婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス

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第147話 即位式・暁の戴冠 だって今日は、その始まりの日だもん

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『偽りの婚礼』終章補:即位式・暁の戴冠
城都リュミエール――再建途中の王城広場には、夜明け前から多くの人々が詰めかけていた。
かつて悪魔が召喚されたこの地で、新たな王が即位するという事実は、希望の象徴に他ならなかった。

「……随分と集まったな。まるで、国が“もう一度始まる”のを待ちわびてたみてぇだ」

マスキュラーが呟き、エリーゼがそっと笑う。

「うん。だって今日は、その始まりの日だもん」

王城の玉座の間――いや、仮設の式典台に立つアリスターは、純白と深紅の王衣を身に纏い、黄金の冠を前にしていた。
その表情は、かつての自信家な微笑とは違う。
重責と、仲間と、民と、そして過去に向き合う者の、確かな覚悟を宿していた。

「アリスター=ヴァン=テオドリック殿下」

式典を司る老宰相が、その名を高らかに告げる。
場が静まり返り、鳥すらもその羽ばたきを忘れたかのような空白の時間が流れる。

「貴殿は、王家の血を引きながら、かつてその座を奪われ、追放されました。
だが今、国と民は貴殿を――『真なる王』として迎えようとしています」

アリスターはゆっくりと膝をついた。
冠を掲げたのは、かつて彼を庇い、今も忠誠を誓う叔父、アルスラーン・ヴァン・テオドリック公爵だった。

「汝、アリスター。テオドリックの名において、この国と人々を導くことを誓うか?」

「――誓う」

その一言に、誰よりも真っ直ぐな意思が込められていた。

「民の声に耳を傾け、正しき剣と知恵をもって国を護り抜くことを誓うか?」

「誓うとも」

アルスラーンが、かつて父王が身につけていた冠を掲げ、ゆっくりとアリスターの頭上に乗せた。

「この瞬間より、汝はテオドリック王国第十三代国王――
アリスター=ヴァン=テオドリック陛下である!」

――歓声。

地を震わせるほどの歓喜と祝福の嵐が、城の広場を揺らした。
兵士たちが剣を掲げ、民は帽子を空に放り投げ、鐘が鳴り響く。
それは、敗北からの復活を告げる“鐘の音”だった。

「……はぁ。こうなるとは思ってたけど、やっぱり重いな、王冠ってのは」

式典後、控室に戻ったアリスターは冠を外し、天井を見上げた。

「でもさ。ボク、やっとスタート地点に立てた気がする」

「そのとおりだ、陛下」

アルスラーンが笑う。

「お前は血筋だけでなく、行動で“王の資格”を勝ち取った。これからは、共に国を建て直していこう」

「もちろん。ボク一人じゃ、絶対無理だもんね。……それに」

アリスターは扉の外に目をやる。

「――ボクには仲間がいる。誰よりも頼れる仲間が」

扉の向こうで待っていたスプレーマムの面々――エリーゼ、マスキュラー、ダリルが、一斉に顔を上げた。

「やれやれ、国王陛下になっても“ボク”って一人称は変わらねぇのな」

「いや、それでこそアリスター殿だ。……拙者は感無量でござる」

「ふふっ、さぁ、王様。まずは民の前でスピーチしなくちゃ」

広場に戻ったアリスターは、再び民衆の前に立つ。

「……みんな、ありがとう」

彼の声は、静かだったが、よく通った。

「ボクは、一度この国から捨てられた。王族としても、人間としても。
でも、そんなボクを信じてくれた仲間がいて……そして、もう一度信じてくれた民がいる。
だから、ボクは誓うよ。もう、誰一人、理不尽に泣かせたりしない。
この国は、ボクだけのものじゃない。みんなの国だ!」

再び、歓声。

それはもはや単なる祝福ではなかった。
一人の若き王と、その仲間たちに託された“未来”への希望だった。

高く昇った太陽が、王冠を金に輝かせる。
アリスターの背後には、仲間たちがいた。
そして彼の前には、国の未来が広がっていた。

彼の物語は、まだ終わらない。
それは――新たな時代の夜明けにすぎなかった。







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