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第55話 ラフィーナ=メルテンス視点から見たスプレーマム
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温かな茶の香りが、窓辺から差すやわらかな陽光と溶け合っている。ここは施療院の一室に設けられた簡素な客間。私は毛布の上から膝に手を置き、向かいに座る四人の冒険者を見つめた。
スプレーマム――この不思議な名前のパーティが、私をあの死の間際から救ってくれたのだ。
彼らに初めて会ったとき、私は遺跡の奥で意識を失いかけていた。魔族の罠にかかり、逃げ場を失い、朦朧とする中で目に映った光景――それは、剣を振るう少女の背と、輝く金と銀の閃光だった。まるで神話の戦乙女のような姿。私は、今でも夢のように思うことがある。
「本当に……改めて、お礼を言わせてください。私を助けてくださって、ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。命を救われただけではない。私の研究の道を閉ざすはずだった死から、未来への扉を再び開いてくれたのだ。
けれど、彼女――スプレーマムの中心にいる少女、エリーゼ=アルセリアは、微笑んで首を振った。
「助けたいと思ったから、助けただけよ」
あまりにまっすぐで、嘘がない。その言葉に、私は胸の奥を掴まれたような思いがした。
エリーゼは不思議な少女だった。桃色の髪に、どこか神聖な光を宿した金と銀の腕と脚。言葉は明るく前向きで、人を励ます力がある。だが、それだけではない。剣を握った時の鋭さ、迷いのない動き――その背後には、どれほどの修練と覚悟があるのだろう。噂では、彼女は異世界からの転生者なのだという。信じがたい話だが、あの輝きの前では、どんな物語も現実味を帯びる。
隣に座るマスキュラーは、まるで岩のような体格で、声も笑い方も大きい。一見すると粗野な剣士かと思ったが、実際には誰よりも仲間思いで、細やかな気遣いを見せる人物だった。特に私のような非戦闘員には、常に後衛に下がるように促してくれたり、危険があれば前に立ってくれたりした。
「ラフィーナ嬢よ、怖いときは怖いって言っていいんだぜ?」
大きな手で頭をぽんと撫でられた時、私は幼い頃を思い出した。守られているという実感が、こんなにも心を軽くするものなのかと。
金髪のアリスターは、第一印象こそ「ナルシスト」と言うべきだった。自分のことを「ボク」と呼び、鏡を手放さず、衣装にもこだわりが強い。しかし、彼の知識と魔術の腕前は本物であり、何よりも、古代語の読み下しや遺跡構造の推理で、私と共に熱く議論できる数少ない存在だった。
「ボクと君の専門分野がかみ合えば、古代の謎なんてすぐに解けちゃうかもね」
冗談めかした笑顔の裏で、アリスターは私の論文を真剣に読み、補足まで加えてくれた。王子として育ち、学問にも長けていたと聞く。国から追放されるほどの濡れ衣を着せられたというが、むしろその理不尽さが、彼の言葉に重みを与えていた。
そして、もうひとり――青い髪に眼鏡、どこか影を抱えた神官、ダリル=ベルトレイン。彼はほとんど口を開かず、どこか怯えるような態度で、常に周囲を観察している。けれど、彼の祈りは確かに力を持っており、私の傷を癒したのも、彼の奇跡の業だった。
「拙者など、役に立てるか分かりませぬが……」
そう言いながら、誰よりも真摯に傷者のもとに駆けつけ、祈りを捧げていた。彼の背中には、重すぎる過去があるのだろう。それでも、自らの意志でここにいて、仲間と歩いている。私には、その強さが眩しかった。
スプレーマムの四人は、それぞれに異なる過去を持っている。誰もが傷つき、裏切られ、居場所を失い、それでも前を向こうとしていた。
――そんな彼らに出会って、私はようやく知ったのだ。学者として真実を求めることと、人として誰かと歩むことは、決して相反するものではないのだと。
「私も、もう一度あの遺跡に戻りたい。真実を知りたいんです」
震える声で、そう告げた私に、彼らは何も問わずに頷いてくれた。
「なら、オレたちがついてるじゃねぇか」
「仲間として、もう一度行きましょう。今度は、万全の準備でね」
その言葉に、私は涙をこらえきれなかった。救われた命ではない。彼らは、私の“心”をも救ってくれたのだ。
あの日、遺跡の闇に囚われていた私を照らした光は、確かに四人の背にあった。彼らは伝説でも神話でもない。ただの冒険者で、ただの人間だ。けれど、私はそう思う。
――きっと、スプレーマムこそが、真に“英雄”と呼ばれるべき存在なのだと。
私は決意を新たにする。封印された空の門、その奥に眠る“異形”の正体を知るために。過去を暴く者として、未来に立ち向かう者として。
そして何より――彼らと共に、新たな伝説を刻むために。
スプレーマム――この不思議な名前のパーティが、私をあの死の間際から救ってくれたのだ。
彼らに初めて会ったとき、私は遺跡の奥で意識を失いかけていた。魔族の罠にかかり、逃げ場を失い、朦朧とする中で目に映った光景――それは、剣を振るう少女の背と、輝く金と銀の閃光だった。まるで神話の戦乙女のような姿。私は、今でも夢のように思うことがある。
「本当に……改めて、お礼を言わせてください。私を助けてくださって、ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。命を救われただけではない。私の研究の道を閉ざすはずだった死から、未来への扉を再び開いてくれたのだ。
けれど、彼女――スプレーマムの中心にいる少女、エリーゼ=アルセリアは、微笑んで首を振った。
「助けたいと思ったから、助けただけよ」
あまりにまっすぐで、嘘がない。その言葉に、私は胸の奥を掴まれたような思いがした。
エリーゼは不思議な少女だった。桃色の髪に、どこか神聖な光を宿した金と銀の腕と脚。言葉は明るく前向きで、人を励ます力がある。だが、それだけではない。剣を握った時の鋭さ、迷いのない動き――その背後には、どれほどの修練と覚悟があるのだろう。噂では、彼女は異世界からの転生者なのだという。信じがたい話だが、あの輝きの前では、どんな物語も現実味を帯びる。
隣に座るマスキュラーは、まるで岩のような体格で、声も笑い方も大きい。一見すると粗野な剣士かと思ったが、実際には誰よりも仲間思いで、細やかな気遣いを見せる人物だった。特に私のような非戦闘員には、常に後衛に下がるように促してくれたり、危険があれば前に立ってくれたりした。
「ラフィーナ嬢よ、怖いときは怖いって言っていいんだぜ?」
大きな手で頭をぽんと撫でられた時、私は幼い頃を思い出した。守られているという実感が、こんなにも心を軽くするものなのかと。
金髪のアリスターは、第一印象こそ「ナルシスト」と言うべきだった。自分のことを「ボク」と呼び、鏡を手放さず、衣装にもこだわりが強い。しかし、彼の知識と魔術の腕前は本物であり、何よりも、古代語の読み下しや遺跡構造の推理で、私と共に熱く議論できる数少ない存在だった。
「ボクと君の専門分野がかみ合えば、古代の謎なんてすぐに解けちゃうかもね」
冗談めかした笑顔の裏で、アリスターは私の論文を真剣に読み、補足まで加えてくれた。王子として育ち、学問にも長けていたと聞く。国から追放されるほどの濡れ衣を着せられたというが、むしろその理不尽さが、彼の言葉に重みを与えていた。
そして、もうひとり――青い髪に眼鏡、どこか影を抱えた神官、ダリル=ベルトレイン。彼はほとんど口を開かず、どこか怯えるような態度で、常に周囲を観察している。けれど、彼の祈りは確かに力を持っており、私の傷を癒したのも、彼の奇跡の業だった。
「拙者など、役に立てるか分かりませぬが……」
そう言いながら、誰よりも真摯に傷者のもとに駆けつけ、祈りを捧げていた。彼の背中には、重すぎる過去があるのだろう。それでも、自らの意志でここにいて、仲間と歩いている。私には、その強さが眩しかった。
スプレーマムの四人は、それぞれに異なる過去を持っている。誰もが傷つき、裏切られ、居場所を失い、それでも前を向こうとしていた。
――そんな彼らに出会って、私はようやく知ったのだ。学者として真実を求めることと、人として誰かと歩むことは、決して相反するものではないのだと。
「私も、もう一度あの遺跡に戻りたい。真実を知りたいんです」
震える声で、そう告げた私に、彼らは何も問わずに頷いてくれた。
「なら、オレたちがついてるじゃねぇか」
「仲間として、もう一度行きましょう。今度は、万全の準備でね」
その言葉に、私は涙をこらえきれなかった。救われた命ではない。彼らは、私の“心”をも救ってくれたのだ。
あの日、遺跡の闇に囚われていた私を照らした光は、確かに四人の背にあった。彼らは伝説でも神話でもない。ただの冒険者で、ただの人間だ。けれど、私はそう思う。
――きっと、スプレーマムこそが、真に“英雄”と呼ばれるべき存在なのだと。
私は決意を新たにする。封印された空の門、その奥に眠る“異形”の正体を知るために。過去を暴く者として、未来に立ち向かう者として。
そして何より――彼らと共に、新たな伝説を刻むために。
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