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第二章 工業都市ボルドー
2-38 仇敵との対談
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かつては殺し合った相手との対談当日、時刻は正午前。
商業区大通沿いにある小綺麗な喫茶店で、現在時間潰しの真っ最中である。
午前中の早い時間に服や靴を買い揃え、その足でマルトとの待ち合わせ場所にきている。待ち合わせ時間より早いため、相手はまだ到着していない。
万が一敵対行動をとられた時のために建物の構造、周囲環境等を叩き込んでおきたかったので、待つ分には問題ないけど……これってアレだな。
(恋人と待ち合わせしてるみたいだってか?)
(はんっ。何を馬鹿なことを)
嘲笑を刻んだギルタブのお言葉が突き刺さるけど、デートみたいじゃない? 年の差凄いし、胸の高鳴りも期待でドキドキというより緊張でバクバクって感じだけどさ。
襲撃の一件が無ければ天にも昇る気持ちになるのに。全く、ままならないもんだ。
「──悪い、待たせてしまったかな」
「いや、丁度今きたところ」
声を掛けられ顔を上げると、そこには若葉色の美女がいた。
上下ともにジャスミンイエローで揃えた彼女は、格好こそ町娘そのものだが、簡素な服がかえって彼女の端麗な容姿を引き立てている。美人は何を着ても絵になるということか。というか、他の客から滅茶苦茶注目されていた。
「そう、良かった。昼食を食べながら話そうか」
独り占めしている視線の一切を無視して円形テーブルの席に腰を下ろし、マルトは店員を呼び寄せ注文を行う。
俺も乗じて追加を注文するが、小洒落たこの店にはガッツリ系の食べ物は無い。以前食べた窯焼き平パンがこのお店にもあったので、それとサラダで我慢しておこう。
それにしても──。
「──今日はあの長剣を持ってこなかったんだな」
「君を警戒させても仕方が無いからね。私なりの意思表示だよ」
マルトは丸腰だった。
昨日付けていた手甲や脛当ても外しているし、殆ど武装解除しているといってよい状態だ。事前に対策練りまくり、その上完全武装な俺とは大違いじゃないですか。
(油断はしないで下さいね。ただでさえロウは、女性が相手だと鼻の下を伸ばしやすいのですから)
え、マジで? と思い顔をペタペタ触って己をチェック。マルトに小首を傾げられたが我が顔面に不具合は見つからなかった。
貴様、鎌をかけよったか!
(全く、分かりやすいくらいくテンションが高いですね。はぁ……)
(おいロウ、これ以上ギルタブが不機嫌になる前にさっさと話しを進めるんだ)
へいへい。こいつら同伴な限りは、デート気分なんて味わえそうもないな。
「仲良く世間話って間柄でもないし本題に入りたいんだけど、俺からマルトさんに聞きたいことは一つしかないし、そっちの話が済んでからでいい。昨日の時点で所属と目的は十分わかったからな」
「分かった。……君からさん付けで呼ばれても違和感があるから、呼び捨てで良いよ」
「それじゃ遠慮なく。でも俺くらいの子供から呼び捨てにされるのって、抵抗があるんじゃない?」
「主従を結んでいるとよくあることだから、特に感じることもないかな。それに、君は口調も随分砕けているし」
言われて気が付く話し方。出会いが出会いだから取り繕う必要なかったし、そのせいだろうか。
「今更変えても違和感が残りそうだし、このままでいかせてくれ」
タメ口許可証を頂いたところで、料理が届く。彼女は平たいフォカッチャっぽいものに、野菜がたくさん入ったスープとサラダ。こっちと似たようなもんか。
俺の窯焼き平パンは、玉ねぎとマッシュポテト、薄切りのチキンを散らし、それらの上に香りのよいバジルソースとチーズをトッピングしてある、実に旨そうな逸品だ。所々に半切りで飾ってある、アクセントのオリーブの実も良い。温かいうちに頂こう。
「うむ。旨い。窯焼き平パンはトマトソースのイメージだけど、バジルソースもよく合うな」
「……それ、美味しそうだね。一つ頂けないかな?」
「どうぞどうぞ。そっちの平パンも美味しそうだ。ちょっとくれよ」
「ええ。ナイフで切るから少し待って」
そう言いつつ、テーブルの上のナイフで目にもとまらぬ斬撃を数閃させるマルト。平パンは見事に八等分となったが、猟奇的である。
「今の、皿まで切れてない? 大丈夫?」
「大丈夫……ん、君、頬に何かついているよ」
「マジ? どの辺?」
「待って。取れた、玉ねぎだったか。うん、美味しい」
年上のお姉さんに食べかすの位置を聞いたら、拭われた上に食べられてしまったでござる。
そんなことされるとなんだか本格的にデートみたいな気がしてきて、無性にドキドキしちゃうわ。
落ち着け、深呼吸だ。ひっひっふー。
((イチャイチャかっッ!))
◇◆◇◆
閑話休題。
「──それで、君はボルドーへ来たと? 確かに、君程の腕なら生活に困らないくらいは稼げるだろうけれど」
「あの時は仮面を外してたから別邸にいた衛兵に顔見られてたし、誘拐の実行犯として指名手配受けたと思ってたからな。ボルドーもサクッと稼いだ後は、他所に行こうかと思ってたし」
現在、マルトにリマージュからボルドーへ拠点を移した事情を説明中。
向こうとしても、ムスターファ邸宅で俺と遭遇したことは想定外だったことだろう。
「そう……こちらが大きく考えすぎていただけか」
彼女は目を瞑り眉を寄せて大きく息をつく。その様子は安堵したというより、取り越し苦労を嘆く感じだ。
「一体どんな想像してたんだ?」
「お嬢様の特殊な境遇を利用し、公爵家を陥れようとする企み。蓋を開けてみれば、何のことは無かったけれど」
「なるほどねえ。そういえば、誘拐依頼の時もそういう話をチラリと聞いたか」
依頼内容が公爵家令嬢の誘拐という危険なものだったため、俺は団長のルーカスに詳細を問うていた。
その時に公爵家がきな臭いという情報がどうだこうだ言っていた……はずだ。地球時代の記憶が混ざる前の話だし、もはやうろ覚えだけど。
「君の力は尋常じゃなかったから、子爵の企みに賛同する力ある者と考えたのだけれど……裏が無いならそれが一番かな」
優美な所作で紅茶を含みマルトは語る。周囲の客や従業員がうっとりするほどに、その所作は洗練されていた。つまり町娘風の変装が台無しである。
「こほん。俺の事情は大体こんなもんだ。聞きたいことが済んだならこっちの質問と行きたいんだけど、どう?」
「細かい点は幾つかあるけれど、この場で全て聞くようなことでも無い。君の質問とは?」
「たった一つだ──あんたが襲撃の時に殺した、俺の仲間の詳細を教えてほしい」
俺自身の心の内、装飾を排した言葉を伝える。
「別に俺の仲間を何人殺していようが、今ここに居るあんたに危害を加えることは無い。ただ、自分の気持ちに折り合いを付けたいっていうことと、後はあいつらの墓を作った時に仇取れないことを謝りたいっていうこと。それだけだ」
あの襲撃の時、仮にこの女が直接手を下さずとも周りの連中が殺していただろうし、襲撃依頼が成立した時点でバルバロイの壊滅は決定づけられていた。
無論、思うところはあるが……。こうして関係性ができてしまった以上、それを飲み込んで付き合うしかないだろう。
こいつを八つ裂きにしたところで何かが変わるわけでもなし。公爵家の恨みを買うだけだ。
何より、彼女はこちらの行ったエスリウ誘拐について見逃すと言っている。
ただでさえ元盗賊の人外という人目を忍ばねばならない身分なのだから、そこに誘拐犯という肩書が加わらないのならもろ手を上げて喜ぶべきだ。
「……私が手を下したものはいないよ。あの時、襲撃側にも被害が出ていた方が、後で私が始末する時に楽が出来ると考えていたからね。結局のところ、君の仲間の殺害に加担した事には変わりは無いのだけれど」
そうやって怒りと理性との狭間で煩悶としつつ返答を待っていたが、彼女が吐いた言葉は予想に反したものだった。
確かに彼女は子爵の手勢を襲撃する目的があったのだから、消耗していた方が……。って、襲撃者は雇われだから、子爵の手勢ではないのか。
ということは、こいつも襲撃に関わるものは皆殺しの予定だった、のか?
やっぱりこいつやべー奴だわ!
「そうか。墓の前で詫びずに済んでホッとしたよ」
「信じるの? 私が君から恨みを買わないようにするために嘘を吐いているとは考えないの?」
脳内での動揺を押し殺して言葉を受け取ると、マルトは怪訝そうな表情を作る。
「事実の究明なんて出来ないだろ、当事者があんたしかいないんだから。それなら疑ったり憎んだり不毛なエネルギーを溜め込むより、相手の言い分を信じた方が建設的だ」
ついでに、美人を恨むのも抵抗あるし。
(ロウにとってはそのついでこそが大きいのではないですか?)
脳内でおどけると、しばらくだんまり状態だった黒刀より突っ込みを頂いてしまった。
建前でこう伝えているけど、一応バルバロイ襲撃での唯一の生存者であるディエラに、襲撃時の詳細を聞いてみようとは考えている。そういうところまでマルトに話す必要はないだろう。
元々皆殺しの予定だったみたいだし、口封じなんて手段をとられても困るし。
(表では信用すると言いながら、裏では事実を解明せんとする。お前さん、意外と強かなところがあるよな)
銀刀からもお言葉頂戴。二枚舌三枚舌なんて人間の基本装備だぞ。ガハハハ。
「そう……信じてくれて、ありがとう。礼を言うのも変なことだけれど」
俺の言葉を咀嚼したマルトは眼を何度か瞬かせ、頭を下げた。
そういうことされると罪悪感で胸がキリキリ痛むから止めてほしい。裏で策謀巡らせてる俺が浄化されてしまいそうだ。
「こちらこそ、今後ともよろしくってことで」
「ええ、よろしく……ふふっ」
固い表情を綻ばせ、マルトは穏やかな笑みを見せる。
花が咲いたような笑みとはこのことか。童貞には刺激が強すぎる。ぐえー。
(はぁ……またですか。その内背後から首を刎ねられそうですよね、ロウって)
突っ込みを入れてくるギルタブの想像が、段々と過激になっていくのが怖い。
むしろ、俺はお前から首を刎ねられそうで心配だよ。
──そんな一幕がありながらもつつがなく会食が進み、いざ支払いという段で。
「じゃあ、俺が支払うから。今日は良い店が知れたしマルトの人柄も知れたし、充実した時間だったよ」
「……君、外見と中身が一致していないところがあるよね。奢ってもらえるのは嬉しいけれど」
マルトに訝し気な、それでいて妙に口角が上がっている、何とも微妙な表情をされつつ支払いを済ませ店を出た。
──そこまでは良かったのだが。
「そこの素敵なお姉さん、少し俺たちと飲みに行かない? そっちの坊やも連れてていいからさ」
「さっきのお店より上等なところに案内するよ。きっとあなたが気に入ってくれると思う」
などと話しかける、五人の野郎集団現る。
先ほどの喫茶店でマルトの美貌にあてられて、彼女をナンパしにきたようだった。
「お誘いありがとうございます。ですが、この後予定がありますので。失礼します」
そんな野郎たちを一刀両断するマルト氏。取り付く島もないとはこのことか。
美人にこんな態度取られたら、俺なら一日中不貞寝するね。
「ッ……まあまあ固いこと言わずに、少しだけでいいからさ、見ていかない? すごっく良いところなんだって」
「そうそう! この子も一緒に行きたいみたいだからさ」
すげない態度のマルトを塞ぐように前に出る男と、まるで逃がさないぞとでもいうように俺の両肩に手を置く男。
少し奥まっているとはいえ大通り沿い、なんとも古典的な絡み方だ。ナンパへ繰り出す行動力は買うが、しつこい態度はいただけない。
マルトも俺と同じ印象を持ったのか、ほんのりと険のある声音で男たちに問いかけた。
「何のつもりですか?」
「いやいや、何もしないって。この子がお店に行きたがってるからさ、あなたが行かないならこの子だけ連れていくことになる。それはちょっと問題じゃないかな?」
俺を脅しに使うとはナンパ師の風上にも置けない連中だ。ナンパしたことないけども。
「いやー、俺もこの後用事入ってるんですけど?」
「あ? さっき行きたいって言ってただろ?」
低い声で問い、両肩に置いた手に力を籠める男。
ハッ、それで脅してるつもりか? 肩もみレベルじゃ阿呆め。
「最近悩み事が多くて肩が凝っているので、もっと力を入れて揉んでいただいてもいいですよ。まさか、それが全力ってこともないでしょう?」
「ふふっ。ロウ、この男たちに君の肩の凝りをほぐせというのは無理だよ。全力で力を込めたところで、君にとっては真綿で包むようなものだろう」
「あぁ!? 馬鹿にしてんのかガキが!」
マルトに笑われたのが決定打になったのか、俺の肩に手を置いていた男がいきり立つ。
強引に腕を掴んだ彼は、投げ飛ばさんと力むが──。
「──ッ!? ふんッ! ……な、動かねえッ!?」
残念! 足を土魔法で固定していたのでしたー!
(お前さんって、時々性格悪くなるよな)
(ヤームルを指導しているときもその傾向があるのです)
「おい、何遊んでんだよ?」「もういい、ちょっと静かにしてもらおうぜ」
曲刀たちに小言をもらっていると、まとめ役らしき男が舌なめずりしながら指示を出す。
所詮女子供、腕っぷしで黙らせてしまえというところか。
「──浅はかな」
「ぐぇッ!?」「──ごッ!?」
短い言葉と共に風の如く動いたマルトは、目の前にいた男の腹に容赦のない掌底。そこから瞬時に身を翻して上段回し蹴りを男の延髄を一撃。数秒間で二人の意識を刈り取った。
それに合わせてこちらも動く。
足元の魔法を解除し、後方へと身を開くように脚を踏み出す。
身を捻りながら背後へ繰り出すは、お仕置きとなる肘打ち──八極拳小八極・退歩挑肘!
「呀ッ!」
「おごッ……」
腹部に肘を打ち込まれた男は壁に激突、そして埋没。……死んで無いよな。
「──は?」「んなッ!?」
大の男が壁へと吹っ飛ぶ珍事に呆然としていた男の腹へ、問答無用の掌底一発。その隣で驚愕していた男の顎には前蹴りを叩き込み、鎮圧完了。
ものの十数秒とは呆気ない。
(容赦ないな。最後の二人は見逃しても良かったんじゃないか?)
大通りに行かれても面倒だし、眠っていてもらったんだよ。致し方なしってな。
「流石の動きだ。もっと早く手を出すかと思っていたのに、君って意外と甘いんだね」
「いやいや、手を出されたわけでもないのに、こっちから手を出したんじゃ短気もいいところだろ。……それに、やり方は雑だったけど、この男どもの気持ちも分からんでもなかったし」
「?」
顎に手を当てて首を傾げるマルト。
そんな可愛らしい仕草しても教えんぞ。美人とお話ししたいなどというごくごく単純な動機だからな!
まあ、あの野郎どもにはそれに加えて、もっと下半身的な理由もあったかもしれないが。
「衛兵がきたら事情説明するのも面倒だし、サクッと撤収しよう。じゃあな」
「……ええ。また今度」
彼女は不思議そうに首を傾げていたが、俺が説明する気の無いことを知ると特に言及することもなく頷き、挨拶を返してくれた。
マルトと別れ冒険者組合を目指す。これで誘拐関連の悩みの種はひとまず消化できたし、後は異形の魔物の一件を片付ければ当面問題は無さそうだ。
──ヨシ、組合での訓練、気合入れて頑張るかね!
商業区大通沿いにある小綺麗な喫茶店で、現在時間潰しの真っ最中である。
午前中の早い時間に服や靴を買い揃え、その足でマルトとの待ち合わせ場所にきている。待ち合わせ時間より早いため、相手はまだ到着していない。
万が一敵対行動をとられた時のために建物の構造、周囲環境等を叩き込んでおきたかったので、待つ分には問題ないけど……これってアレだな。
(恋人と待ち合わせしてるみたいだってか?)
(はんっ。何を馬鹿なことを)
嘲笑を刻んだギルタブのお言葉が突き刺さるけど、デートみたいじゃない? 年の差凄いし、胸の高鳴りも期待でドキドキというより緊張でバクバクって感じだけどさ。
襲撃の一件が無ければ天にも昇る気持ちになるのに。全く、ままならないもんだ。
「──悪い、待たせてしまったかな」
「いや、丁度今きたところ」
声を掛けられ顔を上げると、そこには若葉色の美女がいた。
上下ともにジャスミンイエローで揃えた彼女は、格好こそ町娘そのものだが、簡素な服がかえって彼女の端麗な容姿を引き立てている。美人は何を着ても絵になるということか。というか、他の客から滅茶苦茶注目されていた。
「そう、良かった。昼食を食べながら話そうか」
独り占めしている視線の一切を無視して円形テーブルの席に腰を下ろし、マルトは店員を呼び寄せ注文を行う。
俺も乗じて追加を注文するが、小洒落たこの店にはガッツリ系の食べ物は無い。以前食べた窯焼き平パンがこのお店にもあったので、それとサラダで我慢しておこう。
それにしても──。
「──今日はあの長剣を持ってこなかったんだな」
「君を警戒させても仕方が無いからね。私なりの意思表示だよ」
マルトは丸腰だった。
昨日付けていた手甲や脛当ても外しているし、殆ど武装解除しているといってよい状態だ。事前に対策練りまくり、その上完全武装な俺とは大違いじゃないですか。
(油断はしないで下さいね。ただでさえロウは、女性が相手だと鼻の下を伸ばしやすいのですから)
え、マジで? と思い顔をペタペタ触って己をチェック。マルトに小首を傾げられたが我が顔面に不具合は見つからなかった。
貴様、鎌をかけよったか!
(全く、分かりやすいくらいくテンションが高いですね。はぁ……)
(おいロウ、これ以上ギルタブが不機嫌になる前にさっさと話しを進めるんだ)
へいへい。こいつら同伴な限りは、デート気分なんて味わえそうもないな。
「仲良く世間話って間柄でもないし本題に入りたいんだけど、俺からマルトさんに聞きたいことは一つしかないし、そっちの話が済んでからでいい。昨日の時点で所属と目的は十分わかったからな」
「分かった。……君からさん付けで呼ばれても違和感があるから、呼び捨てで良いよ」
「それじゃ遠慮なく。でも俺くらいの子供から呼び捨てにされるのって、抵抗があるんじゃない?」
「主従を結んでいるとよくあることだから、特に感じることもないかな。それに、君は口調も随分砕けているし」
言われて気が付く話し方。出会いが出会いだから取り繕う必要なかったし、そのせいだろうか。
「今更変えても違和感が残りそうだし、このままでいかせてくれ」
タメ口許可証を頂いたところで、料理が届く。彼女は平たいフォカッチャっぽいものに、野菜がたくさん入ったスープとサラダ。こっちと似たようなもんか。
俺の窯焼き平パンは、玉ねぎとマッシュポテト、薄切りのチキンを散らし、それらの上に香りのよいバジルソースとチーズをトッピングしてある、実に旨そうな逸品だ。所々に半切りで飾ってある、アクセントのオリーブの実も良い。温かいうちに頂こう。
「うむ。旨い。窯焼き平パンはトマトソースのイメージだけど、バジルソースもよく合うな」
「……それ、美味しそうだね。一つ頂けないかな?」
「どうぞどうぞ。そっちの平パンも美味しそうだ。ちょっとくれよ」
「ええ。ナイフで切るから少し待って」
そう言いつつ、テーブルの上のナイフで目にもとまらぬ斬撃を数閃させるマルト。平パンは見事に八等分となったが、猟奇的である。
「今の、皿まで切れてない? 大丈夫?」
「大丈夫……ん、君、頬に何かついているよ」
「マジ? どの辺?」
「待って。取れた、玉ねぎだったか。うん、美味しい」
年上のお姉さんに食べかすの位置を聞いたら、拭われた上に食べられてしまったでござる。
そんなことされるとなんだか本格的にデートみたいな気がしてきて、無性にドキドキしちゃうわ。
落ち着け、深呼吸だ。ひっひっふー。
((イチャイチャかっッ!))
◇◆◇◆
閑話休題。
「──それで、君はボルドーへ来たと? 確かに、君程の腕なら生活に困らないくらいは稼げるだろうけれど」
「あの時は仮面を外してたから別邸にいた衛兵に顔見られてたし、誘拐の実行犯として指名手配受けたと思ってたからな。ボルドーもサクッと稼いだ後は、他所に行こうかと思ってたし」
現在、マルトにリマージュからボルドーへ拠点を移した事情を説明中。
向こうとしても、ムスターファ邸宅で俺と遭遇したことは想定外だったことだろう。
「そう……こちらが大きく考えすぎていただけか」
彼女は目を瞑り眉を寄せて大きく息をつく。その様子は安堵したというより、取り越し苦労を嘆く感じだ。
「一体どんな想像してたんだ?」
「お嬢様の特殊な境遇を利用し、公爵家を陥れようとする企み。蓋を開けてみれば、何のことは無かったけれど」
「なるほどねえ。そういえば、誘拐依頼の時もそういう話をチラリと聞いたか」
依頼内容が公爵家令嬢の誘拐という危険なものだったため、俺は団長のルーカスに詳細を問うていた。
その時に公爵家がきな臭いという情報がどうだこうだ言っていた……はずだ。地球時代の記憶が混ざる前の話だし、もはやうろ覚えだけど。
「君の力は尋常じゃなかったから、子爵の企みに賛同する力ある者と考えたのだけれど……裏が無いならそれが一番かな」
優美な所作で紅茶を含みマルトは語る。周囲の客や従業員がうっとりするほどに、その所作は洗練されていた。つまり町娘風の変装が台無しである。
「こほん。俺の事情は大体こんなもんだ。聞きたいことが済んだならこっちの質問と行きたいんだけど、どう?」
「細かい点は幾つかあるけれど、この場で全て聞くようなことでも無い。君の質問とは?」
「たった一つだ──あんたが襲撃の時に殺した、俺の仲間の詳細を教えてほしい」
俺自身の心の内、装飾を排した言葉を伝える。
「別に俺の仲間を何人殺していようが、今ここに居るあんたに危害を加えることは無い。ただ、自分の気持ちに折り合いを付けたいっていうことと、後はあいつらの墓を作った時に仇取れないことを謝りたいっていうこと。それだけだ」
あの襲撃の時、仮にこの女が直接手を下さずとも周りの連中が殺していただろうし、襲撃依頼が成立した時点でバルバロイの壊滅は決定づけられていた。
無論、思うところはあるが……。こうして関係性ができてしまった以上、それを飲み込んで付き合うしかないだろう。
こいつを八つ裂きにしたところで何かが変わるわけでもなし。公爵家の恨みを買うだけだ。
何より、彼女はこちらの行ったエスリウ誘拐について見逃すと言っている。
ただでさえ元盗賊の人外という人目を忍ばねばならない身分なのだから、そこに誘拐犯という肩書が加わらないのならもろ手を上げて喜ぶべきだ。
「……私が手を下したものはいないよ。あの時、襲撃側にも被害が出ていた方が、後で私が始末する時に楽が出来ると考えていたからね。結局のところ、君の仲間の殺害に加担した事には変わりは無いのだけれど」
そうやって怒りと理性との狭間で煩悶としつつ返答を待っていたが、彼女が吐いた言葉は予想に反したものだった。
確かに彼女は子爵の手勢を襲撃する目的があったのだから、消耗していた方が……。って、襲撃者は雇われだから、子爵の手勢ではないのか。
ということは、こいつも襲撃に関わるものは皆殺しの予定だった、のか?
やっぱりこいつやべー奴だわ!
「そうか。墓の前で詫びずに済んでホッとしたよ」
「信じるの? 私が君から恨みを買わないようにするために嘘を吐いているとは考えないの?」
脳内での動揺を押し殺して言葉を受け取ると、マルトは怪訝そうな表情を作る。
「事実の究明なんて出来ないだろ、当事者があんたしかいないんだから。それなら疑ったり憎んだり不毛なエネルギーを溜め込むより、相手の言い分を信じた方が建設的だ」
ついでに、美人を恨むのも抵抗あるし。
(ロウにとってはそのついでこそが大きいのではないですか?)
脳内でおどけると、しばらくだんまり状態だった黒刀より突っ込みを頂いてしまった。
建前でこう伝えているけど、一応バルバロイ襲撃での唯一の生存者であるディエラに、襲撃時の詳細を聞いてみようとは考えている。そういうところまでマルトに話す必要はないだろう。
元々皆殺しの予定だったみたいだし、口封じなんて手段をとられても困るし。
(表では信用すると言いながら、裏では事実を解明せんとする。お前さん、意外と強かなところがあるよな)
銀刀からもお言葉頂戴。二枚舌三枚舌なんて人間の基本装備だぞ。ガハハハ。
「そう……信じてくれて、ありがとう。礼を言うのも変なことだけれど」
俺の言葉を咀嚼したマルトは眼を何度か瞬かせ、頭を下げた。
そういうことされると罪悪感で胸がキリキリ痛むから止めてほしい。裏で策謀巡らせてる俺が浄化されてしまいそうだ。
「こちらこそ、今後ともよろしくってことで」
「ええ、よろしく……ふふっ」
固い表情を綻ばせ、マルトは穏やかな笑みを見せる。
花が咲いたような笑みとはこのことか。童貞には刺激が強すぎる。ぐえー。
(はぁ……またですか。その内背後から首を刎ねられそうですよね、ロウって)
突っ込みを入れてくるギルタブの想像が、段々と過激になっていくのが怖い。
むしろ、俺はお前から首を刎ねられそうで心配だよ。
──そんな一幕がありながらもつつがなく会食が進み、いざ支払いという段で。
「じゃあ、俺が支払うから。今日は良い店が知れたしマルトの人柄も知れたし、充実した時間だったよ」
「……君、外見と中身が一致していないところがあるよね。奢ってもらえるのは嬉しいけれど」
マルトに訝し気な、それでいて妙に口角が上がっている、何とも微妙な表情をされつつ支払いを済ませ店を出た。
──そこまでは良かったのだが。
「そこの素敵なお姉さん、少し俺たちと飲みに行かない? そっちの坊やも連れてていいからさ」
「さっきのお店より上等なところに案内するよ。きっとあなたが気に入ってくれると思う」
などと話しかける、五人の野郎集団現る。
先ほどの喫茶店でマルトの美貌にあてられて、彼女をナンパしにきたようだった。
「お誘いありがとうございます。ですが、この後予定がありますので。失礼します」
そんな野郎たちを一刀両断するマルト氏。取り付く島もないとはこのことか。
美人にこんな態度取られたら、俺なら一日中不貞寝するね。
「ッ……まあまあ固いこと言わずに、少しだけでいいからさ、見ていかない? すごっく良いところなんだって」
「そうそう! この子も一緒に行きたいみたいだからさ」
すげない態度のマルトを塞ぐように前に出る男と、まるで逃がさないぞとでもいうように俺の両肩に手を置く男。
少し奥まっているとはいえ大通り沿い、なんとも古典的な絡み方だ。ナンパへ繰り出す行動力は買うが、しつこい態度はいただけない。
マルトも俺と同じ印象を持ったのか、ほんのりと険のある声音で男たちに問いかけた。
「何のつもりですか?」
「いやいや、何もしないって。この子がお店に行きたがってるからさ、あなたが行かないならこの子だけ連れていくことになる。それはちょっと問題じゃないかな?」
俺を脅しに使うとはナンパ師の風上にも置けない連中だ。ナンパしたことないけども。
「いやー、俺もこの後用事入ってるんですけど?」
「あ? さっき行きたいって言ってただろ?」
低い声で問い、両肩に置いた手に力を籠める男。
ハッ、それで脅してるつもりか? 肩もみレベルじゃ阿呆め。
「最近悩み事が多くて肩が凝っているので、もっと力を入れて揉んでいただいてもいいですよ。まさか、それが全力ってこともないでしょう?」
「ふふっ。ロウ、この男たちに君の肩の凝りをほぐせというのは無理だよ。全力で力を込めたところで、君にとっては真綿で包むようなものだろう」
「あぁ!? 馬鹿にしてんのかガキが!」
マルトに笑われたのが決定打になったのか、俺の肩に手を置いていた男がいきり立つ。
強引に腕を掴んだ彼は、投げ飛ばさんと力むが──。
「──ッ!? ふんッ! ……な、動かねえッ!?」
残念! 足を土魔法で固定していたのでしたー!
(お前さんって、時々性格悪くなるよな)
(ヤームルを指導しているときもその傾向があるのです)
「おい、何遊んでんだよ?」「もういい、ちょっと静かにしてもらおうぜ」
曲刀たちに小言をもらっていると、まとめ役らしき男が舌なめずりしながら指示を出す。
所詮女子供、腕っぷしで黙らせてしまえというところか。
「──浅はかな」
「ぐぇッ!?」「──ごッ!?」
短い言葉と共に風の如く動いたマルトは、目の前にいた男の腹に容赦のない掌底。そこから瞬時に身を翻して上段回し蹴りを男の延髄を一撃。数秒間で二人の意識を刈り取った。
それに合わせてこちらも動く。
足元の魔法を解除し、後方へと身を開くように脚を踏み出す。
身を捻りながら背後へ繰り出すは、お仕置きとなる肘打ち──八極拳小八極・退歩挑肘!
「呀ッ!」
「おごッ……」
腹部に肘を打ち込まれた男は壁に激突、そして埋没。……死んで無いよな。
「──は?」「んなッ!?」
大の男が壁へと吹っ飛ぶ珍事に呆然としていた男の腹へ、問答無用の掌底一発。その隣で驚愕していた男の顎には前蹴りを叩き込み、鎮圧完了。
ものの十数秒とは呆気ない。
(容赦ないな。最後の二人は見逃しても良かったんじゃないか?)
大通りに行かれても面倒だし、眠っていてもらったんだよ。致し方なしってな。
「流石の動きだ。もっと早く手を出すかと思っていたのに、君って意外と甘いんだね」
「いやいや、手を出されたわけでもないのに、こっちから手を出したんじゃ短気もいいところだろ。……それに、やり方は雑だったけど、この男どもの気持ちも分からんでもなかったし」
「?」
顎に手を当てて首を傾げるマルト。
そんな可愛らしい仕草しても教えんぞ。美人とお話ししたいなどというごくごく単純な動機だからな!
まあ、あの野郎どもにはそれに加えて、もっと下半身的な理由もあったかもしれないが。
「衛兵がきたら事情説明するのも面倒だし、サクッと撤収しよう。じゃあな」
「……ええ。また今度」
彼女は不思議そうに首を傾げていたが、俺が説明する気の無いことを知ると特に言及することもなく頷き、挨拶を返してくれた。
マルトと別れ冒険者組合を目指す。これで誘拐関連の悩みの種はひとまず消化できたし、後は異形の魔物の一件を片付ければ当面問題は無さそうだ。
──ヨシ、組合での訓練、気合入れて頑張るかね!
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使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
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この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
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スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
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地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
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追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
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祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
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しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
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勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
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チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
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平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
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