258 / 273
第八章 帝都壊乱
8-20 英雄墳墓
しおりを挟む
会話や買い物を挟みつつも堂々たる歩みを続けた一行は、ほどなく目的地たる巨大建造物へ到着する。途中露店で花束を購入するも、人混みが無かったため時間に遅れはさほどない。
巨大な石柱と石壁で構成された白一色の建物には、欠けや擦った痕跡が一切ない。たった今創り出されたばかりだと主張するかのように、瑕疵のない床面壁面が続いていく。
装飾は最低限度、されど端々に施されるのは精緻を極めし意匠の数々。
大英雄ユウスケの霊廟は、実に厳かにロウたちを出迎えた。
「これが大英雄の……。大昔からあるんですよね? なんだか、真新しい空気感がありますけど」
「この墳墓は設計から建築まで、全て神々の手によってなされています。大魔法によって創り出された不磨の建材ですから、当時から全く変化がないとのことですわ~。当然、お掃除は抜かりなく行っていますし」
〈墳墓の建造にはこのオファニムも関わっている。汝もオファニムの結界の強度は知っていよう? あれを石材に付与し、石材そのものを変質させているのだ。幾星霜を経ようとも褪せる道理がない〉
「ほへぇー。神が建てた墓に眠るとは、流石大英雄……」
〈──〉
ロウが獅子の聖獣ケルブの言葉に感心すれば、翼だらけの聖獣オファニムが誇らしげに翼を揺らす。
神の魔法による光球が漂う中、意外なほどに和やかな雰囲気で進む一行。そんな彼らの前に、大墳墓を管理する者が現れる。
宮殿を護る近衛騎士に勝るとも劣らない、壮麗な鎧を身につける武装集団。男女入り混じる十名ほどの彼らはロウたちに臣下の礼を取り跪く。
「よくぞお越しくださいました。サロメ殿下に、聖獣様。ご予定は入れられていらっしゃらなかったと記憶しておりましたが……?」
〈観光兼調査だ。我らがいる故に案内は不要。己の役目を果たすが良い〉
「左様でございましたか。それではごゆるりとお楽しみくださいませ」
短いやり取りを終えると、騎士の代表は部下を引きつれ去っていく。皇女に見惚れたり、聖獣に慄いたり、褐色少年に欲情したりする面々も、素早く表情を引き締め職務に戻った。
「もっとやり取りがあるものかと思ってましたけど。これも聖獣の御威光ってやつですか」
「ですわね~。わたくし一人であれば、たとえ聖獣様が内で護っていたとしても、必ず護衛の同行を申し入れられたことでしょう」
「何せ、殿下のでっち上げかもしれませんからねえ。聖獣が内側にいるかどうかなんて、騎士には判断できないでしょうし。頻繁に脱走していらっしゃる殿下のお言葉となると、些か信用に欠けると言いますか……」
「むきーっ! なんてことを仰るのですか!」
地団駄を踏み火球を発生させる少女に、それを水球で消失させる少年。人族国家の皇女と人類の天敵たる魔神でありながら、実に気安い会話である。
一般人の立ち入ることができる区域までは、平穏そのものな彼らだったが──。
〈このようなところにまで侵入を許すとはね。魔を祓った英雄の墓所へ魔の首魁が訪れるなど、嘆かわしいにもほどがあるよ〉
「げッ」「あへっ!?」
──十二の翼を躍らせる神と鉢合わせたことで、その空気も霧散してしまうこととなった。
◇◆◇◆
小さな光球が辺りを漂い、幻想的な空気を醸す霊廟内部。
その光景の中でロウたちを待ち受けていたのは、林立する柱の一つにもたれかかる、有翼の銀髪金眼な美青年。厳かな場所ということもあり、その佇まいは宗教画から切り取ったかの如き静謐さだ。
そんな美しさ極まる青年だが、口を開けば雑言ばかりである。
〈聖獣よ。戦いから遠ざかりすぎて耄碌したのかね? かの者の守護獣として遣わされたそなたらが、ここをどこだか分からぬわけではあるまい?〉
〈言われるまでもなく理解しているとも、サマエル。ユウスケの墓所へこの者を案内したのは、我らの意思表示でもある〉
〈ハッ! 何を言うかと思えば、意思表示とな。話にならんね。魔を排する聖獣が聞いて呆れる。開いた口が塞がらんよ!〉
〈フッ。汝の口が塞がった試しなどないだろうに〉
〈──〉
対し、青年へ応じる応じる聖獣たちは柳に風と受け流す。
皇女が襲われた際、サマエルが皇女の救出ではなく敵の排除を優先したこと。
そして皇女襲撃の実行犯、魔神アノフェレス一派に協力している可能性があること。
先日判明したこれら事実は、皇女の護りを至上とする彼らが不信感を抱くには十分すぎる要素である。彼らが取り合わないのは半ば敵として認識しているからに他ならない。
〈〈……〉〉
死神の挙動を静かに見つめる目付けや、皇女を護れるような位置へ僅かに動く立ち回り。結果として彼らに表れたのが身じろぎ程度の微かな動き。近くにいるロウもサロメも気付かぬ微々たる変化だ。
さりとて、些細な事柄を見抜き逃さずあげつらうのが死神サマエルである。
〈……ハァ。天空神より遣わされて九百年。早くも焼きが回ったかね? 魔たるその者を迎え入れ、神たる我を警戒するとは……やはり獣に永き時は耐えられぬか〉
〈警戒? 単なる嫌悪だ。汝とは当初よりこうであろう〉
〈あくまで白を切るかね。まあ良い。神や聖獣すら使嗾するとなれば、この魔神を監視せぬ理由がない。この墳墓で妙な気を起こさぬよう、我も同行するとしよう〉
〈〈……〉〉
「げぇーマジかあー。横からネチネチ言うのだけは勘弁な」
「死神様がご同行。お父様が聞かれたら卒倒してしまいそうですわ」
顔を見合わせる者たちに、下唇が捲れるほどに嫌悪を覗かせる者、上位者ばかりの状況にぶるりと身を震わせる者。サマエルの言葉を聞いたロウたちの反応は様々だ。
〈貴様が何事も企てなければ、こうして顕れることもなかったのだがね? 魔神ロウ。この墳墓を荒らそうものなら言葉だけでは済まぬと知れ〉
「はいはい。というか、俺が立ち入れるのってこの辺までだし、荒らしようがねえよ。後は花を供えて故人をしのんでお終いだ」
「あら、そうでしたの? わたくしてっきり、ユウスケ様の眠る聖櫃を見ていかれるのかと」
〈“大英雄の墓を見たい”と言った以上、我らも皇女の語る意で捉えていたが〉
「一般の人だって石像に祈るだけなんですから、そこまで無茶は言いませんよ。俺をなんだと思ってるんですか」
〈〈〈……〉〉〉
心外だと憤慨するロウだったが、聖獣も死神も等しく沈黙を返すのみ。彼らの脳裏に「どの口が抜かすのか」という言葉がよぎったのは言うまでもない。
そうしたひと悶着があったものの、皇女サロメが折角墳墓へきたのだからと一歩も引かず。
大広間で献花台に花を供えた彼らは、大英雄の埋葬室へ向かうこととなる。
「ロウさまには律儀な一面もあるのですね。人として育ったということが影響しているのでしょうか?」
「ですかねえ。そのせいか、ちょっとだけ大英雄様に共感を覚えるんですよねー。ほら、大英雄様って力が圧倒的過ぎて、慕われこそすれ友と呼べるような存在が皆無だったそうですし」
〈魔神が大英雄に共感? 闘争でしか自己を確立できぬ魔の化身が、世のため人のために尽くした英傑に感ずるところがあると? 戯言を。全くもって度し難いね〉
「お前って本当そればっかりだな……ちょっとって言ってるのにそこまで否定せんでも」
純白の翼を羽ばたかせるいやみったらしい銀髪青年を加え、更に鈍くなる進行。それでも一行は奥へと進む。
神の魔力で創られたゴーレムたちの間をすり抜け、魔神はおろか神さえも容易に近づけない光の結界を潜り抜け。ロウたちは静謐なる空間に似つかわしくない罵声を反響させつつ、深部を目指した。
そんな時間がしばし続き──。
「──おほ~。ここが埋葬室ですか。これはなんとも……」
少年は墳墓の中心、大英雄の眠る巨大空間に到着した。
半球状の大空間は床面壁面共に複雑な紋様が描かれ、空間に満ちる魔力を吸って光り輝く。
周囲に目を移せば神や女神、人の女性を模った像がぐるりと配され、中心には石の棺が鎮座する。墓所というより祭壇という光景を見たロウは、「眼」を凝らし分析していく。
「ほうほう……壁に地面に空中までも。この紋様、全部障壁を形作ってるわけですか。凄い数だ。それに、なんだか身体がチリチリします。魔術の一種ですかね?」
〈魔を排する陣ではあるが、人の術ではなく神なる技法だ。魔神であっても破ることはできん〉
〈フククク。そういうことだ。貴様であっても荒らすことは叶わん。あてが外れたかね? 魔神よ〉
「すぐそっち方面に持っていかなくていいから……ん?」
死神の挑発を無視して観察を続けていたロウだったが、壁際を埋める石像の中に死神を見つけると笑みを浮かべた。
「ほぉ~。ふ~ん? なるほどなるほどー」
〈……なんだね、その汚らしい笑みは〉
「いやほら、実物はこんななのに、石像だと正義の神様なんだなーって。炎の剣も氷の天秤も、全部そういう象徴だろ? 死神のくせに……」
〈ほう。愚昧なる魔神の割によく分かっているじゃあないか。貴様の言葉通り、我が石像は正義そのものだ。魔を祓い悪を裁く、な〉
破壊的な力を示す炎の剣に、厳格なる公正さを示す氷の天秤。前世で学んだ神話学を引っ張り出した少年は、世界が変わっても象徴は変わらないのだなあと感慨にふける。
「死神様は正義の象徴でもありますけれど、司るものは死と再生ですわ。命を停止させる冷徹なる氷に、命の躍動を表す激情の炎。両極端な性質なのですわ~」
〈……おい、聖獣。何故この皇女は我が権能について語りだしたのだね? 魔神に手の内を知らせるなど、気を違えたとしか思えぬのだがね〉
〈汝と魔神の会話に混ざりたかったのではないか? 土台、広く信仰を集める汝の権能など、既に知られていよう〉
「死と再生かあ。なんとまあ死神らしい権能なことで」
〈おい愚か者! 知らなかったではないかね! この愚物がッ!〉
「あへっ!? も、申し訳ございません!」
凍れる天秤は対する者を等しく貶す。青年の罵倒は魔神であろうが皇女であろうが一切鈍らない。
「愚物て。お前、俺と戦ってる時に“権能を込めた我が魔法を~”とか言ってなかったっけ? 秘密にしてるって聞いても、物凄く今更感があるんだけど……もうアレか。空気が悪くなる前にさっさとお祈りして帰るか……んん?」
あんまりにもあんまりな言動に引いていたロウは、再び一点を凝視。
攻撃態勢となったネコ科動物の如く瞳孔を散大させて見つめる先は、大英雄が眠る棺である。
床や壁同様、精細な紋様が描かれている聖櫃。それは一見、瑕疵なく見えたが──。
「これは、亀裂ですかね?」
尋常ならざる魔神の視力は、ごくごく僅かな傷を見つけ出す。
〈!〉
ロウに次いで変化をみとめたのは聖獣オファニム。彼は紋様の切れ目のみならず、異質な魔力の残り香さえも看破した。
一寸の虫が行う呼吸よりなお希薄な魔の気配。ロウでさえ知覚できないそれに、聖獣は緋色の魔力を見る。
〈……〉
〈ほう。聖櫃に亀裂かね? 訪れるものが皆無であり、大魔法でもって護りを拵えられたこの入れ物に、かね。随分ときな臭いじゃあないか〉
〈亀裂どころではないぞ、サマエル。どうやら魔神の残り香もあるらしい。我らであっても見逃すほど希薄だが……よくよく見れば確かにある〉
「マジっすか。傷見つけておいてなんですが、魔力は気付かなかったですよ」
「ま、魔神の残り香っ!? ユウスケ様の眠るこの場にですか!?」
上位者たちが暢気に語り合う一方、泡を食って動じるのは唯一人間である金髪少女。大英雄の血を色濃く残す傑物ながら、今この時は獅子に囲まれ震える羊である。
そんな彼女を放置して、上位者一同は棺を調べる。
亀裂の検証に加え、「魔眼」を用いた他の痕跡の調査、空間魔法を使った内部調査に至るまで。塵一つ見逃さない調査の結果は──。
「う~ん? 手は出されてない、ってことですかね?」
──あろうことか手つかず。
遺骸や遺物に動かされた形跡は見当たらなかったのだ。
〈当然であろう。この封は神々の力を結集して創りしもの。これを破り大英雄の遺骸を持ち出すなど、構造を知る我らであっても至難を極める〉
〈侵入できたはいいが、護りの固さを前に逃げ帰った。そんなところかね〉
「なるほど。この空間だと調査するだけでも滅茶苦茶消耗しますし、確かに持ち出すなんてのは無理そうな感じです。ここで俺たちが封印を破いちゃったら元も子もないですし、お祈りして戻りますか」
未知なる魔神の魔力に引っ掛かりつつ、常のように結論を先送りとしたロウ。
周囲から突き刺さる呆れの視線をまるっと無視した彼は、本来の目的へと立ち返る。聖櫃で眠る大英雄への祈りである。
(初めまして、大英雄ユウスケ。俺はロウ……そして、中島太郎って名前もある。お前と同じ日本からきた、同郷人だ。生まれはこの帝国じゃなくて、よその国だけどな。つまり、云千キロも離れた外国から、わざわざ足を運んできたってことだ。お前のために。嬉しいだろ? 喜べ!)
のっけから自分の話を全開で語る褐色少年である。
常であれば曲刀たちから「押し付けがましい」と突っ込みが入るところだが、祈りの時間であるからか念話が飛ぶことはない。それをいいことに、少年の祈りという名の雑談は続く。
(この世界ではお前が死んじゃってから九百年経ってるけど、不思議なことに向こうの世界だとそんなに時間が経ってないっぽいんだよね。お前が遺してきたネットスラング、物凄く覚えがあるものばっかりだし……。ということは、だ。俺が地球に戻った暁には、お前の実家を探すことも可能ってわけさ!)
試してもいない地球への転移を前提として、壮大な展望を語るロウ。
しかし、次の瞬間には楽し気だった調子が一転。沈痛な面持ちとなった彼は静かに偲ぶ。
(……同郷人として、そして同じ人ならざる存在になってしまった者として。お前が背負ったもの、少しは理解できるつもりだ。いきなり訳の分からない力を得て、人族の未来を背負わされて、殺戮兵器として戦場に駆り出されて……挙句には、好意悪意にもまれにもまれて。普通に生きてた日本人としちゃあ、しんどいなんてもんじゃ、ないよな)
かつて本で読んだ大英雄の届かぬ想いを追想し、少年は頬に一筋の雫を落とす。
英雄と魔神。されど同じ故郷を持つ異世界人。同郷の友人を一人しか知らないロウにとって、ユウスケは救世の大英雄というより同胞の日本人という印象が強かったのだ。
(本からの情報だけじゃ分からないことだらけだけど。お前の未練、出来得る限り晴らしておくよ。宇智英ユウスケ……)
思いを決意とした少年は、涙を拭って静かに立つ。
涙を見た皇女から悶えられて抱き寄せられたり、聖獣から訝しがるような視線を突き刺されながら、ロウは静かに埋葬室を後にしたのだった。
巨大な石柱と石壁で構成された白一色の建物には、欠けや擦った痕跡が一切ない。たった今創り出されたばかりだと主張するかのように、瑕疵のない床面壁面が続いていく。
装飾は最低限度、されど端々に施されるのは精緻を極めし意匠の数々。
大英雄ユウスケの霊廟は、実に厳かにロウたちを出迎えた。
「これが大英雄の……。大昔からあるんですよね? なんだか、真新しい空気感がありますけど」
「この墳墓は設計から建築まで、全て神々の手によってなされています。大魔法によって創り出された不磨の建材ですから、当時から全く変化がないとのことですわ~。当然、お掃除は抜かりなく行っていますし」
〈墳墓の建造にはこのオファニムも関わっている。汝もオファニムの結界の強度は知っていよう? あれを石材に付与し、石材そのものを変質させているのだ。幾星霜を経ようとも褪せる道理がない〉
「ほへぇー。神が建てた墓に眠るとは、流石大英雄……」
〈──〉
ロウが獅子の聖獣ケルブの言葉に感心すれば、翼だらけの聖獣オファニムが誇らしげに翼を揺らす。
神の魔法による光球が漂う中、意外なほどに和やかな雰囲気で進む一行。そんな彼らの前に、大墳墓を管理する者が現れる。
宮殿を護る近衛騎士に勝るとも劣らない、壮麗な鎧を身につける武装集団。男女入り混じる十名ほどの彼らはロウたちに臣下の礼を取り跪く。
「よくぞお越しくださいました。サロメ殿下に、聖獣様。ご予定は入れられていらっしゃらなかったと記憶しておりましたが……?」
〈観光兼調査だ。我らがいる故に案内は不要。己の役目を果たすが良い〉
「左様でございましたか。それではごゆるりとお楽しみくださいませ」
短いやり取りを終えると、騎士の代表は部下を引きつれ去っていく。皇女に見惚れたり、聖獣に慄いたり、褐色少年に欲情したりする面々も、素早く表情を引き締め職務に戻った。
「もっとやり取りがあるものかと思ってましたけど。これも聖獣の御威光ってやつですか」
「ですわね~。わたくし一人であれば、たとえ聖獣様が内で護っていたとしても、必ず護衛の同行を申し入れられたことでしょう」
「何せ、殿下のでっち上げかもしれませんからねえ。聖獣が内側にいるかどうかなんて、騎士には判断できないでしょうし。頻繁に脱走していらっしゃる殿下のお言葉となると、些か信用に欠けると言いますか……」
「むきーっ! なんてことを仰るのですか!」
地団駄を踏み火球を発生させる少女に、それを水球で消失させる少年。人族国家の皇女と人類の天敵たる魔神でありながら、実に気安い会話である。
一般人の立ち入ることができる区域までは、平穏そのものな彼らだったが──。
〈このようなところにまで侵入を許すとはね。魔を祓った英雄の墓所へ魔の首魁が訪れるなど、嘆かわしいにもほどがあるよ〉
「げッ」「あへっ!?」
──十二の翼を躍らせる神と鉢合わせたことで、その空気も霧散してしまうこととなった。
◇◆◇◆
小さな光球が辺りを漂い、幻想的な空気を醸す霊廟内部。
その光景の中でロウたちを待ち受けていたのは、林立する柱の一つにもたれかかる、有翼の銀髪金眼な美青年。厳かな場所ということもあり、その佇まいは宗教画から切り取ったかの如き静謐さだ。
そんな美しさ極まる青年だが、口を開けば雑言ばかりである。
〈聖獣よ。戦いから遠ざかりすぎて耄碌したのかね? かの者の守護獣として遣わされたそなたらが、ここをどこだか分からぬわけではあるまい?〉
〈言われるまでもなく理解しているとも、サマエル。ユウスケの墓所へこの者を案内したのは、我らの意思表示でもある〉
〈ハッ! 何を言うかと思えば、意思表示とな。話にならんね。魔を排する聖獣が聞いて呆れる。開いた口が塞がらんよ!〉
〈フッ。汝の口が塞がった試しなどないだろうに〉
〈──〉
対し、青年へ応じる応じる聖獣たちは柳に風と受け流す。
皇女が襲われた際、サマエルが皇女の救出ではなく敵の排除を優先したこと。
そして皇女襲撃の実行犯、魔神アノフェレス一派に協力している可能性があること。
先日判明したこれら事実は、皇女の護りを至上とする彼らが不信感を抱くには十分すぎる要素である。彼らが取り合わないのは半ば敵として認識しているからに他ならない。
〈〈……〉〉
死神の挙動を静かに見つめる目付けや、皇女を護れるような位置へ僅かに動く立ち回り。結果として彼らに表れたのが身じろぎ程度の微かな動き。近くにいるロウもサロメも気付かぬ微々たる変化だ。
さりとて、些細な事柄を見抜き逃さずあげつらうのが死神サマエルである。
〈……ハァ。天空神より遣わされて九百年。早くも焼きが回ったかね? 魔たるその者を迎え入れ、神たる我を警戒するとは……やはり獣に永き時は耐えられぬか〉
〈警戒? 単なる嫌悪だ。汝とは当初よりこうであろう〉
〈あくまで白を切るかね。まあ良い。神や聖獣すら使嗾するとなれば、この魔神を監視せぬ理由がない。この墳墓で妙な気を起こさぬよう、我も同行するとしよう〉
〈〈……〉〉
「げぇーマジかあー。横からネチネチ言うのだけは勘弁な」
「死神様がご同行。お父様が聞かれたら卒倒してしまいそうですわ」
顔を見合わせる者たちに、下唇が捲れるほどに嫌悪を覗かせる者、上位者ばかりの状況にぶるりと身を震わせる者。サマエルの言葉を聞いたロウたちの反応は様々だ。
〈貴様が何事も企てなければ、こうして顕れることもなかったのだがね? 魔神ロウ。この墳墓を荒らそうものなら言葉だけでは済まぬと知れ〉
「はいはい。というか、俺が立ち入れるのってこの辺までだし、荒らしようがねえよ。後は花を供えて故人をしのんでお終いだ」
「あら、そうでしたの? わたくしてっきり、ユウスケ様の眠る聖櫃を見ていかれるのかと」
〈“大英雄の墓を見たい”と言った以上、我らも皇女の語る意で捉えていたが〉
「一般の人だって石像に祈るだけなんですから、そこまで無茶は言いませんよ。俺をなんだと思ってるんですか」
〈〈〈……〉〉〉
心外だと憤慨するロウだったが、聖獣も死神も等しく沈黙を返すのみ。彼らの脳裏に「どの口が抜かすのか」という言葉がよぎったのは言うまでもない。
そうしたひと悶着があったものの、皇女サロメが折角墳墓へきたのだからと一歩も引かず。
大広間で献花台に花を供えた彼らは、大英雄の埋葬室へ向かうこととなる。
「ロウさまには律儀な一面もあるのですね。人として育ったということが影響しているのでしょうか?」
「ですかねえ。そのせいか、ちょっとだけ大英雄様に共感を覚えるんですよねー。ほら、大英雄様って力が圧倒的過ぎて、慕われこそすれ友と呼べるような存在が皆無だったそうですし」
〈魔神が大英雄に共感? 闘争でしか自己を確立できぬ魔の化身が、世のため人のために尽くした英傑に感ずるところがあると? 戯言を。全くもって度し難いね〉
「お前って本当そればっかりだな……ちょっとって言ってるのにそこまで否定せんでも」
純白の翼を羽ばたかせるいやみったらしい銀髪青年を加え、更に鈍くなる進行。それでも一行は奥へと進む。
神の魔力で創られたゴーレムたちの間をすり抜け、魔神はおろか神さえも容易に近づけない光の結界を潜り抜け。ロウたちは静謐なる空間に似つかわしくない罵声を反響させつつ、深部を目指した。
そんな時間がしばし続き──。
「──おほ~。ここが埋葬室ですか。これはなんとも……」
少年は墳墓の中心、大英雄の眠る巨大空間に到着した。
半球状の大空間は床面壁面共に複雑な紋様が描かれ、空間に満ちる魔力を吸って光り輝く。
周囲に目を移せば神や女神、人の女性を模った像がぐるりと配され、中心には石の棺が鎮座する。墓所というより祭壇という光景を見たロウは、「眼」を凝らし分析していく。
「ほうほう……壁に地面に空中までも。この紋様、全部障壁を形作ってるわけですか。凄い数だ。それに、なんだか身体がチリチリします。魔術の一種ですかね?」
〈魔を排する陣ではあるが、人の術ではなく神なる技法だ。魔神であっても破ることはできん〉
〈フククク。そういうことだ。貴様であっても荒らすことは叶わん。あてが外れたかね? 魔神よ〉
「すぐそっち方面に持っていかなくていいから……ん?」
死神の挑発を無視して観察を続けていたロウだったが、壁際を埋める石像の中に死神を見つけると笑みを浮かべた。
「ほぉ~。ふ~ん? なるほどなるほどー」
〈……なんだね、その汚らしい笑みは〉
「いやほら、実物はこんななのに、石像だと正義の神様なんだなーって。炎の剣も氷の天秤も、全部そういう象徴だろ? 死神のくせに……」
〈ほう。愚昧なる魔神の割によく分かっているじゃあないか。貴様の言葉通り、我が石像は正義そのものだ。魔を祓い悪を裁く、な〉
破壊的な力を示す炎の剣に、厳格なる公正さを示す氷の天秤。前世で学んだ神話学を引っ張り出した少年は、世界が変わっても象徴は変わらないのだなあと感慨にふける。
「死神様は正義の象徴でもありますけれど、司るものは死と再生ですわ。命を停止させる冷徹なる氷に、命の躍動を表す激情の炎。両極端な性質なのですわ~」
〈……おい、聖獣。何故この皇女は我が権能について語りだしたのだね? 魔神に手の内を知らせるなど、気を違えたとしか思えぬのだがね〉
〈汝と魔神の会話に混ざりたかったのではないか? 土台、広く信仰を集める汝の権能など、既に知られていよう〉
「死と再生かあ。なんとまあ死神らしい権能なことで」
〈おい愚か者! 知らなかったではないかね! この愚物がッ!〉
「あへっ!? も、申し訳ございません!」
凍れる天秤は対する者を等しく貶す。青年の罵倒は魔神であろうが皇女であろうが一切鈍らない。
「愚物て。お前、俺と戦ってる時に“権能を込めた我が魔法を~”とか言ってなかったっけ? 秘密にしてるって聞いても、物凄く今更感があるんだけど……もうアレか。空気が悪くなる前にさっさとお祈りして帰るか……んん?」
あんまりにもあんまりな言動に引いていたロウは、再び一点を凝視。
攻撃態勢となったネコ科動物の如く瞳孔を散大させて見つめる先は、大英雄が眠る棺である。
床や壁同様、精細な紋様が描かれている聖櫃。それは一見、瑕疵なく見えたが──。
「これは、亀裂ですかね?」
尋常ならざる魔神の視力は、ごくごく僅かな傷を見つけ出す。
〈!〉
ロウに次いで変化をみとめたのは聖獣オファニム。彼は紋様の切れ目のみならず、異質な魔力の残り香さえも看破した。
一寸の虫が行う呼吸よりなお希薄な魔の気配。ロウでさえ知覚できないそれに、聖獣は緋色の魔力を見る。
〈……〉
〈ほう。聖櫃に亀裂かね? 訪れるものが皆無であり、大魔法でもって護りを拵えられたこの入れ物に、かね。随分ときな臭いじゃあないか〉
〈亀裂どころではないぞ、サマエル。どうやら魔神の残り香もあるらしい。我らであっても見逃すほど希薄だが……よくよく見れば確かにある〉
「マジっすか。傷見つけておいてなんですが、魔力は気付かなかったですよ」
「ま、魔神の残り香っ!? ユウスケ様の眠るこの場にですか!?」
上位者たちが暢気に語り合う一方、泡を食って動じるのは唯一人間である金髪少女。大英雄の血を色濃く残す傑物ながら、今この時は獅子に囲まれ震える羊である。
そんな彼女を放置して、上位者一同は棺を調べる。
亀裂の検証に加え、「魔眼」を用いた他の痕跡の調査、空間魔法を使った内部調査に至るまで。塵一つ見逃さない調査の結果は──。
「う~ん? 手は出されてない、ってことですかね?」
──あろうことか手つかず。
遺骸や遺物に動かされた形跡は見当たらなかったのだ。
〈当然であろう。この封は神々の力を結集して創りしもの。これを破り大英雄の遺骸を持ち出すなど、構造を知る我らであっても至難を極める〉
〈侵入できたはいいが、護りの固さを前に逃げ帰った。そんなところかね〉
「なるほど。この空間だと調査するだけでも滅茶苦茶消耗しますし、確かに持ち出すなんてのは無理そうな感じです。ここで俺たちが封印を破いちゃったら元も子もないですし、お祈りして戻りますか」
未知なる魔神の魔力に引っ掛かりつつ、常のように結論を先送りとしたロウ。
周囲から突き刺さる呆れの視線をまるっと無視した彼は、本来の目的へと立ち返る。聖櫃で眠る大英雄への祈りである。
(初めまして、大英雄ユウスケ。俺はロウ……そして、中島太郎って名前もある。お前と同じ日本からきた、同郷人だ。生まれはこの帝国じゃなくて、よその国だけどな。つまり、云千キロも離れた外国から、わざわざ足を運んできたってことだ。お前のために。嬉しいだろ? 喜べ!)
のっけから自分の話を全開で語る褐色少年である。
常であれば曲刀たちから「押し付けがましい」と突っ込みが入るところだが、祈りの時間であるからか念話が飛ぶことはない。それをいいことに、少年の祈りという名の雑談は続く。
(この世界ではお前が死んじゃってから九百年経ってるけど、不思議なことに向こうの世界だとそんなに時間が経ってないっぽいんだよね。お前が遺してきたネットスラング、物凄く覚えがあるものばっかりだし……。ということは、だ。俺が地球に戻った暁には、お前の実家を探すことも可能ってわけさ!)
試してもいない地球への転移を前提として、壮大な展望を語るロウ。
しかし、次の瞬間には楽し気だった調子が一転。沈痛な面持ちとなった彼は静かに偲ぶ。
(……同郷人として、そして同じ人ならざる存在になってしまった者として。お前が背負ったもの、少しは理解できるつもりだ。いきなり訳の分からない力を得て、人族の未来を背負わされて、殺戮兵器として戦場に駆り出されて……挙句には、好意悪意にもまれにもまれて。普通に生きてた日本人としちゃあ、しんどいなんてもんじゃ、ないよな)
かつて本で読んだ大英雄の届かぬ想いを追想し、少年は頬に一筋の雫を落とす。
英雄と魔神。されど同じ故郷を持つ異世界人。同郷の友人を一人しか知らないロウにとって、ユウスケは救世の大英雄というより同胞の日本人という印象が強かったのだ。
(本からの情報だけじゃ分からないことだらけだけど。お前の未練、出来得る限り晴らしておくよ。宇智英ユウスケ……)
思いを決意とした少年は、涙を拭って静かに立つ。
涙を見た皇女から悶えられて抱き寄せられたり、聖獣から訝しがるような視線を突き刺されながら、ロウは静かに埋葬室を後にしたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました
夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。
スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。
ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。
驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。
※カクヨムで先行配信をしています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる