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第四章 魔導国首都ヘレネス
4-8 学生寮での昼食
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「──ロウよ、何か良い香りが漂ってくるのだが、一体何をしていたのだ?」
大学図書館を出て昼食が提供される場所へと向かう道すがら。顔を寄せて鼻をひく付かせるセルケトから質問が飛んできた。
「う~ん。なんて言っていいか分からないけど、お茶会ならぬ酒盛りに付き合ってきたんだよ」
「あら、それは素敵ですね。ロウさんは魔術大学に知り合いの方がいらしたのですか?」
やたらと近い彼女を引きはがしながら答えると、何故かエスリウも会話に乱入。
昼間から酒を飲むのが素敵とはこれ如何に。
「はい。偶然会っちゃって、友達のお誘いだから仕方がなくついていったんですけど……中々しんどい時間でしたね。お酒やおつまみは物凄く美味しかったんですが」
「へぇ~。ロウさん、私を厄介払いに使っておいて、自分はお酒とつまみを楽しんでいたんですか? ふ~ん」
エスリウに説明を行うと、今度はジト目のヤームルが参戦してきた。
なんなの君たち。
「ふむ。爽やかでありながらこの上なく唾液腺を刺激する芳香だ。よほど良い酒だったと見える」
「物凄く贅沢なワインだったみたいだからなあ。機会があれば探しといてやるよ」
「ほう! 楽しみだ」
「ふふ。ヤームル、躱されてしまいましたね?」
「ロウさんは都合の悪いことは聞えない体質みたいですからね。分かってましたよ……はぁ」
聞こえない振りをしていると、そんな会話が耳に入る。甚だ不本意である。
(不本意などと考えていますが、言い逃れ出来ない事実だと思うのです)
(まあ、ロウが外道なのは今に始まったことじゃないからなあ。今更言われるのは不本意ってことじゃないか?)
曲刀たちから容赦のない突っ込みが念話で入る。
頭の中での考えすら検閲されるというのか。我が平穏はいずこや?
自己正当化しながら歩いていく内に、再び巨大な建物へと辿り着く。
幾何学的な装飾がなされた白い壁面に、多様な年齢層でにぎわう様がよく見えるガラス張りの玄関口。ここが大学に幾つかある寮の一つであり、昼食とれる食堂がある建物のようだ。
「大きくて綺麗なガラスですね。学生寮とは思えないオシャレさです」
「魔導国の魔術の粋を集めて製造したらしいですよ。量産となると、中々難しいようですが」
「へぇ~」
もはや恒例となったヤームルのうんちくを聞きながら、揃って中へと入っていく。
エントランスを抜けると、土足で踏み込むのが躊躇われる、カーペットタイプの床面が一面に広がるロビーが出現した。
「おぉ……これはこれは、素晴らしいものですね」
「ふむ? 奇妙な床であるな。全面に敷物が敷いてあるのか?」
「はい。石や木材よりも衝撃を吸収してくれるので、急いでいてこけてしまっても怪我をしづらいんですよ」
やや実感のこもったヤームルの説明を耳にしつつ、ロビーの奥、食堂方面を見やる。
ロビーから直通となっている食堂にはお昼時ということもあり、実に多くの人々が集まっていた。大学は夏季休暇中だが、それでも構内には沢山の人がいるようだ。
だが、しかし──。
「ああ、ヤームルちゃんだ!」「エスリウ様だ。もう戻ってきていたのか……き、今日こそ声をかけるぞ」「マルトさん、今日も綺麗だなあ~」「だ、誰だあの美人は!? 新しい学生か!?」「やだ、あの褐色の子可愛い……食べちゃいたい」
──ここでも、やはり我らが女性陣は目立つようだ。
食堂へ入った途端に、波紋のように騒ぎが伝播し、今やほぼ全員がこちらへと目を向けている。ショタコンが幾らかいたようだが気にしては駄目だ。食われてしまう。
「ヤームルさんもエスリウ様も、大変な人気ですね。一種異様な雰囲気ですが」
「ええ、まあ……。実は私もエスリウさんも、普段は出来るだけ食堂では食事をしないようにしていますから」
「ほう? 使用人たちに調理させるということか?」
「いえ、別途に料金がかかりますが、部屋に料理を運んでもらうサービスがあるんです。贅沢なことですが、やはり食事はゆっくりと摂りたいですからね」
「うふふ、ヤームルは人の視線が少し苦手だものね。ワタクシは慣れてしまっているので気になりませんけれど」
会話をしながら代金を支払い、奥へ奥へと進んでテーブル席を陣取る(専用の魔道具で席が使用中と分かるようになっていた。スゲーな異世界)と、今度は料理を頂くべくカウンターへと向かう。
料理はビュッフェ形式で提供されていて、好き勝手にとれる形態のようだ。
先に料金を払う形式での食べ放題。しかも学生証を見せればフリーパスらしいため、食べ盛りの学生には嬉しい仕様だろう。食が細そうなおじさんおばさん学生の姿もあるけども。
食器トレー片手に料理を観察し、あれにこれにと選び取っていく。
パスタやピザから始まり、バゲットやカンパーニュのようなハード系のパンに、バターロールやコッペパンのようなソフト系のパンまで。粉食は実に豊富であるようだ。
副菜には温かいスープや炒め物、茹で物といった温野菜。主菜は表面が焦げ付くほどしっかりと焼かれた焼き魚やら、春巻きのようなものに包まれたひき肉の料理やら。定番料理が目白押しである。
「凄い量の料理ですね。しかもこれを、数百人に提供しているとは」
「学校が始まると、数千食分用意しているみたいですからね。それはもう凄い生産力ですよ」
木製の食器トレー一杯に皿を並べて呟けば、ヤームルから驚くべき言葉が返ってきた。
数千食。言うは易いが……行うとなると、果たして可能なのだろうか。可能だから成立しているんだろうけど。
唸りながら料理が並べられているテーブルの先、カウンターの向こう側を見ると、従業員たちが忙しなく動いている様が見えた。
直径一メートルほどありそうな巨大な手鍋(?)を、吹き上がる火柱の上で手早くかき混ぜる者。
手元が霞んで見えるほどの速度で、葉物野菜を千切りにしていく者。
吹き上がる蒸気をものともせず、大型浴槽にも見える大容量の寸胴鍋をかき回す者。
戦場さながらの光景である。
……そういえばここって異世界でしたね。
個々人の持つ力が尋常じゃないから、生産力も上がるのか。滅茶苦茶大変そうではあるけども。
調理は可能として、保存や物流はどうなのだろうか? と、異世界食堂事情を考察しながら、ヤームルと一緒に席へと戻る。
相も変わらず注目されているが、声掛け事案には至っていないらしい。
流石魔術大学、皆さんお行儀が良いのですね──などと考えていると。
「やあやあヤームル! 奇遇だな!」
「……」
ヤーヤー言いながら爽やかに再登場する金髪美少年と、彼に付き従っているらしい従者の影が。
横目でちらりとヤームルの表情を盗み見れば、眉間と鼻にしわが寄っていた。やだ怖ーい。
「ヤームルが食堂で食事なんて珍しいな。その上僕と再会するなんて、運命の神のいたずらなのかな?」
「ただの偶然だと思いますよ。それと、私は他の方たちと一緒に食べる約束をしていますので」
碧眼を閉じて芝居がかった様子で語る少年の言葉を、バッサリと切って捨てるヤームル先輩。マジパネェっす。
「ははは。そんなことを言って、その子と一緒に食べるだけなんだろ? 寂しくないように僕も一緒に食べてあげるよ」
「……アンテロさんって押しが凄く強いんですね」
「面の皮が厚いんですよ、この人。結構ハッキリと拒絶してるのに、付きまとってきますから」
隣で不機嫌さを隠そうともせずにむくれるヤームルへに小声で話しかけると、うんざりしたような調子の言葉が返る。
彼女はどちらかというと交友関係がクローズドな性格だし、彼のような押せ押せ俺様タイプは苦手なのかもしれない。
「──ん? 誰だこやつは」「あら、アンテロさん。ごきげんよう」
考え事をしている内に人外集団が帰還した。エスリウもアンテロと知人だったのか、にこやかに挨拶をしている。マルトは目礼、セルケトはマイペースな問いかけだ。
「これはエスリウ様! ご機嫌麗しゅう。そちらの綺麗な人は、新しい従者の方ですか?」
「うふふ、こちらはセルケトさん。ワタクシとヤームルの友人で、そちらにいらっしゃるロウさんの親戚ですよ」
「セルケトだ。アンテロはエスリウの友人であるのか?」
「それはもちろん!」「はい、知人です」
セルケトのことは友人と呼んだのに、アンテロにのことは知人だという。扱いに差があるということは、エスリウも彼のことが苦手なのだろうか?
「と、申し遅れました。僕はアンテロ・サドラーズウェルズ。この魔導国で知らぬものなどいない、名家サドラーズウェルズ、その三男だよ。もし君がこの大学に入学するのなら、試験の時にこの僕の名前を出してみると良い。そうすればきっと、試験官の態度も変わるだろうからね」
「そうか。では、冷めぬうちに食事とするか」
「……ふくっ」
アンテロが長々と自己紹介をするも、セルケトはごくあっさりと流し食事を始めてしまった。
その様子が滑稽だったのか、ヤームルは俯いて笑いを堪えている。
そこまで邪険にしなくてもいいんと違います?
「アンテロさんと従者の方、こっちに座ります? 空いてますよ」
「ああ、ありがとう。心遣い、感謝するよ」
「ありがとうございます」
テーブル席の長椅子を詰めて座り、アンテロと茶髪の女性の空間を確保する。ヤームルは押し寿司のように端へと押し込ませてもらった。
(なあロウ、おしずしってのはなんだ? 道具か何かか?)
俺の表層心理での発言が気になったのか、ずっと静かだったサルガスが意外なところに食い付いてきた。
(押し寿司ってのは俺の故郷の料理の一つだよ。茹でた穀類を酢で味付けして、その上に具材を乗っけて、ギュギュっと押さえつける食べ物だ)
(穀類か。スープや炒め物に入ってることがあるアレを、メインで使うってことか? なんだか想像がつかんな……人化したら食べてみたいもんだ)
(私たちの魔力も随分満ちてきましたからね。そう遠くない未来に、己の肉体を得ることが出来るでしょう。楽しみですよ、ふふふ……)
銀刀への説明を終え、ほんのりと狂気を帯びた黒刀の念話をスルーし、昼食開始。いただきます。
大学食堂ともなればいつものように豪快に食べるわけにもいかず、お上品にパスタを巻き、雅やかに口へと運ぶ。美味美味。
普段の食事ぶりを知っているヤームルが、俺の優雅な所作を見て目を点にする様を横目で見ていると、隣に座っていたアンテロ何某君から話を振られた。
「へえ。君は随分と食べ方が綺麗なんだな。言葉も丁寧で礼儀も知っているし……。公国からヤームルと一緒にやってきたって話だけど、名のある家の出身だったりするのか?」
「まさか。平々凡々な市井の出ですよ。母親が貴族様の子弟に家庭教師のような事をやっていたので、それで作法をちょろっと知っているだけです」
「ふーん? 僕と同じくらいの年齢で護衛なんてやっているから、どこか有力貴族の三男四男坊なのかと思ってたけど」
彼の言葉が気になったので貴族事情について話を聞いてみれば、詳しく話してくれた。
なんでも、大抵の貴族は長男次男以外、家で読み書き礼儀作法等の教育を施した後は、適性によって様々な養成所に送られるのが常なのだという。
魔力、戦闘技術に優れているなら騎士学校に、魔力と座学に秀でているなら魔術大学へ。人や物事の機微に聡いなら文官の養成所、等々。
アンテロは体力知力のいずれも優れていたが、本人たっての希望で魔術大学へ進んだようだ。そう誇らしげに語る姿が微笑ましい。
日本に居た頃、かけっこで一番になったことを自慢していた、道場の門下生を見ている気になってくる。丁度、年齢はこの少年と同じくらいだろうか……。
「──僕は魔術というものがとても好きなんだ。自然現象とは違う、魔力と術式による超常現象。燃えるものがないのに炎が燃えたり、水蒸気を集めたわけでもないのに水を生み出したり。そういう現象の事を、もっと知っていきたいと思ったのさ」
「分かります。魔術って不思議ですよね。それを術式や魔法陣で操るというのも、これまた心が躍るものがあります」
「おお、君も分かるか! うんうん、魔術で魔法陣が周囲に浮かぶところは、僕もとても格好いいと思っているところだ。なんというのかな、こう、自分がこの事象を操っているんだぞ、という証明に感じるというか」
ピザのような平パンを摘まみながら、野郎同士の魔術トークで盛り上がる俺たち。
光り輝く魔法陣って格好良いよね!
異世界にあっても、少年の性質というのは格好いいものを求めたがるものらしい。
一方で、女性陣はそれを奇異の目で見ているようだ。
「なんだか変に気が合うみたいですね、あの二人」
「ええ、魔術の話で盛り上がっているようですけれど、意外なことです。ロウさんは魔術を習得していないようですから、興味が無いものとばかり思っていました」
「魔術なんぞ魔ほ……精霊魔法があれば、用のないものだと思うがな」
「セルケトさんやロウみたいに魔力の桁が違えばそうだろうけれど。人族の一般的な尺度で言えば、やはり様々な事象を行使できる魔術というのは有用だよ」
などという声が耳に入る。
用のないものというセルケトの指摘は的を射るものだが、用がなかろうとも格好良いものは格好良いのだ。それは互いに矛盾するものではない。
アンテロも彼女たちの話声を耳にしたのか、首を傾げながら質問をしてくる。
「精霊魔法? 君は精霊使いだったのか? てっきり魔術師だと思ってたよ」
「魔術に興味はあるんですけどね。先に精霊との縁があったもので、魔術を学ぶ機会を逸してしまったというか」
「そういうことか。精霊と縁があるとはまた、羨ましいな。あれも超常現象のそのものといった感じだし」
「ですねえ。魔術とは違って、属性が限定されてしまうのは惜しいことですが、自由に出力できるのは面白いものですよ」
図書館では彼のことを名家出身ということを、笠に着た面倒な子供かと思っていたが。話してみればごくごく普通の少年であるようだった。第一印象というものはあてにならないものだ。
「自由な出力か。ヤームルを護衛するほどの腕前、見てみたいな。君、この後時間はあるか?」
「うーん、ちょっと難しいですね。今試験を受けている友達がいて、試験が終わってその子たちと合流したら、冒険者組合に顔を出そうと思っているので」
「そうか、残念だ。うん? 君、冒険者だったのか? 年齢制限で引っ掛かると思うんだけど、もしかしてドワーフやハーフリングみたいな亜人で、もう成人してる?」
「制限ギリギリの十歳ですよ。薬草採取ばっかりやるような感じなので、組合からも特に文句は言われませんね」
薬草採取と聞くとさも残念そうな表情と身振りをする金髪少年。恐らく彼にとっては、冒険者といえば魔物討伐をするものだ、そんな考えが浮かんでいたのだろう。
その後も薬草採取なんて地味だの、いやいや意外と面白いものだのと話している内に料理を食べ終わり、楽しい昼食の時間もお開きとなる。
爽やかな笑顔で去っていくアンテロと従者を見送った後、俺たちはアイラやカルラを迎えに行くべく、試験が行われた校舎へと向かうのだった。
大学図書館を出て昼食が提供される場所へと向かう道すがら。顔を寄せて鼻をひく付かせるセルケトから質問が飛んできた。
「う~ん。なんて言っていいか分からないけど、お茶会ならぬ酒盛りに付き合ってきたんだよ」
「あら、それは素敵ですね。ロウさんは魔術大学に知り合いの方がいらしたのですか?」
やたらと近い彼女を引きはがしながら答えると、何故かエスリウも会話に乱入。
昼間から酒を飲むのが素敵とはこれ如何に。
「はい。偶然会っちゃって、友達のお誘いだから仕方がなくついていったんですけど……中々しんどい時間でしたね。お酒やおつまみは物凄く美味しかったんですが」
「へぇ~。ロウさん、私を厄介払いに使っておいて、自分はお酒とつまみを楽しんでいたんですか? ふ~ん」
エスリウに説明を行うと、今度はジト目のヤームルが参戦してきた。
なんなの君たち。
「ふむ。爽やかでありながらこの上なく唾液腺を刺激する芳香だ。よほど良い酒だったと見える」
「物凄く贅沢なワインだったみたいだからなあ。機会があれば探しといてやるよ」
「ほう! 楽しみだ」
「ふふ。ヤームル、躱されてしまいましたね?」
「ロウさんは都合の悪いことは聞えない体質みたいですからね。分かってましたよ……はぁ」
聞こえない振りをしていると、そんな会話が耳に入る。甚だ不本意である。
(不本意などと考えていますが、言い逃れ出来ない事実だと思うのです)
(まあ、ロウが外道なのは今に始まったことじゃないからなあ。今更言われるのは不本意ってことじゃないか?)
曲刀たちから容赦のない突っ込みが念話で入る。
頭の中での考えすら検閲されるというのか。我が平穏はいずこや?
自己正当化しながら歩いていく内に、再び巨大な建物へと辿り着く。
幾何学的な装飾がなされた白い壁面に、多様な年齢層でにぎわう様がよく見えるガラス張りの玄関口。ここが大学に幾つかある寮の一つであり、昼食とれる食堂がある建物のようだ。
「大きくて綺麗なガラスですね。学生寮とは思えないオシャレさです」
「魔導国の魔術の粋を集めて製造したらしいですよ。量産となると、中々難しいようですが」
「へぇ~」
もはや恒例となったヤームルのうんちくを聞きながら、揃って中へと入っていく。
エントランスを抜けると、土足で踏み込むのが躊躇われる、カーペットタイプの床面が一面に広がるロビーが出現した。
「おぉ……これはこれは、素晴らしいものですね」
「ふむ? 奇妙な床であるな。全面に敷物が敷いてあるのか?」
「はい。石や木材よりも衝撃を吸収してくれるので、急いでいてこけてしまっても怪我をしづらいんですよ」
やや実感のこもったヤームルの説明を耳にしつつ、ロビーの奥、食堂方面を見やる。
ロビーから直通となっている食堂にはお昼時ということもあり、実に多くの人々が集まっていた。大学は夏季休暇中だが、それでも構内には沢山の人がいるようだ。
だが、しかし──。
「ああ、ヤームルちゃんだ!」「エスリウ様だ。もう戻ってきていたのか……き、今日こそ声をかけるぞ」「マルトさん、今日も綺麗だなあ~」「だ、誰だあの美人は!? 新しい学生か!?」「やだ、あの褐色の子可愛い……食べちゃいたい」
──ここでも、やはり我らが女性陣は目立つようだ。
食堂へ入った途端に、波紋のように騒ぎが伝播し、今やほぼ全員がこちらへと目を向けている。ショタコンが幾らかいたようだが気にしては駄目だ。食われてしまう。
「ヤームルさんもエスリウ様も、大変な人気ですね。一種異様な雰囲気ですが」
「ええ、まあ……。実は私もエスリウさんも、普段は出来るだけ食堂では食事をしないようにしていますから」
「ほう? 使用人たちに調理させるということか?」
「いえ、別途に料金がかかりますが、部屋に料理を運んでもらうサービスがあるんです。贅沢なことですが、やはり食事はゆっくりと摂りたいですからね」
「うふふ、ヤームルは人の視線が少し苦手だものね。ワタクシは慣れてしまっているので気になりませんけれど」
会話をしながら代金を支払い、奥へ奥へと進んでテーブル席を陣取る(専用の魔道具で席が使用中と分かるようになっていた。スゲーな異世界)と、今度は料理を頂くべくカウンターへと向かう。
料理はビュッフェ形式で提供されていて、好き勝手にとれる形態のようだ。
先に料金を払う形式での食べ放題。しかも学生証を見せればフリーパスらしいため、食べ盛りの学生には嬉しい仕様だろう。食が細そうなおじさんおばさん学生の姿もあるけども。
食器トレー片手に料理を観察し、あれにこれにと選び取っていく。
パスタやピザから始まり、バゲットやカンパーニュのようなハード系のパンに、バターロールやコッペパンのようなソフト系のパンまで。粉食は実に豊富であるようだ。
副菜には温かいスープや炒め物、茹で物といった温野菜。主菜は表面が焦げ付くほどしっかりと焼かれた焼き魚やら、春巻きのようなものに包まれたひき肉の料理やら。定番料理が目白押しである。
「凄い量の料理ですね。しかもこれを、数百人に提供しているとは」
「学校が始まると、数千食分用意しているみたいですからね。それはもう凄い生産力ですよ」
木製の食器トレー一杯に皿を並べて呟けば、ヤームルから驚くべき言葉が返ってきた。
数千食。言うは易いが……行うとなると、果たして可能なのだろうか。可能だから成立しているんだろうけど。
唸りながら料理が並べられているテーブルの先、カウンターの向こう側を見ると、従業員たちが忙しなく動いている様が見えた。
直径一メートルほどありそうな巨大な手鍋(?)を、吹き上がる火柱の上で手早くかき混ぜる者。
手元が霞んで見えるほどの速度で、葉物野菜を千切りにしていく者。
吹き上がる蒸気をものともせず、大型浴槽にも見える大容量の寸胴鍋をかき回す者。
戦場さながらの光景である。
……そういえばここって異世界でしたね。
個々人の持つ力が尋常じゃないから、生産力も上がるのか。滅茶苦茶大変そうではあるけども。
調理は可能として、保存や物流はどうなのだろうか? と、異世界食堂事情を考察しながら、ヤームルと一緒に席へと戻る。
相も変わらず注目されているが、声掛け事案には至っていないらしい。
流石魔術大学、皆さんお行儀が良いのですね──などと考えていると。
「やあやあヤームル! 奇遇だな!」
「……」
ヤーヤー言いながら爽やかに再登場する金髪美少年と、彼に付き従っているらしい従者の影が。
横目でちらりとヤームルの表情を盗み見れば、眉間と鼻にしわが寄っていた。やだ怖ーい。
「ヤームルが食堂で食事なんて珍しいな。その上僕と再会するなんて、運命の神のいたずらなのかな?」
「ただの偶然だと思いますよ。それと、私は他の方たちと一緒に食べる約束をしていますので」
碧眼を閉じて芝居がかった様子で語る少年の言葉を、バッサリと切って捨てるヤームル先輩。マジパネェっす。
「ははは。そんなことを言って、その子と一緒に食べるだけなんだろ? 寂しくないように僕も一緒に食べてあげるよ」
「……アンテロさんって押しが凄く強いんですね」
「面の皮が厚いんですよ、この人。結構ハッキリと拒絶してるのに、付きまとってきますから」
隣で不機嫌さを隠そうともせずにむくれるヤームルへに小声で話しかけると、うんざりしたような調子の言葉が返る。
彼女はどちらかというと交友関係がクローズドな性格だし、彼のような押せ押せ俺様タイプは苦手なのかもしれない。
「──ん? 誰だこやつは」「あら、アンテロさん。ごきげんよう」
考え事をしている内に人外集団が帰還した。エスリウもアンテロと知人だったのか、にこやかに挨拶をしている。マルトは目礼、セルケトはマイペースな問いかけだ。
「これはエスリウ様! ご機嫌麗しゅう。そちらの綺麗な人は、新しい従者の方ですか?」
「うふふ、こちらはセルケトさん。ワタクシとヤームルの友人で、そちらにいらっしゃるロウさんの親戚ですよ」
「セルケトだ。アンテロはエスリウの友人であるのか?」
「それはもちろん!」「はい、知人です」
セルケトのことは友人と呼んだのに、アンテロにのことは知人だという。扱いに差があるということは、エスリウも彼のことが苦手なのだろうか?
「と、申し遅れました。僕はアンテロ・サドラーズウェルズ。この魔導国で知らぬものなどいない、名家サドラーズウェルズ、その三男だよ。もし君がこの大学に入学するのなら、試験の時にこの僕の名前を出してみると良い。そうすればきっと、試験官の態度も変わるだろうからね」
「そうか。では、冷めぬうちに食事とするか」
「……ふくっ」
アンテロが長々と自己紹介をするも、セルケトはごくあっさりと流し食事を始めてしまった。
その様子が滑稽だったのか、ヤームルは俯いて笑いを堪えている。
そこまで邪険にしなくてもいいんと違います?
「アンテロさんと従者の方、こっちに座ります? 空いてますよ」
「ああ、ありがとう。心遣い、感謝するよ」
「ありがとうございます」
テーブル席の長椅子を詰めて座り、アンテロと茶髪の女性の空間を確保する。ヤームルは押し寿司のように端へと押し込ませてもらった。
(なあロウ、おしずしってのはなんだ? 道具か何かか?)
俺の表層心理での発言が気になったのか、ずっと静かだったサルガスが意外なところに食い付いてきた。
(押し寿司ってのは俺の故郷の料理の一つだよ。茹でた穀類を酢で味付けして、その上に具材を乗っけて、ギュギュっと押さえつける食べ物だ)
(穀類か。スープや炒め物に入ってることがあるアレを、メインで使うってことか? なんだか想像がつかんな……人化したら食べてみたいもんだ)
(私たちの魔力も随分満ちてきましたからね。そう遠くない未来に、己の肉体を得ることが出来るでしょう。楽しみですよ、ふふふ……)
銀刀への説明を終え、ほんのりと狂気を帯びた黒刀の念話をスルーし、昼食開始。いただきます。
大学食堂ともなればいつものように豪快に食べるわけにもいかず、お上品にパスタを巻き、雅やかに口へと運ぶ。美味美味。
普段の食事ぶりを知っているヤームルが、俺の優雅な所作を見て目を点にする様を横目で見ていると、隣に座っていたアンテロ何某君から話を振られた。
「へえ。君は随分と食べ方が綺麗なんだな。言葉も丁寧で礼儀も知っているし……。公国からヤームルと一緒にやってきたって話だけど、名のある家の出身だったりするのか?」
「まさか。平々凡々な市井の出ですよ。母親が貴族様の子弟に家庭教師のような事をやっていたので、それで作法をちょろっと知っているだけです」
「ふーん? 僕と同じくらいの年齢で護衛なんてやっているから、どこか有力貴族の三男四男坊なのかと思ってたけど」
彼の言葉が気になったので貴族事情について話を聞いてみれば、詳しく話してくれた。
なんでも、大抵の貴族は長男次男以外、家で読み書き礼儀作法等の教育を施した後は、適性によって様々な養成所に送られるのが常なのだという。
魔力、戦闘技術に優れているなら騎士学校に、魔力と座学に秀でているなら魔術大学へ。人や物事の機微に聡いなら文官の養成所、等々。
アンテロは体力知力のいずれも優れていたが、本人たっての希望で魔術大学へ進んだようだ。そう誇らしげに語る姿が微笑ましい。
日本に居た頃、かけっこで一番になったことを自慢していた、道場の門下生を見ている気になってくる。丁度、年齢はこの少年と同じくらいだろうか……。
「──僕は魔術というものがとても好きなんだ。自然現象とは違う、魔力と術式による超常現象。燃えるものがないのに炎が燃えたり、水蒸気を集めたわけでもないのに水を生み出したり。そういう現象の事を、もっと知っていきたいと思ったのさ」
「分かります。魔術って不思議ですよね。それを術式や魔法陣で操るというのも、これまた心が躍るものがあります」
「おお、君も分かるか! うんうん、魔術で魔法陣が周囲に浮かぶところは、僕もとても格好いいと思っているところだ。なんというのかな、こう、自分がこの事象を操っているんだぞ、という証明に感じるというか」
ピザのような平パンを摘まみながら、野郎同士の魔術トークで盛り上がる俺たち。
光り輝く魔法陣って格好良いよね!
異世界にあっても、少年の性質というのは格好いいものを求めたがるものらしい。
一方で、女性陣はそれを奇異の目で見ているようだ。
「なんだか変に気が合うみたいですね、あの二人」
「ええ、魔術の話で盛り上がっているようですけれど、意外なことです。ロウさんは魔術を習得していないようですから、興味が無いものとばかり思っていました」
「魔術なんぞ魔ほ……精霊魔法があれば、用のないものだと思うがな」
「セルケトさんやロウみたいに魔力の桁が違えばそうだろうけれど。人族の一般的な尺度で言えば、やはり様々な事象を行使できる魔術というのは有用だよ」
などという声が耳に入る。
用のないものというセルケトの指摘は的を射るものだが、用がなかろうとも格好良いものは格好良いのだ。それは互いに矛盾するものではない。
アンテロも彼女たちの話声を耳にしたのか、首を傾げながら質問をしてくる。
「精霊魔法? 君は精霊使いだったのか? てっきり魔術師だと思ってたよ」
「魔術に興味はあるんですけどね。先に精霊との縁があったもので、魔術を学ぶ機会を逸してしまったというか」
「そういうことか。精霊と縁があるとはまた、羨ましいな。あれも超常現象のそのものといった感じだし」
「ですねえ。魔術とは違って、属性が限定されてしまうのは惜しいことですが、自由に出力できるのは面白いものですよ」
図書館では彼のことを名家出身ということを、笠に着た面倒な子供かと思っていたが。話してみればごくごく普通の少年であるようだった。第一印象というものはあてにならないものだ。
「自由な出力か。ヤームルを護衛するほどの腕前、見てみたいな。君、この後時間はあるか?」
「うーん、ちょっと難しいですね。今試験を受けている友達がいて、試験が終わってその子たちと合流したら、冒険者組合に顔を出そうと思っているので」
「そうか、残念だ。うん? 君、冒険者だったのか? 年齢制限で引っ掛かると思うんだけど、もしかしてドワーフやハーフリングみたいな亜人で、もう成人してる?」
「制限ギリギリの十歳ですよ。薬草採取ばっかりやるような感じなので、組合からも特に文句は言われませんね」
薬草採取と聞くとさも残念そうな表情と身振りをする金髪少年。恐らく彼にとっては、冒険者といえば魔物討伐をするものだ、そんな考えが浮かんでいたのだろう。
その後も薬草採取なんて地味だの、いやいや意外と面白いものだのと話している内に料理を食べ終わり、楽しい昼食の時間もお開きとなる。
爽やかな笑顔で去っていくアンテロと従者を見送った後、俺たちはアイラやカルラを迎えに行くべく、試験が行われた校舎へと向かうのだった。
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無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
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高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
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「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
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フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
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