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第91話 クラリスの声 真実は、まだすべて明かされていない
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【天の光と新たなる導き】――クラリスの声、そして、新たな旅立ちへ
淡い光が、そっと空間を満たしていく。耳に届いたのは、どこか懐かしく、けれども凛とした――優しい女性の声だった。
「みなさん、お疲れさまでした」
その声とともに、ひとりの女性の姿が現れる。淡い桃色の髪がふわりと揺れ、白い儀式衣を身に纏った彼女は、まるで月光そのもののように静謐な光を放っていた。
「クラリスさん……!」
最初にその名を呼んだのは、エリーゼだった。かつて冤罪の中で出会い、心を通わせた聖女。その幻影が、今、確かな想いとともに目の前に現れている。
「でも……真実は、まだすべて明かされていないのです」
クラリスが手を差し伸べると、空間に光球が浮かび上がり、空中に幻影の地図を描き出した。そこには岩宿ダンジョンを中心に、聖教国から北東に広がる大地が示されている。
「岩宿ダンジョンに眠る封印の鍵――その行方、その封印の鍵は確かに受け継がれました。わたしの後を継ぐ、新たな聖女によって。彼女は……今、新たな王国を滅ぼすために北東にある国で工作中です」
「封印の鍵……?」
アリスターが目を細める。
「この鍵は、“神の力を封じる者”の意志が宿った、世界を閉ざす鎖のひとつ。この封印が解かれれば――かつて滅ぼされたはずの、古代の悪魔が復活してしまうのです」
「なるほどな……つまり、その鍵を狙ってる奴がいるってわけか」
マスキュラが低く唸る。
クラリスの表情が曇る。
「ええ。その存在に気づいた者がいます。魔族は悪魔を蘇られ、自分たちの配下にしようとしているのです」
しばしの沈黙。そして、吐き出すように名前が紡がれる。
「魔族に協力しているのは、セレスティア。わたしと共に神に仕え、姉妹のように育った聖女です」
その名に、ダリルが激しく反応した。
「セレスティア……!? 嘘だ……あの方は、誰よりも敬虔で……!」
だがクラリスは、目を伏せたまま首を振った。
「彼女は……神の力では妹の病気が治らないと、そこで魔族の力を縋ったのです。彼女の妹の病気は治りました。しかし、彼女の妹は、魔族と同化し、魔族になったのです。そして、妹は隣国の公爵家の娘になりすまし、隣国の王妃になろうとしているのです」
「え?それってまさか」
アリスターが唇を噛む。
「テオドリック帝国なのか……」
「……はい。そして今、セレスティアは、魔族と取引をし、妹が王妃になり、テオドリック帝国を支配することを条件に鍵の封印を解くことで契約を交わしたのです」
その国名を聞いて、エリーゼがはっと顔を上げる。
「テオドリック帝国……!」
すぐさま、アリスターが苦々しげに口を開いた。
「そこは、ボクの祖国だよ。かつて王子として生まれ、婚約を破棄され、王族の座を追われ、国外追放された――そんな場所さ、そして、すべての元凶がセレスティアと妹の仕業……」
「優秀すぎる兄は魔族の存在に気が付く可能性が高いから排除し、弟と婚約したのか。アリスター、追い出された故郷に、また足を踏み入れるのか?」
マスキュラが片眉を上げ、肩をすくめた。
クラリスは、そんな彼ら一人ひとりに視線を巡らせる。まるで、その魂を見つめるように、静かに、深く。
「みなさん……どうか、セレスティアを止めてください。そして、岩宿に眠る鍵を守り、再び封印し直してほしいのです」
声は微かに震えていた。それでも、瞳はまっすぐだった。
「それが、わたしに託された最後の使命。神の名のもとに、そして人の未来のために……お願いします」
ダリルが、胸元の神官服に手を当て、深く頭を垂れる。
「……必ずや、その御意思、拙者たちが果たしましょう。クラリス殿の名誉にかけて」
クラリスの唇が、柔らかくほころぶ。
「ありがとう……ダリルさん。そしてみなさん……。これで、わたしもようやく――」
その言葉とともに、彼女の身体は徐々に光へと還り始めていた。輪郭が淡くなり、身体の一部が空気に溶けていくように消えていく。
「クラリスさん!」
エリーゼが手を伸ばす。だが、その手は空をすり抜け、何も掴めなかった。
「もう……大丈夫。あなたたちが、この世界を導いてくれるから……わたしは、天に還ります」
光の柱が天へと伸び、その中にクラリスの姿が溶けていく。
その表情は、もはや悲しみに染まってはいなかった。
――ただ、穏やかに、あたたかく。安らぎに包まれた者の笑みだった。
そして、最後に残されたのは、風に乗って響く、微かな声。
「……真実は、まだ終わらない。どうか……正しい心で」
その言葉を胸に刻み、スプレーマムの四人は静かに顔を見合わせた。
新たなる導きが示す道は、皮肉にも過去と向き合う旅路。
だがその先に、希望があると信じて――彼らは歩み出す。
淡い光が、そっと空間を満たしていく。耳に届いたのは、どこか懐かしく、けれども凛とした――優しい女性の声だった。
「みなさん、お疲れさまでした」
その声とともに、ひとりの女性の姿が現れる。淡い桃色の髪がふわりと揺れ、白い儀式衣を身に纏った彼女は、まるで月光そのもののように静謐な光を放っていた。
「クラリスさん……!」
最初にその名を呼んだのは、エリーゼだった。かつて冤罪の中で出会い、心を通わせた聖女。その幻影が、今、確かな想いとともに目の前に現れている。
「でも……真実は、まだすべて明かされていないのです」
クラリスが手を差し伸べると、空間に光球が浮かび上がり、空中に幻影の地図を描き出した。そこには岩宿ダンジョンを中心に、聖教国から北東に広がる大地が示されている。
「岩宿ダンジョンに眠る封印の鍵――その行方、その封印の鍵は確かに受け継がれました。わたしの後を継ぐ、新たな聖女によって。彼女は……今、新たな王国を滅ぼすために北東にある国で工作中です」
「封印の鍵……?」
アリスターが目を細める。
「この鍵は、“神の力を封じる者”の意志が宿った、世界を閉ざす鎖のひとつ。この封印が解かれれば――かつて滅ぼされたはずの、古代の悪魔が復活してしまうのです」
「なるほどな……つまり、その鍵を狙ってる奴がいるってわけか」
マスキュラが低く唸る。
クラリスの表情が曇る。
「ええ。その存在に気づいた者がいます。魔族は悪魔を蘇られ、自分たちの配下にしようとしているのです」
しばしの沈黙。そして、吐き出すように名前が紡がれる。
「魔族に協力しているのは、セレスティア。わたしと共に神に仕え、姉妹のように育った聖女です」
その名に、ダリルが激しく反応した。
「セレスティア……!? 嘘だ……あの方は、誰よりも敬虔で……!」
だがクラリスは、目を伏せたまま首を振った。
「彼女は……神の力では妹の病気が治らないと、そこで魔族の力を縋ったのです。彼女の妹の病気は治りました。しかし、彼女の妹は、魔族と同化し、魔族になったのです。そして、妹は隣国の公爵家の娘になりすまし、隣国の王妃になろうとしているのです」
「え?それってまさか」
アリスターが唇を噛む。
「テオドリック帝国なのか……」
「……はい。そして今、セレスティアは、魔族と取引をし、妹が王妃になり、テオドリック帝国を支配することを条件に鍵の封印を解くことで契約を交わしたのです」
その国名を聞いて、エリーゼがはっと顔を上げる。
「テオドリック帝国……!」
すぐさま、アリスターが苦々しげに口を開いた。
「そこは、ボクの祖国だよ。かつて王子として生まれ、婚約を破棄され、王族の座を追われ、国外追放された――そんな場所さ、そして、すべての元凶がセレスティアと妹の仕業……」
「優秀すぎる兄は魔族の存在に気が付く可能性が高いから排除し、弟と婚約したのか。アリスター、追い出された故郷に、また足を踏み入れるのか?」
マスキュラが片眉を上げ、肩をすくめた。
クラリスは、そんな彼ら一人ひとりに視線を巡らせる。まるで、その魂を見つめるように、静かに、深く。
「みなさん……どうか、セレスティアを止めてください。そして、岩宿に眠る鍵を守り、再び封印し直してほしいのです」
声は微かに震えていた。それでも、瞳はまっすぐだった。
「それが、わたしに託された最後の使命。神の名のもとに、そして人の未来のために……お願いします」
ダリルが、胸元の神官服に手を当て、深く頭を垂れる。
「……必ずや、その御意思、拙者たちが果たしましょう。クラリス殿の名誉にかけて」
クラリスの唇が、柔らかくほころぶ。
「ありがとう……ダリルさん。そしてみなさん……。これで、わたしもようやく――」
その言葉とともに、彼女の身体は徐々に光へと還り始めていた。輪郭が淡くなり、身体の一部が空気に溶けていくように消えていく。
「クラリスさん!」
エリーゼが手を伸ばす。だが、その手は空をすり抜け、何も掴めなかった。
「もう……大丈夫。あなたたちが、この世界を導いてくれるから……わたしは、天に還ります」
光の柱が天へと伸び、その中にクラリスの姿が溶けていく。
その表情は、もはや悲しみに染まってはいなかった。
――ただ、穏やかに、あたたかく。安らぎに包まれた者の笑みだった。
そして、最後に残されたのは、風に乗って響く、微かな声。
「……真実は、まだ終わらない。どうか……正しい心で」
その言葉を胸に刻み、スプレーマムの四人は静かに顔を見合わせた。
新たなる導きが示す道は、皮肉にも過去と向き合う旅路。
だがその先に、希望があると信じて――彼らは歩み出す。
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