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第42話 岩宿ダンジョン、情報屋ヴェルトからの忠告
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岩宿ダンジョン。
その入り口は、古びた石材で組まれたアーチの向こうに、ぽっかりと口を開けていた。
まるで獲物を待ち受ける怪物の喉のように、冷たい空気を吐き出している。
かすかに漂う土と血の匂いが、ただの遺跡ではないことを告げていた。
「ここが……岩宿か」
マスキュラ―が唸るように言い、手にした剣の柄を強く握った。
その瞳には戦士としての緊張と、どこか懐かしさにも似た感情が浮かんでいた。
「なるほど、陰気な歓迎ね」
エリーゼは風に揺れる桃色の髪を指で抑えながら、前方に立つ仮面の男を見据えた。
情報屋ヴェルトが、入口の傍らに佇んでいた。
全身黒衣に身を包み、無機質な仮面越しの視線が、じっとこちらを射抜いてくる。
「お前たちか。遅かったな。……だが、ちょうどいい」
低く、乾いた声が岩壁に響いた。
彼はゆっくりと一歩前に出ると、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
それには、手書きで描かれたダンジョンの簡略な地図が記されていた。
「入ってすぐの分岐と、罠の一部、それと魔物の出没区域……だいたいは書いてある」
「『だいたい』? 自信なさげね」
アリスターが細い眉をひそめ、鼻を鳴らした。
「そもそも誰も奥まで戻って来ていない。これが手に入っただけでも奇跡だ」
そう言って、今度は黒革のカバンを差し出す。重たげな音とともに、中身の一部がわずかに揺れた。
「転移石が二つ、応急用の聖水、松明三本、封印札が五枚。必要なものは入れておいた。足りないものがあったら……諦めろ」
彼の声音には、どこか他人事のような軽さがあったが、その目だけは深い闇を映していた。まるで、すべての結末を既に知っているかのように。
「一緒に来るんじゃないの?」
エリーゼが問いかけた。
ヴェルトは短く笑ったように肩をすくめ、仮面の奥で目を細めた。
「行く気があるなら止めないが、オレ程度じゃ三層目まで生きて戻れるかどうか……保証はないな」
その言葉の裏にあるものを、誰もが感じ取った。静かな沈黙が、その場に広がる。
やがて彼は踵を返し、ゆっくりと歩き出す。
去り際に、ぽつりと呟いた。
「気をつけろ。そこは、ただのダンジョンじゃない」
背を向けたまま、その姿はまるで影のように溶けていった。
残されたスプレーマムの4人は、互いに目を合わせる。
「さ、行きましょ。ここまで来て帰るなんて選択肢、ないんでしょ?」
エリーゼが軽く笑いながら、腰の剣に手を添える。
その表情には、恐れよりも強い意志が宿っていた。
「当然だ。ボクの魔法で華麗に切り開いてあげようじゃないか」
アリスターが杖を掲げ、金髪を翻して得意げに笑った。
「……拙者、命を大切にしたいでござる……が、仲間を見捨てるわけにも……」
ダリルが震える手で聖印を握りしめ、目を閉じて小さく祈る。
「行くぞ。しっかりついて来い」
マスキュラ―が一歩、ダンジョンの闇の中へと踏み出した。
その背は、大地のように頼もしく、仲間を導く者の覚悟に満ちていた。
岩宿ダンジョン。そこは、冒険者たちの噂にすら滅多に上らぬ、忌避された迷宮。いま、その闇が、新たな犠牲を求めて口を開ける。
4人の冒険者たちは、それでも歩みを止めなかった。
背負うものの重さは違えど、進むべき道はひとつだけだった。
その入り口は、古びた石材で組まれたアーチの向こうに、ぽっかりと口を開けていた。
まるで獲物を待ち受ける怪物の喉のように、冷たい空気を吐き出している。
かすかに漂う土と血の匂いが、ただの遺跡ではないことを告げていた。
「ここが……岩宿か」
マスキュラ―が唸るように言い、手にした剣の柄を強く握った。
その瞳には戦士としての緊張と、どこか懐かしさにも似た感情が浮かんでいた。
「なるほど、陰気な歓迎ね」
エリーゼは風に揺れる桃色の髪を指で抑えながら、前方に立つ仮面の男を見据えた。
情報屋ヴェルトが、入口の傍らに佇んでいた。
全身黒衣に身を包み、無機質な仮面越しの視線が、じっとこちらを射抜いてくる。
「お前たちか。遅かったな。……だが、ちょうどいい」
低く、乾いた声が岩壁に響いた。
彼はゆっくりと一歩前に出ると、懐から一枚の羊皮紙を取り出した。
それには、手書きで描かれたダンジョンの簡略な地図が記されていた。
「入ってすぐの分岐と、罠の一部、それと魔物の出没区域……だいたいは書いてある」
「『だいたい』? 自信なさげね」
アリスターが細い眉をひそめ、鼻を鳴らした。
「そもそも誰も奥まで戻って来ていない。これが手に入っただけでも奇跡だ」
そう言って、今度は黒革のカバンを差し出す。重たげな音とともに、中身の一部がわずかに揺れた。
「転移石が二つ、応急用の聖水、松明三本、封印札が五枚。必要なものは入れておいた。足りないものがあったら……諦めろ」
彼の声音には、どこか他人事のような軽さがあったが、その目だけは深い闇を映していた。まるで、すべての結末を既に知っているかのように。
「一緒に来るんじゃないの?」
エリーゼが問いかけた。
ヴェルトは短く笑ったように肩をすくめ、仮面の奥で目を細めた。
「行く気があるなら止めないが、オレ程度じゃ三層目まで生きて戻れるかどうか……保証はないな」
その言葉の裏にあるものを、誰もが感じ取った。静かな沈黙が、その場に広がる。
やがて彼は踵を返し、ゆっくりと歩き出す。
去り際に、ぽつりと呟いた。
「気をつけろ。そこは、ただのダンジョンじゃない」
背を向けたまま、その姿はまるで影のように溶けていった。
残されたスプレーマムの4人は、互いに目を合わせる。
「さ、行きましょ。ここまで来て帰るなんて選択肢、ないんでしょ?」
エリーゼが軽く笑いながら、腰の剣に手を添える。
その表情には、恐れよりも強い意志が宿っていた。
「当然だ。ボクの魔法で華麗に切り開いてあげようじゃないか」
アリスターが杖を掲げ、金髪を翻して得意げに笑った。
「……拙者、命を大切にしたいでござる……が、仲間を見捨てるわけにも……」
ダリルが震える手で聖印を握りしめ、目を閉じて小さく祈る。
「行くぞ。しっかりついて来い」
マスキュラ―が一歩、ダンジョンの闇の中へと踏み出した。
その背は、大地のように頼もしく、仲間を導く者の覚悟に満ちていた。
岩宿ダンジョン。そこは、冒険者たちの噂にすら滅多に上らぬ、忌避された迷宮。いま、その闇が、新たな犠牲を求めて口を開ける。
4人の冒険者たちは、それでも歩みを止めなかった。
背負うものの重さは違えど、進むべき道はひとつだけだった。
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