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第31話 フェリップ王子とマリーナ王女の断罪
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フェリップ王子とマリーナ王女の断罪
スペイラ帝国の国境の町、サンジャン。
魔法の街灯が通りを照らしていた夜。
――ガチャリ、ガチャリ。
鎧の音と共に、この地を守るランス伯爵領の衛兵が到着した。
すでに冒険者ギルドからも応援が駆け付けていて、作業を進めていた。
その中に冒険者の兄マークと妹ライムの姿もあった。
「ロドリゲス様、凄すぎるな」
尊敬するロドリゲスの活躍にマークは、感心していた。
一方、妹ライムも顔を赤らめていた。
「フエルテ様、イケメンなのに剣技がすごいわ」
「ロドリゲス様、弟子にしてくれないかな」
「フエルテ様、結婚して……愛人でもいいわ」
「しゃべってないで、さっさと作業をすすめろ」
年上の冒険者に叱られて、二人は作業に戻る。
冒険者たちが拘束し、縄で縛り上げた盗賊たちを、
衛兵たちが運んできた荷馬車へと放り込んでいく。
「たった二人でこれを……」
「剣聖とその師匠、化け物だな……」
衛兵たちが驚きの声を上げながら作業に励んでいる。
「……こりゃひでぇな」
衛兵隊長が、石畳に転がる男たちを見下ろして呟く。
「とりあえず、全員、牢へ放り込め」
その状況を、エマ、ロドリゲス、そして、猫耳亭のアンナが見守っている。
ロドリゲスが衛兵隊長に軽く手を振る。
「生きてるから安心しろ。骨は何本か折れてるかもしれないがな」
衛兵隊長は苦笑いしながら頭を軽く下げる。
「それにしても猫耳亭からの連絡、助かったわ」
ロドリゲスの横でエマが猫耳亭のアンナにお礼の言葉を述べる。
「いえ、たまたま、うちの宿に泊まったので計画がわかっただけです。
みなさんが無事で良かったです」
アンナは、盗賊たちが拘束される姿を見ながらホッとした様子で言った。
フェリップ王子たちが宿に泊まっている猫耳亭は、エマの顔見知りである。
そこで怪しい男たちが出入りしていることを、エマたちに伝えに来てくれたのだ。
だから、襲撃への対策ができたのである。
「その時間があったから、ミスリルの剣に付与魔法を掛けて貰えたな」
ロドリゲスの言葉に、エマは嬉しそうな声で答える。
「お店の中から見てたけど、その剣、相手の剣を一撃で粉砕してたわよ」
「こいつは、付与魔法で数倍の威力になった、すごい破壊力だ」
ロドリゲスは自慢げに鞘に収めてある剣の柄を優しく撫でる。
三人の会話を聞きながら、隊長は折れた剣の山を見て、苦笑しつつも頷いた。
「あれだけの折れた剣をみれば、その凄さがわかりますな」
それから、再び部下へ指示を出した。
通りの混乱は、次第に収まっていく。
だが――問題は店の中だった。
◇
エマのパワーストーン店、応接室。
中央に三人。
縄で縛られ、椅子に座らされた王族と元男爵令嬢。
フェリップ王子は顔を赤くし、必死に喚いている。
「縄をほどけ! 俺は王子だぞ!」
マリーナ王女も、怒りに顔を歪めた。
「わたくしにこんなことをして、ただでは済みませんわよ!」
ジュリエットは、ただ泣いていた。
「……うぅ……」
それを囲むように立つ者たち。
剣聖で帝国一のイケメン、フエルテ=マドリーレ。
その隣に黒髪の師匠ロドリゲス。
桃色の髪の店主エマ。
銀髪の美少女、皇女ペネロペ。
侍女メアリーと護衛オサスナ。
完全に包囲されているが、王子たちは気にも留めていない。
エマは、こめかみに指を当て、困り顔でため息をついた。
「……これ、どうしたらいいのかしら?」
素直な本音だった。
王族二人とその恋人を拘束中。
帝国と王国の火種そのものが、今ここにある。
オサスナが真顔で言う。
「斬りますか?」
「ダメ、状況を見て考える!」
即座にメアリーが制止した。
オサスナは、しゅんと肩を落とす。
「残念……」
そこでまた、フェリップが喚く。
「おい! 聞いているのか! 無礼者ども!」
その声に応えるかのように、マリーナも叫ぶ続ける。
「そこの桃色の髪の女、わたくしは王女ですのよ!」
エマは頭を抱えた。
「本当にどうしたらいいのかしら……」
その時だった。
ペネロペが、にこりと微笑む。
「お姉さま」
「え?」
「うるさいから、こうするのがいいですわ」
懐から、銀色の輪を取り出した。
――奴隷の首輪。
ディアス=ランス伯爵が置いていった、あの黒革の箱の中身。
「な、何をする気だ!?」
フェリップが後ずさる。
だが縄で動けない。
迷いなく、首元へ。
「や、やめ――」
ガチャリ。
装着完了。
一瞬、淡い魔術光が走る。
フェリップの身体がびくりと震えた。
「……は?」
ペネロペが、満面の笑みで言う。
「ざまあですわ」
室内が静まり返る。
メアリーが、無言で残り二つの首輪を手に取った。
「了解しました」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
マリーナが叫ぶが、時すでに遅い。
ガチャリ。
次に無抵抗のジュリエットも。
ガチャリ。
淡い光。
魔術契約、発動。
メアリーが冷静に言う。
「契約内容は、店内規律遵守、命令違反禁止、機密漏洩禁止です」
そして――
スッ、と縄をほどいた。
三人は自由になった。
だが。
首輪が、静かに光っている。
フェリップが立ち上がろうとした瞬間。
――ビリッ。
「ぐっ!?」
膝から崩れ落ちた。
命令違反による軽度の制裁。
エマはぽかんとする。
「……あら、ちゃんと効くのね」
ペネロペが楽しそうに言う。
「これで安心ですわ」
そして、にこやかにエマへ振り向く。
「お姉さま、新しい下僕――いえ、スタッフが来て安心ですわ」
エマが、絶句したまま唖然とする中、
ロドリゲスが腹を抱えて笑う。
「ははははは! これは傑作だ!」
フエルテは額を押さえた。
「……止められなかった私の責任か」
◇
こうして。
王女と王子とその恋人は。
エマのパワーストーン店、正式スタッフとなった。
翌朝。
「起きなさい」
メアリーの叱責する声。
フェリップの肩が激しく揺さぶられる。
「ここはどこだ……」
「工房です」
作業着を投げ渡される。
「石の洗浄から始めて下さい」
「俺にこんなことを――」
ビリッ。
「ぐあっ!」
痛さで膝をつく王子。
そこをオサスナが腕を組む。
「反抗禁止、次は斬る!」
その隣でマリーナは、エプロン姿。
「なぜ、わたくしが在庫帳簿の確認って……!」
ビリッ。
「ひぃっ!」
ジュリエットは泣きながら、原石を磨いている。
「……うぅ……」
ペネロペは、優雅に紅茶を飲みながら見守っていた。
「素晴らしい朝ですわ」
エマは苦笑する。
「……やりすぎでは?」
「いいえ」
ペネロペはにっこりと可愛らしい笑顔で答える。
「これは教育ですわ」
公衆の面前で婚約破棄。
理不尽すぎる侮辱。
皇族としての誇りを踏みにじられた過去。
そのすべてが、静かな復讐となって形を変える。
フェリップは、石を運び。
マリーナは、在庫確認。
ジュリエットは、接客練習。
メアリーは今までの恨みを乗せたような鬼教官ぶり。
「声が小さい」
「い、いらっしゃいませ……」
「やり直し」
オサスナは腕を組み、王子の姿勢を直す。
「背筋、できないと斬る」
「……はい」
王族の威厳はどこへやら。
完全に新人研修中のスタッフである。
ロドリゲスが横でぼそりと小さく笑う。
「なあ、王族を下僕って面白すぎじゃねぇか?」
フエルテは、遠い目をしたまま無表情に答える。
「……さすがに笑えませんよ」
◇
夕刻。
疲れ果てた三人が床に座り込む。
首輪は静かに光っている。
ペネロペが近づく。
「どう? 労働は尊いでしょう?」
フェリップは俯く。
何も言えない。
マリーナは、涙目で今にも泣き出しそうだ。
ジュリエットは、呆けたまま完全に意識を飛ばしている。
ペネロペは満足げに微笑む。
「これから、たっぷり働いてもらいますわ」
エマは困り顔で、天井を見上げた。
「……商会設立どころじゃない気がしてきたわ」
だが店は、今日も繁盛している。
守るための石を製作する店。
そして、人々を守るための新スタッフ加入。
こうして。
王族とその恋人の三人は、エマの店で更生という名の労働を始めた。
帝国と王国の火種は、奇妙な形で一時的に鎮火したかのように見える。
だが――。
この時、王国を襲う大事件が起こっていることを、
エマたちの誰も知らなかった。
静かに確実に、運命へのカウントダウンは始まっでいた。
スペイラ帝国の国境の町、サンジャン。
魔法の街灯が通りを照らしていた夜。
――ガチャリ、ガチャリ。
鎧の音と共に、この地を守るランス伯爵領の衛兵が到着した。
すでに冒険者ギルドからも応援が駆け付けていて、作業を進めていた。
その中に冒険者の兄マークと妹ライムの姿もあった。
「ロドリゲス様、凄すぎるな」
尊敬するロドリゲスの活躍にマークは、感心していた。
一方、妹ライムも顔を赤らめていた。
「フエルテ様、イケメンなのに剣技がすごいわ」
「ロドリゲス様、弟子にしてくれないかな」
「フエルテ様、結婚して……愛人でもいいわ」
「しゃべってないで、さっさと作業をすすめろ」
年上の冒険者に叱られて、二人は作業に戻る。
冒険者たちが拘束し、縄で縛り上げた盗賊たちを、
衛兵たちが運んできた荷馬車へと放り込んでいく。
「たった二人でこれを……」
「剣聖とその師匠、化け物だな……」
衛兵たちが驚きの声を上げながら作業に励んでいる。
「……こりゃひでぇな」
衛兵隊長が、石畳に転がる男たちを見下ろして呟く。
「とりあえず、全員、牢へ放り込め」
その状況を、エマ、ロドリゲス、そして、猫耳亭のアンナが見守っている。
ロドリゲスが衛兵隊長に軽く手を振る。
「生きてるから安心しろ。骨は何本か折れてるかもしれないがな」
衛兵隊長は苦笑いしながら頭を軽く下げる。
「それにしても猫耳亭からの連絡、助かったわ」
ロドリゲスの横でエマが猫耳亭のアンナにお礼の言葉を述べる。
「いえ、たまたま、うちの宿に泊まったので計画がわかっただけです。
みなさんが無事で良かったです」
アンナは、盗賊たちが拘束される姿を見ながらホッとした様子で言った。
フェリップ王子たちが宿に泊まっている猫耳亭は、エマの顔見知りである。
そこで怪しい男たちが出入りしていることを、エマたちに伝えに来てくれたのだ。
だから、襲撃への対策ができたのである。
「その時間があったから、ミスリルの剣に付与魔法を掛けて貰えたな」
ロドリゲスの言葉に、エマは嬉しそうな声で答える。
「お店の中から見てたけど、その剣、相手の剣を一撃で粉砕してたわよ」
「こいつは、付与魔法で数倍の威力になった、すごい破壊力だ」
ロドリゲスは自慢げに鞘に収めてある剣の柄を優しく撫でる。
三人の会話を聞きながら、隊長は折れた剣の山を見て、苦笑しつつも頷いた。
「あれだけの折れた剣をみれば、その凄さがわかりますな」
それから、再び部下へ指示を出した。
通りの混乱は、次第に収まっていく。
だが――問題は店の中だった。
◇
エマのパワーストーン店、応接室。
中央に三人。
縄で縛られ、椅子に座らされた王族と元男爵令嬢。
フェリップ王子は顔を赤くし、必死に喚いている。
「縄をほどけ! 俺は王子だぞ!」
マリーナ王女も、怒りに顔を歪めた。
「わたくしにこんなことをして、ただでは済みませんわよ!」
ジュリエットは、ただ泣いていた。
「……うぅ……」
それを囲むように立つ者たち。
剣聖で帝国一のイケメン、フエルテ=マドリーレ。
その隣に黒髪の師匠ロドリゲス。
桃色の髪の店主エマ。
銀髪の美少女、皇女ペネロペ。
侍女メアリーと護衛オサスナ。
完全に包囲されているが、王子たちは気にも留めていない。
エマは、こめかみに指を当て、困り顔でため息をついた。
「……これ、どうしたらいいのかしら?」
素直な本音だった。
王族二人とその恋人を拘束中。
帝国と王国の火種そのものが、今ここにある。
オサスナが真顔で言う。
「斬りますか?」
「ダメ、状況を見て考える!」
即座にメアリーが制止した。
オサスナは、しゅんと肩を落とす。
「残念……」
そこでまた、フェリップが喚く。
「おい! 聞いているのか! 無礼者ども!」
その声に応えるかのように、マリーナも叫ぶ続ける。
「そこの桃色の髪の女、わたくしは王女ですのよ!」
エマは頭を抱えた。
「本当にどうしたらいいのかしら……」
その時だった。
ペネロペが、にこりと微笑む。
「お姉さま」
「え?」
「うるさいから、こうするのがいいですわ」
懐から、銀色の輪を取り出した。
――奴隷の首輪。
ディアス=ランス伯爵が置いていった、あの黒革の箱の中身。
「な、何をする気だ!?」
フェリップが後ずさる。
だが縄で動けない。
迷いなく、首元へ。
「や、やめ――」
ガチャリ。
装着完了。
一瞬、淡い魔術光が走る。
フェリップの身体がびくりと震えた。
「……は?」
ペネロペが、満面の笑みで言う。
「ざまあですわ」
室内が静まり返る。
メアリーが、無言で残り二つの首輪を手に取った。
「了解しました」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
マリーナが叫ぶが、時すでに遅い。
ガチャリ。
次に無抵抗のジュリエットも。
ガチャリ。
淡い光。
魔術契約、発動。
メアリーが冷静に言う。
「契約内容は、店内規律遵守、命令違反禁止、機密漏洩禁止です」
そして――
スッ、と縄をほどいた。
三人は自由になった。
だが。
首輪が、静かに光っている。
フェリップが立ち上がろうとした瞬間。
――ビリッ。
「ぐっ!?」
膝から崩れ落ちた。
命令違反による軽度の制裁。
エマはぽかんとする。
「……あら、ちゃんと効くのね」
ペネロペが楽しそうに言う。
「これで安心ですわ」
そして、にこやかにエマへ振り向く。
「お姉さま、新しい下僕――いえ、スタッフが来て安心ですわ」
エマが、絶句したまま唖然とする中、
ロドリゲスが腹を抱えて笑う。
「ははははは! これは傑作だ!」
フエルテは額を押さえた。
「……止められなかった私の責任か」
◇
こうして。
王女と王子とその恋人は。
エマのパワーストーン店、正式スタッフとなった。
翌朝。
「起きなさい」
メアリーの叱責する声。
フェリップの肩が激しく揺さぶられる。
「ここはどこだ……」
「工房です」
作業着を投げ渡される。
「石の洗浄から始めて下さい」
「俺にこんなことを――」
ビリッ。
「ぐあっ!」
痛さで膝をつく王子。
そこをオサスナが腕を組む。
「反抗禁止、次は斬る!」
その隣でマリーナは、エプロン姿。
「なぜ、わたくしが在庫帳簿の確認って……!」
ビリッ。
「ひぃっ!」
ジュリエットは泣きながら、原石を磨いている。
「……うぅ……」
ペネロペは、優雅に紅茶を飲みながら見守っていた。
「素晴らしい朝ですわ」
エマは苦笑する。
「……やりすぎでは?」
「いいえ」
ペネロペはにっこりと可愛らしい笑顔で答える。
「これは教育ですわ」
公衆の面前で婚約破棄。
理不尽すぎる侮辱。
皇族としての誇りを踏みにじられた過去。
そのすべてが、静かな復讐となって形を変える。
フェリップは、石を運び。
マリーナは、在庫確認。
ジュリエットは、接客練習。
メアリーは今までの恨みを乗せたような鬼教官ぶり。
「声が小さい」
「い、いらっしゃいませ……」
「やり直し」
オサスナは腕を組み、王子の姿勢を直す。
「背筋、できないと斬る」
「……はい」
王族の威厳はどこへやら。
完全に新人研修中のスタッフである。
ロドリゲスが横でぼそりと小さく笑う。
「なあ、王族を下僕って面白すぎじゃねぇか?」
フエルテは、遠い目をしたまま無表情に答える。
「……さすがに笑えませんよ」
◇
夕刻。
疲れ果てた三人が床に座り込む。
首輪は静かに光っている。
ペネロペが近づく。
「どう? 労働は尊いでしょう?」
フェリップは俯く。
何も言えない。
マリーナは、涙目で今にも泣き出しそうだ。
ジュリエットは、呆けたまま完全に意識を飛ばしている。
ペネロペは満足げに微笑む。
「これから、たっぷり働いてもらいますわ」
エマは困り顔で、天井を見上げた。
「……商会設立どころじゃない気がしてきたわ」
だが店は、今日も繁盛している。
守るための石を製作する店。
そして、人々を守るための新スタッフ加入。
こうして。
王族とその恋人の三人は、エマの店で更生という名の労働を始めた。
帝国と王国の火種は、奇妙な形で一時的に鎮火したかのように見える。
だが――。
この時、王国を襲う大事件が起こっていることを、
エマたちの誰も知らなかった。
静かに確実に、運命へのカウントダウンは始まっでいた。
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