
・高級寝具セット……金貨15枚
・フレグランス&雑貨……金貨10枚

――合計:金貨39枚

「今回はちょっと控えめだったのね」

 私は肩をすくめる。
 
 問題はここからだ。請求書の下には、いつものお楽しみ、《プレゼント機能》の説明が表示されていた。

 《機能:請求書プレゼント》
 条件:理不尽を与えてきた相手に、あなたが受けた「費用」を転嫁できます。
 効果:選択した相手に請求書が送付されます。

「さてさて……今回は誰に払ってもらおうかしら」

 私はリストを開いた。
 いつもなら、憎きエリシアやら、他の意地悪な顔ぶれが並んでいるはずだ。
 だが――。

「あれ?」

 目をこすってもう一度見直す。
 そこに並んでいたのは、見覚えのない二つの名前だった。

《候補》
・アーケン(ルーレット帝国工作員)
・セミーナ(第2聖女)

「え、誰? アーケン? ……え、工作員ってなに?」

 私は小首をかしげる。
 どうやら帝国の人間らしい。
 でも私は部屋にいるし、帝国なんて関わっていないはず。

「理不尽……されたのかしら? わたしが知らない間に?」

 ウインドウを確認すると、説明にはこうあった。

《あなたに不利益を与えた相手は、自動的にリストに表示されます》

「なるほど……ってことは、このアーケンって人、わたしに攻撃してきたってことよね?」

 まったく身に覚えはないけれど、システムが言うのならそうなのだろう。
 私はにやりと笑った。

「じゃあ、払ってもらいましょう。文句なしで」

 私は迷わずアーケンの名前をタップし、確定ボタンを押した。
 請求書は光の粒子となって消え、どこかへ飛んでいく。

「はい、これで解決。ああスッキリした」

 私は早速ベルを鳴らし、次の注文――濃厚なチーズスフレを取り寄せることにした。

 ◆ ◆ ◆

 一方そのころ――。

 ルーレット帝国の工作員たちが立てこもる王国内にある秘密の地下室。
 工作員アーケンは机に広げた書類に目を通していた。
 王国への浸透作戦が佳境を迎えており、彼の手は休む暇もない。

「さて、次は王国貴族の買収リストを……」

 その時だった。
 机の上に、ふっと一通の封筒が現れたのだ。

「……なんだ?」

 怪訝に思いながら開封すると、中には《請求書》と大きく記されていた。

《ご利用明細》
・高級パフェ(夜食用)……金貨4枚
・ショコラ専門店お取り寄せ……金貨7枚
・映画ウインドウ視聴料……金貨3枚
・高級寝具セット……金貨15枚
・フレグランス&雑貨……金貨10枚

――合計:金貨39枚

「は?」

 アーケンは目を瞬かせる。

「パフェ? ショコラ? 寝具? ……なんだこれは!?」

 次の瞬間、机の隅に置いてあった財布袋が揺れ、金貨がふっと消えた。

「なっ……!? まさか、引き落とされたのか!?」

 慌てて確認すると、確かに所持金から金貨39枚が消えている。
 帝国から預かっていた活動資金が、跡形もなく。

「馬鹿な、これは新手の……呪術か!? いや、王国側の逆スパイの仕業か!?」

 アーケンの顔色は真っ青になった。
 工作員にとって資金の消失は致命的だ。
 作戦がすべて狂う。
 彼は慌てて仲間に報告したが、説明が意味不明すぎて誰も信じてくれない。

「……ち、違う! 本当に! 寝具だとかパフェだとかに金を使ったんじゃない! 勝手に取られたんだ!」

 必死に弁明するも、疑いの目は強まるばかりだった。

 ◆ ◆ ◆

 一方そのころ、王宮のローゼの部屋では。

「んー♪ やっぱりスフレは最高ね」

 ローゼはふわふわのケーキを頬張り、幸せそうにため息をついた。

「知らない人の名前だったけど、まあ理不尽をしてきたってことだから問題なし! これで私のお財布は守られたわ」

 何も知らず、無邪気に笑うローゼ。
 彼女の贅沢引きこもり生活は、今日もまた帝国の財産をむしり取って、さらに甘美に続いていく――。
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