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第169話 アリスターの怒りぷんぷん ボクは怒っているんです!
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翌朝、王都テオドリック城の謁見の間には緊張が走っていた。
重厚な扉が音を立てて閉まり、王の間に招かれたのは、マスキュラ―とレオナの二人。そして側近として立ち会うエリーゼとダリル。そして、王位に就いたばかりのアリスター・テオドリック陛下が、静かに玉座に座していた。
「……よく来てくれたね。突然の招集、すまない」
アリスターは穏やかな声音で口を開いたが、その表情には普段の柔和な微笑みはなかった。代わりに、寝不足の隈がうっすらと浮かび、苛立ちを隠しきれない。
「さて――いきなり本題に入ろう」
声色が鋭くなる。
「君たちは、国を出るつもりなんだってね?」
マスキュラ―とレオナが顔を見合わせ、うなずいた。
「はい。アリスター陛下、俺たちは――」
「政治的な目的かい?」
アリスターが言葉を遮った。
「貴族と平民の垣根を超える行動の裏に、魔族の動きを探るような、何か大義があると……ボクは、そう思っていたよ」
マスキュラ―が眉をひそめ、口を開く。
「違います。……俺たちは、ただ……」
「恋仲になっただけです」
レオナが堂々と口にした。
「彼とは、もう離れられない。……それだけです」
一瞬、謁見の間が静まり返る。
「……え?」
アリスターの声が抜けたように漏れた。
「本当に……そうなの?」
問いかける声には、必死さすら滲んでいた。
「昨日、ボク、一睡もしてないんだけど……?」
エリーゼが思わず咳払いをして目を伏せる。ダリルは冷や汗を垂らしている。
「二人に何か、陰謀とか策略とか、裏があるのかと思って、ずっと考えてたんだよ?」
アリスターは立ち上がった。
「ねえ、マスキュラ―。レオナ。本当に、君たち……好きなの?」
「……はい。彼女なしの生活なんて、考えられない」
マスキュラ―が真っ直ぐに答える。
「わたしも。マスキュラ―と一緒にいると、生きていると実感できるの」
レオナも続けた。
その瞬間、アリスターはぐるりと回って玉座の背に手を置き、天を仰いだ。
そして、ふいにくるりと振り返った。
「……はい。王命、出します」
謁見の間にいた全員が目を見開いた。
「マスキュラ―は、アルスラーン・ヴァン・テオドリック公爵の養子になります。そして、エルドリッジ家に婿養子として迎えられ、レオナと結婚する。これは、正式な王命です。わかってますね?」
「なっ……! いや、ちょっと待ってくれ陛下! そんな……!」
マスキュラ―が慌てて口を挟もうとするが、アリスターは続けた。
その目に、怒りと――困惑と――一抹の羞恥が混じる。
「ボクは怒っているんです!」
その声に全員が沈黙した。
静かに、しかし重く放たれた言葉に、マスキュラ―とレオナが顔を上げる。
「怒っているんです。なぜか? それは、昨夜、夫婦の危機が起きたからです」
エリーゼが、はっと目を見開いた。
「その原因は──あなたたちにあります!」
アリスターは指を突きつけた。
「ボクは、今まで、あなたたちの気持ちに沿って様子を見ようと思っていました。二人が互いを新たな世界に行こうとすることには、きっとそれなりの理由があるのだろうと。しかし、昨夜、それではいけないと悟りました。このままでは、ボクたち夫婦にひびが入ります!」
エリーゼは頬を染めつつも、どこか誇らしげに見つめている。
「だから、王として決断します」
アリスターは玉座の階段を一段踏み下ろした。
「王命です。マスキュラ―は公爵令息として、エルドリッジ家に婿入りして、正式にレオナと結婚してください!」
部屋に沈黙が落ちた。
しばらくして、ダリルがぽつりと呟いた。
「……これは、王命という名の、最高の祝福では?」
レオナの瞳に涙が浮かぶ。
「……本当に……いいの?」
「当然でしょう。ボクは、君たちが好きだ。仲間として、大切な家族として……」
アリスターは、ゆっくりと階段を下り、二人の前に立つ。
「……だから、幸せになれ。堂々と、この国でな」
マスキュラ―は、まっすぐアリスターを見た。
「……陛下。……いや、アリスター。本当に、ありがとう」
「礼は要らない。その代わり、式は盛大にやろうね。ボクとエリーゼが喧嘩した元凶なのだから、当然主役級の責任があるからね?」
「えぇっ!?」
レオナとマスキュラ―の声が揃って上がった。
エリーゼが笑う。
「ふふ、でも良かった。おめでとう、二人とも」
そして、ダリルも静かにうなずいた。
「……愛は、試練を越えてこそ真実となる」
その言葉に、誰もが微笑んだ。
王の決断は、王国の制度と心の距離を一つ近づけた。
それは、ただの命令ではなかった。絆の証であり、未来を切り開く一歩。
そして、王とその仲間たちの新たな物語の、幕開けでもあった。
重厚な扉が音を立てて閉まり、王の間に招かれたのは、マスキュラ―とレオナの二人。そして側近として立ち会うエリーゼとダリル。そして、王位に就いたばかりのアリスター・テオドリック陛下が、静かに玉座に座していた。
「……よく来てくれたね。突然の招集、すまない」
アリスターは穏やかな声音で口を開いたが、その表情には普段の柔和な微笑みはなかった。代わりに、寝不足の隈がうっすらと浮かび、苛立ちを隠しきれない。
「さて――いきなり本題に入ろう」
声色が鋭くなる。
「君たちは、国を出るつもりなんだってね?」
マスキュラ―とレオナが顔を見合わせ、うなずいた。
「はい。アリスター陛下、俺たちは――」
「政治的な目的かい?」
アリスターが言葉を遮った。
「貴族と平民の垣根を超える行動の裏に、魔族の動きを探るような、何か大義があると……ボクは、そう思っていたよ」
マスキュラ―が眉をひそめ、口を開く。
「違います。……俺たちは、ただ……」
「恋仲になっただけです」
レオナが堂々と口にした。
「彼とは、もう離れられない。……それだけです」
一瞬、謁見の間が静まり返る。
「……え?」
アリスターの声が抜けたように漏れた。
「本当に……そうなの?」
問いかける声には、必死さすら滲んでいた。
「昨日、ボク、一睡もしてないんだけど……?」
エリーゼが思わず咳払いをして目を伏せる。ダリルは冷や汗を垂らしている。
「二人に何か、陰謀とか策略とか、裏があるのかと思って、ずっと考えてたんだよ?」
アリスターは立ち上がった。
「ねえ、マスキュラ―。レオナ。本当に、君たち……好きなの?」
「……はい。彼女なしの生活なんて、考えられない」
マスキュラ―が真っ直ぐに答える。
「わたしも。マスキュラ―と一緒にいると、生きていると実感できるの」
レオナも続けた。
その瞬間、アリスターはぐるりと回って玉座の背に手を置き、天を仰いだ。
そして、ふいにくるりと振り返った。
「……はい。王命、出します」
謁見の間にいた全員が目を見開いた。
「マスキュラ―は、アルスラーン・ヴァン・テオドリック公爵の養子になります。そして、エルドリッジ家に婿養子として迎えられ、レオナと結婚する。これは、正式な王命です。わかってますね?」
「なっ……! いや、ちょっと待ってくれ陛下! そんな……!」
マスキュラ―が慌てて口を挟もうとするが、アリスターは続けた。
その目に、怒りと――困惑と――一抹の羞恥が混じる。
「ボクは怒っているんです!」
その声に全員が沈黙した。
静かに、しかし重く放たれた言葉に、マスキュラ―とレオナが顔を上げる。
「怒っているんです。なぜか? それは、昨夜、夫婦の危機が起きたからです」
エリーゼが、はっと目を見開いた。
「その原因は──あなたたちにあります!」
アリスターは指を突きつけた。
「ボクは、今まで、あなたたちの気持ちに沿って様子を見ようと思っていました。二人が互いを新たな世界に行こうとすることには、きっとそれなりの理由があるのだろうと。しかし、昨夜、それではいけないと悟りました。このままでは、ボクたち夫婦にひびが入ります!」
エリーゼは頬を染めつつも、どこか誇らしげに見つめている。
「だから、王として決断します」
アリスターは玉座の階段を一段踏み下ろした。
「王命です。マスキュラ―は公爵令息として、エルドリッジ家に婿入りして、正式にレオナと結婚してください!」
部屋に沈黙が落ちた。
しばらくして、ダリルがぽつりと呟いた。
「……これは、王命という名の、最高の祝福では?」
レオナの瞳に涙が浮かぶ。
「……本当に……いいの?」
「当然でしょう。ボクは、君たちが好きだ。仲間として、大切な家族として……」
アリスターは、ゆっくりと階段を下り、二人の前に立つ。
「……だから、幸せになれ。堂々と、この国でな」
マスキュラ―は、まっすぐアリスターを見た。
「……陛下。……いや、アリスター。本当に、ありがとう」
「礼は要らない。その代わり、式は盛大にやろうね。ボクとエリーゼが喧嘩した元凶なのだから、当然主役級の責任があるからね?」
「えぇっ!?」
レオナとマスキュラ―の声が揃って上がった。
エリーゼが笑う。
「ふふ、でも良かった。おめでとう、二人とも」
そして、ダリルも静かにうなずいた。
「……愛は、試練を越えてこそ真実となる」
その言葉に、誰もが微笑んだ。
王の決断は、王国の制度と心の距離を一つ近づけた。
それは、ただの命令ではなかった。絆の証であり、未来を切り開く一歩。
そして、王とその仲間たちの新たな物語の、幕開けでもあった。
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