♡ちゅっぽんCITY♡

x頭金x

文字の大きさ
9 / 67
第1章 海辺の喫茶店【シナプる】

9

しおりを挟む
「あ!!」

 時間がゆっくり進んだ。ブーニーハットが床に落ちるまでの数秒が、数分にも思えた。“飛鳥さん“の視線が、ハットから瞬時に頭頂部へと移行し、そこに留まっているのも、口角が少し上がり、すぐさま元通りに戻ったのも、しっかりと“旅人“は視認した。

『ファサ』

 ブーニーハットが床に落ちた。少しの静寂のあと、“飛鳥さん“は床に落ちたブーニーハットを拾い上げ、“旅人“の頭に戻した。

「・・・・く」

 その時に我慢し切れず吹き出してしまった“飛鳥さん“の唾が“旅人“の唇に飛んだ。反射で舐めてしまったが、“旅人“の顔は真っ赤だった。それを見た“飛鳥さん“はもう堪えきれずその場にうずくまってプルプルと全身を震わせた。

「だっはっっはっはっはっははっははげーーーー!!!ハゲだーーーー!!!」

 背後から“マスター“が、“飛鳥さん“が被せたブーニーハットをまた取り上げて爆笑する声が聴こえた。

「あはははははすんげー!!すんげーよお前ーーー!!!!」

 “旅人“の肩をバシバシ叩きながら爆笑する“マスター“、今までの渋さはどこに行ったのだろうか。

「ちょちょ、ちょっと、真面目な顔してみ、ほら、キリって、してごらん?」

 “マスター“が“旅人“の肩を揺らしながら言った。“旅人”は言われる通りに、キリッとした顔をした。

「あははははははたまんねーなおい!!」

 “マスター“が涙を流しながら笑った。

「おいこら飛鳥、これ見ろ」

 そう言って“マスター“は“旅人“をくるりと回転させて、うずくまり震えている“飛鳥さん“の方へ顔を向けた。

「・・・くく・・・くくぐぐぐ」

 “飛鳥さん“の震えが一層激しくなった。そしてとうとう堪えきれず、

「あはははは、あっははははははは」

 と顔が千切れんばかりに笑った。

「ヒーヒー、うふっふふふはははは!!」

 “飛鳥さん“は立ち上がり、“旅人“の肩に手を置いて、もう片方の手でお腹を押さえながら笑った。

「ちょ、ちょっと、くるし・・・殺す気・・・うふふふふ」

 “旅人“は恥辱を赤面しながら味わっているのに、肩に手を置いて前屈みになっている“飛鳥さん“の胸元がチラリと見えないかなどと冷静に考えている自分がいる事に驚いた。そんな事を考えているうちに血流が下半身に集中し、顔の赤みが徐々に薄れていった。そして平静の顔色に戻る頃には、2人の笑い声も収まっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

BODY SWAP

廣瀬純七
大衆娯楽
ある日突然に体が入れ替わった純と拓也の話

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...