婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス

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第171話 シャルル元王子、エリーゼと謁見する

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 テオドリック王国・王城正門。

一際豪奢な馬車が、石畳の上に誇らしげな音を鳴らして止まった。
濃紺のタキシードに身を包んだ若者が、ゆったりと降り立つ。
艶やかな青髪をなびかせ、手鏡で己の横顔を確認しながら。

「ふむ、美しい。今日のオレ様も完璧だな」

――シャルル=レインハルト。

かつて隣国レインハルト王国の第一王子だった男は、今や子爵家へ婿養子予定の貴族。
だが彼の自尊心は欠けることなく、いやむしろかつて以上に肥大していた。

「よいか、従者たち。余の言葉は一字一句漏らすなよ。ここからは魅力と威厳の戦いだ」

従者たちは呆れた顔を隠しつつ、頷く。

王城の重厚な門が開かれ、銀髪の近衛騎士が案内に現れた。

「レインハルト家、元第一王子シャルル=レインハルト殿。陛下が謁見をお許しになられました」

「当然だ。オレ様はこの地の王妃を迎えに来たのだからな」

騎士は一瞬、目を細めたが何も言わず、先に立って歩き出す。
その背を追い、シャルルは胸を張って歩いた。

豪華な謁見の間。
玉座には金髪の青年――国王アリスターが、薄く笑んで座っていた。
その傍らに並ぶのは、桃色の長髪を結い上げた女剣士。剣聖エリーゼ。

シャルルの瞳が煌めいた。

「やあ、エリーゼ。久しぶりだな。……その麗しさ、変わっていないな」

「……」

エリーゼは無言で首を傾げた。

「おや、覚えていないのか? かつて共に剣を振るい、夜空を語ったこのオレ様を」

「ごめんなさい、誰でしたっけ」

その言葉に、場が静まり返った。

シャルルの顔が引き攣る。

「な、何を言っている……オレ様だぞ? お前の、未来の旦那様が迎えに来てやったというのに……!」

アリスターが笑った。
それは冷笑でもなく、ただただ「面白いものを見た」という笑みだった。

「来訪は歓迎するよ、シャルル=レインハルト殿。だが……我が妻に失礼な真似は慎んでもらおうか」

「妻……? それは名ばかりの王妃という意味だろう? 真に彼女の心を知るのはオレ様だ。……なあ、エリーゼ。思い出してくれ、あの春の庭園で交わした言葉を」

「春の庭園……ああ、思い出した」

エリーゼが微笑む。
シャルルの顔に希望の色が差す。

「私が、“婚約者だからって私の剣の道に口出ししないでください”って言った日ですね?」

「え……?」

「そしてあなたが“女の子が剣を振るなんて見苦しい”って笑ったから、私、あなたと木剣で勝負してぼこぼこにしたことかしら。手加減できなくて、ごめんなさいね」

「ま、待て……」

「その後、父に泣きついたら、“お前に王子の資格はない”って叱られたんですよね。あれも痛快でした」

シャルルは青ざめた。
まさか、過去を“そんな風に”覚えられていたとは。

「オレ様を……そんな目で見ていたのか……?」

「ええ、正直なところ、周囲の人たちはあなたに上手に負ける方法を考えていましたからね。弱すぎてわざと負けるのも一苦労だったようでしたから」

アリスターが肩をすくめた。

「王妃に迷惑をかける来訪者には、国王として対処せねばならないね。シャルル=レインハルト殿、君は王位継承権をはく奪された理由があると聞くが……」

「貴様……っ、王のくせに、何を偉そうに……!」

「偉そうも何も、私は君とは違って“ちゃんと国民の支持を得て”王になったのでね。比べられても困るんだよ、元王子くん」

シャルルの顔が真っ赤になった。
だが反論はできない。
何故なら、この場にいる全ての人間が“アリスターこそ相応しき王”だと認めているのだから。

「……ふん。いいだろう。だが、覚えていろ! この屈辱、必ず晴らしてみせる!」

「シャルル。君は愚かすぎるね。それはこの国にとっては好都合だけどね」

エリーゼが一歩、前に出て、微笑む。

「“元王子”様。これからが楽しみですわね」

にっこちと笑顔を見せるエリーゼはこれからの展開が打ち合わせ通り過ぎて、思わず笑みを浮かべてしまった。
 シャルルは顔を真っ赤にしてエリーゼに侮辱した。

「エリーゼ、お前と婚約破棄して追放して正解だったよ。姉のカリーナの方がずっと良い女だよ」

エリーゼは姉の名前が出たことに思わず、驚いた。そして、この場でまさか、婚約破棄と追放だというなんと、ちらりとアリスターを見ると、彼が微かに震えているのがみえた。
こ、これは……
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